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2008年10月21日

10月例会の感想

経営ゼミナール第344回定例会が行われましたので、その様子をご報告いたします。
今回は、株式会社エコメイト代表取締役・福原美里様をお招きし、お話を伺いました。

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福原社長が手がけておられるオフィスチェアの通販サイト『椅子道楽』は、今年度、何と前年比327%の大幅な伸びを示しておられます。しかも、消費が冷え込みあらゆる業種が減収減益となっているこの時期にです。『椅子道楽』の躍進の秘密はどんなことなのでしょうか。

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オフィスチェアという、とても限定された商品を取り扱い、しかも、価格が平均して10万円前後の椅子という、とても高額な商品に絞って取り扱うという戦略を、福原社長は選ばれました。
そのために『椅子道楽』では、お客様が「椅子道楽から椅子を買いたい」と思っていただける信頼感をホームページに盛り込む努力をされています。
福原社長は日ごろこうおっしゃっています。
「『椅子を買うなら椅子道楽に聞け』といわれるようなホームページにしたい!」
そこには、椅子のことなら何でもわかる情報と、福原社長自らが接客を行うきめ細かなサービスがあります。
 →椅子道楽ホームページはこちら

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もうひとつ、エコメイトの元気の原動力は、福原社長のバイタリティです。
女性のお年のことを言うのは大変失礼なのですが、福原社長は御年75歳です。このお年にして現役の事業家であり、銀行やメーカーから信用を得て融資や商品調達を行っているという事実は、ご自身が「奇跡に近い」とおっしゃるように、通常では考えられないことです。
ここにも、エコメイトの好調の源泉を見ることができるように思います。

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発表の後の質疑にも、福原社長の元気の源を垣間見ようと活発な質問が飛び交いました。

御年75にして(度々失礼します)ITを活用してお客様に信頼を提供する福原社長の姿勢に、触発される心持ちがした今回の例会でした。

(田中達也・記)

投稿者 lefthand : 07:08 | コメント (0)

2008年10月20日

2008年10月20日 士道にあるまじき

環境×文化×経済 山本紀久雄
2008年10月20日 士道にあるまじき

かもめ食道広場

フィンランド・ヘルシンキのハカニエミ(HAKAMIEMI)広場に行きました。ここは2006年に公開された映画「かもめ食道」が撮影されたところです。
ご参考までに映画「かもめ食道」のPR文を紹介します。

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『東京から10時間、日本から最も近いヨーロッパの国、フィンランド。そんな何だか遠くて近い国でひそかに誕生した映画「かもめ食堂」。フィンランドの首都ヘルシンキは青い空にのんびりとかもめが空を飛び交い、ヨーロッパ各地からの客船が行き交う美しい港町です。その街角に、日本人女性サチエ(小林聡美)が経営する「かもめ食堂」(ruokala lokki)は小さいながらも健気に開店しました。そんなかもめ食堂を舞台にそれぞれの登場人物の、丈夫だけれどちょっとやるせない、日常的なようでそうでない不思議な物語が始まります』

上の写真の左側は映画のポスターです。右側はこの映画が撮影されたハカニエミ広場の一角ですが、写真の真ん中は男性がドラム缶式のゴミ入れに、ゴミを捨てているところです。地下にゴミ収集小屋が三つあり、市役所がゴミ処理するときだけ地上に現れるシステムとなって、一番左側の小屋がそれです。普段は地下にあって景観を損なわず、一番右側は亀の置物が置かれ、ここに駐車させないようになっています。
日本では、毎朝カラスの宴会が行われているゴミ収集システムと比較し、フィンランドは景観を配慮した実態となっています。

一国の総合評価

2006年度の一人当たりGDPでフィンランドは世界第14位、日本は18位です。一位はルクセンブルグ、二位はノルウェー、三位はアイスランドとなっていて、この順位をもって、その国の豊かさを測る基準と理解されていましたが、世界の金融危機で分からなくなりました。例えば、三位のアイスランドは富裕国のはずですが、急激な資金逼迫に陥り、世界各国に融資を要請する実態となっていますから、一概にGDPのみで一国の評価を断定できません。
また、フィンランドでは9月に職業専門学校で、銃乱射事件が発生し11人が死亡し、前年11月にヘルシンキの中学校で乱射事件があり、生徒6人と校長、保健士が殺されるという問題、さらに離婚・自殺も多く、詳しく見ていけば多くの社会問題があります。
しかし、OECDの学習到達度調査(PISA)で世界一という実績と、ヘルシンキでいくつかの家庭を訪問し、人と会い話し、街並み観察など現地現場確認を行ってみますと、フィンランドは世界各国との相対比較で「よい国」の分類に入ると判断します。

日英・日仏百五十周年

今年は、安政五年(1858)に徳川幕府と米英仏蘭露の五カ国が修好通商条約を結んで百五十年に当たります。
それを記念して各国で様々なイベントが開催され、そのひとつがロンドンのヴィクトリア&アルバート博物館での「山岡鉄舟書展」であり、パリのユネスコ本部で開催された今西淳恵さんによる「源氏物語現代画展」(A World of "Tale of Genji")です。

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写真の左が鉄舟書展です。右の写真の源氏物語現代画展のオープニングパーティには、ユネスコ本部の松浦事務局長も出席挨拶される華やかなものでしたが、この二つの会場で強く感じたのは、歴史と文化に裏付けされた日本は「よい国」であり、その「よい国」となった要因は、幕末時の政治判断が優れていたからだ、という深い感慨でした。

江戸無血開城

ご存じのとおり明治維新は慶応四年(1868)四月の江戸無血開城で事実上成し遂げられました。仮にこの無血開城による政治判断がなされず、官軍と徳川側が一戦を交える事態となっていたら、日本国内は大混乱に陥り、今日までの日本国家発展は別の形になっていたと思います。その意味で、同年三月の駿府における官軍参謀の西郷隆盛と山岡鉄舟による会談で、実質の江戸無血開城が決まったことの意義は大きく、また、それを指示した勝海舟の政治判断力を高く評価します。

福沢諭吉の批判

だが、あくまで主戦を唱える勢力陣を抑え、平和的解決へ持っていった勝海舟等の和平派に対して、当時も今も一部から大きな強い批判があります。
例えば、明治時代の最高の文化人であった福沢諭吉が、明治二四年(1891)に「痩我慢の説」を書き、その中で次のように述べています。
「痩我慢とは、個々人についていえば、主に対しての節操であり、その存亡が問われる危機にのぞんで、主を守り抜こうとする気概を強くすることである。勝敗の打算を度外視して、犠牲になることを惜しまない。このような節を守る痩我慢こそ、立国の大本となる心情である」と述べ「徳川の末期に、家臣の一部分が早く大事の去るを悟り、敵に向かいてかつて抵抗を試みず、ひたすら和を講じてみずから家を解きたる」者ありとして、その批判の対象を名指しで勝海舟と榎本武揚に向けました。
 
士道にあるまじき

士道とは「武士として守り行わなければならない道義。武士道」と明鏡口語辞典にあり、広辞苑には「士たる者の履み行うべき道義」とあり、新撰組の土方歳三がいうように「士道とは、すなわち、節である」と解釈すれば、福沢諭吉のいう「主に対しての節操」とは士道であり、それに反して「二君に仕えた」者は「士道にあるまじき」者となります。つまり、勝海舟が明治政府で参議兼海軍卿となり、伯爵の爵位を受けたこと、榎本武揚が函館で戦いはしたが、のちに明治政府の大臣になったという身の処し方、これは「士道にあるまじき」行為であり「二君に仕えた」ことを批判されているのです。
 その点では、福沢諭吉からは名指しで批判はされなかったものの、鉄舟も「二君に仕えた」のですから「士道にあるまじき」者に該当するかもしれません。

世界との比較で日本は豊かだ

確かに「義と情」を「理」として判断すれば、福沢諭吉のとおりです。だが、米英仏蘭露と修好通商条約締結後、百五十年を経た現在の日本、その実態は問題が多々あるにせよ経済面で豊かな国であり、文化面でも「山岡鉄舟書展」「源氏物語現代画展」の開催で証明されるように日本文化の成熟度は高く、これらから考えれば時代の大変換期に「士道にはもとづかない」世界観による和平路線の「理」を受け入れた徳川幕府の江戸無血開城は正解で、日本が「よい国」となった最高の政治判断と断定できます。
以上。

投稿者 lefthand : 08:14 | コメント (0)

2008年10月06日

2008年10月5日 スマイルライン

環境×文化×経済 山本紀久雄
2008年10月5日 スマイルライン

欧州でも

サブプライムローン問題は世界中を駆け巡り、リーマン・ブラザーズの経営破綻は、ヨーロッパでもその飛び火はただならぬもののようで、ドイツ復興金融公庫(KFW)銀行グループが、リーマン・ブラザーズ破綻の発表当日、同社に対して3億ユーロ(約450億円)の送金を行っていたと報じられました。

 送金は事前に取り決めていたスワップと呼ばれる金融取引で、原因は「技術的なミス」による送金だったという発表です。同公庫はリーマン・ブラザーズに返金を求める方針ですが、全額が戻ってくることはまずないでしょう。
 イギリスでは、銀行大手「ロイズTSB」が、住宅金融最大手「HBOS」を買収すると発表しました。HBOSはサブプライム問題のあおりで業績が悪化し、これにリーマンの破綻をきっかけに信用不安が拡がり株価が急落。資産規模が下回るロイズによる買収救済という異例の展開となりました。これによってイギリスで総資産4位の巨大金融機関が誕生することになりますが、世界中の金融界が大編制です。

NEW YORK POSTの記事

 今まで世界の景気は、米国の消費によって支えられてきましたが、9月に入って続発した一連の金融問題発生と、その結果の混迷化によって、頼みの米国が危ないという認識、それと米政府が景気対策の柱として打ち出した総額千百ドル(約12兆円)の所得税還付も、その60%が借金の返済や貯蓄に回って、支出拡大には結びつかなかったことから、一気に世界経済は低迷観測方向に走り出しました。

 

 そのような中、いち早くファッショントレンドを打ち出したのが、H&M(ヘネス・アンド・モーリッツ)、GAP、バナナリパブリックの三社です。7月28日のNEW YORK POST新聞は、今年の秋ファッション情報を伝え、この秋のポイントは1929年のNY株式大暴落の結果、一気に1930年代の米国は大不況となった事実を取り上げ、当時の失業者が被った帽子、当時の新聞売り子の服装など、それが2008年秋のトレンドだと訴求しました。(写真参照)

銀座七丁目

 9月13日に銀座七丁目のガスホール跡に「GINZA gCUBE」が完成し、そこにスエーデンのH&Mが日本初出店しました。
 現在、世界の衣料品専門店売上高トップはGAP。このH&Mは第三位で、すでに世界29カ国に約1600店を展開しています。アイテム価格は婦人用カーディガン2400円、ジーンズ3200円から分かるように、国内最大手のユニクロとほぼ同水準です。因みにユニクロは世界第7位の売上高規模です。
 このビルのオープン日は、H&Mを目指して銀座は客で埋まりました。その後も毎日行列が続き、オープン5日目の17日夕方行ってみましたが、ビルの前から博品館劇場前交差点まで、人の列が続いていました。つまり、銀座大通りの終わりまで行列なのです。おかげでいつもはガラガラの松坂屋銀座店も五割増しの客数、ライバルのユニクロも、世界第二位のインディテックス(スペイン)の衣料専門店「ザラ」も、あふれるような盛況ぶりです。H&M出店効果で銀座は大混雑です。

銀座の高級ブティック

 ご存知のように銀座地区には、世界のトップブティックが軒並み進出しています。業界関係者が「ニューヨーク、ロンドンに並んでプレステージの高い銀座に出店することで、そのブランド価値がさらに高まる」と指摘するように、ここ数年世界の一流ショップが競って進出しました。その中で特に目立つのか銀座二丁目交差点です。
 この四つ角はルイ・ヴィトン、シャネル、カルティエ、ブルガリという、世界トップブティックで占拠され、今や四丁目を凌駕する勢いです。
 その他にもエルメス、プラダ、クリスチャン・ディオール、ティファニー、ランバン、ダンヒル、セリーヌ、バレンチィノ、コーチなど、銀座進出のブティックを数え上げたらキリがありません。だが、銀座にはこれら高級価格帯の店がある一方、ユニクロやザラ、今回のH&Mのように中低価格帯のショップも進出し両立しています。
 これはロンドンも同じです。高級デパートのあるハロッズが位置するプロンプトン・ロードに面するナイツブリッジ地区、ここはハロッズとユニクロとH&Mとザラが並んでいます。

中間層の店が不振

 銀座大通りを歩いていると、といっても混雑で歩きにくいのですが、その中に店頭で声を枯らして叫んでいる店がありました。店主と思われる男性が、客の呼び込みをしているのです。多分、老舗でしょう。松坂屋前ですから一等地です。扱っているのは女性用バック類ですが、声の大きさに反比例し客は一人もおりません。目の前は人込み、向かい側の歩道にはH&Mを目指す長い列。少し先のユニクロは客で一杯なのに、この店には入ってこないのです。
 どうしてなのでしょうか。歩きながら思い出したのは、オンワードのジルサンダー買収です。オンワードの今年3月から5月の売上高は前期比△3.9%と減少しました。以前は国内デパート内の常勝将軍でしたが、ここ数年かつての勢いがなくなって、海外高級ブランドに負けていました。そこで投資したのがドイツの高級ファッションブランド・ジルサンダーです。華美な装飾をそぎ落とした作風が特徴のプレステージブランドですが、この買収になるほどと思います。
 オンワードブランドでは海外勢に負けて、売上が獲得できないのです。世界で評価されている日本人ファッションデザイナーは何人も輩出していますが、日本のアパレル企業は、ユニクロ以外は世界で成功していません。不思議です。

ビール売上

 第3のビールが売れています。これは発泡酒とは別の原料と製法で、最大の特徴は、酒税法上「ビール」と「発泡酒」にしないために、原料を麦芽以外にする発泡酒に、別のアルコール飲料を混ぜていることです。
 今年上半期のビール系飲料(ビール・発泡酒・第3のビール)の出荷量で、サントリーがサッポロを抜き、初めてシェアで三位に浮上したことが話題となりました。
 その要因は、サントリーの高価格ビール「ザ・プレミアム・モルツ」が上半期で前年同期比20%増と伸びたことと、第3のビール「金麦」が同37%増と好調に推移したことです。加えて、他社と一線を画した価格戦略も奏功しました。キリン、アサヒとサッポロが順次値上げを実施するなかで、サントリーは業務用を値上げしたものの、家庭用の缶入りの価格据え置きを決めたことも大きいのです。

イギリスの出版社

 イギリスでも「大人のぬりえ」が売れ出したというので、ロンドンから列車で1時間のノーサンプトン駅へ、そこから車で15分、道路が突き当たった町外れのバラック建て出版社へ訪問し業績を聞いてみました。イギリスも世界各国と同じく経済低迷下なのですが、この出版社は不思議と世間と反比例して伸び始めていると語り、その要因は価格の安さにあるといいます。立派な風景画ぬりえブックの価格がたったの50ペンス(100円)、卸は22ペンス(44円)という徹底した低価格路線です。

スマイルライン

 人は笑うと唇の両サイドがつりあがります。これが今の時代のマーケティングを示しています。つまり、高価格帯と低価格帯のアイテムだけが伸びているのです。以上。

投稿者 lefthand : 07:02 | コメント (0)