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2013年02月20日

2013年2月20日 判断とは基準の持ち方で決まる(下)

YAMAMOTO・レター
環境×文化×経済 山本紀久雄

2013年2月20日 判断とは基準の持ち方で決まる(下)

仏雑誌の「JAPON」特集
フランスのジャーナリスト、リオネル・クローゾン氏から「カイエ・ド・サイエンス& ヴィ(科学と生命ノートCahiers de Science & Vie)」 2013年2月「JAPON特集」号が送られてきて、そこに次のメッセージが書かれていた。

 「私は長年カイエ・ド・サイエンス& ヴィ 誌に寄稿しています。この雑誌は文明の歴史や科学的な見地から見た考古学の専門誌です。毎回教養のある読者を対象に、深く掘り下げた一つの話題が取り組まれます。

通常、ベルサイユ、ベニス、ローマ、ギリシャ、古代エジプト等のような西洋文明や古代地中海文明が好まれ取り扱われます。しかしながら、文字、言語、数え方の由来のような、より世界的な話題を扱うこともあります。過去には私が日本の言語、文字の起源、更にはそろばんでの数え方に関する記事を書いたことがあります。

2011年3月以来、仏メディアが日本について語る時、未だに深刻な問題となっている津波や原子力問題についてのみ常に集中しています。というのは、日本専門の仏ジャーナリストはこのような問題以外について書くことがほぼ不可能なのです。もちろん、観光について書くこともできません。

2年が経ち、フランス人は日本文化に関する全てのことに益々興味を持つようになりました。従って、今年ようやくこの雑誌は私のアイデアである日本特集を受け入れてくれました。私が何年も主張して来た考えでした。雑誌の編集者であるIsabelle Bourdial氏は私を信用し、この雑誌の全てを任せてくれました。私は18記事のうち、7つを自分でサインしました。私はこの雑誌によってフランス人が日本にもっと興味を持ってくれればいいと思っています。また、より多くのフランス人が日本に旅行に行きたいと思うようになってほしいと期待しています」

仏の知識層が持っている基準で判断すると、日本文化への評価は高い。

マーク・カーランスキー氏

NYのメトロポリタン美術館アメリカウィングは、10年にわたる大拡張プロジェクトを終え、2012年1月から一般公開されているが、ここに宝石店として有名なティファニーの創始者の長男、ルイス・C・ティファニー(1848-1933)のステンドグラスの作品があり、そのひとつに「オイスターベイからの景色」というタイトルの作品がある。

NYの海には昔、牡蠣が溢れていたことを知る人は僅かであるが、その事実を詳細に記述した本がマーク・カーランスキー著「牡蠣と紐育」、原著はThe Big Oysterで、同書の冒頭に「かつてNYは自然の宝庫であり、海には牡蠣が豊潤に育っていて『オイスターベイ』と称された」とあり、ルイス・C・ティファニーもその事実からステンドグラス作品を描いたのである。

そのマーク・カーランスキー氏から、突然連絡メールが届いた。日本の和紙の本を書きたいので協力してほしいという内容。和紙は世界中の文化財の修復に使われる一方、1000年以上もの優れた保存性と、強靱で柔らかな特性を利用して、独特の用途を確立していることは、世界の知識層では知る人ぞ知るで、その事実を詳細に書きたいというのである。

また、彼はNYタイムズの寄稿記者でもあるので、協力すると日本文化を伝える際に何かと役立つ可能性が高いので、早速にOK連絡したところ、どういうところを取材したらよいのかという相談も来たので、和紙製造業者、紙博物館、皇居御用達店、茶の湯家元、旧家、障子のある家庭等を探し紹介し、今月末に来日することになった。

いずれにしても、アメリカの著名ジャーナリストが和紙に関心を持って、それを出版したいというのであるから、やはり、日本文化への認識基準は高いと判断できる。

街並みと住宅景観は絶望的だ

日本の街並みと住宅景観は絶望的だ、というのは私と一緒に仕事しているアメリカ人女性の発言である。各地方を訪れる度に、彼女の発言を思い出し、改めて、その地の家並みを見ると、明治時代から昭和前期までの、一定感のある落ち着いた宿場町・街道筋であったところが、今は新しい建築様式で、それも様々な家並み、個性というよりはばらばらの街づくりとなって、過去とは比較にならない猥雑な状況となっている。

つまり、かつて存在していた地方独自の建築様式による住宅が見られないのである。オイスターベイであったNYの海と同じように、すっかり変わっている。

欧米諸国では古い町並みが観光資源として成り立つが、日本では無理であり、別の角度から欧米人対策を講じなければならない。

和食の魅力

 その第一候補は食文化である。マーク・カーランスキー氏が和紙に目をつけたが、食は地方ごとに独自の魅力づくりをしていて、観光資源として魅力的である。

まず、最近、体験した事例を紹介したい。千葉県館山市では、食について昨年から新たなる企画を展開している。その意図を左のようにプロデューサーが語っているが、その「館山旬な八色丼」を食べた際の写真が下記のとおりで、これは「すごい」というのが率直な感想である。

 
祭も魅力である
食の次は祭りではないだろうか。日本全国いたるところで毎日のように祭りがある。日本人は祭り好きであり、その祭りを訪ねて観光客が集まってくる。京都「祇園祭」、大阪「天神祭」、東京「神田祭」、東北の「ねぶた祭」、九州の「博多どんたく」、「長崎くんち」のように人気の祭りには大勢の観光客が集まる。

しかし、各地方にも独自の趣向をもった素晴らしい祭りがたくさんあって、それらを欧米人に的確に紹介できれば、その地に観光客は訪れることになるだろう という目標をもって、房総半島最南端の小さな漁村・布良﨑神社で地元の人からいろいろ説明を受けて分かったことがある。

それは、地元の人々は祭を、自分たちの民俗文化として、自分たちが守り、育て、維持しているだけだということ。さらに、祭が大好きな人の肩には、神輿を担ぐための盛り上がった筋肉があり、これが祭好きの証明だと言い、それ以上は何も求めていないという。

なるほどと思うが、これだけの伝統と仕掛けがある日本民俗文化の祭を、世界の人達に伝えることも必要ではないかと思った次第で、

そのための基準を提案したいと思っている。

日本人の基準を変えたい
 リオネル・クローゾン氏、マーク・カーランスキー氏等の著名外国人は、日本文化を優れていると判断している。日本人も「日本文化は世界に発信できる」という確信を持ち、それを基準にして「世界に伝えよう」という判断をするならば、国内各地に埋もれているはずの素晴らしい日本民俗文化を観光資源へ止揚出来る。期待を持って協力したい。以上。

投稿者 Master : 2013年02月20日 08:49

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