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2009年06月25日

2009年7月例会のご案内

経営ゼミナール2009年7月定例会(353回)ご案内

7月は27日(月)に開催いたします。今月は第三月曜日が祭日につき、第四月曜日になります。

今回はベトナム実態について学びます。
ベトナム経済は、2008年に一人当たりGDPが一千ドルを突破し、国内購買力が上昇、GDPに占める個人消費割合は約60%と、中国の33%(2007年)など他の新興国に比べて高いのが特徴です。

日本のコンビニ・ファミリーマートも、この消費実態を狙って9月を目途に現地企業と合弁で運営会社を設立、年内に店舗を展開する計画を発表しました。
このようにベトナム経済へ日本企業の関心は高まっておりますが、実際のベトナム実態はどのような状況下にあるのでしょうか。

皆さんもよくご存じのとおり、ベトナムに行って驚くのは、インフラ整備の基盤である都市交通の渋滞です。今まで世界で実際に経験した渋滞の酷さでは、エジプトのカイロが一番で、その次にベトナム・ハノイ、第三位がロシア・モスクワではないかと思っています。
7月の例会では、このハノイ市の交通対策等に取り組んでいる齋藤威氏にご登場いただきます。

テーマは「ベトナムの道路交通事情と課題」です。
齋藤威氏は、2006年4月から今日までJBIC(国際協力銀行)、JICA(国際協力機構)の専門家として、年間の約半分をハノイに滞在し、ベトナムの道路交通安全計画策定プロジェクト、ハノイ市の交通安全人材育成プロジェクト等に参画し、ベトナムの交通安全マスタープランの策定や、ハノイ市の交通安全対策担当機関(ハノイ市交通局、ハノイ市交通警察部、人民委員会広報部等)の人材育成に関わっておられます。
これらの体験を通して得たハノイの道路交通事情と共に、ベトナムの現地の生活を通して経験されたベトナム社会の実態についても言及していただきます。

どの外国の情報でも同じですが、マスコミで報道されるものは表面上の一般的な報道であって、なかなか実態に切り込んだ情報はありませんし、また同時に、文字では表現できないような実態があるのかも知れません。
斎藤氏のように、現地に長期間滞在し生活経験ある方から直接お伺いするのが、最も妥当な実態把握になると思います。

 アジアの中間層が1990年対比で6.2倍の8億8千万人に達した現在、その中でも成長が期待されるベトナム社会を知ることによって、アジアに対する経済感覚を磨く良い機会と思います。皆様のご参加をお待ちしております。

【日時】2009年7月27日(月)
    午後 6:00 集合(食事を用意しています)
       6:15 山本代表の時流報告 
       6:30 齋藤 威氏発表
       8:30 終了

【場所】東京銀行協会ビル内 銀行倶楽部 4階3号会議室
    千代田区丸の内1-3-1 Tel:03-5252-3791
    東京駅丸の内北口より徒歩5分(皇居和田倉門前)
    アクセス:
    http://www.kaikan.co.jp/bankersclub/access/access.htm

【テーマと発表者】
テーマ 「ベトナムの道路交通事情と課題」
発表者 齋藤 威氏

【略歴】
齋藤威氏(さいとう たけし) 1945年生
元警察庁科学警察研究所交通部長
現TRS研究所首席研究員


* 会費 オブザーバー参加の方は、当日会費として1万円をご用意下さい。
* 問い合わせ 
  出欠:編集工房 代表 田中達也 
  電 話:03−6806−6510
  FAX:03−5811−7357

お申し込みはこちら

投稿者 lefthand : 18:24 | コメント (0)

2009年9月例会の予定

8月の例会は夏休みで休会です。
9月は14日(月)に、東京医科大学国際医学情報センター教授のJ.P バロン氏をお迎えし、日本と海外の医学実態分析と、先端医療情報についてご発表いただきます。
この病気はこの病院・医師というような、医療業界情報を把握しておくことが、自分の身を守る最大の防衛策と思います。
J.P バロン教授にご期待願います。

投稿者 lefthand : 18:16 | コメント (0)

2009年06月24日

2009年6月例会報告

経営ゼミナール例会
2009年6月15日
『これからの「日本経済」はどうなるのか』
 株式会社イムラ封筒監査役/経済アナリスト 北川宏廸氏

第352回例会が執り行われましたので、報告いたします。
今回は、日本経済の「外需」と「内需」の関係に注目し、そこから日本経済はどのような方向に向かうべきなのか、を学びました。
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ご発表くださったのは、当ゼミナールで毎年経済のお話を賜っております、株式会社イムラ封筒監査役で、経済アナリストの北川宏廸氏でした。
今回は、日本経済の現状を、外需と内需の関係から考察し、そこから見えてくる方向性についてお話くださいました。

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北川宏廸氏(左)/北川氏と山本代表

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今回の北川氏の発表は、分かりやすく詳しいレジュメをご用意くださいましたので、詳細はこのレジュメをご覧くださいますようお願いします。
>>>北川宏廸氏のレジュメのダウンロード
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内閣府が5月20日に発表した、09年1~3月期のGDP速報値は、前期比4%減、年率換算で15.2%減という、戦後最悪の落ち込みを記録しました。
この状況下、日本経済をどのように立て直していけばよいのでしょうか。
この問題について北川氏は、数値データから読み取れる分析によって、一つの明確な方向性をわれわれに示してくださいました。

実質GDP(内需/外需)の内訳

まず、【図表1】をご覧ください。


(クリックで拡大できます)

これは、2001年以降の各期(年、四半期)の実質GDP(内需・外需)の内訳を、実質季節調整後の年換算の実数値でグラフにしたものです。
2008年以降、グラフが急に短くなっていることは一目瞭然ですが、それがグラフの〔赤い部分〕の変動によるものであることも、よくわかります。
この〔赤い部分〕が「外需」です。日本の現在の不況は、外需の落ち込みによるものであることが理解できます。このことは、山本紀久雄代表が「YAMAMOTOレター」等で指摘しておりますこととも一致します。

外需の伸びは「小泉構造改革」から

また、時間軸を遡り、この〔赤い部分〕が伸びていく時期に注目しますと、2002年以降ぐいぐいと伸びていることも見てとれます。この時期に何があったのでしょうか。
この時期に政権を握っていたのは、小泉内閣です。
実は、「小泉構造改革」が、外需の急速な伸びを生んだのです。

「小泉構造改革」とは何であったのか

小泉構造改革には二つの柱がありました。一つは、銀行の不良債権処理であり、もう一つが、財政構造改革でした。
銀行の不良債権処理は、「金融再生プログラム(竹中プラン)」によって2005年3月末までに完全なかたちで終息しました。この不良債権処理が、今回のアメリカの金融危機対応の貴重なお手本になっているそうです。

もう一つの財政構造改革は、財政資金の「入口改革」と「出口改革」、それを繋ぐ「パイプの改革」から成っていました。
「入口改革」は、ご案内の通り、《郵政民営化》でした。
「出口改革」は、(1)道路公団改革、(2)政府系金融機関改革、(3)年金制度改革、(4)医療制度改革の4つ。
そして、「パイプの改革」が、(1)公務員制度改革、(2)特別会計改革、(3)国と地方の三位一体改革でした。
また、小泉改革を金融面から支えたのが、日銀の「ゼロ金利政策」と「量的緩和政策」です。

小泉改革で注意すべき点

第一点は、国と地方の財政資金総残高1,150兆円(04年3月末)の資金繰りが、郵貯資金・簡保資金のストック残高320兆円によって、国民の目に触れないところで「官僚たちの裁量」によってつけられてきた、ということ。  
実は、財政資金のファイナンスは、日銀の一番大切な仕事なのです。郵政民営化により、運転資金である郵貯・簡保資金の320兆円が凍結され、郵政民営化以降、日銀がこの1,150兆円の財政資金のファイナンスを怠ってきたために、民間部門はずっと運転資金枯渇の状態におかれてきた、のです。

第二点は、日銀の《ゼロ金利・量的緩和政策》が日本経済に「円安バブル」を引き起こす原因となった可能性があるということです。
この円安バブルが、実は、2002年以降の外需依存型の経済による景気回復を支え続けてきたのです。日銀にこの《光と影》の認識があったでしょうか。

世界経済の「巨大なバブルの循環」

2002年以降、世界経済では「巨大なバブルの循環」が起きていたのです。
アメリカの「個人消費」は、長い間GDPの60%程度でしたが、2002年頃から70%程度に上昇し、家計貯蓄率がほぼゼロの水準まで低下しました。これがサブプライムローンなどの高利の証券化商品への運用(投機)と密接に絡んでいたことは周知の通りです。
留意すべきことは、アメリカの住宅バブルはアメリカだけで引き起こせたものではないということです。アメリカの消費支出の拡大は、アメリカへの輸出国(日本や中国など)の輸出を増大させ、日本や中国も、アメリカのサブプライムローン・バブルの恩恵を受けており、実は、《共犯者》だった、のです。

日本の「経済構造」はどう変化したか

この間、日本の経済構造は大きく変化した、と北川氏は述べます。
それを端的にあらわしているのが、【図表1】のグラフの〔青い部分〕です。
実質輸入比率が、原油価格高騰の中で、2004年以降、10~12%という極めて安定したレベルで推移していることです。
これは、資源の乏しいなかで、戦後一貫して内需中心の自立した「国民経済」の実現をめざした日本経済の「足かせ」となってきた、いわゆる《国際収支の天井》――─すなわち「資源の輸入制約」――─から、完全に脱却したことを意味する、と北川氏は解説します。
加えて、もう一つ、大きな変化が起きています。それは、《中国の工業化による日本の輸出構造の変化》です。
日本からの中国輸出は、最終消費財ではなく、中間財(素材・部品)や資本財(機械等の生産財)で、中国はこれらを用いて最終消費財(製品)を生産し、これを中国は、中国の内需向けではなくて、アメリカや日本に輸出するという構造になっています。
つまり、日本は製品を製造して輸出するのではなく、製品をつくるための素材や機械設備などを輸出し、それを中国が製品に組み立て・加工して、日本はその加工した製品を輸入するという輸出入の構造に変化しているのです。

日本経済の「構造転換」という課題

このことは、戦後の日本が築き上げてきた「輸出立国型」産業構造からの構造転換という課題をわが国に突きつけている、と北川氏は指摘します。
なぜなら、日本経済は「輸出で外貨を稼ぐ」必要がなくなったからだということなのです。
日本の貿易収支は、2008年10~12月から赤字に転じました。しかし、経常収支を見ますと、2008年は16.4兆円の黒字で、このうち、貿易収支が1.9兆円の黒字、所得収支が15.8兆円の黒字でした。圧倒的に所得収支の比重が大きくなっていることが分かります。対外純資産は225兆円(08年3月末)もある。
北川氏は、こう述べます。
「要するに、日本は『成熟した債権国』になったのだ。成熟した債権国となった国がとるべき経済政策は、『外貨を稼ぐ』ことではなくて、対外資産が生み出す所得で輸入代金を賄う方向に経済を誘導していくことなのだ。」と。
北川氏の結論を一言でいうと、「この今こそ、内需志向型の産業構造への構造転換を急ぐ必要がある。内需拡大とは、国内の経済構造改革そのものなのだ。」ということです。
以上が、今回北川氏からの提言の骨子です。

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なお、内需志向型の産業構造を推し進めるための具体的な処方箋については、添付しました北川氏のレジュメをご覧ください。

われわれが認識しなければならないことは、日本経済は、いま百年に一度の経済構造の転換を迫られているということ、そして、いま行わなければならないことは、小泉経済構造改革が遣り残した、公的部門の経済構造改革―――すなわち、「財政構造改革」―――を強力に進めること、のようです。
それが日本経済を「内需志向型の産業構造」へと構造転換させることにつながり、これを強力、かつ早急に推し進めるのは、これはもう、経済政策の問題ではなくて、わが国の政治システム、行政システムの問題だ、ということを学んだのが、今回の例会でした。
 
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北川様、分かりやすい経済解説を賜り、ありがとうございました。
また、質疑応答で活発な意見交換をくださった参加者の皆様にも深く感謝申し上げます。
質疑応答では、固有名詞を挙げて実名で、日本経済の問題に具体的に生々しく言及してくださいました。
記録への掲載は控えさせていただきますが、なるほどと得心の行くことがあり、大変勉強になりました。あらためましてお礼申し上げます。

(事務局 田中達也・記)

投稿者 lefthand : 20:26 | コメント (0)

2009年06月21日

2009年6月20日 生活が変わっていく

YAMAMOTO・レター
環境×文化×経済 山本紀久雄
2009年6月20日 生活が変わっていく

100年に一度

米国発で世界中に経済危機が広がった今回の金融危機、「100年に一度」とよく表現され、米国では「金融パールハーバー」という人も多くいるようですが、この言い方に米国金融界人の心象風景が出ています。

米国発金融危機なのですから、米国に問題の責任があるのに、他国から発して米国が迷惑しているという、責任転嫁の気持ちが表れています。今日まで、正式な場面で、米国人が金融危機で世界に迷惑をかけて申し訳ないという「お詫び」発言がなされたことがあるでしょうか。
昨年12月「米新政権と日米同盟の課題」シンポジウムに、米国政府関係者や著名大学教授が来日し講演とディスカッションを行いましたが、その席上で誰一人として「お詫び」発言はありませんでした。経済問題に触れても責任問題には論及しないのです。
また、今年の5月「米オバマ政権下の日米経済関係」と題して、在日米国商工会議所名誉会頭の講演を聞きましたが、経済危機の実態を分析し、巧みに解説しますが、その発生要因である米国の責任については何も触れませんでした。
大体、100年に一度という大げさな言い方は、世界共通の大問題なのだから、単に米国の問題ではなく、今さら責任云々なぞは関係ないという開き直りでしょう。

フードスタンプ

米国発の金融危機によって世界全体が大変な状況ですが、責任所在国である米国では、一段とひどい実態となっています。今や米国は世界最大の「経済大国」であり、一方、「貧困大国」になってしまいました。
その事例の一つが「フードスタンプ・プログラム」です。これは低所得者と無所得者が栄養のある食品を購入できるよう、食品購入時に割引できる電子カード、金券ともクーポン券とも言うべきものが支給されるシステムで、この利用者が3,400万人になっているのです。米国人の10人に一人は食べるものに事欠く貧困層になりました。
「フードスタンプ・プログラム」の説明書には「野菜・果物・脂肪分の低い肉をとり、運動を習慣化しなさい」と書かれていますが、実際にこのシステムを利用してこれらが実行されるのか疑問です。さらに、フードスタンプ支給家庭に高校生以下の子供がいると「無料一割引給食」の制度適用があります。これを利用して食べられるメニューはコスト削減から、栄養化が低く、高カロリーで安い、いわゆるジャンクフードといわれるものになります。その結果、肥満児童が多くなり、貧困が肥満をつくっているのです。

米国でバカ売れしている三品

オバマ大統領が住むホワイトハウス、その庭の芝生が最近は家庭菜園となり始めました。ミッシェル・オバマ夫人が、自身の娘やゲストに新鮮で健康的な野菜を提供しようと、ホワイトハウスに有機栽培の「家庭菜園」をつくることになり、南庭の一部の芝生を耕し、ほうれん草や豆類、ハーブなどを栽培しています。ホワイトハウスでの野菜作りは、第二次世界大戦中にエレノア・ルーズベルト夫人が「勝利菜園」を手掛けて以来のことです。この影響で米国では家庭菜園用の種子セット袋が爆発的に売れだしました。一袋30ドル程度ですが、このブームの背景には、普段食べている食品に対する安全性について、素朴な疑問があるからです。
次に売れだしたものは拳銃です。これはオバマ大統領が選挙期間中の公約の中で、銃規制を取り上げていたことから、銃愛好家の中で「駆け込み需要」が発生したことによるものですが、もうひとつ重要な背景に、経済が悪化し、失業者やホームレスが急増したことにより、犯罪の拡大が現実の問題となって、自らの安全を確保するためには、武装するのが一番だという心理が存在しているのです。
三品目は缶詰です。温暖化と気候変化で農産物の収穫が不安定となっていることから、米国政府機関が備蓄を始めたということで、一般人も備蓄を始めだし、それには缶詰が長期保存として最適なので、急に売れ出したのです。
 
備蓄二週間分リスト

世界保健機関(WHO)は6月11日、新型インフルエンザの警戒水準(フェーズ)を、広域流行を意味する現行の「5」から最高の「6」に引き上げ、世界的大流行(パンデミック)を宣言しました。インフルエンザの世界的大流行は、約100万人が死亡した1968年の「香港風邪」以来、41年ぶりです。
現在、日本は幸いにして小康状態を保っていますが、フェーズ「5」の時は日本国内が大騒ぎの真っ最中で、その5月1日、産経新聞が「備蓄食料品リスト」として家族四人で二週間分の内容を掲載しました。
かつて1918年(大正7年)、日本でもスペイン風邪で45万人もの人が亡くなりましたので、政府は慎重に対応しているのです。その対策の一つが備蓄です。
インフルエンザが蔓延すると、食料を運ぶドライバーが倒れ、結果的に輸送機関がストップしてしまうことから、補給が利かなくなる。また、その情報によって、スーパーの食料品売り場に人が殺到し、一気に売れてしまい、買えなかった人の間でパニックが発生する。その恐れから政府は家庭内の備蓄を勧めているのです。
さらに、インフルエンザ対策は海外旅行自粛、国内移動の制限、人混みを避ける、マスク着用、手洗いとうがいの徹底など、政府主導で行われていますが、これらの手段選択はWHOの判断結果を受けて講じているのです。
ということは、インフルエンザに関しては、事実上、世界中の国を統一して指示する機関、WHOの判断結果で我々の行動が決まっていくという社会になりました。

温暖化ガス中期目標

日本政府は2020年時点の温暖化ガス中期目標を、海外から購入する排出枠などを除いて「2005年対比15%削減」と発表しました。
米国の目標は05年対比15%減、EUは90年対比20%減と発表していますが、これら先進国が示した中期目標を積算しても、地球の温暖化を食い止めるとされる水準には不十分なことが明らかになっています。
ですから、12月コペンハーゲンで開催される国連気候変動枠組み条約締結国会議(COP15)の決定までには、困難な交渉が予測されますが、決定されるといずれも我々の生活に大きく影響してきます。
その理由は、今までは企業中心の温暖化ガス対策が中心でしたが、今回の目標が決定すると、省エネ余地が大きい「家庭部門」が主ターゲットなってきます。実は、07年時点で家庭の温暖化ガス排出量は、90年対比で40%も増えていて、その分「削りしろ」が大きく、家庭部門の負担が避けられないのです。結果的に各家庭のコスト増となるでしょう。いろいろ対策はありますが、主ターゲットは排出量が多い車です。新車の2台に1台をエコカーにする必要があるので、政府は経済的インセンティブを提供し始めたのです。ポスト京都議定書が我々の生活に関わっているのです。
 
次世代自動車

エコカーといえば、現時点で「低燃費」と「低コスト」を両立した供給可能な車はハイブリッド車しかありませんが、これにも次世代型がすでに登場しています。中国の新興自動車メーカーBYD、ここは携帯電話用電池メーカーですが、いち早く昨年12月にプラグインハイブリッド車の開発に成功したと発表し、本社のある深圳市政府に10台納入したと発表しました。ここがポイントで、次世代カーは新規参入が容易なのです。
また、三菱自動車は電気自動車i-MiEV(アイミーブ)を発売しました。電気自動車が一般に普及するためには、インフラ整備が前提条件で、まだまだ時間がかかりますが、普及したならば自動車業界の姿は一変します。
電気自動車は極端にいえば、モーターとバッテリーさえあれば走れるので、部品点数が大幅に減少し、開発コストも削減されます。このため新規参入が容易であり、かつ、部品数は少ないのですから、現在の部品メーカーの多くを必要としない社会、それは既存部品メーカーの廃業、失業者増という実態につながる可能性が高いのです。
 
100年に一度の金融問題、WHOのフェーズ宣言、ポスト京都議定書のCO2削減、外部環境の変化によって我々の生活が強制的に変えられていく時代になりました。
以上。

【7月のプログラム】

7月10日(金)16時   渋谷山本時流塾(会場)東邦地形社ビル会議室
7月17日(金)14時 温泉フォーラム研究会(会場)上野・東京文化会館
7月27日(月)18時経営ゼミナール例会(会場)皇居和田蔵門前銀行会館

7月19日(日)9時 山岡鉄舟研究会(特例)飛騨高山にて鉄舟法要研究会

投稿者 lefthand : 11:49 | コメント (0)

2009年06月06日

2009年6月5日 経済は一気に簡単に一方向には動かない

YAMAMOTO・レター
環境×文化×経済 山本紀久雄
2009年6月5日 経済は一気に簡単に一方向には動かない

株価上昇
世界各国の株価が上昇しています。2009年3月(底値・安値)時点と比較した6月4日の株価は以下のとおりです。

 2009年3月底安値2009年6月4日 上昇幅上昇率
NYダウ6,469(3/6)8,7502,281135%
日経平均7,021(3/10)9,6682,647138%
DAX(独)3,666(3/6)5,0641,398138%
FTSE(英)3,512(3/3)4,386874125%
上海総合 2,071(3/3)2,767696134%
韓国総合 1,018(3/2)1.378360135%

上昇率を見ますと、主要国の株価は全てNYダウと連動していて、常にアメリカ経済の動向で世界株価が動いていることが分かります。また、この三カ月、大幅上昇した背景には、オバマ政権への信認度があり、更に、GMの連邦破産法11条の適用申請を機に、金融、自動車と続いた政府関与によるアメリカ経済の危機管理が一息つき、景気回復も見込まれ、アメリカ経済がV字型回復するという見解が専門家から出始めました。

基軸通貨ドルの信認が揺らぐ

しかし、アメリカ経済の先行きを危惧する専門家も多く、その要点を並べてみます。

  1. 大手金融機関6社の1~3月期決算が126億ドルの黒字となったが、これは次の2と3のような粉飾的会計処理で計上されたものである。
  2. 時価評価主義が改められ「市場で価格がつかない金融商品などは、理論価値または満期での償還価格で評価可能」となり、この結果、金融機関は未確定の含み損を明らかにしないですむので利益がかさ上げされた。
  3. 「負債評価益」を認めた。これは企業の負債である社債などの時価が下落した場合、企業から債権者への支払い義務も減少したとみなし、その分を利益に計上した。企業の信用が下がり、社債の時価が下がれば下がるほど、利益が積み上がることになる。
  4. 1,000億ドル以上の資産を持つ金融機関に資産査定(ストレステスト)を行った結果、合計5,992億ドルの損失が見込まれ、この程度の金額では「投資家と一般市民にかなりの安心感をあたえた」とバーナンキFRB議長が述べた。だが、IMFが4月に発表した米国の金融機関が抱える損失は4.5倍の27,000億ドルであり、金額がケタ違いであって、ストレステストは操作されているのではないかという疑問がある。
  5. 3月にアメリカ人の消費意欲をアンケート調査した結果(米アリックスパートナーズ)、貯蓄率が14%との回答であり、以前は0%だった。つまり、貯蓄が増える分消費は減るわけで、仮に貯蓄率が10%上がれば、GDPは10%減で、1兆ドル以上のGDP減額となる。
  6. ということは消費が伸びないのだから、早期に景気回復はできず、加えて、政府の財政悪化もあり「アメリカも失われた10年に陥るリスクがある」(クルーグマン・プリンストン大学教授・ノーベル賞経済学受賞者)と指摘されている。
  7. また、アメリカは日本の不良債権処理を支えた家計のゆとりがないのだから、経済対策に必要な資金としての国債増発引き受けは海外からとなって、これは国債金利に上昇の圧力がかかることになり、基軸通貨としてのドルの信認に懸念がでてくる。

従って、アメリカのパワーが減退していくという見方が専門家から主張されています。

預金封鎖本の結果はどうだったか

このようにアメリカ経済に対し、相反する見解が専門家の間で議論されています。
ここで少し前のことになりますが、日本で大騒ぎした預金封鎖について振り返ってみたいと思います。
2003年から2005年頃、小泉首相の時代でしたが、書店に「預金封鎖」「老人税」(副島隆彦著)、「日本国破産・五編」(浅井隆著)などの本が大量に並び、それらを読んだある主婦から真顔で「日本は大丈夫でしょうか。貯金が政府にとられてしまうのでは。タンス預金に切り替えた方がよいか」という相談を当時受けたことがありました。
 かつて日本では実際に預金封鎖が昭和21年に行われました。今でもこの法律が抹消されずに残っていることを、国会図書館に行って確認したと、ある専門家から聞いたことがあります。つまり、今でもやろうと思えば法制上可能だというのです。
では預金封鎖とは何かですが、預金を封鎖することによって、各人の財産を把握し、その財産に対して税金をかけることを意味します。日本の個人金融資産が1,500兆円といわれていますので、仮に50%の財産税をかけると750兆円となって、これを実行すれば政府の赤字国債残高は相当額減り、これで財政状態を一気に改善できるのです。
2004年9月出版の「老人税」で副島隆彦氏は「アメリカ政府の財政赤字を端に発するドル暴落が発生し、その混乱防止のため日米が連携し金融緊急措置令を発し、一気に預金封鎖を行う。その時期は2005年から2~3年のうちだ」と書いています。
しかし、既に日本の不良債権処理が終わって、今は新たに発生したアメリカ発の金融危機からの経済対策で毎日騒がしく、一方、預金封鎖の声は全く消え、実施されずに無事今でも1,500兆円は残っています。物事は識者・専門家と称する人物が喧伝するように、簡単にはならないということを意味すると思います。

アメリカの底力

現在、世界で圧倒的地位を占めているのは、アメリカであることは疑問の余地がありません。そのパワーの第一は圧倒的な「軍事力」、第二はGDP世界トップである「経済力」、第三はオバマ大統領を登場させた「政治力」、この三つが際立っています。
今回の金融危機による経済危機混乱に際し、オバマ大統領が就任一ヶ月でGDPに対してほぼ4%にあたる「大規模不況対策予算」をまとめあげた手腕。それと、今回のGMに対する政府保有という国有化外科手術政策に対して、投資家や経営者から信頼を得始め、それが最近の世界株式相場の上昇となっていることを考えますと、やはりアメリカの持つ「政治力」は強く、今回の危機タイミングにオバマ大統領という人物を、登場させた底力を改めて感じます。世界は「米国主導の一極体制」がまだ続いているのです。

物事は簡単ではない

だが、いくらオバマ大統領に象徴される「政治力」がアメリカの強みといっても、物事には限度があって、一気の解決には進まないでしょう。時間が必要です。
解決への最大の課題は住宅価格です。住宅価格が上昇すると、個人は自分の所有する住宅の資産価値が増えたことになり、所得を消費に回すことが行われるからです。
逆にいえば、アメリカの景気が個人消費主導で成長していた時は、必ず住宅ブームが伴っていたのです。住宅価格の動向を見れば、その後の消費動向がわかり、ひいては、世界経済の先行きまで占うことができることになります。
しかし、サブプライムローン問題から、住宅価格はインフレからデフレになりました。これがいつ回復するか。それが不透明です。ですから、こういうアメリカ経済成長の基盤背景を考えてみれば、景気が一気にV字型回復は難しいと思えます。
だが一方、株価には景気の先行きを見極めるという原理原則があって、いかなる優れた経済学者よりも先行予知能力があるという過去経験則によれば、景気の先行きは明るいとも考えられます。

注意したいこと

要するに今は判断が難しいタイミングです。景気がV字型回復するのか、まだまだ混迷が長く続くのか、それぞれ専門家は各立場で主張しますが、預金封鎖を唱えた専門家達の失敗を参考にすれば、物事は人が考えるようなストーリーで、一気に簡単に一方向には動かないということです。
ですから、今後の経済状況を注意深くウオッチングすることが必要ですが、気をつけたいのはディリバティブという金です。これが儲けを求めて通貨や国債・証券へ、また様々な商品の間を動き回ってかき回しましますから、その行き先を見続けることです。もう一つ大事なことは、肩書に引かれて専門家の主張を鵜呑みにしないことです。以上。

【6月のプログラム】

6月12日(金)16時   渋谷山本時流塾(会場)東邦地形社ビル会議室
6月15日(月)18時経営ゼミナール例会(会場)皇居和田蔵門前銀行会館

6月14日(日)13時 山岡鉄舟研究会(特別例会)靖国神社参拝と散策会

投稿者 lefthand : 20:53 | コメント (0)