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2012年12月23日

2012年12月20日 モチベーション(下)

YAMAMOTO・レター
環境×文化×経済 山本紀久雄
2012年12月20日 モチベーション(下)
日本の発言力低下の最大要因
 米コロンビア大学教授のジェラルド・カーチス氏は以下のような見解を述べている。 (2012年12月3日 日経新聞) この指摘はその通りと思う。

豊かな日本の実態

日本は豊かである。というのが日本を訪れた外国人の評価であり、その声を実際に何人もから聞いている。また、自分が海外に行き、その国の実態と日本を比較すると、この事実がよくわかる。

①11月のロンドン、次の本の取材で図書館に行こうと、City Of Westminster(ウェストミンスター市役所)内にある図書館に向かった。ところが、行ってみると図書館は移転したという。ちょうどトイレに行きたくなったので、洗面所を借りようとしたが、市役所内に用事がない人、アポイントをしていない人は、入口の遮断機のところで断られ、自由に入れない仕組みになっている。

仕方ないので、近くの図書館に行き、まずは、トイレと探したがない。そこで係に尋ねると「この図書館にはトイレはありません」という。館内には大勢読書したり調べたりしているが、この人達はトイレに行く場合どうするのか、それが心配になるほどであったが、街中で簡単にトイレ利用は出来ない。カフェかレストランに行くしかない。

日本では駅でも市役所でも、勿論、図書館でもトイレは自由に使え清潔である。

②現在、自宅の建て替え工事で、仮住まいなので何かと不便をしているが、この建て替えということ、

欧米ではどのような実態なのか。それをロンドンに住む人に聞いてみると「個人住宅の建て替えする人は皆無でしょう」といい、ドイツの不動産会社で聞くと「まず、ないでしょう。古い家は価値があるのでのこします」との答えで、日本は地震があるからではないか、というのが補足回答である。フランスのトゥルーズに住む富裕層に属する女性に聞くと「自宅は有名な建築士に依頼して建てた」という例外はあるものの、一般的に建て替えは稀だという。

今ドイツでは空前の不動産ブームが起きているが、それは賃貸住宅の転売が主流で、ドイツ人の不動産所有率は約40%にすぎない。世界で持ち家の割合が最も高いのは日本で89%、韓国78%、アメリカ67%、スウェーデン55%である。

③外国人が最も驚くのは交通機関である。特に新幹線。東京駅発の新幹線15分おきに発着して、それが殆ど時間正確、時刻表通りに動いていく。他の国では列車の時刻表通りにはなかなか動かず、さらに、時刻表がない国が多いのである。

ただし、犬だけは問題

毎朝夕、リード(紐)を持ってビーグル犬の散歩をさせるが、この犬、あちこち勝手に動き回り、飼い主の思うようには動かない。犬に引かれて善光寺参りである。犬の散歩をしている同類の方々、殆どが同様で、日本の犬は躾と礼儀が欠けている。

ところが、欧米の犬はとてもよく躾されている。この写真は11月に乗ったドイツのICE特急列車内で見た実際の犬の姿である。若い女性が、車内でパソコンを操作している足元に、犬がリードなしで、静かに吠えもせず座って、こちらを見ている。自宅のビーグル犬とは大違いのお利口さんで、感動ものなので、許可を得て写真を撮らせていただいたが、日本ではリードによる手綱さばきが必要で重要条件である。

問題多き民主党政権

今回の衆議院選挙、見事に民主党が負けた。2009年8月の総選挙で民主党が第一党になり、鳩山内閣が成立し、その後菅内閣、野田内閣と続いてきたが、その評価が今回の総選挙で決まった。

民主党政権はこれまで、ことごとくやったふりを続けてきた。子ども手当、事業仕分け、成長戦略、新年金制度、社会保障改革、東日本大震災の復興・・・。どれも食い散らかしただけであった。

加えて、外交面での脆弱さ、中国、韓国、ロシアから領土問題で、民主党政権の弱体化をチャンスとみて攻勢をかけてきて、国民の歯ぎしりが続いている。

その中で、ただひとつ財務省シナリオ通どおり、消費税増税だけは決めたが、全く問題多き民主党政権であった。

問題解決とは手順づくり

民主党から自民党政権に、多くの課題と問題が引き継がれた。「復興」「グローバル」「TPP」「国の仕組み」「領土」「年金」「少子化」等、数え上げればきりがない。

これらの解決を新政権に期待するわけだが、その前に「問題解決手順」を考えなければいけない。全ての問題を一気、一網打尽、一目散にできるはずがない。原理的に無理である。何故なら、問題とは、今の日本で異常であり、損害が発生して、困っていることであり、悩んでいることである。また、それらは必ず複合的に重なり合って、その結果の問題としての事象が表面化しているからである。

そうであるからこそ、新政権に要望として、こうなりたい、このような状態になりたい、あそこまで行きたい、というように数多く並べ立てるのはやめたいと思う。

ここは慎重になりたい。問題解決の手順を誤ると、労多くして功少なしで終るからで、ひとつ一つ、問題と課題の糸口、根源を解きほぐして行くしか方法がない。そのために最も大事なことは「問題解決への手順」を決めることである。

今の日本はデフレ解決が先決

日本を海外から客観的に見れば豊かな国である。なのに、国民は何となく閉塞感を持ち、元気が欠けているように感じるのは何故か。

その理由を考えるには、以前の元気であった時の日本はどうであったのかを思い返してみれば、今の状態がわかる。

経済が順調であった頃は、企業業績が向上し、勤め人の給料も上がり、物価もある程度上り、消費も増えて、結果的に税収が上がっていた。つまり、インフレ経済下にあったわけである。

それが一転、デフレ経済になってみると、諸問題が一気に噴き出し、その要因が政治というところにあるのでは、というので民主党政権に替えてみたら、それがとんでもない実態政権だったと気づき、慌てて、再び自民党に戻したというのが、今の日本人の多くの気持ちであろうが、今度は我々国民が問題解決の糸口、根源に気づかなければならないと思う。

立場によって問題への認識は異なるが、日本経済を順調にしたいという立場に立つならば、その糸口と解決への手順第一歩は、デフレからの脱却ということしかない。

首相を替えないというモチベーションへ

日本の首相が毎年コロコロ変わるという状態では、問題解決は出来得ない。新しい自民党政権によるリーダシップによってデフレ脱却を望むならば、そのリードによる政治手綱さばきを巧みに発揮させるしかない。そのためには我々のモチベーションを、新政権の長期化=首相の在任期間の長期継続化というところにおく必要があるだろう。以上。

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2012年12月06日

2012年12月5日 モチベーション(上)

YAMAMOTO・レター
環境×文化×経済 山本紀久雄

2012年12月5日 モチベーション(上)

2012年も今月で終わります。そこで、今回の衆議院選挙と来る2013年へ、どのようにモチベーションを持ったらよいのか。それを今号と次号で検討したいと思います。

モチベーションとは

最初は定義。三省堂辞書サイトによると「モチベーション(motivation)とは、意欲の源になる『動機』を意味します。例えば、ある人が『仕事を頑張りたい』という意欲を持っているとすると、その意欲の源になる『彼女にモテるから』『お金がもらえるから』などの動機付けこそが、まさにモチベーションということになります。もっとも一般には、動機の結果として現れる意欲(=仕事を頑張りたいという気持ち)の方を、モチベーションと表現しているようです」とある。

ザッケローニ監督

日本サッカー代表チームのアルベルト・ザッケローニ監督(59)が24日、在日イタリア大使館で母国の「イタリア連帯の星勲章・コメンダトーレ章」を受章した。

日本との友好関係を深めたことなどが授賞理由で、ザッケローニ監督は「サッカーの世界は1日で大きく状況が変わるので、話を聞いた時できるだけ早くしてくれとお願いした」と笑わせ「代表の活躍は協会、スタッフ、選手、サポーターのおかげ。自分の仕事が認められて誇りに思う。これからもいい結果を目指してまい進する」と述べた。

ザッケローニ監督を選任したのは日本サッカー協会。ワールドサッカーに出場したいというモチベーションによって、2010年8月、難航のうえザッケローニ監督を決めたが、今ではその選考結果に日本人の多くが満足している。

では、ザッケローニ監督の手腕はどういうものか。それは選手(チーム)をひとつにまとめることが上手いという、チームマネジメント(チーム作り)につきる。

つまり、選手(チーム)に目的達成に向かっていこうとする明確なモチベーションを持たせることで、一人ひとりの力量を発揮させていることに優れているのである。

トルシエ元監督の評価

11月22日、元日本代表監督のフィリップ・トルシエ氏が、日本サッカーの現状について自身の考え次のように語った。(FIFA.com)

「トルシエ氏は、日本が10月の親善試合で母国であるフランスにアウェーで勝利したことについて、『驚きがあったか』と問われた際、『フランスはまず実験的なメンバーだったし、スペインとの大事な一戦を控えていたことは事実だね』とコメント。

しかし、『日本は草の根でサッカーを普及させている。ユース世代の育成は日本にとって必要で、効果的であり、安定をもたらす。日本の今の成績に関しては驚かないよ。育成に関しては世界トップ3に入ると思う』と語り、現在の日本代表が残している好成績の要因は、日本サッカー協会の育成方針にあると述べた。

ボルドーのタクシードライバー

11月20日、フランスのボルドーのサント・クロア・デュ・モン地区へ向かった。いつも頼んでいる顔見知りのタクシードライバーで、とてもお喋りで何かと話したがる。

ボルドーの「城壁街道」と称される、サント・クロア・デュ・モン地区に行くには、ボルドー市内から車で約一時間かかるが、その間、ドライバーはずっと話を続ける。

その話の中で「日本がフランスに勝っただろう」というので「サッカーか」と聞くと「そうだ」という。そこで「フランスは残念に思っているだろう」と尋ねると「全然、気にしていないよ」「どうしてだ」「簡単さ。フランス人はモチベーションがないと気合が入らないのさ」「へえー」「俺たちはラテンだからね」という。
この発言背景には、格下の日本との試合ではモチベーションが出ない。香川選手のゴールによって1対0で負けたが、あまり重要ではないと判断しているのだ。

その通りで、日本との試合が10月12日、そのすぐ後の16日には、ワールドカップ欧州予選グループI第4節で、前回の世界チャンピオンのスペインと、アウェーのビセンテ・カルデロンで戦い1-1のドロー、スペインが2006年11月から継続していたホーム連勝記録を25でストップさせた試合は、日本戦とは別人のようなフランス人であって、さすがと思わざるを得ない。

日本人への評価

このボルドーのタクシードライバー、日本人は真面目だからなぁと、誉め言葉か、けなしなのか分からない発言をした後、この前、日本人のボルドーワイナリー巡りで運転した際、日程表を見たらこう書いてあったと言う。

月曜日 ワイナリー視察 火曜日 ワイナリー視察 水曜日 ストライキ
木曜日 ワイナリー視察 金曜日 パリに戻る

この中で「ストライキ」とは何だろうか。多分、休みを取るのだろうと想像していたが、そうではなく「ストライキ見物」というのでびっくりしたと言う。

最近、日本ではストライキがないからだと説明受けたが、スト見物まで計画表に書き入れるという日程表つくり、全くフランス人には考えられない。何でも計画的に真面目に行動するのが日本人だと思うが、堅苦し過ぎないか。と運転中なのに前方を見ないで、大きく後部席の当方を振り返り「フランスも日本みたいに真面目にしたら、世界中のどの国と試合しても全勝だろうが、俺たちはラテンだから、そうはいかないよ」「やはり、モチベーションがないとダメなんだ」と大きくウィンクする。

ドイツの友人が介護専門に

フランスの次はドイツ・カールスルーエに向かった。このカールスルーエは今年9月のレターでお伝えした日独交歓音楽祭で来日した、独日協会合唱団「デァ・フリューゲル」(注 翼という意味)のある都市である。

その合唱団の一員であったドイツ人男性、今年の合唱団来日メンバーに入っていなかったので、どうしたのかと尋ねると「長女の介護を24時間している」と発言する。

この男性、なかなかアイディアマンで、いつも新しい企画に基づく事業計画を熱っぽく語っていた。
だが、今回は何も事業計画は語らない。長女がどのように状況なのか、住んでいたボンで交通事故に遭い、最初は命も危ないという大事故だったが、ようやく病院は退院でき、今はリハビリ施設でトレーニング中なので、そのリハビリ施設の一室に長女と一緒に暮らし、介護に全力だという状況のみを語る。

だが、以前の事業計画を語る当時よりは一段と輝いているように感じる。

思い出してみると、このドイツ人、何回も転職し、その合間に次の事業を企画し、各方面に提案していたが、どこからも採用されない状況だった。しかし、彼は常に元気で前向きな発言を繰り返すので、よく堪えないなぁと、その精神力に感心しつつも、どうして提案計画が採り上げられないのか、ということに相談に乗ったこともあったが、その当時と比べて明らかにモチベーションが向上している。

そこで以前のように事業計画はつくらないのかと聞くと「やめた」「もうしない」「娘の介護に命をかけている」と、お節介なことは言うなという厳しい目つきになる。今や、彼のモチベーションは介護一筋なのである。

肉親は「情」で、論理ではない

このドイツ人男性の発言はよくわかる。というのも自分も義母の介護で勤め人を辞め、その結果として今の仕事につながったのだが、その時の気持ちは、家族が病気等で倒れたときは、論理的に考えてはいけないというものであった。

「情」で対応するのが家族愛であり、その「情」から出る介護にモチベーションを持つのが人間の務めだ、と判断した体験があるからである。

首相を選ぶ選挙

 日本サッカー協会のモチベーションでザッケローニ監督を決めた。来年3月のヨルダン戦に勝てば、世界最速でワールドカップ出場が決まる。結果として日本人は満足する。

日本国民のモチベーションによって12月16日衆議院選挙で首相が決まる。果たして、国民が納得し、コロコロ変わらない首相を選べるか。一人ひとりにかかっている。以上。

投稿者 Master : 06:23 | コメント (0)