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2007年09月23日

10月の例会のご案内

10月の例会は、10月15日(月)に開催いたします。
10月の講師には、株式会社NKS能力開発センターの清水勝氏をお招きして、市場の変化に対応できた企業のケーススタディとしてセブンイレブンを題材に発表していただきます。


 さて、コンビニは市場の動きに敏感な業態ですが、最近の国際線空港のコンビニの人気アイテムをご存知でしょうか?古くからあるもので、皆様もよくご存知のものだと思います。それは、「柿の種」です。スパイシー(ピリッと辛くて)、馴染みのピーナッツも入っているというスナックが海外にはないそうで、日本で食べてみて、気に入ってコンビニで沢山購入していくそうです。

清水勝氏は、関西学院大学で教鞭をとっておられますが、大学人気ナンバーワンの講師でいらっしゃるのです。清水勝氏の講義には、毎回95%超の出席率で学生が集まっているというのです。
 その人気の背景は、何か。それは、市場の変化と同様に移り気な学生のこころを捉える鋭い分析の現代感覚、時代性に溢れた講義の内容にあるのではないでしょうか。
 マーケティングをされた方でしたら、セブンイレブンのことはすでに研究されていることと存じますが、現代の学生にも絶大なる人気の時流を捉えた分析内容を発表していただきますので、ぜひご参加をいただきますようお願い申し上げます。


1. 日時 平成19年10月15日(月)
6時集合(食事を用意しています)
6時15分より山本紀久雄代表の時流講話 
経営ゼミナ-ルは6時半開始8時半終了予定
   

2.場所 東京銀行協会ビル内 銀行倶楽部 4階3号会議室
      千代田区丸の内1-3-1 Tel:03-5252-3791
      東京駅丸の内北口より徒歩5分(皇居和田倉門前)
      アクセス:http://www.kaikan.co.jp/bankersclub/access/access.htm

3.テーマと講師
   「マーケティングと顧客志向~事例セブンイレブンの日米比較」
株式会社NKS能力開発センター委嘱講師
清水 勝氏

略歴
安田生命保険入社:商品課長 マーケティング部次長 三重支社長 群馬支社長
          横浜支社長 新都心総合支社長 
          安田ライフ損保(株)出向 商品業務担当役員 
明治安田損保(株) 顧問 を歴任
 現在:(株)NKS能力開発センター委嘱講師(ファシリテーター)
    関西学院大学非常勤講師(インターンシップ講義担当)
    キャリア・コンサルタント((財)社会経済生産性本部認定) 

10月15日(月)開催の例会に、多くの皆様のご参加をお待ち申し上げます。

投稿者 Master : 11:39 | コメント (0)

2007年11月例会の予定

11月の例会は、11月19日(月)に開催いたします。
 11月の講師には、経営ゼミナールの正会員であります株式会社東邦地形社会長の山本浩二氏をお招きいたします。

 後継者問題は、企業の命運をかける、企業最大のテーマであり、あるいは悩みの種ということもある問題です。多くの中小企業では、世襲させたいのが親の気持ちと思われますが、世襲した場合でも親と息子との間に意見の対立があったり、様々な問題があるものです。
11月は、「私の事業継承」と題しまして、山本浩二氏が後継者問題を考えに考えた結果、世襲とはしなかった対応につきまして、発表していただきます。

11月19日(月)開催の11月例会のご予定をよろしくお願いいたします。

 

投稿者 Master : 11:37 | コメント (0)

「ガラスを通して環境問題を考える・・・興亜硝子社見学」

経営ゼミナール ワンポイントレッスン 2007年9月10日
「ガラスを通して環境問題を考える・・・興亜硝子社見学」
興亜硝子㈱代表取締役社長 出井龍彦氏
 

今回訪問いたしました興亜硝子㈱で、工場見学し、出井社長からレクチャーを賜り、同社が発行されたVIN一号誌をいただきました。
このVIN一号誌の中で出井社長が語られている言葉、それが興亜硝子社のすべてを表現していると思いまして、皆様にご紹介いたします。 


『ここ数年を振り返ると、特に「お得意様との商談」「国際展示会への参加」「上海の工場幹部との打ち合わせ」など海外渡航の機会に恵まれ、「空の旅人」となり、また多くの方々との「一期一会の出会い」がありました。そしてその「旅」や「出会い」のたびに、わずかずつではありますが沸々と心に去来し、濾過され、心の底に凝縮されてきた「ある思い」が形を整えてまいりました。
 それは「ガラスへの深い思い」に他なりません。
 この「ガラスへの我々の思い」は「ガラスのデータベース」のような形で少しずつまとめ、折に触れてお得意様の来訪時などの機会を捉え細々とではありますが紹介させていただいてまいりました。
 折りしも、当冊子の発行により「我々のささやかな思い」である「ガラスの本当の値打ち」を、そして「ガラスの良さ」を、国内のみならず世界の方々にお伝えできる機会を持てることになりました。まだ小さな試みの一歩に過ぎませんが、近い将来大きな喜びに変わるものと確信しています。
 そして「大地の恵み」ともいうべきこの「天然材料」をもっともっと生かせたら、それは真に「ガラスの復権」と呼ぶにふさわしい、新たな時代の息吹となることでしょう。東洋にあって、4000年を超えるガラスという「人類の遺産」を受け継ぎ、生業としてきた私たちの「ささやかな願い」でもあります。
 今や「環境問題」は人類共通の喫緊の課題ですが、この冊子では「ガラス容器」とともにその歴史、またさまざまな分野での活用状況などをご紹介しながら「ガラスへの思い」への共感を高めてゆきたいと考えています』

 出井社長のガラスへの想いがつまった内容であり、このように自らの事業に対する愛情があってこそ、世界の化粧品ガラス容器トップメーカーという実績企業に成長されたと判断いたします。
 すべての行動の原点に、理念・想い・愛情が絶対要件で、これが持続的経営成長への条件であることを改めて認識させられた今回のゼミナールでした。
 なお、VIN一号誌のご要望はゼミナール事務局までご連絡願います。
以上。

投稿者 Master : 11:17 | コメント (0)

2007年09月21日

2007年9月20日 自然の理

環境×文化×経済 山本紀久雄

2007年9月20日 自然の理

サブプライムローン問題

今回のサブプライムローン問題、時間の経過と共に、問題点の解説がマスコミで報道されてきました。まだ片付いていない途中ですが、少し概要を整理してみたいと思います。

米国の住宅ローンには、優良顧客向け融資(プライムローン)と、低所得者やクレジットで支払いが滞ったことのある人達への融資(サブプライムローン)の二種類があり、この融資はいずれも「住宅価格が値上がり・転売する」することを前提にしていました。

しかし、このところ住宅価格が下落し始め、借入れ当初は低金利ですが、三年後には二倍の金利になる等のサブプライムローンの返済が滞り始めました。

サブプライムローン残高は1.3兆ドル(150兆円)で、住宅ローン市場全体では一部にすぎないのですが、これを証券化していることから問題が複雑化しました。

まず、第一にサブプライムローンを原資産として、証券化商品ABS(資産担保証券)が組成され、第二にこれを買い込んだグループがCDO(債務担保証券)という証券化商品を組成し販売し、第三にこれらをヘッジファンドが買い込み、レバレッジの効いた高利回り運用と称し世界中の投資家からお金を集めたのです。

ところが、原点のサブプライムローンが問題化し、第一から第三までのプロセスで損失が発生したのですが、このプロセスのどこでどのくらい損失が発生しているのかが明確でなく、投資家たちが疑心暗鬼になり、損失補てんのために株売りを一斉に行い、日本でも株式が暴落し、欧州では銀行から預金引き出しが相次ぐなど、金融市場が混乱しています。

今から考えてみれば、住宅価格は上下することがあるはずなのに、上昇のみを前提として証券が組成されていたということは、世の中の「自然の理」に反した証券化がシステム商品として世界中に広がったことが、問題の本質と思います。

FRB前議長グリーンスパン氏も、退任直前(2006年1月)まで事の重大さに気づいていなかった、という発言もなされ、今回のサブプライムローンはサプライズです。



安倍首相辞任

9月12日、安倍晋三首相は首相官邸で記者会見し、辞任の意向を表明しました。本人は政策実行力の不足を理由に挙げましたが、与謝野官房長官は健康問題が一因との見方を示しました。一方、日経新聞の田勢康弘コラムニストは、祖父の岸信介元首相が「あれが総理総裁の器でないことだけは私にも分かりますよ」と述べたと記事で明らかにし、首相としての資質問題を指摘する厳しい見解を示していますが、安倍首相の記憶力と読書量は抜群であり、能力的な問題よりは体力的な要因が今回の辞任につながったと考えます。

安倍首相は慶応大病院に入院したままで、病名は機能性胃腸障害ですが、この病名が示すとおり、安倍首相は胃腸が頑健ではなかったようです。かねてから食の細さなどを根拠に、健康不安説がくすぶっていたようで、体が弱い「蒲柳の質」だったと指摘されています。蒲柳とはカワヤナギの異称で、秋が来ると早くに葉が散るところから体質の弱い人のことを表現します。

安倍首相の好きな食べ物は「焼き肉、ラーメン、スイカ」、嫌いな食べ物は「生カキ」です。これは昨年就任時の新聞報道で明らかにされましたが、その際、オャと疑問を持ったことを思い出します。生カキが嫌いということは、間違いなく生カキを食べてお腹を壊したことがあるからです。

何かの機会に生カキを食べ、それが当たったのでしょうが、生カキは新鮮ですと絶対にお腹は壊しません。それは、世界各地のカキ養殖場で数多く食している経験からわかります。しかし、胃腸が弱い人が生カキをよく噛まずに食べると壊す場合が多々あります。

安倍首相の場合、カキに問題があったのか、よく噛まずに食べたのかは分かりませんが、生カキが嫌いということから推測して、この人は胃腸が弱いという印象を持ちました。首相という激務、それをこなすには体の強さが一番大事で必要です。

人間にはその職に「向き不向き」があります。適性です。いくら能力に優れていたとしても、その能力を発揮すべき体力、それも首相という国家最大の権力者としての毎日の行動を支える体力に問題があるとしたら、それは時間軸の経過と共に表象化してくるはずで、それが今回の事例に当てはまると思います。

その根拠として、先日、11年前に安倍さんを診察したことがある日本で著名な医師に出会い、直接お聞きしましたが「体が弱いので激務は無理」との診断を当時下していたというのです。これは、安倍首相自身が自らの体を知っていたという事実です。

結局、安倍首相は自分の体力と、首相の激務との較差に負けたのですが、その較差を知りつつ、首相になったということ、そこが、人間としての「自然の理」に反していたと思います。


国際柔道連盟

国際柔道連盟はリオデジャネイロで開かれた総会で、理事の改選選挙を行った結果、

山下泰裕氏がアルジェリアの人物に61対123の大差で敗れ、執行部から日本人がいないという結果になりました。しかし、新しく会長に就任したマリアス・ビゼール氏(オーストリア)が、議決権を持たない指名理事8人を新たに追加指名し、その中に上村春樹氏が選ばれ、日本人不在という事態は回避されました。

この追加措置は、新会長の「柔道の本家であり、主要なスポンサーや放映権料にかかわる日本を重視」する意向からですが、当初の山下氏排除は、前任の朴容晟会長と新会長が率いる欧州勢との対立からなされたものでした。

山下氏はご存知のように「世界のヤマシタ」ですから、その柔道界での業績は誰しも認めるところですが、そのような人物でも国際柔道連盟の権力争いに巻き込まれ、結果的に再任されなかったのです。どのような権力争いがあったのかは詳しくは分かりませんが、新会長が矢継ぎ早に打ち出した改革案を見ると従来の柔道イメージと大きく変わっています。まず、世界選手権の毎年開催と、2009年から世界を転戦する「8カ国グランプリ」と世界ランキング制度の創設で、これらから考えるとテニスやゴルフなどのメジャースポーツを目指していると思いますし、そのためにマーケティングやテレビ放映に関する専門家を招き、専門部署を新設します。つまり、完全にプロスポーツ化するのです。

日本人の気持ちの中には、加納治五郎が創設した講道館柔道「精力善用、自他共栄」の理想と技術を、広く世界に展開させてきた経緯が記憶として残っています。また、姿三四郎の小説に見られるような「柔能く剛を制す」という理念に対するあこがれが底流にあり、そこから柔道を見つめようとする気持ちが残っています。この考え方から日本の柔道試合ルールはアマチュア規定が残っているのですが、これに対して、新会長の方向性は「商業化の拡大」です。日本人には異論が残る改革ですが、よく考えてみれば、ここまで柔道が国際化したという証明であり、世界の多くの国で柔道が広まったことを示しているので、加納治五郎の目指した国際化は成功したのです。さらに、国際柔道連盟総会で選ばれるという民主的な選挙の結果ですから、受け入れるしかありません。

日本で発祥した柔道が、世界の柔道になったということを理解し、その方向で日本の柔道を変えていかなければならないということ、それは「自然の理」であると思います。


旅館革命

私が代表しております「経営ゼミナール」で講演いただいた法政大学の増田辰弘客員教授に対して、ゼミ正会員の伊豆下賀茂・名門温泉旅館「伊古奈」の女将から質問がなされ、それに対し増田教授が示唆に富んだ結果を月刊「中小企業と組合」で発表してくれました。

「旅館業は今日の図書館に似ている。図書館の側は本を揃えて貸したいが、利用客は静かに本を読む場所が欲しいのである。閲覧室がなく、本を貸すだけの図書館だと殆ど利用客が見込めないのではないか。いつの間にか図書館へのニーズが大きく変化してきた」と。

続いて、「今の旅館は①高度成長時代の、②社員旅行、忘年会の多い会社中心のライフスタイルで、③普段は貧しい粗食しか食べていない、④あまり人から頭など下げられない、⑤ホテルや海外旅行などの選択肢がない時代のビジネスモデルである」と。

日本の旅館の問題点本質を鋭くついていると思います。つまり、時代の変化という本質面からの改革がなされていない業界であるので、時代本質変化に合わせるという「自然の理」に従うしかないといっているのです。


金融証券界、国家最大の責任を負った激務としての首相職、国際化が成功した柔道界、古い体質を遺したままの温泉旅館業界、すべてに通じるセオリーは「自然の理」です。
以上。

投稿者 staff : 23:19 | コメント (0)

2007年09月12日

山本紀久雄代表の講演

浅草の金龍山浅草寺主催「仏教文化講座」で、経営ゼミナール代表の山本紀久雄氏が、山岡鉄舟について講演いたします。

  日時 2007年9月26日(水)14時から15時
  場所 新宿明治安田生命ホール(新宿西口正面)
  演題 山岡鉄舟の生き方から学ぶ
  入場料は無料です

なお、同日の15時より16時までは、名古屋市立大学大学院教授の吉田一彦氏が「最澄と神仏習合」について講演されます。

投稿者 Master : 08:22 | コメント (0)

2007年09月07日

2007年9月5日 哲学を持つ

環境×文化×経済 山本紀久雄
2007年9月5日 哲学を持つ

無意識選択
ある科学者の研究によると、人間は一日に3000回超の意思決定選択をしていますが、本人が明確に意識して判断しているのは、わずか4~5回で、それ以外はすべて無意識で判断しているそうです。また、量子論の学説に「多世界解釈」という理論があり、ある選択をする際に、Aを選んだ世界、Bを選んだ世界がそれぞれ存在し、その選択を重ねるたびに、そこから無数の世界に広がっていくといいます。つまり、自分が選ばなかった世界が無数に存在しており、自分が選んで生きていく世界は、その中のたった一つに過ぎないそうです。ですから、無数の世界から、自分にとって最も良い選択をするためには、一つひとつの意思決定選択を大事にすべきであり、それが無意識化で行うものであっても、妥当な選択をできるような体制を脳の中に構築しておくことが必要になります。

白い恋人
インド・ムンバイにバンコック経由で行くことになり、成田空港でチェックイン時に、バンコック乗り継ぎ時間帯のラウンジ利用を訊ねますと、JALのさくらラウンジがあるから利用してくださいという返事でした。
バンコックに着き、さくらラウンジに行きますと、入口にクローズと書いてあり利用できません。仕方ないので、乗り継ぐキャセイ・パシフィックのラウンジに行き利用しました。当然、このような利用方法になるだろうと訊ねたのですが、JALのカウンターでの回答は異なっていました。大したことはない細かいことですが、少し気になりつつ機中で持参したAgoraアゴラ、これはJALカード会員に送られてくる月刊誌ですが、何気なく読み進んで行き、一瞬、ため息が大きく出るページに出会いました。
それは、実力経営者が推奨する本の紹介記事「旅への一冊」で、経営者の業績を紹介し、その業績の背景としての人物像と、経営者が推奨する本と結びつける編集になっており、なかなか面白いので読んでいますが、この8月号は何と「白い恋人」チョコレートの石屋製菓㈱の石水勲元社長が登場し「徳川家康」(山岡荘八著)を取り上げているのです。
周知のとおり石屋製菓㈱は「白い恋人」の賞味期限違反で摘発を受け、その違反を長期間にわたって継続していたことを石水勲元社長は承知していました。つまり、改竄を指示していた事実から、一気に著名「白い恋人」ブランドは壊滅的状態になりました。
しかし、アゴラ記事で石水勲元社長は「座右の銘は努力。目の前の競争や戦いばかりに勢力を傾注していると、こちらにもダメージが生じる。将来の安定を考えて体制をつくりあげた『徳川家康』を読み深めていくと、会社の将来展望や若い世代への権限委譲などについて、実に含蓄のある一冊になっていると思います」と述べています。
誠にご尤もな見解ですが、これと今回の事件をどう説明するかということ、さらに、このような石水勲元社長を結果的に選択してしまったJALのセンス、それが大問題です。
勿論、取材したタイミングは数ヶ月前ですから、当然に今回の事件は発生しておりません。ですから、JAL側は情報がなかったのだから「仕方ない」と思うかもしれません。
だが、ここで指摘したいのは、偶然にせよ、結果的に賞味期限違反という、消費者の信頼を裏切る経営行動をしていた人物を、立派な経営者と判断してしまった、という事実です。このように結果的に妥当な選択をできなかった背景要因が、JALの内部に潜在していると感じ、これがJALの各部門で表象化しているような気がしてなりません。

予測は当たらない

歴史的惨敗に終わった参院選を、総括する報告書が自民党内から出ました。敗因として年金記録漏れ問題などに加え、安倍首相の「国民の側でなく、永田町の政治家の側に立っているイメージが持たれた」政治姿勢を指摘し、今後の課題として「国民の目線に沿った政権運営が求められる」と異例とも言える首相に批判的な内容です。
また、日経新聞「核心」のコラムニスト田勢康弘氏からは「首相自身がまず、敗北はおのれの指導者としての決断、指導力、うつろな言葉にもあるということを自覚しなければならない」と厳しく、今回の改造でも回復は難しいという見解です。
しかし、この参院選の結果を事前に専門家はどう予測していたでしょうか。一週間前の報道機関による事前予測では今回の惨敗を予測していましたが、このタイミングより前の専門家見解、例えば白鴎大学教授の福岡正行氏から直接聞いた(5/10)のは「参院選は基本的に引き分けだ」と言い、選挙後に「国民新党をどう取り込むか」の戦いなるというものでした。結果は大きく異なりました。
専門家の見解の予測誤差は選挙だけではありません。経済についても同様です。日本総合研究所の湯元健治氏は「中国のバブル崩壊が今年は起こらないという前提で考えれば、まず、安定的な経済が続く」「安倍政権は景気回復を更に強め、成長力を高めていく成長路線を打ち出している」(5/23)と話しましたが、その後の米国サブプライムローン問題から発生した、世界的な大変動は予測しておりませんでした。

世界は考え方が異なる

インド・ムンバイの中心街は一人歩きしても心配ありません。南アフリカ・ヨハネスブルグとは全く違います。多くの人が街中を出歩き、人と車の多さに圧倒されますが、その中に豊かさを感じます。勿論、田舎に行けば貧困層がいますし、ムンバイにも世界最大というスラム街がありますが、一般人が歩き生活するところでは、物量多く豊かさが溢れています。また、街中でのファッションは、Tシャツとジーンズにスニーカー、手には携帯電話、カフェでくつろぎ、ミュージックもロック、このムンバイの実態は世界的に共通しているものです。このグローバル化をアメリカ発の「マクドナリゼーション」と言いますが、これはインターネットでも同じであり、プロバイダー上位企業はアメリカ資本が上位を占めていますので、客観的な事実に基づいて情報が伝えられていると思いたいのですが、実は、そこには、無意識、あるいは意識的なマインドコントロールが、グローバル化という名のもとに行われているのが実際です。
このように衣食住で世界画一化が進み、情報操作によって、世界中が同一の考え方になりつつあると考えやすいのですが、インドの実態をみるとそれぞれの考え方は大きく異なっていることを感じます。それもそのはずで、インドは3000年の歴史を持つ国であり、隣国の中国も長い歴史があり、ヨーロッパも中東諸国も同様で、これらの国々はそれぞれ全く異なる価値観を持っていますから、日本人の価値観だけでは理解できないのです。
つまり、行動は同じように見えるのですが、その背景に存在する価値観は国によって大きく異なっているのです。

考えない日本人
世界では常に想像できない出来事が発生する。このことを強く認識すべきと思います。JALもまさか「白い恋人」の賞味期限違反摘発が発生するとは思わなかったでしょう。安倍首相も事前に厳しいとは思いつつも、ここまで惨敗するとは考えず、参院選に臨んだのでしょう。ムンバイについた日、隣のアーンドラ・プラデーシュ州の州都ハイダラーバードで爆弾テロ事件が発生し多くの人が亡くなりました。
世界の人々の価値観が異なるからこそ、世界中で毎日のようにテロ事件や騒動が発生します。その結果、事前に考えた予測とは異なる結果が発生し、そこから新たなる対応をとることが必要になります。つまり、現実に適応する考える力が要求されているのです。
前回のレターでお伝えした「草の根の軍国主義」(佐藤忠男著 平凡社)の日本人は「あいまいな『気分』がその時どきの判断を左右してしまう国民性、そして『途方もないほどの従順さ』が軍国主義を押し広げていった」と指摘されている事実があるのですから、特に、日本人は考える力について再認識が必要と思います。
神戸女学院大学の内田樹教授は、最近の「あっと驚くような学力の新入生」が多く、このままでは「国民総六歳児化の道」に進むと危惧しています。大学生がこのような実態になったのは、日本人が総じて「考えない結果」から生まれたものと思います。

哲学を持つ

行動のためには意思決定選択が大事であり、妥当な選択をできるような体制を脳の中に構築することが必要です。そのためには「哲学を持つべき」と思います。哲学とは何か。これは難しく考えずに「疑う心を持つことだ」と外交評論家の磯村尚徳氏が主張しています。衣食住と情報が世界画一化した中、今、改めて、重視すべき指摘と思います。以上。

投稿者 staff : 09:29 | コメント (0)