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2006年09月30日

10月例会のご案内

経営ゼミナール2006年10月定例会(322回)ご案内

10月の例会は、10月23日(月)に開催いたします。
10月は第4週の月曜日開催となります。

 講師は、不動産鑑定士 村松喜平氏をお迎えいたします。

1.日時 平成18年10月23日(月)
     *第4月曜日の開催となります。ご注意願います。
     6時集合(食事を用意しています)
     6時15分より山本紀久雄代表の時流講話
     経営ゼミナ-ルは6時半開始8時半終了予定

2.場所 東京銀行協会ビル内 銀行倶楽部 4階3号会議室
     千代田区丸の内1-3-1 Tel:03-5252-3791
     東京駅丸の内北口より徒歩5分(皇居和田倉門前)

3.テーマと講師
    「会社の整理と再生」 不動産鑑定士 村松喜平氏

4.出欠のご連絡
  例会参加申し込みページよりご連絡ください。
  http://www.keiei-semi.jp/zemi_reikai.htm


* 会 費 オブザーバー参加の方は、当日会費として1万円をご用意下さい。
* 問い合わせ
  出 欠:編集工房 代表 田中達也
  電 話:048-229-2122
  FAX:048-473-7293
  ※9月、10月は金子がニューヨーク出張のため、お問い合わせは田中まで
   お願いします。

投稿者 lefthand : 09:47 | コメント (0)

11月例会の予告

11月の例会は、11月27日(月)に開催いたします。
講師は、イムラ封筒監査役 北川宏廸氏をお迎えし
「『ゼロ金利解除』について考える
  −『ゼロ金利』と『量的緩和策』はまったく別物−」
という、約6年ぶりに行われた経済政策についてレクチャーしていただきます。
小泉内閣5年間の財政構造改革を、金融面から支えてきた日銀の「ゼロ金利」と「量的緩和策」につきまして、詳しく解説していただく予定です。

投稿者 lefthand : 09:30 | コメント (0)

9月のワンポイントレッスン

ワイポイントレッスン 2006年9月14日
「最新の中東情勢・2006年レバノン戦争」 重信メイ氏

昨年に続いて重信メイ氏からレバノン情勢について発表いただいた。
特に、今回は7月11日のイスラエルによるレバノン・ベイルート国際空港への空爆から始まった戦争、それ以後もイスラエルによるベイルート市街への空爆と、イスラエル地上部隊のレバノン侵攻、国連施設への爆撃と民間ビルへの爆撃による死傷者の発生など、8月14日の停戦発効まで戦争は続いた。

今回のレバノン侵攻はレバノン軍に対するものではなく、ヒズボラという重信メイ氏の解説によると政治団体、つまり一つの政党に対する戦いをイスラエルが行ったわけであった。また、その発端は、イスラエル国境警備兵二名をヒズボラが拉致したということからであったが、これについても真相は拉致でなく、戦争状態では常に発生する捕虜ということであり、この二人を理由に突如イスラエルが、レバノン・ベイルート国際空港への空爆を行ったことは許されない、ということから始まった。発表については記録を見ていただきたい。

重信メイ氏はパレスチナ難民キャンプで生まれ育ったわけであるから、当たり前のことであるが、アラビア文字を持って書き話し、英語についても同様である。母の重信房子の逮捕によって日本国籍を始めて取得でき、日本に帰国できたという事情から、重信メイ氏の手許資料はアラビア文字と英語で書かれている。しかし、ゼミ参加者に配布された資料は日本語である。つまり、重信メイ氏は三ヶ国語を話し書くことが出来る。

重信メイ氏の情報収集は、中東の衛生テレビアルジャズィーラであって、これを毎日ウォッチングしている。言葉に不自由ないのであるから、日本人の現地派遣新聞記者が、現地人に現地の新聞を翻訳してもらって、そこから編集し日本に情報発信するのとは全く異なる。日々発生する新しい情報が重信メイ氏の手許に集積されていく。
ということは重信メイ氏の発表内容は、個々の事実の積み重ねから分析整理したもので論理を積み上げているのである。
一般的に行われやすいのは、ある仮説でもってストーリーをつくりあげ、そこに当てはまる材料を集めるという情報収集手段を採る。この場合は結論が先に決まっていて、このような論理展開を行っている事例が通常多くみられるが、重信メイ氏の情報収集の実態を見聞きし、個々の事実の積み重ねから分析整理することの重要性、そのことをした改めて認識させられたゼミであった。以上。

投稿者 lefthand : 09:00 | コメント (0)

2006年09月22日

2006年9月20日 新時代の競争とは

環境×文化×経済 山本紀久雄
2006年9月20日 新時代の競争とは

ピアノコンサート

近所のカトリック教会が経営している幼稚園を卒園し、現在、イタリア・フィレンツェ在住のピアニスト、五月女慧さんをお迎えし、町内自治会主催の教会内コンサートが開かれました。

幼児よりピアニストを目指し、この町に九歳まで住み、フランスで国立高等音楽院を卒業し、その後フィレンツェで研鑽を積み、イタリアを中心にしてヨーロッパ各地で活躍している五月女慧さん。幼い頃よく見かけた、見覚えのある皇太子妃雅子様似の笑顔が、一段と落ち着き、重厚さを加え、譜面なしで一気にショパンからバッハ、モーツアルトと弾いていきます。さすがに一流のプロは違うと感じ入りました。身体から音を生み出していると感じました。
曲の合間に幼稚園時代の思い出「幼い頃に通ったこの教会、多分、大きくなって見たら小さく感じられると思っていたが、今日久し振りに来て見て、昔のイメージ通りで大きく、また、園長先生のお話が長いとき、教会天井のモザイク模様の十字星印を数えていたが、覚えていた数どおりであることを確認でき、懐かしさで感動した」と語りました。
一般的には、幼いときの印象を大人になって確認してみると、大きく異なることが多いのですが、五月女慧さんは幼いときの観察と、今回、改めて確認した内容が同じであったということ、つまり、大人になってから感じる感覚を幼児時に既に持っていたのです。

ハンマー投げの室伏選手

今年になって世界の各大会で負け知らずで、優勝が続いているハンマー投げの室伏選手が次のように語っています。「ハンマー投げはフォームで覚えるものじゃなく感覚です。感覚はつねに新しくしていかないと先がありません。結果が出たときのフォームを守る発想はハンマー投げにはないですね」と。
一般的に、多くの人は、仕事ということを決められたルール、定められた手順でするものと理解し、実行しているのではないでしょうか。マクドナルドの応対手順のようにある一定の社内基準があって、それに基づいて眼の前の仕事をこなしていく。これを仕事と思っているのではないでしょうか。
これも確かに仕事をしているということに当てはまりますし、そうすべき業務も多いと思います。しかし、このような仕事の癖をつけると、何かトラブルが発生したとき、その問題解決に当たっても、決められたルールがないかと、それらを求めていくことになりやすいと思います。手順、ルールというものは過去に発生し、過去に処理してうまく行ったものを整理したもので作成されている事例が多く、そのマニュアルどおり動くことが仕事であると思い込んでいます。また、このような姿勢で仕事するのは、大きな変化のない時代では、的確で妥当な仕事振りとして評価されたと思います。
ところが、時代はバブル崩壊があって、もはやバブル崩壊後と言えない新展開の時代環境になってきています。バブル以前とも、バブル崩壊以後と異なる時代環境になっているのです。つまり、今までの経験やルールでは適応できなくなるケースが多くなっているのです。過去の成功体験、問題体験から作り上げた手順・ルールというものが、現実に合わなくなっているのです。
とすると、今の時代と環境に合致させた手順・ルール、それを作り直さなければならないと考えるか。いや違う。新しい時代は未知の実態に踏み込むのだから、自らの感覚を磨いて、どのような事態にも対処できるようにしておくことで対応すべきか。
これに対する答えが冒頭の室伏選手の発言であると思います。即ち、感覚を磨いておくことが、新しい時代への仕事対応力であると、室伏選手は主張しているのです。

小泉政権を引き継ぐ安倍政権

今日20日、第二十一代自民党総裁に安倍晋三氏が選ばれました。安倍政権誕生です。安倍氏は小泉首相の改革路線を継承すると言明しています。ということは小泉政権が何を目指していたのか、ということを一度振り返ってみることが必要と思います。
2001年5月7日の小泉首相初の所信表明演説では、次の三つを述べました。
1. 不良債権最終処理、2.財政構造改革、3.競争的な経済システム整備でした。
このうち「不良債権最終処理」はメドがつき、「財政構造改革」は2006年の骨太方針で、2011年度でプライマリーバランスを採ると決定され、その方策として歳出のカット額配分も決められました。
そうすると三つ目の「競争的な経済システム整備」、つまり、「21世紀にふさわしい競争政策の確立」に重点配分され、そこへ主役が今後移っていくことになると思います。
その視点から最近の動きを見てみると、西武鉄道やライブドアによる証券取引法違反摘発事件、鋼鉄製橋梁工事や防衛施設庁工事をめぐる入札談合事件、水谷建設事件と村上ファンド問題、いずれも競争や透明性を追及する一連の流れが目につきます。
先日、アメリカからやってきて、日本で長いこと企業経営をしている社長が述懐していましたが、アメリカより日本のほうが順法精神で劣るというのです。新しい企業が既存業界に参入しようとすると、何々業界組合という存在が出てきて、日本は「和の国」だから仲良くやろう、そこで工事受注も皆が順番に受けられるようにしたい。つまり、談合に参加するようにと堂々と説明に来るのだそうです。アメリカではとても考えられない日本が持っている当たり前の商習慣だそうです。
つまり、既存組織が持つ利益、それを守って維持して生きていこうとする傾向、それが日本では強いのだ、ということを厳しく指摘していました。

競争という意味の理解

前号のレターで小林慶一郎氏(独立行政法人経済産業研究所)の見解「構造改革の継承とは、市場経済システムとは豊かさを得るための手段として考えるのでなく、政治が目指すべき目的と考えることである。小泉首相はおそらく戦後史上初めて、市場経済システムそのものを政治が目指すべき目的価値であると暗黙に宣言した首相だった」とご紹介しました。この市場経済システムを健全に安定させることが政治目的ならば、それは自由な競争が前提となります。自由を制限することは、市場経済ではなく、管理された市場経済となり、そこには競争原理が働かなくなります。競争が自由に行われる社会、それがあって健全な市場経済システムが成り立つのです。
では、ここでいう競争という意味とは何でしょうか。オリンピックの100メートル競走やマラソンのように、特別に鍛え上げた優れた身体を持った人間間の競争なのでしょうか。いやそうではなく、今の時代の競争とは「違いを創る」ことなのだと、東大教授の
岩井克人氏が次のように述べています。(日経新聞 経済教室 2005.8.29)
「かつての産業資本主義時代においては、農村に過剰な人口が存在したので、会社は都会に大量に流失してくる人々をいくらでも安い賃金で雇えたから、製造コストは低く抑えられ利益が上がった。しかし、20世紀の後半、先進資本主義国に異変が起こり、農村からの人口流出が止まり、都会で働く労働者の賃金があれよあれよと上がり始め、その結果、収入と費用の差が縮まり、かつての産業資本主義は終焉し、ポスト産業資本主義となった」
では、ポスト産業資本主義の現在はどうすれば利益が得られるか。岩井教授は続けます。
「利潤とは収入と費用の違いである。他社と同じ製品しか作れないなら、異なった技術を導入して費用を下げなければならない。他社と同じ技術しか使えなければ、異なった製品を作って収入を高めなければならない」と、更に続けて「会社は横並びの大量生産を止め、違いを意識的に創っていかなければ利潤を生むことが出来ない。カネ持ちであることは、違いを他より早く生み出すことの結果でしかない」と結論づけしています。
当たり前のことを説明しているようですが、ここが重要なポイントなのです。違いを創るためにはどうするか。それは「ヒト」の能力や知識を利潤の源泉にせざるを得なくなっているという事実を指摘しているのです。脳細胞からしか利益は生じないという意味です。

美しい国へ

安倍新自民党総裁の著書「美しい国へ」に「既得権益を持つ者が得するのでなく、フェアな競争がおこなわれ、それが正当に評価される社会」にするのが構造改革であると記されています。これは小泉首相初の所信表明演説の三点目「競争的な経済システム整備」を継承する宣言であり、競争とは岩井教授の「違いを創る」ことを意味し、そのためには
五月女慧さんと室伏選手が示した自らの時代感覚を磨くことが前提要件と思います。以上。
(10月5日レターは、ニューヨークぬりえ展参加のため休刊となります)

投稿者 Master : 06:47 | コメント (0)

2006年09月05日

2006年9月5日 小泉政権後の改革時流

環境×文化×経済 山本紀久雄
2006年9月5日 小泉政権後の改革時流

新しい時流
日本は明治維新と第二次世界大戦によって大混乱を経験すると同時に、その前後でガラッと思想が変わりました。江戸時代の東洋思想が明治以降は西洋思想に変わり、第二次世界大戦までの軍国主義が戦後は民主主義に変わりました。

今の時代もこれと同じような思想変化をしていると思います。新しい時代が来ていることを分かっている人には、新しい思想が分かっている。だが、新しい時代が来ていることを認識していない人には、新しい時代思想が分からない。という思想格差が発生しています。何を想い、何を大事にするか。時流を見誤ってはいけないと思います。

ペルーへ新婚旅行
水道局から連絡があり、先日、水道メーター前後に使用されている鉛給水管を、ステンレス管に取り替える工事が行われました。朝一番の工事で、興味があったので工事を見学していたら、女性の現場監督が来て、工事担当者と雑談している中で、この女性が近々結婚するらしく、新婚旅行にペルーへ行くということが分かりました。
ペルーに新婚旅行として行く理由は「このチャンスでないと今後行けないから」というものでした。ペルーは遠く、簡単には行けないので、新婚旅行という一大セレモニーの際に思い切っていく、という意味です。
そこで、ペルーに行ったことのある体験者として、ペルー旅行の懸念事項を話しました。一つはナスカの地上絵を見るためのセスナ機は、急旋回するので大体の人が飛行機酔いをすること。もう一つは高度3000メートル以上の高地に一挙に行くので、多くの人が高山病になること。特に高山病になると、ひどい風邪を引いた状態と同じく、食事は出来ず、下痢が激しく、歩くのもつらく、観光バスの中に座ったままでツアー行程を過ごすだけ、という最悪の状況で楽しい新婚気分は吹っ飛ぶことになってしまう。
この間、女性現場監督の目と顔が徐々に変わっていき、工事中なのにその場からいなくなりました。多分、婚約者に電話するために消えたと推測しました。

ぬりえの心理
この夏は、暑い日が続く中、早朝と午前中の机に向かい「ぬりえの心理」を書き上げました。昨年出版した「ぬりえ文化」は「入門ガイド編」、今回の「ぬりえの心理」は「中級編」の位置づけとし、ぬりえに関係する各立場、子ども、親、出版社、販売者、ぬりえブックなどの立場から読みやすいエッセー風に心理分析を行いました。書き方は擬人化法を採り入れ、各章ごとに解説としてのコラムも入れ、英文にして世界にも発信するので、内容は日本だけにとらわれず、世界各地の実態から編集構成しました。
この「ぬりえの心理」を書くため、多くの心理学の研究専門書を読みました。その結果、明確に分かったことがあります。それは、人間とは潜在意識が行動を決めていくということです。大人になった人間が示す好き嫌い、わがまま、頑固さ、柔らかさなどの個人的性格は、幼少期に形成され、それが潜在意識として脳の奥底に刻み込まれていて、顕在意識が働いていないとき、つまり、無意識下のときは潜在意識によって行動していることが分かりました。
また、大人であることの特徴は「幼少期時代を忘れる」こととも分かりました。すべての人が幼少期時代を過ごしてきたのに、すべての人が幼少期時代を忘れています。忘れることが大人になる第一歩なのです。だから大人になって幼少期時代の心理を思い出そうとしても、特別で特殊なこと以外は浮かんでこないのです。つまり、自分が幼少期時代に、どのような心理で日常過ごしてきたかということ、それを大人は忘れて行動しているのです。
しかし、今生きていている行動の原点に、幼少期の体験が存在しているということは事実ですから、幼少期にどのような教育と環境で育てられたかが、大人の行動を決めている重要なファクターなのです。親の育て方が、子どもの将来の生き方適否妥当性、それに大きく影響させています。幼少期は遊びが人生ですから、親が与える遊び玩具に影響を受けます。その遊び一つとしてのぬりえが位置づけられます。高がぬりえですが、されどぬりえです。

小泉首相
小泉首相が今月で任期を終えます。政権末期でありながら「指導力がある」と支持する人が41%(直近日経新聞社調査)という実態です。
この小泉首相五年半の政治について、このところ各立場から分析し論評することが多く行われています。小泉首相は自らの政治行動を多弁に解説調で語ることは少なく、加えて、言葉のセンテンスが短いので、論評しようとする識者が取る方法は、小泉首相を観察するしかありません。小泉首相の行動結果を観察し、観察した後に小泉さんは「このような考え」ではないかと推測することになります。小泉首相も人間ですから、すべての人と同じように幼少期時代に潜在意識が形成されています。顕在意識で行動していないときは、無意識下の行動になりますから、潜在意識が表面化するのは当然です。
特に人が追い詰められ、危機に陥ったときは、その人の潜在意識が如実に出ます。小泉首相の最大の危機は郵政民営化が参議院で否決されたときでした。そのとき採った行動は「郵政解散」でした。解散という首相としての最高権限の行使、様々な異論が噴出しましたが決断しました。それを論理的に考察して採った行動と見るか、潜在意識が大きく影響して決断したと考えるか、それは意見が分かれるところですが、一般的には小泉首相の蛮勇とも言われているほどですから、通常の感覚ではなしえない政治行動だったのでしょう。ということは小泉首相が持つ人間としての基礎力、理屈でなく感性とも言える本音の人間力、そこから決断した結果と思いますが、これは潜在意識が影響したと考えたいと思います。

小泉政治の改革目的
バブル崩壊の始まりである地価の下落は15年前。1991年は土地神話が崩れた年でした。それから長いこと日本経済は低迷に喘ぎ、日本は終わりの時代を迎えたとも、衰亡化への足音が迫ってきたとも、某国のトップからは「日本はなくなる」とも発言され、悔しい思いをしたこともありましたが、今は、政府の月例経済報告で「デフレ」という表現が削除され、企業業績もバブル期を超え、銀行の不良債権の処理も進み、雇用も改善に向かい、税収も増加し、全国の公示地価が取引価格を加味した加重平均で15年ぶりに上昇に転じました。
日本経済は「もはやバブル後でない」言え、この状況をつくり出したのは小泉首相のリーダーシップであると、素直に評価すべきと思います。しかし、一方で、格差の拡大や不均衡問題を指摘する声、つまり、構造改革路線の修正を求める意見も大きくあります。
小泉首相は次の首相に「構造改革の継承」を条件として求めています。この「構造改革の継承」とは何を意味するのか。それについて小林慶一郎氏(独立行政法人経済産業研究所)の見解をご紹介したいと思います。
「結論を述べれば構造改革の継承とは、市場経済システムとは豊かさを得るための手段として考えるのでなく、政治が目指すべき目的と考えることである。小泉首相はおそらく戦後史上初めて、市場経済システムそのものを政治が目指すべき目的価値であると暗黙に宣言した首相だった。この立場に立てば、市場経済システムをよりよきものにすることに目的があるのであって、そのために解決しなければならない問題が格差の拡大や不均衡であると捉える必要がある。
多くの政治家は、市場経済システムを単に国を豊かにするため、つまり、カネもうけのための手段と考えている。小泉首相の改革なくして成長なし、というスローガンは経済成長という豊かさよりも、市場経済システムを健全に安定させるということを優先させる姿勢を示している。この姿勢は自由主義をお題目でなく、実質を伴う政治理念として真剣に追求することであり、そのところに歴代政権にない熱烈な支持を国民から受けたのだ」
見事な小泉首相への観察力と敬服します。小泉首相の脳細胞の奥底に、市場経済システムを健全に安定させるためには自由主義でなければならないという強い意識、これは潜在意識とも言うべき分野からの発想と考えますが、それを小林慶一郎氏は見抜き、国民も暗黙に理解し、その結果が「指導力がある」と41%が支持している背景と思います。

目的と手段
ペルーに行くのは目的か手段か。楽しい新婚旅行が目的ならばペルーは条件的に無理があります。小泉首相の改革を継承する次の首相が登場する目的は何か。市場経済システムを健全に安定させるということ、これを手段としてではなく、目的として次期首相も継承すると受け止めるならば、構造改革目的は変化しないという時流を理解する必要があります。以上。

投稿者 Master : 04:56 | コメント (0)