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2011年11月20日

2011年11月20日 観光地は超訳がお薦め・・・その二

YAMAMOTO・レター
環境×文化×経済 山本紀久雄
2011年11月20日 観光地は超訳がお薦め・・・その二

マクロ対策での限界

 観光とは異なるが、アメリカ経済の実態を見ていると、世にいう「マクロ経済学者」が唱える経済政策が失敗したとか思えない。
 アメリカ経済はリーマンショックから3年たっても失業率は下がる気配がなく、各地でデモが発生し続け、米連邦準備理事会FRBが足かけ6年にも及ぶゼロ金利を予告しているのだから、日本と同様に低成長状態に陥ったと言える。

リーマンショック前まで、アメリカ経済学者やFRBの幹部が揃って「バブルが崩壊しても金融を迅速かつ十分に緩和すれば対処可能」と豪語し、その反面教師として日本を挙げ、「日本の失敗はデフレに陥ったことであり、デフレはマネーサプライを増やせば、たちどころに解決する」と日本の経済政策当局を嘲笑っていた。

その嘲笑いの通り、アメリカは大胆な金融緩和に踏み切り、さらに、景気が思わしくないとみると、追加的な量的金融緩和政策Quantitative EasingいわゆるQE2を実行した。

このマネーが国際商品相場を押し上げ、アメリカのデフレ懸念は遠のいたように思えたが、新興国が金融引き締めで対抗した結果、株価は一時的な上昇にとどまり、明確な景気回復にはつながず、ジョブレス・リカバリーjobless recovery (雇用拡大を伴わない景気回復)となって、アメリカ各地でのデモにつながったのである。

つまり、史上最大の景気刺激策を展開しても、予想に反して効果を発揮していないわけで、とうとうノーベル賞受賞学者のポール・クルーグマン・プリンストン大学教授も、日本に対して嘲笑った事に対し「謝るべきかもしれない」と述べている。(日経新聞2011年10月6日)

マクロ政策では解決しないだろう

 「デフレの正体」の著者藻谷浩介氏は、次のように述べている。(デフレの正体16頁)

「健康診断にたとえましょう。『GDPが上昇すれば、世の中の隅々まで経済的な豊かさが波及していく』という考え方は、『総合体調指数が改善すれば、血圧も体脂肪率も血糖値も尿酸値もみんな改善する』という発想と同じです。実際は逆で、血圧や体脂肪率や血糖値や尿酸値が個別に改善していけば、その帰結として計算結果としての総合体調指数が上昇するのです」

 その通りでしょう。我々の経済は一人ひとりの生活を保障するものでなければならず、一人ひとりが豊かになるところに国家の経済政策があるべきで、国全体の経済成長が図られたとしても、その結果、かえって経済較差が広がり、貧困家庭が増加するようでは国民生活が向上したとはいえない。

 観光政策も同様で、観光庁が1万人作戦を採る事は、採らないよりはましだが、例えこのマクロ政策が成功したとしても、従来から著名の特定人気観光地に偏った外国人増加になってしまえば、外国に知られていない観光地には何ら意味がなく、効果もない観光政策となってしまうだろう。

日本政府観光局JNTOが外国に日本観光をPRしている一事例を紹介したい。それは英国航空BRITISH AIRWAYS機内誌の宣伝である。PRしているのは五カ所、東京、高山、高野山、京都、沖縄であって、他の各市町村は無視されているのである。

つまり、このようにPRされた観光地には外国人が大勢訪れると思うが、その他の知名度のないところには訪れない。したがって、知られていない各市町村は、自ら努力すべきで「今まで知られていない自らの観光地にどうやって外国人を来るようにするか」という事を考えるのが最重要課題で、外国人誘致政策立案能力が問われる事になるが、その為には最も大事な前提要件がある事を認識しなければいけない。

観光地は意識変革をしないといけない

 それは、日本人観光客に対する対応する施策を、そのまま外国人に対応させるのは難しいという事である。日本人に対する観光政策と、外国人への対応とでは意識を変えないといけないのである。

 時折、相談を受け、英語に翻訳された観光ガイド資料を見る機会がある。日本人である筆者が翻訳された英語を読んでも、あまり違和感を持たないが、先日、在日アメリカ人のコロンビア大学卒・ハーバート大学院卒の博士で、博士論文が日本企業研究という日本語を自在に話せる女性に、この英語観光ガイド資料を見せたらバッサリ「面白くない」の一言。

 つまり、真面目に詳細に説明し過ぎているので、外国人に難しく、難しいから読まなく、読まないから分からず、分からないから面白くないという結果になる。

先日、このアメリカ女性と関東地区の観光地に行き、観光関係者から車で各地を案内受けた時の彼女の様子が参考になると思う。

最初に連れて行ってくれたのが博物館で、学芸員が説明を始めると、頷き関心を持ち、猛烈な速さでノートを広げ英文でメモを取り、説明が終ったあと「すごく楽しかった」と発言する。

次に、地元では著名な神社に行き、神主さんから歴史的説明が丁寧にあったが、今度は全くメモしなく、次に訪れた寺でも同様で、関心を示さない。

実は、この事は私が欧米各地を始めて訪問したところで、地元の方が、外国人である私を案内してくれる時と同じである。各地には著名な教会があり、その教会はその地の人々にとっては重要な意味を持っているが、キリスト教と聖書を十分に把握していない当方には、地元の方の説明が難しく、結局、建物の素晴らしさを見るのが中心ポイントになってしまう。

また、教会は各地にいくつもあり、それぞれ異なるデザイン・仕様で建設されているが、当方には詳細な部分の差が分からないので、全部が概ね同じように見えてしまい、結果として教会見学に飽きるという事になる。これと同様な事が日本の神社仏閣訪問時に、彼女の態度によって鮮明に示されたのである。

 さらに、欧米人は文化的観光資源と、日本人の生活実態に関心と興味を持つ傾向が強い。この点、日本は長い歴史から構築されてきた文化遺産と、一般人の生活は狭い土地に住みながらも、その水準は世界でも最も豊かで清潔であるから、この実態に触れると大変驚き感激する。

もう一つ評価が高いのは日本食である。日本食はヘルシーであるという評価が世界中で定着しているが、日本に来て本物の日本食に接すると、外国の地で食べる味わいと異なり、さすがに違うと喜ぶのである。

 このような背景であるから、その地の飲食店マップは最低の必要条件であり、そのマップ上に店を紹介する文面が外国語で書かれていると最高だろう。

最後に決定的に重要な事

 もう一つ決定的に重要なのは英文化作業で、単に日本語で書かれた原文を英語に忠実に翻訳するのではダメである。外国人の立場から翻訳するという事が絶対必要条件である。

これは簡単な事ではないが、この「情報編集」を巧みに行っているのが、村上春樹であろう。村上春樹の小説は、全て日本が舞台で、日本人のみが登場するのであるのに、世界中から受け入れられている。その原作に忠実でない翻訳、つまり外国人によって「超訳」が行われているのである。これが村上春樹の人気理由の背景にあるひとつの重要な事実だ。

 現在、先ほど登場したアメリカ人女性と一緒に、関東地区のある市の外国人用観光ガイドブックを作成したところである。勿論、私が外国人用に「情報編集」した日本文を、彼女が自分の言葉で再度「情報編集」し英文にする、つまり「超訳」したが、興味ある方はご連絡いただければ、その「情報編集」方法と英文化についてご案内したいと思っている。以上。

投稿者 Master : 16:19 | コメント (0)

2011年11月02日

2011年12月「同窓懇親会」開催のご案内

経営ゼミナール2011年12月「同窓懇親会」開催のご案内

 経営ゼミナールにご関係された皆様、ご無沙汰いたしておりますが、お元気でご活躍の事と存じます。
 昨年12月20日(月)に、経営ゼミナールの定例会367回開催をもって、一応の区切りとして「感謝の懇親会」を銀行会館で開かせていただき、その際に今後は「不定期開催」にいたしたいとご案内申し上げました。

 ちょうど一年が経過する12月19日(月)に、下記のように経営ゼミナール同窓懇親会を開催いたしたくご案内申し上げますので、ご都合ご検討賜り、ご出席の程お願い申し上げます。

同窓懇親会 
開催日 12月19日(月)18:30から21:00
 開催内容
① 18:30~19:30 講演 佃為成氏
テーマ「東北地方太平洋沖地震は“予知”できなかったのか?」
今年はやはり大地震について総括しなければならないと思います。
佃氏は今も自ら計器を持ち、日本各地で地震予知についてご活動され、地震予知とは「人の生き方・人生の予知」に通じるものだという持論を展開されます。佃氏の含蓄ある内容をご期待お願いいたします。
(佃氏略歴)
熊本県出身。東京大学理学部卒。東京大学地震研究所助教授を経て、
現・日本女子大学非常勤講師。専門分野:地震学、地震予知論。
著書:『大地震の前兆と予知』『地震予知の最新科学』『東北地方太平洋沖地震は“予知”できなかったのか?』など多数。

② 19:30~21:00 懇親会
  この一年間の振り返り、皆様からスピーチを頂きたく存じます。

会場  東京銀行協会ビル内 銀行倶楽部 4階
      千代田区丸の内1‐3‐1 Tel:03‐5252‐3791
      東京駅丸の内北口より徒歩5分(皇居和田倉門前)
   アクセス:http://www.kaikan.co.jp/bankersclub/access/access.htm
 
会費  お一人3000円

お問い合わせ先:経営ゼミナール・山本紀久雄 
         メール:info@keiei-semi.jp
電 話・FAX:048‐824‐4859

ご出席のご連絡はメールにてお願い申し上げます。

                             以上

投稿者 Master : 13:45 | コメント (0)