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2007年07月24日

「大転換の日本経済と不動産」

経営ゼミナール ワンポイントレッスン 2007年7月23日
「大転換の日本経済と不動産」
不動産経済アナリスト 西村和芳氏


 西村和芳氏の経営ゼミナールご発表は、1994年以来、今回で六回目を迎えました。経営ゼミナールの常任発表者のお一人です。
 また、西村氏はご発表にあたって、詳細なレジュメ資料をご用意されますが、これは過去のご発表とつながったストーリー性のある内容でございます。
 ですから、過去のご発言内容と、現在の経済実態、その比較が簡単に出来るのです。つまり、これは西村氏の経済予測が現実と整合性があったかどうか、その確認材料になるわけですから、普通の人はなかなか怖くて出来ず、避けるケースが多いと思いますが、西村氏はそのリスクを自ら被ってご発表されました。逆に考えますと、それだけご研究されているということを証明しています。

 さて、ご発表の内容ですが、今年も新しい造語を使われました。例えば「両国国技館現象」「好都合な真実」「世界のフラット化」「TVT」「運用は運よ」など多数です。一つひとつの説明はここでは紙数の関係で出来ませんが、このようなコンパクトで事実関係を表現する力量は並ではありません。経済学理論に基づく分析と、国内外各地の現場感覚から感じ取り発したものです。

 ご発表の結論は「小さなショックが引き金になり、連鎖的な信用収縮が起きる懸念もあるが、先進国の資本と辺境の労働の『幸せな結婚』が継続し、史上空前の世界同時好景気が現出する」というものでした。

 ゼミナールにご参加された方々に、西村氏が最後に質問されましたが、圧倒的にこの見解に同意される実態を目の前にし、過去の日本経済に対する見解とは大きく異なっている感を深くしました。
 多くの方が、日本だけで経済を論ずる時代が終わっていることを正しく認識されているのです。
 そこで、我々のビジネスの基である日本の経済を分析し、実態をつかむ為には、グローバルという視点が絶対要件となっています。
 それもアメリカを中心とした先進国だけでなく、今まで未開拓市場であった発展途上国に中産階級が生れ、そこに大きな需要が発生し、先進国と併せて世界経済を構成しているのですから、今まで以上に洞察力に満ちた検討が必須条件であり、そのことを改めて気づかせられた今回の西村氏ご発表でした。
 今後も継続的なご発表を、西村氏にお願いしたいと思っております。 以上。

投稿者 Master : 19:16 | コメント (0)

2007年07月20日

2007年7月20日 将来の納得

YAMAMOTO・レター
環境×文化×経済 山本紀久雄

2007年7月20日 将来の納得

参議院選挙
 今回の参院選は結果が分かりません。今のところ与党不利の情勢ですが、選挙は終わって見なければ分からない、というのが過去の実績から証明されています。
 今回の参院選争点は年金問題、経済政策、そのたいろいろあり、マスコミで与野党双方が激しい応酬を繰り広げています。
 この中で年金問題の本質を考えてみますと、政治家が国会で決定したことを実行する役目の官僚、その官僚が全く単純な記録計算である年金データ管理を行っていなかった、というところにあります。一般企業では考えられないことです。その上に、莫大な年金運用資金を、大規模保養施設「グリーンピア」をはじめとする無駄なところに投資し使ってきたのです。
 ここから考えると、日本の官僚は優秀だという評価は下せません。責任能力を持ち得ない人材が、大事な国家運営に携わっているという事実と、この官僚を使う政治家を選んだ我々に問題があると認識したいと思います。政治家の選び方が不味かったのです。
 福沢諭吉は衆論、つまり、多数の議論が大事といい、衆論を決める基は智徳の分量にあり、智には私智と公智があり、私智とは物の理を究めてこれに応じる働きをいい、公智はこれを時と所を選んでさらに大きな目的に用いることで、公智が最も大事だと主張しました。
 言い換えますと、私智とは囲碁将棋が上手というような場合、公智とは「社会に大きく貢献する知恵」ということになります。政治家の選び方が不味かったということは、一人一人の公智に問題があったと認識したいと思います。

一人一人がプロになる
1.ミネラルウォーター
 アメリカのソルトレークシティ市は、アメリカ国内で最も良質な水道水を提供しているので、ボトル入りのミネラルウォーターを目の敵にし、ペットボトルは地球温暖化の問題にもつながると、市長がボトル入り飲料水の不買を市職員指示しました。また、カリフォルア州はペットボトルの製造に8セント掛かり、そのリサイクルには18セント掛かるので、ペットボトルの使用規制に入るということから、先日、ニューヨークで知人とミネラルウォーターについて話し合ってみました。
 アメリカのミネラルウォーターは硬水だ、ということを知人は知っています。日本は軟水だということも知っているようです。では、硬水、軟水の区別はどのようにするのか、それはカルシウムの含有量である、では、その含有量はどのくらいかという辺りから、知人の理解は曖昧になってきました。
 硬水・軟水の区別は、水中のカルシウムやマグネシウムの量で表され、WHO(世界保健機関)の定義で、120mg/ℓ以上の水を硬水とします。また、マグネシウムは下剤の成分ともなる硫酸マグネシウムと同様ですから、硬度の高いミネラルウォーターを飲み続けると、旅行者は下痢症を起しやすいということ、続いて、どうしてアメリカは硬水が多く、日本は軟水なのか、というあたりになってきて、とうとう知人はお手上げです。これは国土の形状が影響しているのです。
 人間の体は60~70%が水。水を知らないということは、自分の体を知らないということに通じます。特に、旅行が多い方は最低の水に関する理解を持つことが大事と思います。

2.勤務時間
 長いこと一つの企業に勤務して、先日退社した人と会いました。今まで毎日決められた時間に出社し、定まった時刻に退社していた環境から、その制約がなくなった人です。
 今まで、この人には口癖がありました。平日の昼間、何かの用事でデパート、スポーツ施設などに行くと「暇人がいるものだ」と発言するのです。自分は忙しい身だ。それに反して、このような場所に昼間大勢いる。羨ましい、というよりは、自分の忙しさを誇示する意味の発言でした。ところが、退社してみたら「暇人がいるものだ」と、批判的発言をした人たちと同じ立場になり、ちょっと困惑気味の感情になったところに出会ったのです。
 そこで、少し解説をしました。
 「今までは、自分が決めた時間ではない勤務時間、それに疑問を持たず、そこに合わせる生活をしていた。だが、今は、それがなくなった。つまり、自分で自分の生活勤務時間をつくるときが訪れたのだ。自由という意味は、自分で自分のルールをつくることだ。自分に適切な時間帯を構築することだ」
 「それは分かっているが、どうしたらそれを上手く出来るのか」
 「それへの答えは、自分を知ることしかない」
 「自分を知る?知っているつもりだが」
 「なら、自分の最も相応しい生活する内容構築が出来ているのですね?」
 「それが出来ていないから、戸惑っているのだ」
 「ということは、自分を知らないことですよ」
 つまり、この人は漠然と自分を知っているだけなのです。本当の自分とはどのような存在なのか。それを突き詰めて考えずに来たこと、その結果が今の戸惑いになっているのです。
 もう一歩自分の中味を研究し、自分を冷静につかむこと。それが自分にとっての適切な生活時間設定のキーであるとアドバイスしました。自分に対してプロになることが大事です。

3.オシム監督
 サッカー日本代表監督イビチャ・オシムが「日本人よ!」を出版しました。この中で日本代表が負けた際に評論家がよく口にする「経験不足」、これに対し「人生において、経験は20年間あれば十分だと思う。サッカーではもっと短くなければならない。サッカーにおける経験は一年半あれば十分だというのが私の考えだ」と述べています。考えさせられる内容です。
 また、文芸春秋八月号で「日本人はみなさん、戦術やフォーメーションにものすごく詳しく、4-4-2とか3-5-2といった言葉をよく好んで使います。しかし、どうやったらこのフォーメーションができ、なぜこのフォーメーションにすべきなのか。そのフレーズは知っていても、その裏付けや必然についてしっかり理解していないように思います」と述べています。これにも考えさせられます。
 さらに、「日本人は、あまり責任や原因を明確にしないまま次に進もうとする傾向があるように思います。私は日本人の選手やコーチたちがよく使う言葉で嫌いなものが二つあります。『しょうがない』と『切り換え、切り換え』です。それで全部を誤魔化すことができてしまう」これにもなるほどと思います。
 世界の一流サッカーに伍するためには、「自らを客観的に見通すための視点」を再構築すべきであると、オシム監督は語っているのです。言葉を換えて言えば「一人一人がプロになる」ことが必要で大事なことだと言っているのです。

プリウス「ゼロ排ガス車」として認定
 前号レターで、NYのタクシーがハイブリット車に切り換わることをお伝えしました。
今年のアメリカでトヨタのプリウス販売台数は、25万台から30万台が予測され、日本の昨年実績は7万2千台ですから、アメリカで大きく伸び、その結果、搭載電池生産能力を5割増させると、トヨタが発表するほどです。(日経2007.7.15)
 このようになった要因はいくつもありますが、一つに絞るとすれば、カリフォルニア州の大気資源委員会、ここは電気自動車しか認めていなかったのですが、ここに電気モーターとガソリンエンジンを組み合わせたプリウスを、10年前に認めさせたこと、つまり、プリウスが電気自動車に代わる「ゼロ排ガス車」であると認定を受けたのです。
 認定を受けるために様々な戦術を駆使したと思いますが、基本に「地球環境問題に対応する」という時代方向性から「将来の納得戦略」を持ちえたから、鋭くて、うるさい論客が揃っている大気資源委員会を説得できたと思います。
 今ではトヨタの売上高24兆円、ロシアの国家予算に匹敵する規模になりました。

今の納得をとるか、将来の納得をとるか
 目前に現れる出来事に対し、今の納得をとるか、将来の納得をとるか。参院選にどのような公智で臨むのか。体の基礎部分としての水に関心を向けるのか。自分に最適の生活時間帯設定をどう組み立てるか。オシム監督の指摘内容をどう考え対応するのか。トヨタの将来戦略性から何を学び取り入れるのか。いずれも将来の納得視点から決めたいと思います。

以上。

投稿者 Master : 11:26 | コメント (0)

2007年07月05日

2007年7月5日 経営感覚の前に時代感覚

環境×文化×経済 山本紀久雄

2007年7月5日 経営感覚の前に時代感覚


トヨタと日産の格差

 3月期決算の東証一部上場企業の株主総会が終わりました。特に、今回目立ったのはトヨタと日産の二大自動車企業の格差です。トヨタは役員報酬・賞与枠の40%増の株主総会決議を行ったのに対し、日産は役員賞与ゼロという結果に陥りました。明らかに両社の業績に格差が生じたことを示しています。


ニューヨーク(NY)の街中

 NYは「人種のるつぼ」と呼ばれてきました。この表現を最初に使ったのは、イギリスのユダヤ人作家イスラエル・ザングウィルが、1908年にNYのユダヤ人移民の生活を描いたドラマの題名「人種のるつぼ」(メルティング・ポット)で、そこで「アメリカは神のるつぼ、巨大な溶鉱炉である。そこではヨーロッパのすべての人種が溶け合い、再形成しあっている」と述べたことからでした。しかし、今では、この「人種のるつぼ」という概念ではなく、もっと文化的な多様性をもった「サラダボウル」であるべきだ、というのが現在の支配的な世論となっています。

 確かにそうで、共同体としての地区全体が住民の地理的、文化的ルーツを示すところが目立っています。アイルランド人地区、リトルイタリア、チャイナタウン、ロワー・イーストサイド(ユダヤ人)、アフリカに韓国、さらにプェルトリコ人は飛び地を占拠しているように、一つのNYというサラダボウルに入って、それにドレッシングを入れかき回しても、サラダは元の原型を残しているという姿なのです。

 つまり、溶け合ってはいないが、異民族の相互関係に距離を持ちつつ、同じNYというエリアで生活している。これがアメリカ・NYで生活する基本なのです。


NYのひやりとした関係

 6月はこのNY「サラダボウル」に参りました。街中を歩き、信号に立ち止まり、企業訪問し、家庭に伺い、レストランに座って異種の顔を見回しますと、お互いが一つのNYルールで暮らしてはいるものの、そこに何か「ひやりとした人間感覚」が存在することを感じます。それは情感とも、しっとり感ともいえるものが欠如しているとも言えるのですが、お互いが孤独であるという前提こそが、異種の人間共同生活ルールであるのです。さらに、孤独だから他人の邪魔にならず、だからこそどんな人間ともいっしょに暮らせるのだといった雰囲気も漂っていて、それを黙認しあった者達のみで街が構成されていることが「ひやりとした人間感覚集合体」にさせている要因であると感じます。

 勿論、東京という大都市にも大都会共通の孤独はあります。しかし、東京の孤独は、集まっている人々は日本人として民族は同じで、NYとは全く異なる条件下での孤独です。つまり、言語体系が同じであるから「お互い話せば分かる」という意味での暖かさが、まだ残っていますが、NYではこの分かり合える暖かさの温度が違い、どこか距離感のあるひやりとした人間感覚が、NYの街に漂っているのです。


へそだしルックと大統領選

 しかし、ファッションには敏感です。ここ数年、世界中で女性のへそだしルックが全盛でした。この間のミラノ・パリ・モスクワでも目に付きました。ところが、今回のNYではお腹を殆どの女性が隠しているのです。明らかにファッションの流れが変わったのです。多分、来年は世界中でへそだしルックは消えると思います。人間関係のひやり感は存在しても、ファッションには敏感なのだと改めて感心します。この速さがNYの魅力であり怖さです。いつ何がどのように変化するのか?。加えて、その変化がNYから始まるのです。ちょっとウォッチングを怠ると一瞬にして変わってしまっている、という怖さがあります。

 この変化の速さは、来年11月投票の大統領選にも言えるような気がします。今は、民主・共和両党合わせて20人近い候補が出馬する大混戦となって、両党候補者による討論会が始まっていて、現在の状況では民主党がヒラリー・クリントン、ジョン・エドワーズ、バラク・オバマの三人、共和党はジョン・マケイン、ルドルフ・ジュリアーニ、ミット・ロムニーの三人が強いと言われていますが、これから何が起こるかわからないと思います。ちょっと先の予測はつきませんので、ウォッチングを怠らないことです。


NYのタクシー

 次に、NYのタクシーですが、これは年々綺麗になって、運転手のレベルも上っているような気がします。その上、今や景気絶好調のNYですから、タクシー営業権利金も数千万円するといわれているくらいに上昇しています。

 そのタクシー業界に新しい流れが始まりました。ブルームバーグNY市長が2012年までにタクシーをすべてハイブリッド車に切り替える方針を打ち出しました。地球環境化対策で、温暖化ガスの排出量を三割削減するとの計画を発表しましたが、その一環でタクシーのハイブリット化を進めているのです。まず13,000台のタクシーのうち、来年10月までにハイブリットタクシーを1,000台まで引き上げ、その後は毎年20%ずつ増やして、2012年に全車ハイブリット車にするというものです。

 この動きにレンタカーも続きました。レンタカーの大手ハーツは、来年中にトヨタ自動車のハイブリット社プリウスを3,400台購入すると発表しました。ライバル会社のエイビスも、最近1,000台のプリウスを購入しています。

 これらの動きは、地球環境化対策や業務用ガソリン経費の大幅削減に通じるだけでなく、もっと何かの時代感覚を象徴しているような気がしてなりません。


NYの時代感覚

 さらに、ブルームバーグNY市長は、共和党を離脱し、地球環境化対策で「潮力発電」の試みも始めました。マンハッタン島の東岸を流れるイーストリバーの川底で、タービン六基を使って、世界初の試みを開始しました。この潮力発電とは、ダム建設が必要な水力発電と異なり、自然の潮流を利用するため、生態系に与える影響が少ないといわれ、民間企業によって開始し、既にスーパーと駐車場に電力を供給していて、最終的に8,000所帯への電力供給を計画している意義は大きいと感じ、時代感覚への鋭さを感じます。世界に先駆けて新しい環境対策行政を打ち続けていく。

 もしかしたら大統領選の大穴になるかもしれません。


時代感覚

 先日、ある人から相談を受けました。企業を役職交代退職し、その後いろいろ模索したが「講演家」になろうと思うがどうだろうか、という内容です。自分の方向は自らが決めることですから、積極的に取り組むようお伝えしましたが、一つだけ大事で外してはならない要件を強調しました。それは時代への感覚です。どのようなテーマで講演をするのか、それは自由なのですが、時代と合わない内容では人は聞いてくれないと思います。講演という一つの方法論、それは形として成り立ちますが、時代感覚がないものは人に受け入れられません。話がうまい下手ではなく、人がなるほどと思える内容構築、時代感覚が大事なのです。

 今回、この時代感覚の差がトヨタと日産の業績に現れたと思います。トヨタのハイブリット車が売れていることは日産も熟知しています。ところが、日産からは未だにハイブリット車が発売されていないのです。技術的な問題もあるかもしれませんが、実は損得の関係で日産は発売を見送ってきたのです。トヨタのハイブリット車は一台売るごとに、何万円もの損失が出るといわれています。その損失が発生したとしても、トヨタは地球環境化対策として必要だと、ハイブリット車を発売したのですが、日産は損してまで売ることはしない、という方針を貫きました。この経営に対する意思決定の前提は、トヨタは経営感覚の前に時代への読みを先行させ、日産は時代感覚の読みよりは経営感覚を優先させました。結果は今回の株主総会の決議内容で結果が証明されました。


ブルームバーグ市長 

 NYのブルームバーグ市長は、ハイブリットタクシー導入、潮力発電の試み、さらに、オーナーである情報企業オフィスビルを、先端ハイテク装備し、レキシントン通に完成させ、日本企業が多く見学に行っています。NYの変化が世界に影響を与えます。以上。

投稿者 staff : 21:18 | コメント (0)