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2009年03月26日

2009年4月例会のご案内

経営ゼミナール2009年4月定例会(350回)ご案内

4月例会は4月20日(月)、山梨県北杜市経営の「増富の湯」に日帰りでまいります。

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日本には世界的に著名なラジウム温泉が三か所あります。一つは秋田県の玉川温泉、次は鳥取県の三朝温泉、それと山梨県の増富温泉で、昔から治療効果があることで知られている名湯です。
しかし、増富温泉は「信玄の隠し湯」として地元ではよく知られているのですが、一般的にはあまり知名度が薄いところです。
だが先日訪問し、いろいろ検討して分かったことは、源泉は勿論よろしいのですが、付近一帯の散策でも体に元気を与えてくれる何かを持っているところだ、ということです。
今回は、この「増富の湯」の経営実態から時代の動きをつかみ、ついでに効能効果が高い源泉風呂に入って、日頃の疲れを癒し、希望者は自然浴の「命の径」を散策します。
日程は以下の通りです。ご都合をご検討いただきご参加をお待ちしています。

【期日】4月20日(月)
【場所】増富の湯・・・中央本線韮崎駅よりバスで約一時間
    〒408-0102
    山梨県北杜市須玉町比志6438
    TEL:0551-20-6500 担当 小山芳久総支配人
【日程】
(1)韮崎駅各自集合 10時
(2)増富の湯のバスにて増富の湯へ
(3)11時から12時 増富の湯概況と今後のビジョン構想説明
(4)12時から13時 入浴
(5)13時から15時まで 昼食と質疑応答
(6)15時過ぎに増富の湯のバスにて韮崎駅へ
(7)韮崎駅発16:23 新宿着18:07で戻る
(8)車で参加の方は、直接増富の湯にお出でください。

※新宿から電車利用の場合
JR特急スーパーあずさ5号/新宿(8:00)→→甲府(9:29)
【乗り換え】→→JR中央本線・小淵沢行/甲府(9:33)→→韮崎(9:46)
※片道4,330円(乗車券2,520円 特別料金1,810円)

* 会費 オブザーバー参加の方は、当日会費として1万円をご用意下さい。
* 問い合わせ 
  出欠:編集工房 代表 田中達也 
  電 話:03−6806−6510
  FAX:03−5811−7357

お申し込みはこちら

増富の湯案内チラシのダウンロード

投稿者 lefthand : 23:25 | コメント (0)

2009年5月例会の予定

5月は18日(月)に開催いたします。

5月は
「丸の内再開発から見る大都市街づくりの方向性」というテーマで、
三菱地所 ビル開発事業部長 遊佐謙太郎氏
大國道夫・都市・建築総合研究所 代表取締役 大國道夫氏
のお二人をお迎えします。

テーマは環境問題です。時代はグリーン・ニューデイール政策の世界的競争となり、クリーンなエネルギーの開発が急ピッチで進められています。
一方、世界人口の増加と都市集中化はさらに進んで、居住環境としての世界、特に大都市は多くの問題を抱えているのが実態ですが、その状況下、着実に実績を積み上げ変貌を遂げている都市があります。
それは我々の東京であり、その中でも中心地である東京駅周辺地区であり、経営ゼミナールが開催されている銀行会館が位置する「大手町・丸の内・有楽町地区」でありますが、その変貌する実態をトータルに理解しないまま、毎日のように通り過ぎている。
それが多くの人の実態と思います。

そこで、5月は
「丸の内再開発から見る大都市街づくりの方向性」というテーマで、

● 三菱地所 ビル開発事業部長 遊佐謙太郎氏
● 大國道夫・都市・建築総合研究所 代表取締役 大國道夫氏
 
のお二人をお迎えします。
丸の内再開発の動向と環境対策については遊佐謙太郎氏から、世界の最新都市再開発実態(ロンドン・パリ・ベルリン・ビルバオ)については、実際に現地を視察研究された大國道夫氏からご発表いただきます。
今回のゼミナールを通じて、日頃何気なく通り過ぎている東京駅周辺地区を過去・現在・未来にわたって認識・理解し、併せて、東京と他の世界的都市と比較することで、幅広い視点からディスカッションしてまいります。
時代感覚を磨く良い機会と思います。皆様のご参加をお待ちしております。

投稿者 lefthand : 23:05 | コメント (0)

2009年3月例会報告

経営ゼミナール例会
2009年3月16日
『EUと日本との関係─ギリシャが日本に期待するものとは─』
 駐日ギリシャ大使館公式通訳、早稲田大学法学部助手
 カライスコス・アントニオス氏

去る3月16日(月)、第349回例会が行われましたので報告いたします。

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今回は、ギリシャ人のカライスコス・アントニオス氏に、ギリシャの現地事情や日本、EUとの関係についてお話を伺いました。

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カライスコス氏は法律家であり、また早稲田大学の助手を務められる傍ら、日本においてはギリシャ大使館の通訳を、ギリシャにおいては日本大使館の通訳をされておられます。通訳を通して、様々な経営のトップの会談に立ち会われたご経験から、ギリシャの実態について様々な情報をいただくことができました。

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ギリシャについて

ギリシャはEU加盟国です。
1981年に10番目の国家としてEUの仲間入りを果たしました。
その後、2001年にユーロを導入することになるのですが、これを機にギリシャは急激な物価高に見舞われました。例えば、ユーロ導入前のギリシャの通貨はドラクマでしたが、その頃はギリシャの朝市などでは「たったの100ドラクマ」という謳い文句があったそうです。しかし、ユーロ導入とともにそれが「たったの1ユーロ(=340ドラクマ)」に変更されたそうです。通貨切り替えの際の便乗値上げが横行したということです。その後も物価は上昇し、現在では日本とそう変わらない物価水準となっているそうです。
一方、労働賃金はどうかと申しますと、物価上昇に合わせて賃上げされたということではないようです。ギリシャの2005年の最低賃金は668ユーロ(約87,000万円)で、EU加盟国の中で7番目の水準です。

占領時代

ギリシャは、第二次大戦後独立を果たすまでの約400年間、他国に占領されていました。トルコ、イタリア、ドイツなどが主な占領国でした。この過去が、ギリシャ国民に大きな影響を及ぼしています。
ギリシャ国民の基本的思考法として、「今を楽しく過ごす。今得られるものは今得る」という考え方、すなわち「将来のことよりも、今のことが大事」と考える国民性があるのだといいます。
それは、長い占領時代を経験し、「どんなにがんばっても、明日殺されてしまうかもしれない、どんなに蓄財しても、すぐに取り上げられてしまうかもしれない」と考えてしまうことが長く続いたせいではないかと、カライスコス氏は分析します。
このことは、ギリシャの経済や会社経営のあり方に大きな影響を与えています。

モザイク

ここで、ギリシャ人について触れます。
「ギリシャ人はモザイクである」と、カライスコス氏は語ります。
現在のギリシャ人の髪や目の色は栗色から金髪まで様々であり、また、肌の色も白から褐色までいるそうです。占領時代を経験したため、混血が進んだとの見方もあります。ヨーロッパとアラブのモザイクであると、カライスコス氏は表現されました。

この「モザイク」は、国民性に対しても言えそうです。
ギリシャ人は、将来のことより今のことを重視して考える傾向があると話しましたが、そのために、自分の意見を押し通す傾向も見られるようです。今そこにある自分の利益のために意見を曲げないため、話がまとまらないのだそうです。外見、考え方、様々な面で「モザイク」である、ということなのです。

ギリシャの経済

ギリシャの経済は、他のEU加盟先進国と比較して、競争に参加しうるだけの力を有しているとはいえないというのが現状のようです。
ギリシャの主要貿易相手国は、1位がドイツ、2位がイタリアです(輸出/輸入とも)。経済的にはドイツの影響が大きいということです。日本は残念ながら、貿易においては主要な相手国ではないようです。しかし、ギリシャ国内の自動車のシェアは圧倒的に日本車だそうです。80%ぐらいは日本車なのではないかという感触を、カライスコス氏は持っておられます。

ギリシャは、EU経済圏の中でどんなことを目指しているのでしょうか。
カライスコス氏が通訳を務めた中で、あるギリシャの経営者がこんなことを述べていたそうです。
「私たちはギリシャをバルカンの中心地にしたい」
バルカンとは、アルバニア、ギリシャ、クロアチア、ブルガリア、ボスニア・ヘルツェゴビナ、マケドニア、セルビア、モンテネグロ、ルーマニアの9カ国のことです(『知恵蔵』朝日新聞出版より)。
このことは、ギリシャ人自らがEU中心国であるフランスやドイツなどとの競争を諦めていることを示していると、カライスコス氏は感じたそうです。ギリシャの経営者は他国の企業に、ギリシャを中心に、周辺のバルカン諸国に経営を広げていってくださいとPRするのだそうです。

もうひとつ、ギリシャ人は自国の持つ資産を上手に活用することが不得手なようです。
2004年、アテネでオリンピックが開催されました。
ギリシャでオリンピックが開催されることは、歴史的にも大変特別な意味を持つように思います。もちろんその経済効果も期待したいところです。
しかし、このオリンピックをギリシャは活かせませんでした。
これは、先で述べた国民性が大きな原因ではないかと、カライスコス氏は語ります。オリンピックをきっかけとして企業を誘致したり、産業を広げるという長期的戦略よりも、オリンピック期間中にどれだけ稼げるかに注力し、終わってしまえばもとの生活に戻ってしまったからです。
もうひとつ、政治的な事情もあったことも付記しておきます。
アテネオリンピックが開催されたのは2004年8月ですが、その4カ月前の4月に政権が交代しました。11年続いた「全ギリシャ社会主義運動(PASOK)」から「新民主主義党(ND)」に政権が交代したのです。そのため、オリンピックの経済的活用よりも政権を維持することに注意が注がれ、オリンピックは大会そのものを成功させることのみに留まったという内情もあったようです。

ギリシャの産業

ギリシャは人類史に大きな足跡を残す偉大な歴史文化を有していますが、産業面でも世界に誇るべき産物があります。
それは、オリーブオイルです。
オリーブオイルは、生産量ではイタリア、スペインに及びませんが、その品質で他を圧倒しているのだそうです。
ギリシャのオリーブオイルは、生産量の90%以上が「エキストラバージンオイル」なのだそうです。エキストラバージンオイルとは、酸度が1%以下のものについて与えられる最高級の品質の名称です。それほど品質が良いのです。
しかし、ギリシャ製のオリーブオイルはほとんど知られていません。
ギリシャは、ブランドづくりが不得手なのです。
ここに、自国の資産を上手に活用することが不得手であることが象徴的にあらわれているといえるでしょう。

もうひとつ、ギリシャが誇る産物にワインがあります。
ギリシャには、自国にしか栽培されていない種のぶどうが数種類あり、これで作ったワインは日本人の口によく合うと、カライスコス氏は絶賛されています。また、酒の神バッカスはギリシャ神話の神(ぶどう酒の神ディオニソス)です。古代ギリシャでは、飲むときに使用する杯によって味が変化することがすでに知られており、ギリシャワインの歴史は古代ギリシャにまで遡ることが明らかにされています。
しかし、残念ながらこれも知られていません。
このことも、言わずもがな、ブランドづくりが不得手であるために、他国にその座を譲ってしまった結果といえるでしょう。

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ギリシャの課題

ギリシャのこれからの課題は、まさにこのブランドづくりにあるといえるでしょう。
カライスコス氏は、ギリシャ人のブランドづくりの不得手さの原因を、次のように分析されています。

1)ギリシャ人の気質
ギリシャにはこのようなことわざがあるそうです。
「たくさんのニワトリが鳴くところでは、なかなか朝が来ない」
皆がそれぞれ自分の意見を持っていて、皆それが正しいと思っているので、ひとつにまとまらないという例えだそうです。ギリシャ人は、皆がギリシャのためではなく、自分のために行動するので、意見をまとめることが非常に困難だということなのです。

2)形よりも中身
以下の事例は、カライスコス氏が通訳として関わった日本企業との取引であった事例だそうです。
オリーブオイルを日本に輸出した際、フタが開かない、フタが空回りする、ヨゴレやラベルが曲がっているといった製品が含まれていました。日本側はそれを不良品としてクレームをつけたのですが、ギリシャではそのような製品はクレームのうちにならないという見解を示したそうです。
日本ではクレームとなって当たり前のことが、ギリシャでは通用しない。互いの主張が互いに理解できない。このことが、ギリシャとのビジネスを非常に困難なものにしている原因のひとつなのだそうです。
ギリシャのオリーブオイルは品質がいいから、他のことに気を遣う必要はない。まして宣伝などせずとも向こうから買ってくれるのだ。ギリシャではこのように考える傾向があるそうです。

せっかく世界に通用する品質を持ちながら、商取引の面で不利な立場に自ら立っているような気がしてなりません。

ギリシャの成功事例に学ぶ

少しギリシャのネガティブな要素をお話ししすぎたように思います。
このような国民性を持つギリシャにも、世界的に成功を収めている企業はもちろんあります。
そのひとつは、宝石やアクセサリーのブランド「フォリフォリ」です。
http://www.follifollie.co.jp/
フォリフォリは、世界25カ国に350以上の販売拠点を持つグローバルなブランドです。
フォリフォリは、ギリシャ人の不得手なブランド構築を見事に成功させている好例といえるでしょう。
フォリフォリの世界進出は、日本での成功がきっかけとなったのだそうです。
すなわち、海外ブランドが好きな日本で成功することは、世界に進出するためのとてもよい方法であるということなのです。
ということは、ギリシャのブランドづくりをするためには、日本にうまくプロモートするという戦略が考えられるのではないでしょうか。
ギリシャのブランドづくりは、自ら持つ高い品質をいかに受け入れられやすい市場にアピールするかということを考えることによって、実現性の高いものになるように感じました。

カライスコス氏への期待

自らの不得手を矯正するのではなく、得意な者の力を借り、受け入れられやすいマーケットでそれを伸ばしていくことが、ギリシャのブランドづくりの近道と感じるに至った、今回のゼミナールでした。
そして、その役割、すなわちギリシャと日本との架け橋にとどまらず、ギリシャの素晴らしい品質を適切にプロモートする仕掛け作りを、カライスコス氏に是非とも担ってほしい。
これが、我々がカライスコス氏に期待するものです。
日本でお生まれになり、ギリシャで少年〜青年時代を過ごされ、今また日本でご活躍のカライスコス氏に、もっともっとギリシャの良さをお伝えいただき、ギリシャの優れた製品を日本でブランドとして花開かせてほしい。そう願いつつ、今回の報告といたします。

(事務局 田中達也・記)

投稿者 lefthand : 22:57 | コメント (0)

2009年03月21日

2009年3月20日 苦しいからこそ未来への「はずみ」を考える

YAMAMOTO・レター
環境×文化×経済 山本紀久雄
2009年3月20日 苦しいからこそ未来への「はずみ」を考える

金は世界を映す出す鏡

米連邦準備理事会(FRB)は、3月18日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で、長期国債の買い取りなどを含む追加の金融緩和策を発表したところ、外国為替市場でドルが下落し、ニューヨーク金先物相場は時間外取引で4月物が一時前日比37.2ドル高の1トロイオンス(約31グラム)954.0ドルという大幅高となりました。

ちょうど一年前の3月も、ニューヨーク金先物相場で1,000ドル超えしましたが、金は周期的な動きを示すものなのでしょうか。
金はどうも違うようです。趣味の世界だった金貨が、昨年10月から12月にかけて突然売れ始め、世界の金貨需要が前年同期比3倍の67.9トンに達しました。一人当たりなら数十グラムに過ぎない、庶民の現物買いが積み重なって上がったのです。
金価格の高まりは、世界に潜むリスクの裏返しともいえます。金の絶対的価値は昔から変わっていなく、変わった方は世界であり、市場であり、それをつくり出している人間たちで、その変化が、ある時は買いとなり、ある時は売り、金の相対的価値を変えていっているのです。「金は世界を映し出す鏡」と思います。

アメリカ経済

公的支援で破綻を回避した米保険大手AIG幹部へ、高額賞与が支払いされていたことについて批判が渦巻き、共和党のグラスリー議員は「日本の例にならいAIGの幹部が米国民の前で頭を下げ謝り、辞任か自殺すれば私の気持ちも幾分晴れる」と発言し、オバマ大統領も記者会見で怒っていることを表明し、とうとう支払った金額に対して高率の税金をかけるようですが、すべてこの問題もアメリカ発の金融危機が招いたことです。
今回の金融危機が始まるわずか一ヶ月前の2007年7月、シティグループの当時の会長が「曲が流れる以上、踊らなければいけない」と発言しましたが、これは「いずれ限界がくることは分かってはいるが、まだ降りられない」という特異で危うい心理でありながら、目前のマネーゲームに狂奔した姿を示しています。
おかげで金融危機以後、何でもありの経済対策が打ち続けられていますが、開いた大穴をふさぐ「はどめ」対策の有効策を打ち出し得ないままです。
ノーベル経済学賞学者のクルーグマン米プリンストン大教授からは「欧米の財政政策は不十分で、失望している」と、アメリカやEUの景気対策を鋭く批判し、さらに、矛先はオバマ大統領にも向かい「この経済危機に対するオバマ政権の対応は、90年代の日本にあまりにも似ている。オバマ政権は後手に回っている」と厳しい見解です。
共和党グラスリー議員もクルーグマン教授も、いずれも日本を例えにしているところが、日本人としては気になるところですが、日本しか参考になる前例がないのでしょう。

需給ギャップ

クルーグマン教授は続けて「アメリカの議会予算局による予測では、3年後には、米国経済の生産能力と実際の生産高に2兆9,000億ドル(280兆円)の差が生じる」と警告を発していますが、これは需給ギャップ、それは需要にあたる実際のGDPと、供給にあたる企業の持つ生産設備や労働力によって生み出す潜在GDPとの差で、これがマイナスになっていると述べているのです。
日本の需給ギャップについては、2008年10月から12月はマイナス4.1%であると内閣府が発表し、金額では20兆円とみています。また、2009年1月から3月期ではマイナス6.9%、金額は36兆円(三菱UFJ証券景気循環研究所)と試算し、BNPパリバ証券は2010年にはマイナス10.3%となり、年間でほぼ50兆円の需要不足が続くとみています。
同様の見解は野口悠紀雄氏(早稲田大学教授)も同じで、「輸出の減少だけでもGDPの5%に相当する25兆円、設備投資も考慮に入れれば、GDP 10%分の50兆円が、有効需要の落ち込みとして、日本経済を襲う」と予測しています。

ソウルでの話題

硬い内容が続きましたので、話題を変えてソウルで聞いたことをいくつかお伝えします。

●韓国では3月危機説が盛んにいわれている。韓国の金利が約4%程度であるのに対し、日本の金利はゼロ%。そこで日本から金を借りて不動産投資した人が多い。ところが、ウォン為替レートの急落により、円が実質的に高くなって、その決済が3月に集中している状況から危機が来るだろうと。これだけ為替が急落するとは予想を超えていたのである。

●韓国では若者の失業率が非常に高い。そこで言われているジョークが「38歳までは安心して働きなさい。45歳は定年の年だ。56歳まで働くのは泥棒だ」。意味は、若い人の仕事が少ないので、働いている年寄りは若者に譲れということ。

●韓国も少子化である。それも儒教の影響か男の子を欲しがる傾向で、女の子の出生が少ない。学校のクラスでも明らかに女子がすくない。結果として男性があまっていて、結婚相手として外国人が増えている。ベトナム、フィリピンなどだが、子供が小学校の先生から「成績が悪いと外国人のお嫁さんしかいない」といわれ、家に帰ってきて「僕は外国人のお嫁さんは嫌だから一生懸命勉強する」と発言したという。真面目な話である。

●今、ソウルで流行っているジョークがある。韓国では子供を留学させることが多く、その場合母親が留学先について行くことが多く、残った父親は1年に一回子供に会いに行くが、これを「雁の親」という。しかし、今は不景気で「ペンギン親」となってしまった。1年に一回も会えない。飛べないという意味である。

●韓国の教育熱は世界一といわれている。そこで有名塾が位置している所が、地価が高いことになる。争って有名塾のある地区に引っ越すからである。

●韓国では最高額紙幣となる5万ウォン札が6月に発行される。今の最高額紙幣の1万ウォン札は発行から36年。物価上昇で財布がかさばるなど不便が指摘されていた。5万ウォン札の図案が公開された。表の肖像には詩や絵画など幅広い才能を発揮した朝鮮時代の女性芸術家、申師任堂(シンサイムダン)が描かれている。
ただし、同時に発行が予定された10万ウォン札は、図案に使う古地図に日本と領有権を争う竹島(韓国名・独島)が韓国になっていないので中止が決まった。
政府は「高額紙幣が物価上昇を招く懸念がある」などと説明しているが、領土問題が真の原因との見方が根強い。

何も考えられない

ソウルでガイドしてくれた50歳の女性。子供は長女が高校3年、長男が中学三年の二人。教育費として月に15万ウォン、今のレートで10万円だが、去年のレートでは15万円だから大変で、今は長女が大学に入って卒業し就職、長男が大学に入るまでの5年間、子供のことだけで頭がいっぱい、自分の未来など一切考えられない、と眉間にしわを寄せて真剣に何回もいいました。
黙って聞いていましたが、世界経済と同じではないかと心の中で思いました。
日米欧に新興国を加えた20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議が、3月13日・14日にロンドン近郊で開催されましたが、金融危機後の世界経済のあるべき姿を論議し、そのシナリオの延長戦として、世界経済を上向かせる「はずみ」処方箋を考えるのではなく、決議されたのは「非伝統的な手法を含む、あらゆる金融政策を活用する」でした。とにかく今の実体経済の悪化を止めることしか頭にないようです。アメリカ経済の原動力であり大問題の「過剰消費」を疑問視する本質的な議論はなかったのでしょう。

苦しい時ほど未来への「はずみ」を考える

苦しい時に苦しいと思うのは当たり前です。しかし、苦しいからこそ、その中で未来への「はずみ」処方箋を見つけだし、そこへ向かって明るい展望を持ちつつ、現実の苦しさの中で対応していく。このアドバイスにガイドは頷きました。世界経済も同じです。以上。

【4月のプログラム】

4月10日(金)16時   渋谷山本時流塾(会場)東邦地形社ビル会議室
4月17日(金)14時 温泉フォーラム研究会(会場)上野・東京文化会館
4月20日(月)    経営ゼミナール例会 「増富の湯」日帰り現場見学

【ジョン万次郎のご子孫を招いての特別講演会】
★ジョン万次郎講演会★ 4月15日(水)18:30 上野・東京文化会館

投稿者 lefthand : 20:28 | コメント (0)

2009年03月05日

2009年3月5日 お得感ネットワーク

YAMAMOTO・レター
環境×文化×経済 山本紀久雄
2009年3月5日 お得感ネットワーク

韓国・釜山

韓国の釜山に行きました。成田から金海国際空港に降り、タクシーでホテルに行こうと乗り場に行くと、黒塗りと青プレートの二種類の車があります。黒塗りは模範タクシー、青プレートは一般タクシー、しつこく呼びかける一般を避けて模範に乗り、市内まで約15km、中心地のホテルについて支払った金額は22,500ウォン。

空港で一万円両替したら152,000ウォンでしたから、1ウォン=0.0658円になります。従ってタクシーの22,500ウォンは1,480円です。
約15km走ってこのタクシー料金、ずいぶん安いと思いますし、得したと感じます。これは食事でも同じです。釜山を中心にした南部でしか味わえない珍味の「テジクッパプ」、豚骨スープに大ぶりの豚肉がいっぱい入って、スープは塩味がなく、塩や唐辛子ベースの薬味であるタデキなどを使い自分で調味するものです。さらに、いくつかの小皿に青い大きい唐辛子と生のニンニクが10個、それと白菜キムチや野菜もついてくるのにはびっくりしますが、市内繁華街西面ソミョンのテジクッパプ通り名物だけのことはあります。
食べ終わるとお腹がいっぱいで、支払はいくらかと聞くと4,500ウォンですから約300円です。小皿がたくさん出て、コース料理という感じでずいぶんお得感が残ります。

デパートで

テジクッパプ通りを出て、近くのロッテデパートに入り、8階の免税売店までエスカレーターで上がっていくと、妙な感覚になってきました。乗っている人が皆右左関係なく、バラバラに立っているのです。東京では左側に乗り、大阪では右側に寄って、反対側を急ぐ人用に空けていますが、釜山は関係ないようです。
どうしてなのか。地元の人に聞いてみますと、以前に一度、片側乗りを奨励したことがあったが、一方に重量が偏りすぎ、エスカレーターが壊れることが頻発したので、今は自由にしているというのですが、ちょっと信じられない理由です。だが、実際に釜山では、スーパーでもどこでも、エスカレーターで前の人を追い抜くことは難しい状態です。
エスカレーター終点8階の免税売店では、7階までの商品を安く売っています。ここで買うと、商品を韓国から出国する際の空港または港で受け取るシステムとなっていて、円安で日本旅行が盛んであった少し前は、韓国人で8階はあふれていましたが、今は客が日本人しかいません。
日本人観光客によって、韓国旅行業界は休日返上という空前の活況、毎日、日本人観光客のみ対応しているのです。結果は、ソウルのシティホテル予約がうまっており、ソウルからあふれた日本人が釜山に来るので、釜山のホテルも満杯です。

BB化粧品

8階の免税売店の中は、世界の著名ブランドショップが華やかに並んでいますが、そこには誰も客がいません。その中、客が異常に群がっているところがありました。それはメイドイン・コリアのコーナーです。それもBB化粧品が置いてある一角だけが、異様な熱気にあふれています。勿論、若い女性が多いのですが、男性も結構います。
一人の男性に聞いてみました「このBB化粧品はどうしてこんなに人気なのですか」「Ikko(いっこー)さんが推奨しているからですよ」「へえー。Ikkoさんて誰ですか」「知らないのですか。あのテレビによく出るヘアーメイクアップアーチストですよ」「お土産に奥さんに買って帰れば喜ばれますよ」そういえば、Ikkoがお勧めしますと書いて、一人のあまり美人とは思えない女性らしき人物のパネルがあります。
IKKOとは本名豊田一幸、名前の音読みに由来するらしく、美容師を経て、女性誌の表紙・ファッションページや、テレビ・CM・舞台と、最近では数多くのバラエティに出演し、トークショー等でも活躍していますが、このIkkoが勧めるBB化粧品とは何か。韓国の新聞・統一日報(2008年9月17日)で以下のように紹介されています。
「BBクリームとは、『Blemish Balm』クリームの略で、Blemishはキズ、Balmは香油といった意味を持つ。1980年にドイツで開発され、韓国では90年代から高級エステ店を中心に使われはじめた。韓日両国でBBクリームのトップシェアを誇る「ハンスキン」は06年、韓国の漢方で使われる14種類の薬草を混ぜたBBクリームを一般向けに韓国で販売しはじめた。 
日本のテレビ番組でBBクリームが紹介され、ソウル市内の販売店に日本からの観光客が殺到。売り切れが相次いだ。美容液からファンデーションまでがBBクリーム1本ですむという便利さが好評を得たからだ」

内需拡大しかない

日本では、ここずっとモノが売れないという時代が続き、流通業はどこでも苦戦しています。その理由として、経済状態が良くないからだという見解は正しいのですが、中には絶好調の業態もあります。
先月もお伝えしましたが東京ディズニーリゾートには過去最高の入場者が訪れているのです。また、マクドナルドの好調、ユニクロの店頭が好調、まだまだたくさん事例はあります。これらをどのように考えたらよいのでしょうか。
金融危機で外需が激減したわけですから「内需拡大」が日本経済にとって大事なことは誰もが承知しています。今はデフレ経済下ですから、人はモノを慌てて買いません。インフレ経済下では、明日の価格が上がると予想しますから商品を早く買います。
しかし、今はその反対で家計は「予算制約」された財布となっているので、拡大消費に結びつかないのです。ですから、消費を伸ばすためには、人々の財布の中に、具体的にお金を振り込んでやらなければ増えません。
実は、この財布の役割を果たしているのが、米国では、「クレジット・カード」であり、「自動車や自宅担保のノンリコース・ローン」であり、日本では女性の大好きな「ポイントカード」や「クーポン券」JALの「マイレージ」などです。自分の感覚でも「マイレージ」がたまれば、これを利用しようという気になります。
この意図から計画された国の政策が、ようやく国会を通ることになった定額給付金でして、予算制約された家計財布の中に、国から2~3万円のお金を振り込んであげて、ちょっといい気持ちにさせ、これを機会に使ってもらって、その後の消費にも結び付けようというのが目的です。
これについては、いろいろ議論はありましたが、決まったものですから、この定額給付金をどのように活用するか、という視点で流通業界は検討したほうが良いと思います。
例えば、市町村と連携して、この定額給付金に該当する温泉一泊券などをつくり、それを利用してくれたらこのようなサービスをするなどの、前向き対策を考えたほうがよろしいと思います。
流通業界が、定額給付金は僅かで、大きな効果がないと考え、手を打たないままで過ごすのか。それとも、考え方を変え、これをきっかけに新しいワクワクするコトに結び付けようとするか。その思考差は今後に大きく影響していくと思います。

時代は変わった

どうしてモノが売れなくなったのか。これを論じだすと大論文になります。しかし、感覚的にいえば、時代の流れが「モノ」から「情報」に変わって、次のところ、それは「感覚のネットワーク」に向かって動いているような気がしています。
例えば、釜山のホテルロビーに溢れている日本人観光客、円高ウォン安という事実情報をきっかけに、韓国に旅行しようと思ったのでしょうが、それは来てみてお金を使ってみて、「お得感」を実感できた人の体験が、人々へ口コミネットワークとなって、共通感覚となり、それなら自分も、という気になって、韓国行きになったのだと思います。
また、ユニクロのアイテム、買った人が「この価格で、この品質」というお得感であることはよく知られています。BB化粧品もIkkoが推奨したこともありますが、買って使った人の間に「なかなか良い。なるほど、これはお買い得だ」という「お得感」情報がネットワーク化され、それによって次から次へと買いに訪れているのではないでしょうか。
時代は動き、常に変わり、事象として眼前を流れて行きます。今はデフレ経済下、人々の気持ちの中へ「お得感」ネットワーク化を作りだせるか。それが課題と思います。以上。

今月の時流解説 3月13日(金)16時~18時
 (株)東邦地形社 8階会議室 
 渋谷教育学園・渋谷中学高等学校正門前 TEL:03-3400-1486
 参加費1,000円

投稿者 lefthand : 20:28 | コメント (0)