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2009年02月25日

2009年3月例会のご案内

経営ゼミナール2009年3月定例会(349回)ご案内

3月の例会は、3月16日(月)に開催します。
発表者に、ギリシャご出身のカライスコス・アントニオス氏をお迎えします。

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アントニオス氏より、ご発表の内容についてコメントをいただきました。

『私は2006年に文部省の国費留学生として日本に参りました。日本で特に強く感じたのは、日本人の方が持っているギリシャのイメージは、神話などで有名な「古代ギリシャ」と、2004年のオリンピックが開催された「EU加盟国たる現代のギリシャ」とが混在しているということです。
 これらの2つの側面を持ち合わせるギリシャは、厳しい歴史の経緯をもって現在に至っており、苦しい時代を乗り越えて今日の発展を迎えることができたのです。そのため、一見すると矛盾しているこの2つの側面は、実は、深く関連しているのです。
 また、ワインやオリーブオイルなどの産物というと、日本人の方はフランスやイタリアなどを連想しがちですが、ギリシャにもとても優れた製品があります。ただ、ギリシャという国のブランド構築の問題のため、まだまだ人々の認識が薄いのです。このブランド構築を完成させ、EUおよび日本を含むその他の国々と共存する方向性を見出すことこそが、ギリシャにとって最も大きな将来の課題の1つではないかと思っております。
 3年近く日本に住んでみて、ギリシャ人から見た日本についての考察も交えながら、以上の事柄やEU及びギリシャが受けた金融危機などを中心としてお話をさせて頂きたいと思います。』

3月例会にご期待ください。

1.日時 2009年3月16日(月)
     午後 6:00 集合(食事を用意しています)
        6:15 山本代表の時流報告
        6:30 カライスコス・アントニオス氏発表・
             ディスカッション
        8:30 終了

2.場所 東京銀行協会ビル内 銀行倶楽部 4階3号会議室
     千代田区丸の内1-3-1 Tel:03-5252-3791
     東京駅丸の内北口より徒歩5分(皇居和田倉門前)
  アクセス:http://www.kaikan.co.jp/bankersclub/access/access.htm

3.テーマと発表者
テーマ「EUと日本との関係 -ギリシャが日本に期待するものとは-」
発表者 カライスコス・アントニオス氏

(講師プロフィール)
カライスコス・アントニオス氏
1980年生まれ。
2005年アテネ大学法学研究科修士課程修了。
2004年10月、アテネ弁護士会に弁護士として登録
2006年11月より駐日ギリシャ大使館公式通訳・翻訳者
2007年4月より早稲田大学法学部助手
母国語と同等の日本語能力試験1級のほか、英語は教師資格を持ち、ドイツ語とフランス語もこなす有能な人物です。

* 会費 オブザーバー参加の方は、当日会費として1万円をご用意下さい。
* 問い合わせ 
  出欠:編集工房 代表 田中達也 
  電 話:03−6806−6510
  FAX:03−5811−7357

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投稿者 lefthand : 11:25 | コメント (0)

2009年4月例会の予定

2009年4月例会の予定
山梨・増富温泉の経営実態から時代の動きと癒しを得る見学例会

4月例会は4月20日(月)、山梨県北杜市経営の「益富の湯」に日帰りでまいります。

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日本には世界的に著名なラジウム温泉が三か所あります。一つは秋田県の玉川温泉、次は鳥取県の三朝温泉、それと山梨県の増富温泉で、昔から治療効果があることで知られている名湯です。
しかし、増富温泉は「信玄の隠し湯」として地元ではよく知られているのですが、一般的にはあまり知名度が薄いところです。
だが先日訪問し、いろいろ検討して分かったことは、源泉は勿論よろしいのですが、付近一帯の散策でも体に元気を与えてくれる何かを持っているところだ、ということです。
今回は、この「益富の湯」の経営実態から時代の動きをつかみ、ついでに効能効果が高い源泉風呂に入って、日頃の疲れを癒し、希望者は自然浴の「命の径」を散策します。
日程は概略以下を予定していますので、ご都合をご検討いただきご参加をお待ちしています。

1.場所:
  増富の湯・・・中央本線韮崎駅よりバスで約一時間
  〒408-0102
  山梨県北杜市須玉町比志6438
  TEL 0551−20−6500 担当 小山芳久総支配人
2.期日:4月20日(月)
3.日程
  (1)10:00 韮崎駅系各自集合
  (2)増富の湯のバスにて増富の湯へ
  (3)11:00〜12:00 増富の湯概況と今後のビジョン構想説明
  (4)12:00〜13:00 入浴
  (5)13:00〜15:00 昼食と質疑応答
  (6)15:00過ぎ   増富の湯のバスにて韮崎駅へ
  (7)韮崎駅発 16:23 新宿着18:07 で戻る
  (8)車で参加の方は、直接増富の湯にお出でください。

知られざる温泉、増富の湯とは

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投稿者 lefthand : 10:52 | コメント (0)

知られざるラジウム温泉、増富の湯とは

経営ゼミナール4月例会補足情報

知られざるラジウム温泉、増冨の湯とは

日本には効能効果が高いラジウム温泉として、三つの著名な温泉があります。
ひとつは秋田県の玉川温泉、ふたつ目は鳥取県の三朝温泉、この二か所は知られていますが、もうひとつ関東に所属する山梨県北杜市の増冨温泉、ここは信玄の隠し湯の名の通り、山間にひっそり佇んでいまして、あまり知られていません。

しかし、実際に温泉湯治された方にお聞きしますと、大変な効能効果の温泉場のようです。
以下は実際に湯治経験された状況を、ご本人からご報告いただいたものですが、経営ゼミナール4月例会の事前情報としてご案内いたします。


【体験者プロファイル】

●男性 年齢65歳 職業 大学教授
スポーツは剣道(有段者)とテニス。
何事も熱心に取り組む性格で体を酷使するタイプのため、腰痛が持病。

●湯治療養方法
2009年2月の6日間。
ラジウム温泉入浴、軽運動(山林の歩行、柔軟体操)、有機栽培の野菜・穀物中心の食事の三本柱を組み合わせる。
日常酷使した体を休め、日頃使わない部位を強化するため、キッチリしたプログラムはつくらず、保養としてのバランスをもって、自己治癒能力を高めることを目的とし、その時の気分や、都合なども考慮して自由にした。

●結果
最初と最後に病院(漢方)で診断を受けた。
結果は大変良く、5月の連休に再訪するとのことで大満足。

これはわずか一例ですが、大変興味ある実験です。
因みに費用は以下でした。
宿泊二食付きで一日10.000円で5泊=50,000円
入浴、整体、その他もろもろが      50,000円
    合計             100,000円

4月の例会「増富の湯訪問」ご案内

投稿者 lefthand : 09:06 | コメント (0)

2009年02月24日

2009年2月例会報告

経営ゼミナール例会
2009年2月16日
『地域との連携が温泉業界賦活化の鍵』
NPO法人健康と温泉フォーラム常任理事 合田純人氏

経営ゼミナール第348回例会が行われましたのでご報告いたします。

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今回は、『地域との連携が温泉業界賦活化の鍵』と題して、NPO法人健康と温泉フォーラム常任理事の合田純人氏にご発表いただきました。

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合田氏は、温泉の研究に関わること20数年、温泉を医療、化学、薬理の側面から研究を重ね、ご所属のNPO法人を通じて啓蒙活動を続けてこられました。
今回は、温泉業界の現状から、温泉業界が抱える課題をいかに打開していくかの示唆をいただきました。

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合田純人氏(左)と山本紀久雄代表(右)

合田氏のご講演の前に、山本代表から時流講話をお話しいたしました。
現在、日本は世界的な金融不況のあおりを受け、不景気真っ只中であるとの報道がなされ、私たちの不安感をあおっている感があります。しかし、これは主に外需の不振によるものであることは、YAMAMOTOレター2月20日号に明らかです。
YAMAMOTOレター2月20日号
対して、内需はほとんど変わらず、むしろ微増の状態です。
内需を喚起することこそ、日本が元気になるためのひとつの方策であるのです。温泉業界はまさに内需産業です。温泉業界の活性化は、内需の喚起にこそ活路が見出せるのではないか。山本代表の投げかけに、合田氏はどのように応えられたのでしょうか。

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基本に戻る

全国の温泉地を見てこられた合田氏の見解は、日本において地域と温泉との連携は大変難しいということでした。そして、地域と温泉が連携して成功している例はほとんどない、とも付け加えられました。
では、どうすればよいのでしょうか。
基本に戻ること。
合田氏が提示された温泉業界賦活化の鍵は、この言葉でした。
温泉というものは、もともとどうであったのか。どう利用されていたのか。それが、時代時代で変わってきた原因は何であったのか。こういうことを振り返ることによって、これからあるべき温泉の姿が見えてくるのではないか。そして、経営的側面から見た温泉ばかりでなく生活の中で温泉がどう位置づけられるかを見出すことができるか。このことが、温泉業界賦活化の鍵と感じました。

温泉地について

そのためには、まず温泉地について知らねばなりません。
ますは、合田氏から、温泉地について解説いただいた事項を整理してみます。

(1)温泉地とは
日本には温泉地が3,221カ所あるそうです(2007年現在)。これは現在も年間数十カ所ずつ増加しているそうです。
最近20年で43%増加しています。

(2)温泉地の定義
日本における温泉地の定義は、温泉が湧出し、そこに宿泊施設が1カ所でも整っている場所を言います。例えば、熱海はいくつもの源泉と旅館などが立ち並んでいますが、1カ所としてカウントされます。このカウント方法で3,221カ所もあるのですから大変な数です。

(3)温泉地宿泊年間総数
1億2,000万泊。国民全員含めて、日本人は年に1回は温泉に行っていることになります。
最近20年で10%減少しています。

(4)温泉地の利用形態
温泉地の利用形態としては、大きく分けて次の3つがあります。
1.休養…疲労回復など
2.保養…健康増進、生活習慣病予防など
3.療養…相補医療、代替医療として

これらのニーズを満たす要素として、温泉地が持つものとして次のことを忘れてはなりません。
●温泉地=温泉+環境、自然、文化
これらの相補関係があって初めて、上記のニーズを満たすことができるのではないでしょうか。

温泉地の形態の変遷

温泉地の形態はどのように変化してきたのでしょうか。
湯治という言葉があります。主として療養のため温泉地に赴き、3週間程度の長い期間逗留し、温泉に浸かり怪我や病気を治し、各地から訪れてきた人々と交流し、心身の癒しを求めるのが湯治です。
日本の温泉地はその発祥から長い間、湯治場として栄えてきた歴史を持っています。
しかし、この形態は戦後激しく変化しました。
合田氏の資料から、その変遷を転載します。


(クリックして拡大します)

温泉地の形態は社会のニーズに合わせて大きく変化していきました。
そして今、温泉地に訪れる人々のニーズは変化しようとしています。
温泉地はこれからどのように変化していけばよいのでしょうか。

温泉と地域の連携は可能か

温泉と地域の連携は可能なのでしょうか。
冒頭に記しましたように、合田氏は、日本において、温泉業界と地域との連携はとても難しいとの見解を寄せられました。
その原因のひとつとして、温泉地の旅館の形態が挙げられます。
日本の温泉地は、旅館(ホテル)内にカラオケ、バー、飲食店、遊戯施設などが何でも揃っているため、宿泊客が温泉街に出る必要がないケースが多く見られます。このことが、地域との連携を難しくしている原因のひとつだと、合田氏は指摘します。
しかし一方、地域を巻き込んで、温泉地全体をひとつのブランドとして特色づくりをする試みも行われています。これらが成功事例として結論づけられるようになるのは、まだ少し時間がかかりそうです。

また、官民が協力し、温泉医療の基地としての温泉地づくりも始められようとしています。鳥取県・三朝温泉は、岡山大学付属三朝医療センターと共同で、三朝温泉を、医療を核とした温泉地と位置づけ、その整備が行われています。

その他、温泉施設の利用の現状を、合田氏の資料の中から転載します。


(クリックして拡大します)

日本の温泉地発展は実現可能か?

日本人は温泉好きです。
このことは、あまり異論を差し挟む余地はないように思います。
前述しましたが、統計上、日本人は全員、年に1泊は温泉地に赴いています。
しかし、翻って考えますと、私たちは温泉地で1泊することを当たり前と考えています。
実はこのことが、現在の温泉地利用形態の大いなる問題なのです。
なぜ1泊なのか。2泊〜3泊といった連泊をしなくなってしまったのか。
歴史的に見れば、数百年もの間連泊が基本であった温泉を、つい数十年のうちに1泊スタイルに変えてしまったのです。
「温泉地に連泊するようになれば、温泉の本当の価値がわかるようになる」
合田氏はこう語られました。
さらに、現在、温泉旅館自身が1泊のスタイルに合わせた接客を行っており、食事や部屋の豪華さを競うばかりで、温泉はあって当たり前で、温泉そのものはおろそかにされているのが現実であると、合田氏は語ります。

温泉地発展のための提言として、次のことが挙げられました。
●温泉業界…温泉を真面目に大事にし、温泉をどう活用するかを真剣に考えてほしい
●利用者側…自分の健康増進などに温泉を活用すること、そのために連泊してほしい

業界側、利用者側、両者が、温泉の失われた価値を再評価して欲しいというのが、合田氏の願いです。

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内需拡大から温泉地活性化策を考える

質疑応答も、皆さんから大変活発な意見が交わされました。
その中で、経済学の観点からあるひとつの提案がなされました。
現在、定額給付金の公布が政府によって議論されています。
このような、公的な内需活性化策をうまく利用し、温泉地の活性化に活かしたらどうかというものです。
参加された経済アナリストの方によれば、定額給付金の導入を、国民は冷ややかに見ている向きがありますが、これは、消費を喚起するという意味において絶大な効果があると予測されるのだそうです。
今回支払われる定額給付金のような少額の給付金は、貯蓄に回るよりも消費に回る公算が高く、給付金が、国民の消費を促すきっかけになりうるということなのです。
この給付金を、各自治体が地元の温泉地利用のクーポン券として発行すれば、温泉地利用に消費され、かつ、国民は温泉保養を行うことにつながるというわけです。
給付金は一人あたりは少額ですが、仮に一人2万円とすれば、4人家族であれば8万円の経費が捻出できるのですから、それに多少の出費を加算して温泉旅行が楽しめることになるのです。
このような取り組みを一例として、国民にお金を使ってもらうきっかけ作りが大変重要で、それが内需拡大につながるのだという提言をいただきました。

このような行政を巻き込む施策の提言を、適切な部署に、継続的に、行っていただきたい。それが温泉地活性化のひとつの活路であり、地域連携のきっかけにもなるのではないでしょうか。
そのために、合田氏のようなお立場の方に、是非ともこれらの提言を継続的に発し続けていただきたい。
山本代表から激励の言葉をお贈りして、閉会とさせていただきました。

(事務局 田中達也・記)

投稿者 lefthand : 08:21 | コメント (0)

2009年02月20日

2009年2月20日 身の廻りから見立てれば

YAMAMOTO・レター
環境×文化×経済 山本紀久雄
2009年2月20日 身の廻りから見立てれば

新幹線

このところ東京駅から新幹線での出張が多く、改めて、新幹線ホームに立って時刻表を眺め、発車本数を数えてみて驚嘆しました。

一時間に13本の新幹線が東京駅を出発しているのです。ということは、4分36秒ごとの発車であり、その列車が時速300キロに迫るスピードなのですから凄いと思います。
しかし、もっと評価されていることがあります。日本人にとっては当たり前の、普通のことと認識されているものですが、外国人からみたら驚異なことです。
そのことを、ワシントンのアース・ポリシー研究所長のレスター・ブラウン氏が次のように語っています。(日経新聞 2009年2月18日)
「何十億人もの乗客を運んでいるのに、死亡事故はゼロ。平均の遅れは六秒」、さらに「現代の世界の七不思議を選ぶなら、日本の高速鉄道網は確実に入る」と断言しています。

ネットワーク鉄道網

日本には、外国人が知ったらまだまだ驚嘆する交通システムが存在します。それは日本のネットワーク鉄道網です。
例えば、新宿駅ですが、JR山手線、埼京線、中央線と、京王電鉄の京王本線、小田急本線、さらに、地下鉄の丸ノ内線、都営地下鉄の新宿線と大江戸線、お互い別会社経営ですが、これらが、たった一枚のスイカですいすいと改札を通過できます。このような構内集中効率は東京駅でも、渋谷駅でも、池袋駅でも同様です。
さらに、東京駅では東海道新幹線から、すぐに東北新幹線に乗り換えられるように、東京駅は総合通過駅機能となっていますから大変便利です。
では、世界先進諸国の大都市はどうでしょうか。一言で表現すればターミナル駅です。ターミナルTerminalとは末端という意味で、鉄道やバスの終点のことです。
ニューヨークを事例にとれば、ここには大きい鉄道駅が二つあります。一つはグランドセントラル駅、もうひとつはペンシルバニア駅で、両方とも巨大な建築物で外観も内部も素晴らしい装飾ですが、この二大駅は終点で、お互いつながりが非常に悪いのです。
地上を歩けば10分もかからない距離ですが、地下鉄を利用するとグランドセントラル駅からタイムズスクウエアに行き、そこで乗り換えてペンシルバニア駅に向かうことになります。これだとよほどうまい乗り換えができない限り10分以上かかります。
これは、パリでもロンドンでもミラノでも同様で、ターミナル駅ごとに各方面の鉄道が分断されていますから、異なる方面に向かう駅に行くには一苦労です。
欧米人は、日本の便利な鉄道実態を知らないので、不便さが鉄道の当たり前の状態と思っており、逆に、日本人は、世界で最も機能的で便利な状態を当然と思っていますが、日本は世界で最も効率面で優れているのです。

戦後最大の経済危機

内閣府が16日発表した2008年10月~12月期のGDP速報値は、実質で前期比3.3%減、年率換算で12.7%となりました。
与謝野財務・金融・経済財政相は「戦後最大の経済危機だ」と述べ、政府・与党は追加経済対策を急ぐことを表明しました。
このような落ち込みの要因は、輸出に依存する割合が大きく、輸出産業を中心に生産や設備投資が異例の高速調整に入ったことが、マイナス成長につながったと解説されています。そのとおりで輸出は前期比13.9%減、設備投資は5.3%減となっています。
これについて野口悠紀雄氏(早稲田大教授)が文芸春秋三月号で次のように述べました。
「GDPがマイナス10%に達する、とはどういうことなのか。分かりやすく言えば、経済の水準が6年前、バブル崩壊後日本の景気がどん底を示した2002年~2003年の状態に戻る、ということだ。2002年に底を打ってから、日本の実質GDPは6年間で10%増加した。ちょうどその上昇分が消失するのである」と。成程と思います。
 
個人消費を見てみると

次に、10月から12月期のGDP速報値の個人消費を見てみますと、前期比で0.4%の減となっています。この前期比という分析基準は2008年7月~9月期との対比ですので、これを前年同期(2007年10月~12月期)比に置き換えて計算してみます。
結果は同様で、やはり輸出が12.8%減、設備投資は11.1%減と大きい実態ですが、個人消費は0.1%減という数字でマイナス幅はぐっと少なくなっています。
また、この個人消費がGDP全体に占める割合を見ますと、2007年は54.5%、2008年は57.0%となっていて、2.5%ウエイトを高めています。
何を言いたいのか。それは個人消費が善戦しているということです。世界は金融危機で世界中の消費が激減し、それによって日本の輸出産業は二ケタ減という大打撃の反面、内需は輸出減にそれほど影響を受けず、ほぼ前年通りの実績を示しているということです。
さらに、民間住宅投資は前期比5.7%増、前年比では何と12.7%という二桁増加に転じています。
確かに野口教授の解説通り、日本の実質GDPは過去6年間、外国で稼ぎ増やした輸出によって10%増加させ、これから、その外国で増やした分を減らしていくのでしょうが、GDPの中で一番大きく占める国内個人消費はあまり減っていないのですから、外需大幅減、内需健闘というのが日本経済の実態と思います。

身の廻りに目を注いでみると

輸出減で企業の出張が少なくなり、その分交通機関の利用が減っていると思われますが、よく行く東京駅や渋谷駅、日本の鉄道駅は景観的には雑然として、見栄えは悪いのですが、人が動き回る機能としては大変効率がよくできていて、そこを動く人波や人の量は大きく変わっていないように見えます。
今年の正月5日は東京ディズニーリゾートに行きました。ここを経営するオリエンタルランドの今期利益は前年比41%増と発表しました。金融危機で「戦後最大の経済危機」だと大臣発言がありましたが、ディズニーリゾートには過去最高の入場者が訪れているのです。これをどのように考えたらよいのでしょうか。
昨日は駅近くの理髪店に行きました。老夫婦と従業員一人の規模です。ここが改装して一週間休んでいたので、どのような店になったのか興味持って入りました。ずいぶんすっきりして上品な雰囲気になっていました。よかったねと言いながら「景気はどうですか」と尋ねますと「ほぼ同じです。戦後最大の経済危機とは思えない」とつぶやきます。お互い戦後の苦しい生活体験を持っていますから、当時を思い出せば今は天国です。
もうひとつ、身近な事例が続き恐縮ですが、毎月一回料理教室に通っています。もうずいぶん長く、教室の中で古手株となっています。最初の頃、いつ行っても教室は参加者10人を超えることはありませんでした。一時は5~6人で寂しい思いをしていました。
ところが、昨年春ごろからじわじわと参加者が増えだして、2月の教室はとうとう定員25名に達してしまい、お断りする人もいたらしいのです。
理由はよく分かりません。ずっと同じ先生で、同じような料理で、同じシステムで続けているだけで、教えてくれている先生もびっくりし、運営する中堅スーパーの担当者も首を傾げていますが、とにかく満員となり、教室内は明るい活発な会話で溢れていて、帰りには「また、来月」と言って別れます。
 
内需は底固い

日本経済は、野口教授の解説通り、過去6年間成長したGDP10%を、これから減少させていく、つまり、それは、外需で増やしたものが消えていくのだと推断します。
一方、これだけ世界中で金融危機による経済停滞が声高に叫ばれているのに、内閣府GDP速報値の個人消費を分析してみれば、個人消費は僅かな減少で終わっている、つまり、それは、国内内需がいかに底固いのか、ということを証明しているように思います。
さらに、トヨタ自動車も、在庫調整が今期末でほぼ終わり、5月から増産に入ると発表しましたので、いずれ周辺産業にも好影響が表れていくでしょう。
様々なマスコミ報道が、日々多様になされていきます。マクロ情報に関心を持ちつつも、自分の身の回りの実態から見立てることが、精神健康上、今は最も大事と思います。以上。

【3月のプログラム】

3月13日(金)16時   渋谷山本時流塾(会場)東邦地形社ビル会議室
3月13日(金)14時 温泉フォーラム研究会(会場)上野・東京文化会館
3月16日(月)18時経営ゼミナール例会(会場)皇居和田蔵門前銀行会館
3月18日(水)18時30分 山岡鉄舟研究会(会場)上野・東京文化会館

【ジョン万次郎のご子孫を招いての特別講演会】
★ジョン万次郎講演会★ 4月15日(水)18:30 上野・東京文化会館

投稿者 lefthand : 07:25 | コメント (0)

2009年02月06日

2009年2月5日 日本経済新聞を読みたくない

YAMAMOTO・レター
環境×文化×経済 山本紀久雄
2009年2月5日 日本経済新聞を読みたくない

ある大学で

昨年末から日本経済は急激に悪化しています。一月はこの関係で、金融危機絡みの講演をする機会が多くなりました。先日も都内のある大学の経営学部が開催している勉強会でお話ししました。当然、世界経済と日本経済の実情について触れることになり、その結果は、厳しい数字が並ぶ内容となりました。

勿論、中には明るい企業もあるわけで、すべての企業と人々が経済困難化しているわけではありませんが、トータルで判断すれば、世界も日本も日を追うごとに経済実体は悪くなっています。この事実を日本経済新聞が報道し、多くの人はこれを読み、また、この情報を分析しお伝えしますから、経済危機に対する見解は、勉強会参加一同が一致します。
講演が終わり、休憩時間になったとき、一人のまだ若き女性経営者が走ってきて「もう日経新聞はみたくない」と叫ぶように言いました。経済悪化数字が並ぶ報道は読みたくないというのです。そこまで人の気持ちは追い込まれているのかと、改めて驚きました。

経営者は日本が世界で最も悲観的

世界の中堅企業で「2009年の景気動向を最も悲観しているのは日本の経営者だ」という調査結果が発表されました。
調査したのは、国際会計事務所グループのグラント・ソントンです。世界36カ国の中堅企業、日本の場合は従業員が100人から750人の非上場企業ですが、これらの経営者を対象に昨年10月、11月に7,200人(日本は300人)に行った調査です。
調査方法は、景況感を良いと答えた人の割合から、悪いと答えた人の割合を引いたDI数値で各国を比較したものです。
日本の経営者の回答結果は、DI数値で-(マイナス)85、日本の次はタイの-63、フランスの-60でした。逆に高かったのはインドの+83、ブラジルの+50です。
日本の回答結果に対し「危機意識が強く、先行きを厳しく考える傾向があるためではないか」と、調査機関関係者がコメントしていますが、そのとおりと思います。

どうしてブラジル経営者はプラス思考か

ブラジルのルラ大統領への国民支持率は84%と、過去最高になったという世論調査結果が報道されました。(2009.2.5日経新聞) 同大統領が就任した直後の03年支持率83.6%を上回ったのです。日本の麻生首相と全く異なる実態ですが、これがブラジルの今を示していると思います。
ご存じのとおり、ブラジルは1970年代後半に経済が低迷し、同時に深刻な高インフレに悩まされ、80年代にかけてクライスラーや石川島播磨(現・IHI)など多数の外国企業が引き上げ、先進国からの負債も増大する苦しい経済状況でした。
しかし、03年にルラ大統領が「飢餓ゼロ」計画を打ち上げ当選し、貧困家庭向けの食料援助や援助金制度などを推進した結果、貧困家庭の生活水準改善が着実に進み、加えて、経済発展に取り残された内陸部へのインフラ整備も進め、06年に貧困層の圧倒的な支持を得て再選されました。
今回、ルラ大統領が過去最高の国民支持率となった理由を、金融危機でも「ブラジルでは生活実感が極端に悪化していないことが、高支持率の背景である」(日経記事)と分析していますが、実はもうひとつ大事な要素があります。
それはブラジル人の国民性です。ブラジルは人種が世界で最も混淆している国で、ポルトガル人とインディオの接点に黒人が加わり、さらに、東洋系のモンゴロイドを含めたあらゆる人種間の融合によって形成された結果「明るい・くよくよしない」国民性であることはよく知られています。07年10月に訪れたサンパウロで「ブラジル人に躁はいても、鬱はいない」と現地の方が断言しましたが、この国民性が、世界の経営者景況感調査結果+50となった本当の理由と思います。日本人とは反対側に属する国民性です。

日本の実質GDP

下図は日本の実質GDP成長率(前年対比)の推移です。2008年に急減しました。


(クリックで拡大します)

視点を変えて、2008年日本の実質GDPを月別前月比で見てみますと、08年11月は-2.3%、12月も-2.5%と大きくマイナスとなり、10月の-0.3%、9月の-0.5%に対し急激に悪化しています。この要因は輸出が11月-18.8%、12月-9.2%に落ち込んだことと設備投資の不振です。昨年末から急速に実体経済が悪化していることがこれでも証明されます。(日本経済センターデータ)
次に、四半期ごとの実質GDPを前年同期比で見てみても、08年1月~3月期が+1.4%、4月~6月期も+0.7%であったものが、7月~9月期では-0.5%、10月~12月期は-3.4%ですから経済急悪化は事実です。(日本総合研究所データ)

日本の個人消費

ところが、個人消費の前年同期比を見てみますと、違った姿が浮かんできます。
08年1月~3月期が+1.6%、4月~6月期+0.3%、7月~9月期+0.5%、10月~12月期+0.2%と、個人消費は未だにマイナスになっていないのです。善戦していることが明らかです。(日本総合研究所データ)
確かに日本経済は大きく悪化した結果、企業の生産動向は激しく落ち込み、全体がマイナス成長となりましたが、比較して個人消費は日用品などが中心ですから、安定需要がある分だけ振れ幅を比べると少ないのです。そのことを個人消費データが証明しています。
「もう日経新聞はみたくない」と叫んだ女性経営者の生産活動は停滞したと思いますが、多分、ご本人の日用品などの買い物は、それほど減らしていないのではないでしょうか。

ドイツ人経営者から

DHLジャパン社長のギュンタ・ツォーン氏が次のように述べています。
「日本は他国より痛みが少なく、この不況からいち早く抜け出せると思っている。それは、日本の国内経済規模が巨大で、個人消費がGDPの成長に寄与しており、私の母国ドイツに比べると輸出に頼りきりでない。(輸出対GDP日本15%、ドイツ39% 前図)
さらに、日本はGDPのより多くを研究開発に投資し続けている。(日本がGDP比3%強に対してドイツは2%台)また、日本には全体の福祉を維持しようという価値観もある。よほど深刻な状況に陥ったとき以外は、短期的な利益を優先して将来の可能性をつぶすような形での研究費や人件費を削ることはないだろう。
もっとも日本が今後、他国と同様、困難な道をいっとき歩まなくてはならないことも確かだ。ただ、チャンスと捉えることで、1~2年のうちに日本は危機を乗り越えると確信している」(2009.1.27 日経新聞) ドイツ人の方が日本を客観視しているのです。

今こそ明るく

約6年間続いた「実感なき好景気」を「根拠なく楽観視」した人々が、今度は「根拠なき悲観」から「恐怖心理ショック不況」に入り込んでいるのではないでしょうか。以上。

投稿者 lefthand : 09:48 | コメント (0)