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2009年01月26日

2009年2月例会のご案内

経営ゼミナール2009年2月定例会(348回)ご案内

2月の例会は、2月16日(月)に開催します。
発表者は、NPO法人「健康と温泉フォーラム」常任理事の
合田純人氏です。

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日本人は温泉好きです。日本人に新年をどこで迎えたいかと聞くと、多くの人は「温泉で迎えたい」と答えます。また、ちょっと疲れた状態になると「温泉にでも行きたいなぁ」とつぶやく日本人が多いのです。
日本人は昔から温泉を好み、日本各地に数多く存在している温泉を身近な存在とし、生活の一部としてきました。つまり、日本人は日本を温泉大国であると認識するとともに、温泉を日本の伝統文化であると理解しているのです。

この温泉は、地球が人類に与えてくれた宝物であって、その宝物としての温泉水は日本もヨ-ロッパでも差はないのですが、しかし、温泉水の活用方法と温泉環境条件の整備状況、これが大きく異なっています。
日本人がヨ-ロッパの温泉を入浴体験すると、入浴目的・方法が異なることと、温泉環境の素晴らしさに驚くと同時に、日本の温泉環境との差に愕然とすることが多いのは事実です。

今回の金融危機によって経済実体が悪化し、経営が困難化しているのは温泉業界も一般企業も同じで、何とかしなくてはいけないのですが、その対応策に苦慮しているのも同じです。
しかし、合田純人氏は主張します。温泉業界に活性化鍵はいくつかあり、そのためには温泉が所属している地域との連携が大事であり、加えて、ヨーロッパの温泉活用の方法から学ぶことであると。
温泉業界復活へのヒントを探ることは、併せて一般企業への改革への鍵を探ることに通じます。
合田純人氏の主張に関心持ちたいと思います。

2月16日(月)の経営ゼミナールにおける活発なディスカッションをお待ちいたしております。

1.日時 2009年2月16日(月)
     午後 6:00 集合(食事を用意しています)
        6:15 山本代表の時流報告 
        6:30 合田純人氏発表・ディスカッション
        8:30 終了

2.場所 東京銀行協会ビル内 銀行倶楽部 4階3号会議室
     千代田区丸の内1-3-1 Tel:03-5252-3791
     東京駅丸の内北口より徒歩5分(皇居和田倉門前)
  アクセス:http://www.kaikan.co.jp/bankersclub/access/access.htm

3.テーマと発表者
  テーマ「地域との連携が温泉業界賦活化の鍵」
  発表者 NPO法人「健康と温泉フォーラム」合田純人常任理事

■合田純人常任理事の紹介
昭和24年生まれ。1986年の設立より'95年まで、健康と温泉FORUM実行委員会事務局長を務める。世界保健機構(WHO)と公式関係をもつ国際温泉気候連合(FITEC)の、アジア・太平洋協議会(FAPAC)事務局長も1988年の設立以来兼任し、国内のみならず、アジア太平洋地域の温泉の健康利用と温泉保養地の啓蒙普及に務めている。豊富な海外視
察の経験を活かし、イタリアやイスラエル、ペルー等の保養地を広く雑誌や新聞でPRし、温泉のグローバル化を積極的に進めている。

* 会費 オブザーバー参加の方は、当日会費として1万円をご用意下さい。
* 問い合わせ 
 出欠:編集工房 代表 田中達也 
 電 話:03−6806−6510
 FAX:03−5811−7357

  →参加お申し込みはこちらから

投稿者 lefthand : 20:43 | コメント (0)

2009年1月例会報告

経営ゼミナール新年最初の例会である、第347回定例会が行われましたので、その様子をご報告いたします。
今回は、当ゼミナール代表の山本紀久雄よりお話をさせていただきました。

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今回のテーマは『2009年経営への視座』です。
2009年の景気はどうなるのか。日本は大丈夫か? この答えなき問いに山本代表は、さまざまな視座から果敢に探求を試みました。

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前提認識

まず最初に明確にしておかなければならないことは、今回の金融危機と、日本のバブルを一緒に考えてはならないということです。
今回の金融危機は、金融資産によるものであり、日本のバブルは不動産であったということです。
その違いは何か。
そのひとつは、スピードです。
日本のバブルの場合、その源資となったのは不動産という実物資産でした。
実物資産の回転率は、年度会計の際の減価償却等が回転の基本となりますから、年に1回ということになります。一方、金融資産は、多くの会社が商取引の決済を当月締め翌月払いに設定しているため、60日で回転してしまうのです。ですから、回転率は2カ月になり、年6回の回転周期になる、というわけです。単純に考えれば、金融資産は実物資産の6倍のスピードで回転すると考えられるわけです。このスピードこそが、今回の金融危機が世界に波及した大きな原因のひとつであったのです。

金融グローバル化

アメリカはこれまで、さまざまな政策を行い「アメリカ金融帝国」を築き上げました。
アメリカの実物資産は、1995年=29兆5,000億ドルであったものが、2008年=60兆1,000億ドルに増加しました。それに対し、金融資産は、1995年=63兆9,000億ドルから、2008年=165兆8,000億ドルにまで膨れあがったのです。実物資産=30兆6,000億ドルの増加に対し、金融資産=101兆9,000億ドルの増加です。
この数字を見るだけでも、アメリカがいかに金融資産を中心に、世界からお金がアメリカに集まるシステムを作りあげてきたかがわかります。

アメリカと日本の金融資産の違い

日本の個人金融資産の総額は、1,500兆円あるといわれています。これは、我々が戦後60年かけてコツコツ貯めた貯金です。
これに対し、アメリカは100兆ドル(1京円)。これをわずか13年間で築き上げました。しかもこれは、他人のお金を回転させて儲けたものなのです。
金額で約6倍、期間で約5倍、掛け合わせると約30倍という急激なスピードでの金融資産の形成です。これが突如として吹き飛んだのです。そして、この中身というのが、サブプライムローンだったわけです。

アメリカのこれからの動向

アメリカの経済はいつ復調するのでしょうか。
金融危機の震源となったサブプライムローンの大もとである住宅価格、これの動向をアメリカの消費動向の目安にしてみましょう。すなわち、アメリカの住宅価格がいつ下げ止まるかが、アメリカ経済の復調の目安といえるのです。
このことを予測する資料があります。


『米国の実質住宅価格』表
(クリックすると拡大します)

この表を見ると、アメリカの実質住宅価格は従来、傾向線と呼ばれる基準値を境に緩やかに上下して推移してきています。それが、この度の住宅バブルでは急激に上昇し、最高点(2006年第4四半期)では、傾向線に対し40.2%も上昇したのです。これは明らかに異常です。
住宅価格の推移が、過去の経緯に従って正常に推移するとすれば、今回の価格下落はこの傾向線を下回るまでは止まらないだろうということが予測されます。山本代表は、傾向線比−16%程度まで下がらなければ正常値に戻らないだろうと算出されています。
あと何年かかるか。
このことが、アメリカの消費動向を見る目安になるであろう、ということなのです。

もうひとつ、アメリカの個人消費をみてみましょう。
当然のことながら現在、アメリカの個人消費は冷え込んでいます。それは、カード会社の貸出が厳しくなっているからです。日本人が自ら買い控えをするのとは様子が異なります。
近年のアメリカの個人消費は、もともと過剰消費であったことが、数字からわかります。
アメリカのGDPに対する個人消費率は、2005年の76.5%がピークでした。2007年は75.6%ですので、近年は概ね76%前後で推移しています。ちなみに日本は59%程度だそうです。
一方、1974〜1990年ごろのアメリカの個人消費率の平均は70〜73%でした。とすると、近年は3〜6%程度過剰に消費していたことになります。この上乗せ分が、ちょうど個人消費の過剰債務額に重なるのです。アメリカ人はここ数年、過度に借金してお金を使っていたということなのです。
この過剰消費分が減少し、70〜73%程度に落ち着くことが、アメリカの個人消費安定の目安になるのではないでしょうか。

オバマ政策を注視

アメリカの経済立て直しは、オバマ新大統領の政策如何に関わっていることは説明の余地がないでしょう。これからのオバマ政権の動向に要注目です。

日本の動向

では、日本の経済はこれからどうなるのでしょう。
日経平均株価(ドル建て)の2007年からの推移を見てみますと、ニューヨークの株価の推移とピッタリ一致することがわかります。


『日経平均株価(ドル建て)とNYダウ』表
(クリックすると拡大します)

日本の株価はまさにアメリカと連動しているのです。
日本は、アメリカの株価との連動から抜け出さねばならないと、山本代表はいいます。このことが実現されなければ、今後も日本の景気はアメリカの景気に左右されてしまうのです。
が、これは何も日本だけの問題ではないようです。
世界の主要な市場で、同じように株価は下がっているのです。
この状態から日本がいつ脱皮できるか。
これが、日本の景気回復のカギを握るひとつの指標ではないでしょうか。

これからの日本

日本はこれからどのようにすればよいのでしょうか。
このことについて山本代表は、次のことを提言されました。

(1)狙う地域は新興国、分野は環境対策
(2)資金の配分を適切に…育成すべき産業に重点投資
(3)新興国との関係づくり…親米・入新興国
(4)中小企業は大企業系列からなるべく独立する
(5)日本の文化性を強みにできる企業体質に変化…ドラゴンボールの世界

日本人の強みとは何でしょうか。
日本人は約束を守る、無茶をしない、嘘をつかない、真面目、誠実、善意…。
これらのことが、外国人が評価する日本人であり、日本人の財産であると山本代表は語ります。他のことを受け容れて分析し、応用ができる民族であり、外のものを吸収してコツコツと改善していく能力が、日本の文化なのです。そして、その日本文化の典型が、世界60カ国で親しまれている日本のマンガ『ドラゴンボール』なのです。ドラゴンボールの主人公のように、苦労はするが基本を外さないでコツコツ努力することが、成功を導くのだという道徳を持った私たちの文化性が、世界中で賞賛を受けているのです。このことを私たちの強みとし、企業活動に活かすことが、成功への秘訣ではないでしょうか。
山本代表からそのような示唆をいただいた、今回の例会でした。

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(事務局・田中達也・記)

投稿者 lefthand : 19:16 | コメント (0)

2009年01月25日

2009年3月例会の予定

3月例会は3月16日(月)です。
発表者に、ギリシャご出身のカライスコス・アントニオス氏をお迎えします。
(当初ご案内の2月と3月発表者が交代しております)
テーマは「EUと日本との関係 -ギリシャが日本に期待するものとは-」です。

ギリシャはヨーロッパである、というイメージが一般的ですが、実際の立地条件はバルカン半島の突端で、回りは近東地域(Near East)のバルカン諸国、トルコ、シリア、エジプトなど旧オスマン帝国に囲まれています。
しかし、ギリシャはEUに2001年1月に参加し、ユーロ貨幣を流通させているようにヨーロッパです。
また、ギリシャはアテネ五輪の効果により観光客が増大、中国経済の活況による海運業界の好況、高い個人消費を背景として高い経済成長率を維持してきましたが、今回の金融危機によってEUは大打撃を受け、それはギリシャにも深刻な影響を及ぼしています。
その意味で、ギリシャを知ることはEU全体を把握することに通じます。
3月16日(月)のカライスコス・アントニオス氏にご期待ください。

(講師プロフィール)
1980年生まれ。
2005年アテネ大学法学研究科修士課程修了。
2004年10月、アテネ弁護士会に弁護士として登録
2006年11月より駐日ギリシャ大使館公式通訳・翻訳者
2007年4月より早稲田大学法学部助手
母国語と同等の日本語能力試験1級のほか、英語は教師資格を持ち、ドイツ語とフランス語もこなす有能な人物です。
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投稿者 lefthand : 16:36 | コメント (0)

2009年01月21日

2009年1月20日 オバマ米大統領への打つ手

YAMAMOTO・レター
環境×文化×経済 山本紀久雄
2009年1月20日 オバマ米大統領への打つ手

オバマ米大統領就任

バラク・オバマ第44代米大統領が、20日、約200万人の大観衆が見守るなか、宣誓を行い就任し、次の演説をしました。

「われわれは危機のさなかにある。米国は、暴力と憎悪の根深いネットワークに対する戦争を遂行中だ。また、一部の者の欲望と無責任さの結果であると同時に、われわれ全体が厳しい決断を下し、国家を新たな時代に備えることに失敗したことにより、経済は激しく弱化している。さらには、米国も衰退は不可避であり、次の世代は視点を下げねばならないという、自信喪失もみられる。 
私は本日、こういった挑戦は現実であり、簡単に短期間で解決できるものではないと言いたい。しかし、アメリカよ、これを知って欲しい。これらの問題に応えられるのだ」

オバマ大統領に期待する声

英BBC放送と読売新聞社が実施した「オバマ新政権で米国の対外関係はどうなるか」の、1万7,356人調査をご紹介します。

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「『良くなる』と見ている人は、すべての国で多数を占めた。オバマ氏が、ブッシュ政権時代の『一国主義』から『多国間協調』への転換を掲げていることが、関係改善への期待感につながっているようだ。『良くなる』との答えは日本では48%で17か国中2番目に低く、『変わらない』37%は最高だった。『良くなる』はドイツ78%、フランス76%など、ブッシュ政権下でのイラク戦争への対応で、対米関係がぎくしゃくした欧州諸国で高かった」 (読売新聞2009.1.20)

各国の回答結果は困窮度を示す

欧州三国が調査結果の上位を占めました。これをどう理解するか。どうもこの結果は、米国発金融危機の影響で困窮度が強い国、つまり、米国より困っている国が、より多くオバマ新政権に期待しているのではないかと推測いたします。
それを証明するのが、1月19日に発表された英国大手銀行「ロイアル・バンク・オブ・スコットランド(RBS)」の損失です。2008年通期の最終赤字が280億ポンド(約3兆7,000億円)で過去最大となりました。
常識的には、米ウォール街が最も影響を受けたと考えますが、実は違うのです。ニューヨークの世界最大級銀行シティグループは、2008年通期で187億ドル(約1兆7,000億円)の赤字ですから、RBSはシティを2兆円も上回る損失です。多分、銀行では世界一の赤字でしょう。
これを受け、英国のブラウン首相が「米サブプライム関連商品の約半分は欧州の金融機関が抱える」と発言しましたが、この背景には「米景気の悪化が欧州銀行の不良債権の増加に直結する」という意味が入っています。
つまり、自国では解決しようにもできない他国の景気悪化により、自国の銀行が損失を増やし、金融が傷つく結果、国家が銀行に公的資金を投入せざるを得なくなり、それが国債の増発につながっていくのですから大変で、この困窮度の強い国順に、上図が並んでいると理解しています。

どうして米国発なのに欧州の困窮度が高いのか

その最大理由は、金融危機の発端となった「新種の金融商品」が、欧州金融業界が開発したものではない、つまり、米国から「新種の金融商品」を輸入し、それを国内の投資家・金融機関に販売したことにあります。
という意味は、米国でサブプライムローンが問題だという兆しが表れた時に、素早い初動動作をとれず、米国での換金処分の動きにも遅れ、気づいて慌てて換金処分をしようとした時には、すでに広く「破綻リスク」が広がっていたので、誰も引き受け手はいなく、結果として所有したままとなっているのです。
ですから、この「新種の金融商品」が時間の経過とともに、評価がさらに下がる場合、英国銀行RBSがその事例ですが、評価損を計上し損失となり、資本不足になりますから、国家からの金融支援が必要となってしまうのです。
また、仮に「新種の金融商品」を満期まで保有したとしても、元本保証は難しい上に、価値がゼロという事態も予測されるという、厳しい困窮実態になっているのです。

アメリカ人はあまり感じていない

このことを示しているのは、英BBC放送と読売新聞社調査で「金融危機にオバマ新大統領がどう対応すべきか」を聞いたところ、17か国すべてで「最優先で取り組むべきだ」との意見が大多数でしたが、国別では中国が最高の93%に達し、日本は77%であるのに対し、米国は75%という回答結果なのです。
つまり、米国は金融危機の発端国ではあるが、他国よりは問題意識が低いということで、これは一見奇妙な現象と思えますが、現実の国別困窮度から考えれば頷けるのです。

日本のバブルとの違い

次に、もうひとつ考えてみたいことがあります。それは日本のバブルとの違いです。今回の米国サブプライムローンから発した金融危機は、あっという間に世界中に同時経済停滞という事態を招きました。
一方、日本のバブルは、その絶頂期でも世界に波及しませんでした。同じく不動産から発したバブルでありながら、米国は世界中へ、日本は国内だけにとどまりました。
この理由としてあげられるのは、日本は不動産という実物バブルだったのに対し、米国は住宅という不動産ではあるものの、それを証券化した、つまり、お金化したことです。
実物の不動産は国から国へ移動できません。現在地を変化させられません。しかし、その不動産の価値を証券化し、それを細分化し、株式のように売りやすくしてしまえば、それは実物のモノではあるが、新型の流通する証券・お金として回流させられるのです。

お金はモノより「はやい」

これにウォール街が考えつきました。実物の不動産を流通化させるためには証券化することだ、そうすればお金の流通と同じになると気づき、そこに金融工学とIT技術を加えて仕組みを構築したのです。つまり、証券化というお金にすれば、実物の移動とは比較にならないスピードで動く、お金の「はやさ」を活用したのです。
また、そのお金も米国人のお金だけではなく、外国からお金を取り込むというシステムをつくり、その米国に入ってきたお金をさらに他国に投資するという仕組みにしたこと、これが米国金融帝国化といわれる所以です。
この仕組みづくりには、お金の動きはモノとは比較にならない「はやさ」がある、ということをつかむことが重要です。このお金の「はやさ」を分からないと、今回の金融危機の背景はなかなか理解できないと思います。なお、日本人はモノづくりに優れている反面、お金の「はやさ」ということへの理解が一般的に薄いのが特徴です。

オバマ新大統領打つ手はお金の「はやさ」

オバマ新大統領が打つであろう、金融危機経済問題対策は大規模な公共事業です。この投資配分が適切であればあるほど、お金という特徴の「はやさ」が効いてくるはずで、その結果、米国経済の意外に「はやい」立ち直りを期待したい気持ちでいっぱいです。以上。

(2月のプログラム)

2月13日(金)16時   渋谷山本時流塾(会場)東邦地形社ビル会議室
2月13日(金)14時 温泉フォーラム研究会(会場)上野・東京文化会館
2月16日(月)18時経営ゼミナール例会(会場)皇居和田蔵門前銀行会館
2月18日(水)18時30分 山岡鉄舟研究会(会場)上野・東京文化会館

投稿者 lefthand : 20:29 | コメント (0)

2009年01月06日

2009年1月5日 基本を踏み条件変化に対応する

YAMAMOTO・レター
環境×文化×経済 山本紀久雄

2009年1月5日 基本を踏み条件変化に対応する

明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。

オールドマンパー

球聖と言われたボビー・ジョーンズ(Bobby Jones 1902-71)が語っています。
「ゴルフは、誰かに対してプレーするものではなく、何かに対してするものであるということに気づかなかったら、わたしはメジャー選手権に勝つことなどなかったろう。そう言っても決して間違いではないと思う。何かというのはパーのことだが・・・」
さらに続けて「そのことを学ぶまでには長い時間がかかって、ずいぶん悩んだものだ」と語り、目の前の対戦相手に惑わされずに冷静にプレーするために、OLD MAN PARオールドマンパーおじさんという架空の人物を考え、ゴルフは誰かに勝つためのスポーツではなく「各ホールのパー」言い換えれば自分自身との闘いであると定義しました。

トヨタが赤字決算見込みに

トヨタ自動車は昨年12月22日に連結決算見込みを発表し、売上21兆5,000億円の企業グループであるにもかかわらず、営業利益では1,500億円の赤字見込みとしました。最終的な純利益は500億円の黒字ですが、世界を代表する超優良企業のトヨタ自動車が、営業利益段階で赤字に没落したショックが世界中を走りました。
赤字要因の7割が売上減による影響で、残りが為替変動の要因であると明快ですが、今回の金融危機問題の重大さを再認識させ、世界経済への危惧をさらに深めさせました。

年末から正月の経済報道

これを追いかけるように、暮れから正月の経済関係報道は、懸念一色です。
「日本経済は08年、ほぼ6年ぶりの景気後退に陥り、経済規模が縮小した。年前半は原油高の重圧にあえぎ、後半は米国発の金融危機に伴う実体経済の悪化が深刻さを増した」(日経新聞08.12.30)
「金融危機の影響で、外資による国内企業買収や日本法人の設立といった対日直接投資に急ブレーキがかかっている。2008年4月〜10月の直接投資額は前年同期に比べ約4割減少し、08年度は03年度以来5年ぶりに前年実績を下回る見通しとなった。資金面での余力が急減し、リスク低減を迫られる海外勢が、自国を中心に内向きの投資に傾いているのが背景。今後は事業撤退や出資引き揚げも増えそうで、資本流入の縮小は雇用など実体経済の悪化に拍車をかける恐れがある」(日経新聞08.12.30)
テレビニュースでは、派遣契約の打ち切りなどで仕事や住居を失い、東京・日比谷公園の「年越し派遣村」に支援を求めて集まった人たちに対し、公園に近い厚生労働省庁舎内の講堂を宿泊用に開放し、そこに入った人々が「数日間何も食べていない」「昨日は野宿した。寒くて寝られなかった」などと語り、配給された温かいうどんを食べている風景が映され、国内経済に一層の憂慮感をもたらしました。

アメリカは対応策に困っている

どうしてこのような経済状況に変化したのか。それはアメリカ発の金融危機問題によって起こったことで、これはすべての人が理解しています。
ですから、アメリカから世界に向かって何か「お詫び」と言えるような、メッセージがあってもよいだろうと思いますが、これまで明確な言動がなされた気配はありません。
昨年12月18日に「米新政権と日米同盟の課題」シンポジウムが開催され出席しました。ハーバード大教授ジョセフ・ナイ氏、元米大統領補佐官マイケル・グリーン氏など5名のアメリカ政府要人に対し、谷内前外務事務次官と西原前防衛大学校長が質問するスタイルの展開でした。活発な議論がなされ「日米間でハイレベルな戦略対話が必要」「日本が国際社会に強力な影響力をもつことが重要だ」というような提案がなされましたが、ここで不思議に感じたことは経済問題について誰も敷衍(ふえん)しなかったことです。
政治問題が討論のメイン課題とはいえ、現在世界中で大問題となり、経済停滞を起こしている要因はアメリカで、そのアメリカ政治に関与している著名要人たちですから、何らかの「背景説明やお詫び」的な発言があると思っていましたが、全くありません。
何故なかったのか。推測すれば、多分、問題要因について責任を感じていないか、または、問題が大きすぎて簡単に解決つかないので触れようがなかった。この二つだと思います。

ユーロは基軸通貨になれるか

元旦にスロバキアがユーロを導入し、これでユーロ圏は16カ国になりました。欧州単一通貨であるユーロは、1999年1月に11カ国からスタートし、その2年後にギリシャが、続いてスロベニア、キプロス、マルタが導入し、今回スロバキアです。
このユーロ、今回の金融危機によって、世界基軸通貨であるドルの信認が問われ、それに代わる通貨として論じられていますが、ユーロ圏の実態はどうなのでしょうか。
結論的には、ユーロは基軸通貨にはなり得ない実態と思います。そのひとつの証明がギリシャの暴動です。ギリシャでは昨年12月6日、15歳の少年が警官に射殺されたことから、全国で暴動が発生し被害が広がっています。この暴動の発生要因について、ギリシャ・アテネ在住の知人に連絡をとり、日本在住ギリシャ人の方に状況をお聞きし、加えて昨年ギリシャを訪問した経験から、次の見解を持つに至りました。
「最初の発端は、若者グループに投石された警官が、少年を撃ち殺したことから始まったのは事実で、これがメールや、口で伝えられ、学生が暴動を起こし、この騒ぎに乗じ、外国人やテロリストや政党関係者などが、商店や車に放火し破壊に加わった。
この背景には経済問題がある。若者は毎年、大学新卒の半数が就職できない厳しさで、アルバイトなどをして生活して『700ユーロ世代』と呼ばれ、月収が700ユーロ(8万5千円)ほどで不満がたまっている。さらに、ユーロ導入とオリンピック開催により、外国人観光客が急増して物価が一気に上がり、期待したオリンピック景気でもギリシャ国内産業が育たず、加えて、ギリシャ特有の官僚主義や汚職によって、外資に対して融通が利かず、手続きが複雑で時間がかかるので、外国企業が入って来にくい」
ユーロ導入以後7年経つギリシャが、このように社会的安定を欠く実態では、米ドルに代わってユーロが世界の基軸通貨になることは難しいのです。ですから、アメリカ自身による金融危機対策を見つめ、その情勢変化に対応することしか方法はありません。

トヨタは生産方式を変えたわけでない

トヨタが営業利益段階で赤字見込みになったことは、社会に大きな影響を与え、これを持っていろいろトヨタを詮索する声も聞かれます。だが、この赤字見込みはトヨタが生産規模を減らしたから発生したのです。では、どうして生産台数を減少させたのか。それは世界中の自動車売上が金融危機で落ちたからであって、当然の決定です。
つまり、市場の実態に合わせたのです。市場に合わせなかったらどうなるでしょうか。在庫の山になるでしょうし、経営は滅茶苦茶になります。ということは、トヨタは市場の条件変化に対応した適切な経営手段を採ったことになり、赤字という結果は市場対応したという証明であって、トヨタ経営の基本である「カンバン方式」などの生産スタイルを変えたわけではありません。ここが大事なポイントです。
 
ゴルフのパー

我々の生き方も同じだと思います。時代の変化に対応しなければ、適切な生き方はできません。しかし、自らが持っている生き方指針までを変えてはならないと思います。
ゴルフのパーは、雨でも雪でも嵐でも晴天の日でもいつも同じです。ただし、気象条件によって攻め方を変えてプレーをします。
これと同じです。金融危機から発した世界規模の経済低迷事態に、迅速・的確に対応していくことが、企業にも一般の人々にも求められていますが、適切である経営方針や、妥当な生き方指針は変えるべきでない。そのところの区別と整理が大事です。金融危機に翻弄されるのではなく、基本を踏み条件変化に対応することが必要と思います。 以上。

(1月のプログラム)

1月 9日(金)16時   渋谷山本時流塾(会場)東邦地形社ビル会議室
1月14日(水)18時30分 山岡鉄舟研究会(会場)上野・東京文化会館
1月16日(金)14時 温泉フォーラム研究会(会場)上野・東京文化会館
1月19日(月)18時経営ゼミナール例会(会場)皇居和田蔵門前銀行会館

投稿者 lefthand : 14:39 | コメント (0)

2009年01月01日

2009年 新年のごあいさつ

謹賀新年 本年もよろしくお願い申し上げます

投稿者 lefthand : 18:27 | コメント (0)