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2012年12月06日

2012年12月5日 モチベーション(上)

YAMAMOTO・レター
環境×文化×経済 山本紀久雄

2012年12月5日 モチベーション(上)

2012年も今月で終わります。そこで、今回の衆議院選挙と来る2013年へ、どのようにモチベーションを持ったらよいのか。それを今号と次号で検討したいと思います。

モチベーションとは

最初は定義。三省堂辞書サイトによると「モチベーション(motivation)とは、意欲の源になる『動機』を意味します。例えば、ある人が『仕事を頑張りたい』という意欲を持っているとすると、その意欲の源になる『彼女にモテるから』『お金がもらえるから』などの動機付けこそが、まさにモチベーションということになります。もっとも一般には、動機の結果として現れる意欲(=仕事を頑張りたいという気持ち)の方を、モチベーションと表現しているようです」とある。

ザッケローニ監督

日本サッカー代表チームのアルベルト・ザッケローニ監督(59)が24日、在日イタリア大使館で母国の「イタリア連帯の星勲章・コメンダトーレ章」を受章した。

日本との友好関係を深めたことなどが授賞理由で、ザッケローニ監督は「サッカーの世界は1日で大きく状況が変わるので、話を聞いた時できるだけ早くしてくれとお願いした」と笑わせ「代表の活躍は協会、スタッフ、選手、サポーターのおかげ。自分の仕事が認められて誇りに思う。これからもいい結果を目指してまい進する」と述べた。

ザッケローニ監督を選任したのは日本サッカー協会。ワールドサッカーに出場したいというモチベーションによって、2010年8月、難航のうえザッケローニ監督を決めたが、今ではその選考結果に日本人の多くが満足している。

では、ザッケローニ監督の手腕はどういうものか。それは選手(チーム)をひとつにまとめることが上手いという、チームマネジメント(チーム作り)につきる。

つまり、選手(チーム)に目的達成に向かっていこうとする明確なモチベーションを持たせることで、一人ひとりの力量を発揮させていることに優れているのである。

トルシエ元監督の評価

11月22日、元日本代表監督のフィリップ・トルシエ氏が、日本サッカーの現状について自身の考え次のように語った。(FIFA.com)

「トルシエ氏は、日本が10月の親善試合で母国であるフランスにアウェーで勝利したことについて、『驚きがあったか』と問われた際、『フランスはまず実験的なメンバーだったし、スペインとの大事な一戦を控えていたことは事実だね』とコメント。

しかし、『日本は草の根でサッカーを普及させている。ユース世代の育成は日本にとって必要で、効果的であり、安定をもたらす。日本の今の成績に関しては驚かないよ。育成に関しては世界トップ3に入ると思う』と語り、現在の日本代表が残している好成績の要因は、日本サッカー協会の育成方針にあると述べた。

ボルドーのタクシードライバー

11月20日、フランスのボルドーのサント・クロア・デュ・モン地区へ向かった。いつも頼んでいる顔見知りのタクシードライバーで、とてもお喋りで何かと話したがる。

ボルドーの「城壁街道」と称される、サント・クロア・デュ・モン地区に行くには、ボルドー市内から車で約一時間かかるが、その間、ドライバーはずっと話を続ける。

その話の中で「日本がフランスに勝っただろう」というので「サッカーか」と聞くと「そうだ」という。そこで「フランスは残念に思っているだろう」と尋ねると「全然、気にしていないよ」「どうしてだ」「簡単さ。フランス人はモチベーションがないと気合が入らないのさ」「へえー」「俺たちはラテンだからね」という。
この発言背景には、格下の日本との試合ではモチベーションが出ない。香川選手のゴールによって1対0で負けたが、あまり重要ではないと判断しているのだ。

その通りで、日本との試合が10月12日、そのすぐ後の16日には、ワールドカップ欧州予選グループI第4節で、前回の世界チャンピオンのスペインと、アウェーのビセンテ・カルデロンで戦い1-1のドロー、スペインが2006年11月から継続していたホーム連勝記録を25でストップさせた試合は、日本戦とは別人のようなフランス人であって、さすがと思わざるを得ない。

日本人への評価

このボルドーのタクシードライバー、日本人は真面目だからなぁと、誉め言葉か、けなしなのか分からない発言をした後、この前、日本人のボルドーワイナリー巡りで運転した際、日程表を見たらこう書いてあったと言う。

月曜日 ワイナリー視察 火曜日 ワイナリー視察 水曜日 ストライキ
木曜日 ワイナリー視察 金曜日 パリに戻る

この中で「ストライキ」とは何だろうか。多分、休みを取るのだろうと想像していたが、そうではなく「ストライキ見物」というのでびっくりしたと言う。

最近、日本ではストライキがないからだと説明受けたが、スト見物まで計画表に書き入れるという日程表つくり、全くフランス人には考えられない。何でも計画的に真面目に行動するのが日本人だと思うが、堅苦し過ぎないか。と運転中なのに前方を見ないで、大きく後部席の当方を振り返り「フランスも日本みたいに真面目にしたら、世界中のどの国と試合しても全勝だろうが、俺たちはラテンだから、そうはいかないよ」「やはり、モチベーションがないとダメなんだ」と大きくウィンクする。

ドイツの友人が介護専門に

フランスの次はドイツ・カールスルーエに向かった。このカールスルーエは今年9月のレターでお伝えした日独交歓音楽祭で来日した、独日協会合唱団「デァ・フリューゲル」(注 翼という意味)のある都市である。

その合唱団の一員であったドイツ人男性、今年の合唱団来日メンバーに入っていなかったので、どうしたのかと尋ねると「長女の介護を24時間している」と発言する。

この男性、なかなかアイディアマンで、いつも新しい企画に基づく事業計画を熱っぽく語っていた。
だが、今回は何も事業計画は語らない。長女がどのように状況なのか、住んでいたボンで交通事故に遭い、最初は命も危ないという大事故だったが、ようやく病院は退院でき、今はリハビリ施設でトレーニング中なので、そのリハビリ施設の一室に長女と一緒に暮らし、介護に全力だという状況のみを語る。

だが、以前の事業計画を語る当時よりは一段と輝いているように感じる。

思い出してみると、このドイツ人、何回も転職し、その合間に次の事業を企画し、各方面に提案していたが、どこからも採用されない状況だった。しかし、彼は常に元気で前向きな発言を繰り返すので、よく堪えないなぁと、その精神力に感心しつつも、どうして提案計画が採り上げられないのか、ということに相談に乗ったこともあったが、その当時と比べて明らかにモチベーションが向上している。

そこで以前のように事業計画はつくらないのかと聞くと「やめた」「もうしない」「娘の介護に命をかけている」と、お節介なことは言うなという厳しい目つきになる。今や、彼のモチベーションは介護一筋なのである。

肉親は「情」で、論理ではない

このドイツ人男性の発言はよくわかる。というのも自分も義母の介護で勤め人を辞め、その結果として今の仕事につながったのだが、その時の気持ちは、家族が病気等で倒れたときは、論理的に考えてはいけないというものであった。

「情」で対応するのが家族愛であり、その「情」から出る介護にモチベーションを持つのが人間の務めだ、と判断した体験があるからである。

首相を選ぶ選挙

 日本サッカー協会のモチベーションでザッケローニ監督を決めた。来年3月のヨルダン戦に勝てば、世界最速でワールドカップ出場が決まる。結果として日本人は満足する。

日本国民のモチベーションによって12月16日衆議院選挙で首相が決まる。果たして、国民が納得し、コロコロ変わらない首相を選べるか。一人ひとりにかかっている。以上。

投稿者 Master : 2012年12月06日 06:23

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