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2009年08月20日

2009年8月20日 文化越境性

YAMAMOTO・レター
環境×文化×経済 山本紀久雄
2009年8月20日 文化越境性

司馬遼太郎

この夏休みは播磨灘物語を書くため、播磨の海辺で過ごしました。

播磨灘とは瀬戸内海東部地区の海域をいい、兵庫県南西部(旧播磨国)の南側に位置し、東は淡路島、西は小豆島、南は四国で区切られ、西北部に家島諸島があり、東西約50km、南北70km、水深は40m前後、播磨五川と称される加古川、市川、夢前川、揖保川、千草川が流れ込んでいる海域ですが、この播磨灘を題名とした小説として、司馬遼太郎の「播磨灘物語」が有名で、このタイトルに惹かれ、四部冊の大作を読みながら播磨の海を歩き廻りました。
しかし、「播磨灘物語」を読み進めても、一向に海に関することが出てきません。実は、播磨灘という題目ですが、黒田官兵衛の物語だったのです。
黒田官兵衛とは、知謀権謀術策を持って織田信長と豊臣秀吉に仕え、一大大名にのし上った人物で、そのストーリー構成を、今に遺されている「信長公記」「黒田家家譜」などの諸資料から拾い出し、官兵衛に強い愛情を持って書いているのです。
残念ながら海については参考になりませんでしたが、各資料の史実と史実のつながり、登場する人物と人物との絡みについて、司馬遼太郎が持つ人生哲学によって心理分析され、格調高き文章で、舞台は戦国時代なのに、現代人への素養書となっていて、さすがに文化勲章受章者だと深く感じ入りました。

村上春樹

村上春樹は今の時代、最も話題性がある作家でしょう。村上春樹の文体は、一見まったく異なった物語を組み合わせし、それらを交互に語ることで、豊かな反響を作り出すという書き方が特徴です。この手法と内容が大受けし、今や世界30カ国以上の国で翻訳出版されていますが、同じ一人の作家が、イタリアと韓国でベストセラーとなり、トルコで文化的事件となり、ロシアと中国という体制が異なった国々で最高の文学的経緯を得る、というような文学作品の事例は、過去において日本人作家にいたでしょうか。
村上作品について、現代アメリカ文学を牽引する作家であるリチャード・パワーズ氏が次のように述べています。
「今の時代、自らの拠って立つ場が曖昧になり、移動することが常態と化し、『いま・ここ』という感覚が失われ、心の中が難民化し、国家的アイデンティティや地理的固有性といった静的な観念が消えていくという、グローバリゼーションの時代精神を捉えているだけでなく、村上小説自体が、時代精神そのものになっている」と。つまり、村上作品には「文化越境性」があり、これが世界中の読者をとらえている要因であると分析しています。

文化勲章とカフカ賞

司馬遼太郎は、平成5年(1993)に文化勲章を受章しました。文化勲章とは、文化の発達に関し勲績卓絶者を文化功労者のうちから選考し、毎年度おおむね5名を内閣総理大臣に推薦する制度で、文化功労者以外からでも必要と認められる場合には選ばれることがあります。また、慣例として、その年にノーベル賞を受賞したが、文化勲章未受章である場合は、文化勲章が授与されます。
一方、村上春樹はチェコの文学賞である、フランツ・カフカ賞を平成18年(2006)に受賞しています。この賞は、特定の国民性に捉われず、世界文学へ貢献した作家に贈られるもので、これを受賞するとノーベル文学賞を受ける事例が多いことから、村上春樹がノーベル文学賞の最有力候補者と見なされています。

文化越境性の時代

司馬遼太郎の小説は、多くの日本人の心を捉えています。「竜馬がゆく」「坂の上の雲」によって、どれだけ日本人が勇気づけられたでしょうか。まさに日本人のロマンの原点を語ってくれています。「播磨灘物語」も同様で、そこにはしっかりとした日本人としての、拠って立つ場が明確に示されていて、そこから日本精神を語っていますが、敢えて、司馬作品に不足しているものをあげるとすれば、文化越境性ではないでしょうか。司馬作品がどのくらい翻訳されて海外にでているか把握していませんが、司馬作品の価値は、まだ日本国内にとどまっていて、世界の普遍的価値に至っていないと思います。
 対する村上春樹の小説は、日本が舞台で、日本人が主役ですが、人種が異なる多くの人々を捉えています。小説で登場させる対照的な二人の主人公に、日常的リアリズムと別世間の幻想の間を、スパイスの利いたユーモアを含ませつつ、異質な物語を交互に語らせ、巧みな心理分析に基づく描写で、立体的な作品とし、結果として世界中の人々へ生き様のありようを伝えるという文化越境性が、世界の普遍的価値へシフトさせた理由と思います。

ブルーガイドブック

観光地を星印で格付けするフランスのガイドブック、ミシュランの観光版「グリーンガイド日本版」が、フランスで3月発売されましたので、ミシュランジャパングループに問い合わせし、日本の観光地を選択し評価した背景について、説明をして貰いたいと申し入れましたところ、回答はフランス本社で出版しているので、問い合わせと依頼はフランス本社にしてほしいという返事でした。
そこで、すぐにフランス本社に問い合わせと依頼をしましたが、なかなか返事が来ません。催促したところ、先日、回答がフランス本社から来て、「日本に出張するのは日程的に難しい。しかし、今後、日本観光ガイドに組み入れ、取り上げるところがあれば提案してほしい」ということで、フランスミシュラン本社と、コンタクトが取れたところです。
ところで、フランスにはもう一つ「ブルーガイドブック」があります。フランス在住の知人によると、フランスではミシュランより「ブルーガイド」の方が、文化的レベルが高いという見解とともに、知人がわざわざ送付してくれました。
「ブルーガイド」はアシェット・フィリパッキ・メディア社(Hachette Filipacchi Médias、略称HFM)出版、同社はフランスに本社をもつ世界最大の雑誌出版社で、1826年にルイ・アシェットによって創業され、1980年にはマトラを傘下におさめ、現在はフランス最大のコングロマリットであるラガルデール傘下で、フランスのみならず日本やアメリカの傘下企業を通じて数々の雑誌を発行しています。あのELLEもそうです。
日本では老舗出版社の婦人画報社を傘下に収め、アシェット婦人画報社として活動しており、「婦人画報」をはじめ「25ans」や「ELLE Japon」などの雑誌を発行し、教育書・教材・語学書・専門書など扱っています。
また、知人から「ブルーガイド」の編集者が私に会いたいといっている、という連絡が来ていますので、何かの機会に実現したいと思っています。
だが、編集者に会うにしても、ミシュランに提案するにしても、欧米人が認識する普遍的価値を日本の中からつかみだすということ、それは文化越境性あるものに編集するということになりますが、この作業が前提条件として必要だろうと思っています。

播磨灘の夏生牡蠣

播磨灘に戻ります。海辺での昼食は、毎日、各漁協が経営する市場内で食べました。
そのひとつ、赤穂市の坂越(さこし)漁協経営の海の駅・しおさい市場には驚きました。真夏ですから、どの漁協も岩牡蠣はあっても、冬牡蠣のマガキはありません。しかし、この坂越漁協にはマガキの生があったのです。メニューに載っていました。
ご存じと思いますが、フランスでは真夏でも牡蠣を生で食べます。というよりフランス人は生でしか牡蠣を食べないのです。一年中生で食べ、よくいわれる「Rのつかない月は食べない」は嘘で、5月から8月のRのつかない月でも生でよく食べます。
だが、日本では牡蠣は秋から春までのアイテムで、それも調理して食べるのが普通で常識です。特に、ノロウィルス騒動以後は、生で食べる人は少なくなりました。しかし、牡蠣の食通は生が一番だといいます。私もその口です。今まで多くの漁協市場を回りましたが、真夏の生牡蠣が存在したのは初めてで、メニューには「地元坂越のかき業者が数年前より取り組み、苦難の数々を乗り越え、ようやく成功しました。低温海域にて一粒一粒丁寧に育てられた逸品は『生かき』で召し上がって頂くことが最高の至福です」とあります。ネーミングは「なつみ」とあり「水揚げが少なく割高」とあるように、一個450円は高いと思いますが、真夏に食べられるマガキへの挑戦、それは欧米人の来客を意図したものなのか、それとも別の背景から始まったのか、近く漁協組合長にインタビューして聞いてみたいと思っています。いずれにしても真夏の生牡蠣養殖は、日欧の文化越境性に関わる要素になる可能性が高く、グリーン及びブルーガイドに伝えたいと考えています。以上。

【9月のプログラム】

9月 7日(月)18時経営ゼミナール例会(会場)皇居和田蔵門前銀行会館
9月10日(木)16時   渋谷山本時流塾(会場)東邦地形社ビル会議室
9月16日(水)18時30分 山岡鉄舟研究会(会場)上野・東京文化会館

投稿者 lefthand : 09:09 | コメント (0)

2009年08月10日

2009年7月例会ご報告

経営ゼミナール例会
2009年7月27日
『ベトナムの交通事情と課題』
 TRS研究所 主席研究員 齋藤 威 氏

第353回例会が執り行われましたので、報告いたします。
今月は、ベトナムの交通事情がテーマでした。
お話しくださったのは、元警察庁科学警察研究所交通部長で、現在はTRS研究所の主席研究員をされておられます、齋藤 威(たけし)氏です。
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*****

齋藤氏は、警察庁科学警察研究所時代から長年、交通に関する調査研究に携わってこられました。そのご経験を活かして現在、ベトナムの交通安全に関わる様々な調査研究を行っておられます。
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齋藤 威氏

齋藤氏は開口一番、国が違えば交通安全に対する「基準」が大きく異なることを痛感している、と語られました。齋藤氏がベトナムの交通安全施策に関わる前は、日本で実施されている交通安全のさまざまなルールは世界共通で、ベトナムの交通安全を考える場合当然それが活かされると考えておられたそうです。
齋藤氏は一年の半分をベトナムで過ごし、ベトナムの交通事情を調査し、さまざまな施策を提案実施されておられますが、そこでいつもぶち当たるのは、前述の「安全に関する基準の違い」なのだそうです。

*****

齋藤氏は、ベトナムの交通安全に関する国家プロジェクトに参画されています。
その概要を、齋藤氏の資料から抜粋します。

(1)ベトナム国交通安全強化事業にかかる案件形成促進調査
(2006.4〜2006.8)JBIC
ベトナムにおける交通事故が大きな社会問題となってきているが、この問題への対応の契機を得るための案件を形成するためのプロジェクト。
・交通安全に対する施設整備(Engineering)
・交通安全教育・啓蒙活動(Education)
・交通指導・取締り活動(Enforcement)
 (3E対策)
(成果)
ベトナム「北部国道交通安全強化事業を2009年秋からスタートの予定
ベトナムの交通事故による死亡者は、年間11,000人を超え、大きな社会問題となっている。原因としては、道路標識やガードレール、中央分離帯などの交通安全施設の不足に加え、道路利用者の知識・意識不足、交通安全指導能力・教材の不足、交通安全取締りの実施能力・機材の不足があげられている。
本事業では、これらの課題を解消すべく、ベトナム北部の4国道を対象として、交通安全のための施設整備、教育・啓蒙活動の強化、取締りの強化を行う。

(2)ベトナム国ハノイ市交通安全人材育成プロジェクト
(2006.7〜2009.3)JICA
目的…ハノイ市の交通安全に関係する職員の能力向上
対象…ハノイ市交通局、交通警察、教育担当機関等
内容…日常活動の問題点の抽出、対応策の検討、モデル事業の展開、トレーニング、セミナーの開催
(成果)
人材育成…交通局、交通警察、教育担当機関職員の日常活動と実施対策に変化
・日常街頭活動の活発化
・交差点の渋滞対策の自主的実施
・信号制御内容の自主的調整
プロジェクトの延長…1年間の延長による安全計画の策定
新プロジェクトの必要性の示唆
・交通局職員の人材育成
・交通警察職員の人材育成

(3)ベトナム国道路交通安全マスタープラン策定計画調査
(2007.8〜2008.3)JICA
目的…ベトナムの交通安全計画の策定
対象…ベトナム全地域の道路交通の安全
内容
・交通安全施設(Engineering)
・交通安全教育(Education)
・交通取締り(Enforcement)
・救急医療(Emergency)
 (4Eによる計画策定)
(成果)
基本計画策定…4Eからなる交通安全基本計画(マスタープラン)を策定
・交通施設整備基本計画
・交通安全教育基本計画
・交通指導取締り基本計画
・緊急医療整備基本計画
アクションプランの策定…4Eのそれぞれの初年度の実行計画を策定

(4)ベトナム国ハノイ市交通安全人材育成プロジェクト
(2009.5〜2010.3)JICA 実施中
目的…ハノイ市の交通安全に関係する職員の交通安全計画の策定に関する能力の向上
対象…ハノイ市交通局、交通警察、教育担当機関等
内容(予定)…日常活動の問題点抽出、対応策の検討、実現可能な対策の優先順位の検討、実施計画の策定

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これらのプロジェクトを通じて、齋藤氏はベトナムの交通事情をつぶさに観察してこられました。
その状況をビデオで見せていただくことができました。
これが、とてもすさまじい。
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日本の私たちからみると、ほとんど無法地帯のように見えます。
信号無視、信号のない場所での横断、交差点への進入、とにかくみんな、止まらずにどんどん進んでいきます。直進車や対向車などお構いなしです。私たちでは、とても恐ろしくて車の運転などできそうにありません。実際、齋藤氏もベトナムでは車の運転は決してなさらないそうです。
例えば、交差点での左折(ベトナムは右側通行ですので、左折は日本での右折を意味します)。日本なら、直進の対向車がいなくなるのを待ってから曲がりますが、ベトナムでは、止まることなくするすると対向車線に出て行きます。そして、車、バイク、さらには人までもが左折車、直進対向車ともお互いをかわしながらのろのろと進んでいくのです。
しかし、ベトナムではこれを特別危険な状況とは考えておられないのだそうです。みんなが互いに気をつけて渡っているから、これでいい、十分安全だ、と考えているのです。
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これが、先に申しました安全の「基準」の違いなのです。
私たちでは目を覆うような危険な状態も、ベトナムの人びとには普通の光景なのです。このことを危険なことだと認識させるのに、齋藤氏は大変な苦労をしていらっしゃいます。習慣を変えさせるのはとても大変なことだ、とは齋藤氏の弁です。しかし、それを粘り強く話していくことで、少しずつ理解してもらう努力を、齋藤氏はされておられるのです。

さまざまなプロジェクトの中で行われた社会実験を通じて、齋藤氏は、その国の交通安全のあり方は、その国に合ったやり方で行わなければならないことが分かったそうです。そして、それにはともかく実際にやってみなければ分からないことも痛感されたそうです。特にベトナムは、交通の大半を二輪車が占めることもあり、四輪車が中心の日本とは異なった考え方をしなければならない場面もあるそうです。

*****

これらのプロジェクトを通して、齋藤氏が観察したベトナムの道路交通事情は次のようなものです。

・二輪車が中心の交通
・車線が機能しない(不要?)
・歩道はみんなの共有場所(食事、井戸端会議など)
・車道もみんなの共有の場所(歩いても平気)
・「安全」の基準が全く異なる
・交通の円滑化の基準も全く異なる
・交差点の交通制御の哲学が異なる

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例えば、交差点の考え方。
日本では、交差点はできるだけ小さい方がいいという考え方のもとに設計を行うそうです。
よい交差点の基準は「損失時間」がいかに短いかで測るそうです。損失時間とは、例えば自分の走行側の信号が赤になり、交差側の信号が青になるまでの時間のことです。損失時間は、規模の大きい交差点ほど長くなります。つまり、交差する両方の流れが止まっている状態が長くなってしまうということで、これを極力抑えるには、交差点をコンパクトに設計する方がよいということなのです。しかし、ベトナムのように、二輪車中心の交通社会では、車線をできるだけ広げて、青と同時に発車する台数が多い方が効率がよいのだそうです。
このように、その国のさまざまな事情が絡むため、日本の基準をそのまま他国に持ち込んでも、安全や効率が向上するとは限らない、ということなのです。

このことは、交通安全の分野だけでなく、さまざまな局面においていえるのではないでしょうか。文化や歴史、風習の異なる他国の人々と接するとき、私たちの基準で相手を見ることは、ともすれば正しい判断を謝ってしまうことにもなりかねません。齋藤氏から、交通を通じてこのことを教えていただいた、今回の例会でした。

(事務局 田中達也・記)

投稿者 lefthand : 13:44 | コメント (0)

2009年08月07日

2009年10月例会のご案内

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【日 時】2009年10月18日(日)〜19日(月)
【内 容】(1)ひょうたん温泉周辺視察と入浴体験
     (2)竹瓦温泉周辺視察と入浴体験
     (3)参加者による検討会

今年三月に初出版された「ミシュラン観光ガイド日本版」で、全国3,000余の温泉から選ばれた三つ星温泉は二か所です。
一つはあの有名な四国松山・道後温泉本館(坊ちゃん風呂)であり、もう一か所は九州の大分別府・ひょうたん温泉です。道後温泉本館は重要文化財ですから、三つ星は当然と思いますが、ひょうたん温泉が三つ星に選定されたことは、温泉業界でも一般マスコミからも驚きをもって受け止められています。

先般、ひょうたん温泉を訪問してみますと、ミシュラン効果で欧米人が急増しているように、ミシュランガイドに掲載されるということは、集客に大きな効果がありますが、その選定は、日本人と異なる感覚のフランス人が現地調査を行い、選定しているのです。
このことは、フランス流の評価基準で、日本の観光地へ訪れる外国人の集客が決まる、という時代になったことを意味し、情報グローバル化の波はこういう形で観光地に影響してくるのです。

そこで、この度ひょうたん温泉と、同じく別府でミシュラン二つ星を受けた竹瓦温泉を現場体験し「ミシュランは何を基準に星選定をしたのか」について検討会を催します。
温泉とは関わりのない業界の方も、世界のファッションブランド界をリードする、フランス流思考回路を分析検討することを通じ、グローバル化という実態を肌で知る絶好の機会です。

皆様のご参加をお待ちしております。

【日 時】2009年10月18日(日)〜19日(月)
【内 容】(1)ひょうたん温泉周辺視察と入浴体験
     (2)竹瓦温泉周辺視察と入浴体験
     (3)参加者による検討会
【宿泊・検討会】
別府温泉「ホテルニューツルタ」 http://www.newtsuruta.com/
大分県別府市北浜1-14-15

【行 程】
■2009年10月18日(日)
羽田発11:35=大分着13:15 JL1787便 到着後路線バスにてホテルへ
15:00〜17:00 ★★★ひょうたん温泉周辺視察と入浴体験
19:30〜21:00 夕食懇親会

■2009年10月19日(月)
6:30〜7:30 ★★竹瓦温泉(ホテルから徒歩2分)周辺視察と入浴体験
8:00 朝食
9:00〜11:00 「ミシュランは何を基準に星選定をしたのか」検討会
11:00〜14:30 自由行動
路線バスにて大分空港へ
大分発16:30 羽田着18:00 羽田空港にて解散
        
【現地直行の方】
ホテルロビーに10月18日(日)14:50に集合してください。
(ホテルのチェックインは14:00から)

【参加費用】
■羽田空港から搭乗される方
経営ゼミナール正会員 30,000円
オブザーバー会員   40,000円
一般ご参加者     43,000円
■現地直行の方
経営ゼミナール正会員 10,000円
オブザーバー会員   20,000円
一般ご参加者     23,000円
【お申し込み最終期限日】
2009年8月31日(月)までにお願いします。
飛行機、ホテルの確保の関係上ご協力お願いします。
※行程及び参加費用は、航空会社の10月フライト時間と料金が未定ですので暫定です。

【お申し込み・お問い合せ】
下記のチラシをご覧ください。

→チラシを見る

投稿者 lefthand : 06:43 | コメント (0)

2009年9月例会のご案内

経営ゼミナール2009年9月定例会(354回)ご案内

8月は夏休みです。
9月は7日(月)に開催いたします。ご発表者の海外出張の関係で、9月は第一月曜日となります。

ご発表は、東京医科大学国際医学情報センター教授のJ.P バロン氏をお迎えし、日本と海外の医学実態分析と、先端医療情報についてご発表いただきます。
現在、アメリカではオバマ大統領が内政の最重要課題に掲げる、医療保険制度改革が検討され、熱き議論が展開されていますが、日本は国際的にみて医療充実度はどのような実態なのでしょうか。
9月のテーマは「世界から見た日本の医療の実力と課題」です。日本の医療は世界的に見て、どのようなレベルなのか、また日本の医療システムの特長は、などについて、スコットランド出身のバロン教授から率直なご見解を伺います。

【日時】2009年9月7日(月)
    午後 6:00 集合(食事を用意しています)
       6:15 山本代表の時流報告 
       6:30 バロン氏発表
       8:30 終了

【場所】東京銀行協会ビル内 銀行倶楽部 4階3号会議室
    千代田区丸の内1-3-1 Tel:03-5252-3791
    東京駅丸の内北口より徒歩5分(皇居和田倉門前)
    アクセス:
    http://www.kaikan.co.jp/bankersclub/access/access.htm

【テーマと発表者】
テーマ 「世界から見た日本の医療の実力と課題」
発表者 J.P バロン氏

【講師プロフィール】
J.P バロン氏
1948年スコットランド生まれ。ペンシルバニア大学卒業。同年、国際キリスト教大学大学院特別研究生として日本語ならびに奈良平安時代の国語史を研究。1975年、ロンドン大学東洋アフリカ研究学部にて博士課程修了。
1980年、聖マリアンナ医科大学助教授を経て、現在、東京医科大学国際医学情報センター教授。10以上の医学雑誌の編集委員を初め、世界気管支学会理事及び事務局長、国際光力学学会事務局長を兼任する他、国際食道疾患学会、国際外科学会日本支部、日本気管支学会、日本肺癌学会、日本消化器病学会(The Journal of Gastroenterology)、アジア太平洋呼吸器学会、日本乳癌学会等の編集委員・顧問等として幅広く活躍している。
医学書の英訳・編集は15冊以上にも上り、中でも2冊は日本翻訳出版文化賞を受賞するなど、国内外における医学界のcommunicationsに深く貢献している。


* 会費 オブザーバー参加の方は、当日会費として1万円をご用意下さい。
* 問い合わせ 
  出欠:編集工房 代表 田中達也 
  電 話:03−6806−6510
  FAX:03−5811−7357

お申し込みはこちら

投稿者 lefthand : 06:36 | コメント (0)

2009年08月05日

2009年8月5日 普遍的価値

YAMAMOTO・レター
環境×文化×経済 山本紀久雄
2009年8月5日 普遍的価値

国立西洋美術館の世界遺産登録延期

フランス政府が中心となり、フランス人建築家、ル・コルビュジエ(1887年~1965年没。近代建築の巨匠)の世界各国に点在する作品を一括して世界遺産として登録する中に、上野公園内の「国立西洋美術館(本館)」が入っていました。

だが、2009年5月、ユネスコ世界遺産委員会の諮問機関・国際記念物遺跡会議(イコモス)は、「顕著な普遍的価値の証明が不十分」として、世界文化遺産への登録を延期すべきだと勧告、事実上世界遺産は難しい状況になりました。
現在、ユネスコは新規登録を抑制する傾向にあり、日本の候補では、一昨年の石見銀山(島根県)、昨年の平泉(岩手県)に続き、3年連続での延期勧告となりました。石見銀山は日本政府の精力的なロビー活動などで最終的に世界遺産に登録されましたが、随分苦労したと関係者からお聞きしています。
塩谷文部科学相は「世界遺産の登録が全体にだいぶ厳しくなっており、日本の推薦自体をもう少し考えていく必要がある」と語り、また、国立西洋美術館は「大変残念。登録は厳しいものとなったと認識している」とのコメントを発表しました。
 
ミシュラン観光ガイドでは

今年3月、初めて日本版ミシュラン観光ガイドが出版されました。この中で国立西洋美術館は一つ星の評価となっていて、同じく上野公園内にある「東京国立博物館」の三つ星より、明らかに評価は低くなっています。日本人には国立西洋美術館の方が、人気があると思いますが、ミシュランガイドでは逆になっているのです。
同様に同公園内にある東照宮は二つ星、谷中霊園は二つ星ですから、国立西洋美術館の方が評価は低いのです。ミシュラン社には、判定するための普遍的価値基準があるのです。
 
故郷に戻ってみて

先日、広島で、広島県庁から二年間、東京の政府関係機関に出向して、県庁に戻った女性とお会いした際、「久しぶりに戻ってみると、随分外国人観光客が多いと感じる」との発言がありました。
日本政府観光局(JNTO)の発表で、2009年上半期(1月~6月)の訪日外国人客数が、前年同期比28.6%減の309万5,000人となり、2005年以前の水準まで落ち込んでいるという実態なので、これは県庁に戻った女性の実感と異なります。
また、東京から広島に行く新幹線の中、近くの座席でフランス人がミシュランガイドを持って研究している姿を見ていましたので、日本全体は外国人減少となっていますが、広島地区には特別に外国人が評価する普遍的価値があるのではないか。
そう思った時、一昨年ドイツ・ポツダムを訪れたときの体験を思い出しました。

ポツダム会談

ドイツのポツダムは、今はベルリンのベットタウンとなっていますが、もともとフリードリッヒ大王の城下町で、ツェツィリホーフ宮殿がある街で、今ではポツダム会談が行われたことから、世界遺産となっており、世界中から観光客が押し寄せます。
ポツダム会談は、正式文書では「ベルリン三大戦勝国会談の報告」と言い、会談の議題は大きく分けて三つ、【1】戦後のヨーロッパを東西にどのように分けるか、【2】ドイツの戦後処理、【3】日本への無条件降伏勧告で、1945年8月2日に調印宣言された会談です。
この、【3】の議決が問題でした。既に同年7月26日、日本に無条件降伏を勧告通告済みでしたが、東西冷戦の対応に早く着手したいアメリカは、日本との戦争を早く終わらせたいので、米・トルーマンが英・チャーチルとソ連・スターリンに原爆投下を提案し、賛成を取り付け、会談日の四日後の6日に広島、続いて長崎に投下したのです。
当時、アメリカは6月にメキシコで原爆の実験に成功し、二個の原爆を所有していたものを投下したのです。この投下によって、原爆のすごさに脅威を感じたソ連は、その後原爆開発のスピードを速め、原発競争になりました。

私は広島生まれです

このポツダム会談が行われたツェツィリホーフ宮殿、そこでガイドの説明を聞いていた時、同行のドイツ在住の通訳女性が「私は広島生まれです」と、小さな声でしたが、ドイツ語で突然つぶやいた時の光景が忘れられません。
その場にいた観光客、多分15人程度だと記憶していますが、全員がギョッと彼女を見つめたのです。彼女の足元から頭の上まで、まるで原爆患者であるかのように、鋭く点検するような目つきで凝視したのです。
原爆投下は20世紀最大の悲劇で、世界中の小学校・中学校の教科書に教訓として掲載されています。ですから、広島・長崎という名前を知らない人は世界にいなく、世界の人々にとって特別な場所、つまり、普遍的価値として認識されているのですから、全体の訪日外国人が減っても、広島に影響は少なく、広島県庁にリターンした女性発言になったのでしょう。

かき専門料理店がない

その県庁に戻った女性、東京で知り合いになった人たちが広島に来て、多くの人が「広島はかきが名物だから食べたい」と希望を述べるそうです。
ところが、改めて探してみると、広島市内に「かき専門料理店」がないことが分かったと、これも二年間広島を離れてみて確認できたことだとお話されていました。
 日本でのかき養殖は、天文年間(1532年~1555年)という450年も前から広島湾で始まり、それ以来、広島はかき産地として成長発展してきて、今や「かきは広島だ」ということを知らない人はいません。かきは広島の普遍的価値となっているのです。
したがって、かきを一年中食べられる専門店があってもよいのではないか、というのが当然の気持ちでしょう。しかし、存在しないのです。広島の独自性を発揮していません。

韓国には専門店がある

ところが、日本からかきの養殖技術を導入した韓国、つまり、かき養殖後発国の韓国には「かき料理専門店」が存在します。かき産地として有名な統営市、釜山から約150km離れたところですが、ここには専門店がいくつもあり、ソウルからわざわざ訪ねてくるくらいの人気です。ここを今年の二月に訪れ、かき焼きとかきご飯に満足しました。
また、養殖地まで行かなくても、ソウルの街中に「かき村」というかき専門店がチェーン展開しています。30店くらいあり、いつもかき好きの人で活気に満ちています。
また、一般の人もかきの食べ方を工夫しています。釜山で会ったかき好き主婦は、かきのむき身を買ってきて、塩水で洗い、それを唐辛子・みそ・水飴・酢・キムチの素を混ぜたたれをつけて食べます。かきの刺身というわけです。加えて、かきのキムチもつくります。白菜二三枚の間にかきを入れ、そこに大根とネギと人参とせり等を千切りにして加え、キムチの薬味を入れて、一週間後が一番美味いといいます。なるほどと思います。

観光地の独自性

人が旅行する意味は、自分が住む土地との違いを求めて動くのです。全く同じなら旅行する意味合いはありません。原爆投下の地という違いを持つ広島に来てみれば、そこは古き時代から伝わっているかきの養殖一大産地である。ならば、そのかきを食べてみたいと思うのが当然でしょう。広島が持つオリジナリティだからです。そうすると当然にかき専門店が必要になり、そこではフランスや韓国と異なる日本独自のかき料理が美味しく楽しめる。
このような普遍的価値が、どうして広島に実現していないのか、それが一大疑問です。

普遍的価値

外国人の日本観光地評価は、ミシュランガイド出版によって変わりました。ミシュランによる勝手評価が、普遍的価値となりつつあるのです。普遍性という基準が変化している事例です。国立西洋美術館の世界遺産登録延期の理由として「普遍的価値の証明が不十分」という指摘でした。その通りと思いますが、では、今の時代は、何が普遍的価値なのかを改めて問うこと、それが必要であり、大事な検討と思います。
我々は今、狭くなってしまった世界で、各国の独自性を尊重しながら、世界の人々が共有できる意識や価値観を育て磨き、それを普遍性価値にしていく努力が必要と思います。以上。

【8月のプログラム】

8月は夏休みです。9月のプログラムをお楽しみに。

投稿者 lefthand : 20:20 | コメント (0)