2005年06月28日

不動産と不動産業の変遷 不動産鑑定士 村松喜平氏

    経営ゼミナール ワンポイントレッスン 2005年6月20日
   不動産と不動産業の変遷    不動産鑑定士 村松喜平氏

地価を長期トレンドで考える

今月は不動産業界に詳しい村松氏から「不動産と不動産業の変遷〜一般的知識の拡大を図る〜」につきまして、詳細な資料を添付いただき、且つ脳力開発に基づく明快なご説明がありました。その資料の中で、昭和三十年(1955)からの地価指数推移を改めて見て見ると、平成に入ってからのバブル時期の地価上昇は異常なことが明らかです。当たり前のことですが、明らかに長期トレンドからはバブル時代は特殊性であったことが分かります。

土地の価格とは

今でも「昔はこの自社の土地は高かった。もう一度戻るのか」と発言する経営者が時折います。この発言は「自分の会社の立場」からの発言です。村松氏から配布された新聞に、森トラスト森章社長が「利用価値のある土地は上がる」と発言されています。当然の見解です。土地という立場から考えれば「この土地を利用してくれる人がいるのかどうか」で、土地の利用価値が決まるのです。では、その土地の利用活用の回答を出すのは誰か、という問題になります。村松氏は不動産の取引にあたる不動産流通業とは「売り買いの要望アジャスト業であり、情報の収集と告知と契約・決済」であると説明し、土地売買とは金が動き登記簿が変ることで、土地政策・税制、金融状況が影響するものと指摘します。とすると不動産としての土地価格の決定は不動産業界でなく、該当土地を利用しようとする立場の人が決めることになります。

土地価格決定の普遍性

今年の公示価格で都心部の土地が14年ぶりにプラスとなりました。これをもって「地価下げ止まりは本物だ」という考えもあるらしいのですが、しかし、土地価格は「その土地の利用価値で決まる」のですから、活用できる土地しか上昇しないことになります。また、その活用できる土地とは、「活用できる計画をつくれるか」によって決まるのですから、該当土地活用の企画力を生み出す力がある立場、その立場にいる人の脳力にかかっているということになります。
土地という物件に対する「叡智と知恵」を創造できるか、というところによって土地の価格が決定されるというのが普遍性であると思います。

ITと不動産業

村松氏が指摘した多くのポイントの中で、ITとの関係で「本当によい物件はITとは関係ない場面で決まっていく」とありました。今はIT時代といわれていますが、この見解にも改めて頷くと共に、多くの示唆を受けることができました。  以上。

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2005年05月27日

「昨今のマンション事情」(株)長谷工アネシス 鈴木信男氏

経営ゼミナール ワンポイントレッスン 2005年5月16日
「昨今のマンション事情」(株)長谷工アネシス 鈴木信男氏

●今月の発表は鈴木氏の変化物語

鈴木信男氏が現職に異動されたのは、2001年6月でした。異動後、上田代表のお奨めで経営ゼミナールにご参加されるようになり、それ以後、正会員としてご多忙の中ご出席いただいております。
現職に異動し、暫く経過してから経営ゼミナールでご発表お願いした経緯がありますが、そのときの状態と比較し、鈴木氏のご発表内容は素晴らしい変化です。
業界状況から実務的なエッセンスまで詳しくお話いただき、銀行業界から見事にマンション業界人になられていることを確認できましたが、最も素晴らしいのは鈴木氏が経営に参画している長谷工アネシスの企業業績の立派な内容、これは鈴木氏が的確な経営をすすめられた結果が大きいと判断いたします。

●マンションの未来について

東京における分譲マンションの新規供給は、全分譲住戸の四分の三を占めていることを考えますと、マンション問題は普遍性あるテーマです。
そのマンションに居住する世帯主の年齢は、50歳以上が60%を超え、世帯人数2人以内が43%なっていて、マンションで永住するという意識層が約半数になっています。また、新規建設マンションと老朽化マンションが並存しており、仮に建替えしたとしても、建替え後の戸数が現在を下回る「既存不適格」となるものが、全体の半分近くを占めるという実態です。
これらを考えると「マンション問題への対応策」は、なかなか一筋縄ではいかないことが容易に推測できます。ですから、一概に「マンションの未来」について論議できず、その上、人それぞれにマンション居住状態が異なっていて、その異なった立場から見解が分かれますので、「昨今のマンション事情」は、テーマとしては身近で普遍性あるもので、簡単に理解できそうですが、そうではなく反対に難しい問題である、ということが改めて分かりました。

●業績を支えている内因

長谷工アネシスの経営実績は「マンション運営管理」からです。マンション居住が持つ人間内部要素にフイットし、受け入れられる実務として着実に展開しているからこそ、立派な業績を計上しているのです。その新しい新機軸事例が「既存マンションのブロードバンド化」「コンシェルジュサービス」「リサイクル事業」等です。このような新企画展開は「マンション居住者対応業」というコンセプト・方向性を社内でしっかり確認しているからできる、つまり、社内の内的要因が好業績を示している最大の要因と思います。以上。

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2005年04月22日

経営ゼミナール ワンポイントレッスン 2005年4月

経営ゼミナール ワンポイントレッスン 2005年4月18日
「少子化と大学淘汰の時代」(株)クイック教育システム代表補佐役 矢澤昌敏氏

大学を卒業して久しい参加者にとって、矢澤氏が持ち込んだ採用試験で実施される「CAB」テストは大変だった。暗算計算力が衰えていることを再認識させられ、若者にはかなわないという気持ちになったが、今の若者の問題点も認識させられたゼミであった。

「学生は、未来社会から預かったもの、だから、未来社会に必要な能力を授けて送り出すことが大学の役割だ」(加藤寛 千葉商科大学学長)という大学の現状について、詳しい資料に基づいて説明いただいたが、分かったことは「少子化で大学経営は岐路に立っている」という事実だった。これから多くの大学が倒産して「母校が消える」という現実が発生する未来社会であるということでもあった。

また「大学のレジャーランド化・カルチャーセンター化」によって、学力の低下がここ10年で顕著になったことについても、詳細なる説明があったが、その学力低下している学生を受け入れる企業の立場としては、矢澤氏から教えていただいた問題点の解決をしなければならない、という「逆説的な教え」であったと理解したい。

では、学力低下した学生を、新入社員として迎えいけるにはどのような対応をとることが望ましいか。それは「入社時の教育」をしっかりするしかない。

学生時代の自由で勝手な行動スタイル、それを企業の状況にマッチさせた社員像に直ちに変化させることである。入社即変化させることが大事である。「鉄は熱い内に打て」である。

変化させる方向性は何か。方向性とは戦略方向であり、その戦略方向が誤っていると企業は社員の不良資産を抱えることになる。不良社員を抱えると、その解消には多大な時間とコストが必要となり、効率的な経営ができなくなるので、教育の方向性としての戦略を間違えてはならないと思う。

ならば、入社時の教育方向性戦略とは何か。それは「愛社心という忠誠心を植えつける」ことである。「愛社心」があれば企業に対する「忠誠心」が必然的に備わり、企業にとっての「役立つ社員」になれるのである。愛社心をつけるためにはどうするか。
これについては2005年4月20日YAMAMOTOレターで解説しているので、経営ゼミナールHPでご覧願い、ご参考にしていただきたいと思います。

大学の最先端実態情報を学び、その対策について考えさせられた例会であった。以上。

投稿者 Master : 14:22 | コメント (0)

2005年03月24日

フランスのブランド力

  経営ゼミナール ワンポイントレッスン 2005年3月22日
「フランスのブランド力」ピェール・ファーブル・ジャポン社長富岡順一社長

フランスとの長いビジネス経験と、在仏日本大使館に勤務経験のある富岡社長のお話は魅力的である。成る程と頷かせる内容の連続であったが、そこで浮かび上がったことは、日本のブランド力はどのようにものにすべきか、という我々日本人に問うべき内容であった。

1. 現在、富岡社長は資生堂からの出向社長として、ピェール・ファーブル・ジャポン社の経営に携わっているが、もともとは資生堂のフランス進出時に活躍した人物である。資生堂がフランスに進出した際は、カネボウも同時期に進出した。最初はカネボウの方が拡大急で成功したようにみえたが、その後カネボウは撤退せざるを得ない状況に陥った。その要因はスイスの代理店に任せたチャネル拡大マーケティングを採用したことであった。一方、資生堂は当初からジックリとブランドマ-ケティングを展開し、時間は要したが今やプレステージブランドとして定着している。この事例は、進出時の方向性戦略が誤ると、その後に怖いものがある証明である。
2. 資生堂がフランスに進出時にロレアルの会長から言われたのは「資生堂は怖くない。日本でトイレタリー商品を販売している人種は、プレステージ商品の販売に向かない。なぜならばそういう低価格の商品を扱うという体質が、全ての場面に出て行くので、高級品販売には馴染まないだろう」と。
この背景思想には、日本人が考えるブランドと、フランス人が意識するブランドとでは、本質的に差があるという意味である。フランス人はコルベール委員会という「最高の職人技術の保存」と「手作り的な部分」を大事にしていくことを基本にしている。このことを分からないといけないが、それは中産階級社会で育っている日本人には難しい感覚の分野に属するもので、これが体質的にみて日本人の大きな課題となっている。
3. そこで、日本は日本らしいブランド構築が必要である。資生堂は高い日本の工業力、つまり、高品質というところにブランド力を求め、その追求で現在の地位を築いた。しかし、日本らしさというところにブランドの原点をおこうとしたら、それは江戸文化から語ることになるだろう。だが、江戸時代は今では遠い過去のことであり、現在は経済中心という社会価値となっている。その現状でありながら江戸文化を持ってきて、ブランド構築するということ、そこには無理があると考えられるが、では経済力・工業力からブランド力構築をすることでうまくいくのか。資生堂はうまくいったが、果たして同様にうまくいくとは限らない。そのところが大きな課題であり、これは商品だけでなく、日本全体のイメージ構築戦略の難しい問題である。
4. なお富岡社長は4月から国際交流基金に職場を替えることになっている。資生堂時代に経験した国際感覚を持って、日本全体の文化発信の仕事をすることになるが、是非とも日本のブランドイメージ構築と確立に貢献されることを期待したい。   以上

投稿者 Master : 14:30 | コメント (0)

2005年02月22日

来るべきコミュニケ−ションビジネスの展望・AI技術の再出発

2005年2月21日、304回経営ゼミナ−ルが開催されました。
発表者は株式会社ピ−トゥピ−エ−代表取締役 黄 声揚氏でした。
テ−マは「来るべきコミュニケ−ションビジネスの展望とそれを支える技術について−AI技術の再出発」です。大変エキサイティングな内容で、先端技術の開発と創造の素晴らしい時間を過ごすことができました。その黄社長の発表内容をどのように受け止めるか、それを「ワンポインレッスン」としてご報告いたします。


    経営ゼミナ−ル ワンポイントレッスン 2005年2月21日
「来るべきコミュニケ−ションビジネスの展望・AI技術の再出発」 黄 声揚社長 

(今月のテ−マは開発と創造)
人工知能AIは、80年代に大きなブ−ムとなったが失速した経緯がある。それについて黄社長は多くの要因があったが、最後の決め手としての失敗要因は「ビジネスモデルが構築できなかった」と整理しました。

大きな期待に対して、狭い範囲のAI技術であったことが最大要因であり、その失敗要因を分析することから黄社長の再出発と未来への研究が始まったのです。
脳力開発では「開発と創造」のステップを次のようにしております。
1.希望・目標の提起    2.調査研究  3.戦略の確認・確定
4.戦術の研究・選択実行、 5.点検、修正

(黄社長が行っている段階)
現在、黄社長が立っているステップは、上のどの段階なのか。80年代の失敗事実から1の希望・目標の提起は十分に行い、2の調査研究もすでに終了し、3の戦略の確認・確定を決定し、今は4の戦術の研究・選択ステップ段階に来ていると思います。
それが「会話ビジネス」です。具体的には「VoiceCaiwaフラットフォ−ムの提供」から「ナビパッケ−ジ」と「会議録支援システム」まで進んで、その構想について説明を受けました。黄社長の説明をお聞きしていると、すでに4の戦術の研究・選択ステップから進んで、実際は5の実行、点検、修正ステップ段階に来ているのではないかとの、印象を持ちました。もう一歩のところに来て、実務段階としてのゴ−ルは目前にあるという感触を得ました。

(医療分野では実用化されている)
今年の2月5日日経新聞に「がん発見に人工知能」というタイトルで、冨士写真フイルムとがん専門病院の静岡県立静岡がんセンタ−との共同開発状況が掲載されました。がんの早期発見システムにAI技術の導入展開が2010年を目処に実用化するとの目標です。

(未来技術に関心を持つ)
今回のゼミナ−ルは黄社長という稀にみる優秀なリ−ダ−によって「開発と創造」が行われている実際の姿、それを実際に担当している人物から、分かりやすく説明を受けることができました。
世の中でどのような先端技術が開発され創造されているのか。それらを経営情報として取り入れていくことも、企業経営にとって大事で有意義であると思います。以上。

投稿者 Master : 13:17 | コメント (0)

2005年01月22日

2005年1月経済アナリスト北川宏廸氏発表

(紙上ワンポインレッスン) 

テ−マ「銀行再編成・どうなる2005年の金融情勢」
2005年1月17日例会 経済アナリスト北川宏廸氏発表内容から

紙上ワンポインレッスンは、経営ゼミナ−ル代表世話人の山本紀久雄がコメントいたします

■1月例会雰囲気
北川氏の発表は魅力的である。自らが連載する月刊ヘルダ誌を持参し、それに基づき親切な解説をしてくれる。これは本の著者が直接読者に「書いた意図」を解説してくれるのと同じである。

文面では表現でき得なかったであろう著者のコメントをつかみ、その背景を知ることで、主張の理解と論点整理が出来、議論が活発になるという効果がある。作家の講演が人気があるのもこの理由であり、それと同じ雰囲気の1月例会であった。

■銀行不良債権処理が経済活性化の根本理由
今回、北川氏に登場いただいた理由は、日本経済がバブル崩壊以後長期低迷していた根本理由を再確認したいためでもあった。バブル崩壊以後、宮沢内閣以来森内閣まで一貫して「赤字国債発行による総需要喚起政策」を採り続けてきたが、結果は財政悪化を招くばかりで経済は活性化しなかった。小泉内閣になって公共投資路線から銀行不良債権処理路線に、その政策の基軸を変え、その成果が表れるにしたがってGDP成長率はプラスに転換上昇したのである。
ということは不良債権が経済不活性化の根本理由ということであった証明でもあった。どうしてこのような要因を最初から解明できずに、膨大な財政赤字をつくってしまったのか。そのことへの疑問としては、政治家及びブレ−ン経済学者のセンスの問題とは思うが、いずれこのテ−マで北川氏に再度登場いただきたいと思っています。

■東京三菱の戦略失敗
不良債権処理とは日本経済の活性化への道筋でもあるが、一方、不良債権を抱え込んでいる銀行側の経営問題でもある。国家政策としては経済活性化目的であり、銀行にとっては経営体質強化目的である。その銀行経営視点でメガバンクの戦略選択を見るならば、東京三菱が「不良債権比率をさげること」に中心をおいたのに対し、たの3メガバンクは「新しい金融のビジネスモデル」構築に取り組む最大のチャンスとしてとらえ、その結果は2005年9月中間期決算結果として如実に表れた。東京三菱が苦しくなり、巷間言われている「東京三菱が安全・安心」神話が崩れたことを、デ−タで指摘する北川氏の論点は重要な学びを与えてくれる。

■何を学ぶか
問題の発生から解決方向への戦略を構築をするためには、現象を的確に分析・把握することが大事である。しかし、北川氏が指摘する東京三菱の事例は、分析・把握が的確にできたとしても、戦略構築にはもう一つの要素が必要であることを教えてくれる。それは「戦略構築する立場が持つセンス」の優劣差である。戦略構築という方向性決定には時代を見抜くセンスが必要不可欠なのである。時代のセンス無き経営行動は大きな失敗戦略を構築することになる。                         

投稿者 Master : 11:35 | コメント (0)

2005年01月14日

04年12月ワンポイント講座

「ぬりえをサブカルチャ−から世界の文化へ・・その戦略提案」
発表者 ぬりえ美術館館長 金子マサ氏

毎回、ワンポイント講座は、事務局長の山本紀久雄がコメントいたします。

(ビジネスとして成り立つか)
ゼミにご出席の多くの方からぬりえ美術館の経営はビジネスとして成り立つのか、という率直な疑問が提示されました。ご指摘の通り現在の力ではビジネスには遠い実態です。その基本的要因は美術館の許容量です。狭いので多くの方の来場は無理です。そこで戦術方向としてサロン活動と講演活動を目指しています。

(講演活動はあるのか)
NHKはじめマスコミの取材は年々増えています。ビックリするほどです。その結果来館者は3000人を越えましたが、この程度では経営は成り立ちません。講演依頼が殺到しないと収入は増えません。その講演依頼はまだわずかです。理由は「ぬりえ研究家」として世の中に認識されていないからです。
ぬりえはサブカルチャ−というレベルまで届きましたが、サブカルチヤ−レベルでは文化として大きく認識されないので、展示会と講演会が少ないのです。各地の美術館や公共機関・カルチャ−センタ−でぬりえが取り上げられるようになると、金子さんしかぬりえの研究専門家がいないという日本の実態から、講演依頼が殺到すると思います。しかし、今は殺到していないのです。

(ぬりえを文化にすることが先決)
美術館の経営を向上させるには、金子さんがぬりえ研究家として世の中に大きく認識されることが大前提です。
しかし、その前にぬりえが一般社会から文化として認識されないと、いくらぬりえ研究家として第一人者として主張しても、それは受け入れられません。つまり、ぬりえを妥当に正しく文化として世の中に認識されるということ、それがあって次に金子さんの登場となるのですが、そのためには金子さんが自らの努力で文化にするという行動へ向かっていかねばなりません。

(金子さん自身にかかっている)
戦略ロマンとしての「ぬりえを世界の文化へ」を実現するためには、金子さんの更なる精進が必要です。世に訴える活動、それはまず誰も書いていない「ぬりえ文化本」の出版をすることです。
誰も手をつけていない分野のぬりえについて「バイブルとなるべき文化本」を2005年に出版することから、金子さんのぬりえを世界文化にする道がスタ−トするのです。
その道へのスタ−トの2005年に期待したいと思いますし、そこへ向かう戦術は計画されています。後は実行のみです。

投稿者 Master : 14:15 | コメント (0)

2004年10月23日

ビジネス成功にはセオリ-がある

今回の発表を聞いて、日本の温泉法が温泉発展方向や、人への役立ちにという視点からの方向性が欠けていることに気づいた。これは日本がとっている農業政策についても言えることである。経済産業研究所の山下一仁氏が次のように述べている。

「日本は最も農業保護主義的な国として内外の批判を浴びている。ところが、農業保護負担費はアメリカ389億ドル、EU1214億ドル、日本は447億ドルと少なく、農産物の平均関税率も12%であるから、EU20%、タイ35%より低いのである。日本は一部品目に突出した高関税国なのだ。米490%、バタ-330%、砂糖270%で他の品目は低いのである。他の国では関税で保護することより、財政による直接支払い保護に変更しているが、日本だけは関税という消費者負担割合が高い実態のままである。したがって、農業政策で農家の保護という意味で米価を上げることをした結果、農家は収益の高い米の生産に固執し、他の作物に向かわず、食料自給率は下がる一方である。その上、農家も高い米を市場で買うよりは、自ら作るほうが安上がりということになるので、零細兼業農家が滞留し規模は拡大しないという結果になって、国際競争力は低下した。加えて、高米価、兼業、宅地等への農地転用により、兼業農家は豊かになったが、企業的農家は育たず逆に農業は衰退した。農業を保護するということと、どのような手段で保護するかということとは分けて考えるべきだ。関税はあくまで手段にしか過ぎないのに目的化してしまっている。目的とすべきは、農業の発展であり、国民への食料安定供給である。関税の維持ではない。農家の保護を目的にするならば、農家への財政直接支払いという方法が妥当だ」と。
日本の温泉法は昭和23年(1948)に制定したものだが、温泉利用者の立場からの情報については何も義務付けていないと山本氏は指摘する。目的がずれているのである。例えば、温泉の加水や加温、入浴剤添加などの情報表示を義務付けていなく、ただ、地下から湧出させる源泉の温度と成分だけを規定した条文で、人に対する利用視点からの内容が完全に欠如していて、温泉を正しく活用させる、という視点がないとも指摘する。加えて、湧出させる温泉の内容を規定しているだけであって、何故日本人が温泉を好むかという、大事な利用者の立場からの温泉法となっていないのである。温泉水を湧出させたら、後の使い方はどうでもよいのである。ここに温泉業界が問題化させる温泉使用上の根源があり、日本の温泉問題は温泉法にあり、これを改正することがすべての問題解決に至るという主張、それはいたって自然である。温泉はもともと人間にとって役立つものであって、日本人は昔から温泉を好む民族であるのだから、その視点から温泉法を立案法文化すべきである。この主張に賛同し、日本人が基準を大事にしない傾向、戦略的考察が弱いことが温泉法にも現れていると感じた今回の発表と思います。

投稿者 Master : 22:58 | コメント (0)

2004年08月23日

若者は問題は大人の問題 玄田有史氏

紙上ワンポイントレッスン 発表者 東京大学社会科学研究所助教授 玄田有史氏

玄田氏の専門は「ニ-ト」である。最近、曲沼美恵氏と共著で「ニ-ト」(幻冬社)を出版しました。ニ-トとはNot in Education,Employment,or Training の頭文字を集めた造語である。このニ-トという言葉が新聞・雑誌に登場し始め、そのニ-トに最も詳しいのが玄田氏である。
今回のゼミ内容ではニ-トということについては直接解説しなかったが、お話している内容はニ-トについての背景を語っていた。ニ-トとは「学校にも職場にも属さず、職業訓練も受けていない若者たち」のことである。これらの人々に対する対応については、ゼミ記録とおりですがここで大事な意識の問題があります。
それは社会が大きく変化したという事実です。人口が減っていくのですから、必ず人口は増え、会社には後輩が入り、社会には若い人が増えるという時代ではないという事実です。この変化はもう大分以前から始まって、そんなことは分かっているといいたいのですが、右上がりの時代の経験が長い我々にとっては、昔の感覚を修正しないまま引きずっているのです。また、経営のあり方が「人件費は固定費でなく変動費である」というリストラ終了企業の経営手法によって、大変化した事実も再認識すべきです。

企業に所属している若い人々、それが以前は「社員」と呼ばれる層でした。だが今は、パ-トも派遣も社員と一緒に混在して、同じ企業目標に向かって働いて、今までとは大きく社内環境が変わっているのですから、若い人に対する対応方法を変えなければならないのです。ところが、相変わらず「頑張れ」としか激励の言葉が浮かばない社長と幹部が多く、それが問題をこじらしているのです。
我々は全員子供時代・若い時代を過ごしてきました。だが、その子供・若輩時代を忘れているのが我々なのです。否、忘れたからこそ大人になったともいえるのですが、それが問題点なのです。ですから、玄田氏のような若い世代の最先端の実態に詳しい上に、それを分かりやすく理論的に整理でき、且つ、魅力的な話法で伝えられる人に努めて会わないといけないのです。
企業内で若い世代の理解を得られない経営者は、社会でお客として構成している若い世代から支持を得られない経営をしてしまう危険性が高いのです。
経営ゼミナ-ルは、そのことを恐れます。若い世代の支持を得るには、まず若い世代のことを学ばねばいけません。そのためには時代の最先端意識を整理して語れる人材に接することです。直接にお話を聞き、質問し、自らの感覚の修正作業をすべきです。そのために経営ゼミナ-ルは、年間のタイミングを図ってこれからも時代最先端人をお呼びしたいと思っております。
今回の玄田氏は正にその目的で来ていただきました。多くの方から共感あふれる感想をお伺いし、これらの企画が大事であると認識しました。今後をご期待下さい。

投稿者 Master : 22:57 | コメント (0)

2004年07月23日

日本写真家協会の経営改善 安達洋次郎氏

2004年7月 日本写真家協会前会長 安達洋次郎氏
経営ゼミナ-ル事務局
1. タイトル 日本写真家協会の経営改善を図る
2. 安達洋次郎氏のポイント
① まず最初に感ずる安達氏のすごさは、一般的に経営の技術的な内容であると考えられている品質管理QCを、自分の人生訓・生き方セオリ-に昇華させていることである。
資生堂に入社したとき、デミング賞に挑戦するため、全社的に勉強している過程でQCを積極的に学びマスタ-し、そのQC技術手法を思想にまで高め、今日まで持ちつづけている。
この継続して持ち続けた意味は、若いときに身につけた物事は一生ついてまわるという事実である。若い斬新な脳力のときに、道理に合ったセオリ-を体験的に身体に染みつけると、その後の人生で誰もが対面するであろう大事な分かれ目・キ-ポイントの際に、行動として自然に脳から指示が出されていき、セオリ-通りの結果となっていく。

反対に、若い時代に時代とずれた思想・セオリ-を身につけると、時が経つにつれて、その人の行動は時代と噛み合わなくなって、途中で気づいて修正しない限り、結果的に暗いマイナス方向にいくことである。
②  次に感ずるポイントは、何故これを行うのか。目的は何か。何のためなのか。という戦略思考力に優れていることである。
一般的に事件や問題が発生したとき、とりやすい思考は「うまく切り抜けたい」になりやすい。しかし、安達氏の場合は、その事件・問題に当面したときに、真正面から取り組む姿勢が習慣化している。これもQCから身につけたものであるが、ここで大事なことは、上司や関係者に対する姿勢が一貫していることである。上司などの上からの権力に対しても、自らのセオリ-を貫く精神的強さを持っていることである。
③  日本写真家協会の公募展、これを会員だけで開催しようとする意見に対して、会員の実力向上を狙うならば、非会員にも公募してもらうことが大事だと主張し、結果的に会員のレベルを向上させたという実績づくり。それは「協会の実力向上のための公募展である」という目的思考からの主張であって、結果として協会の経営改善に結びつけているのであるが、この一連の経営行動を外部からの協会理事、それは著名な梅原猛氏や元総務庁長官の水野清氏などであるが、それらの人が正しく観察していたことが藍綬褒章の要因になったのである。
安達氏の戦略的思考と行動力に学ぶべきことは多い。

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2004年04月23日

トヨタ式経営 今村龍之助氏

2004年4月19日「トヨタ式経営・その強さの本質」グル-プ21今村龍之助氏
トヨタ式経営を学んでいる企業は多い。その数は正確には分からないが、アメリカでトヨタ式経営のコンサルタントが2000名程度いるといわれていることからも、トヨタ式経営を導入、または導入を検討している企業は世界に多く存在している。
しかし、そのトヨタ式経営について意外に経営者は知らない。勿論、トヨタの企業業績の素晴らしさは十分に認識しているが、その認識している内容、それがトヨタの生産方法システムのことと思っている経営者が多いのである。トヨタの「カンバン方式」等でトヨタを理解し、その「カイゼン」運動としてのトヨタ経営を認識しているのである。

トヨタ式経営がスタ-トしたのは、昭和25年の労働争議を原点としている。当時のトヨタの労働争議は激しいもので、倒産寸前となって、そこからどのように立ち上がることが必要かという、現場の実践行動改善からトヨタ式経営の追求が始まったのである。当時は、お金がない、社員の気持ちが荒んでいる、世界の自動車業界情報が少なく、日本だけという市場では規模が小さいという状況から、将来の企業生き残りを図るならば、アメリカの自動車産業に追いつかなければダメだという、強い意志を持ったことからスタ-トしたのである。それから54年を経過して、現在のトヨタをみれば、すべての点において日本をリ-ドし、世界の自動車業界をリ-ドし、多くの協賛する企業を育て上げているのである。一優良企業というよりは、社会的な「優良カンバン」としてのトヨタブランドに変化しているのである。この50年間という期間、それは多くの企業も同じく過ごしてきた期間であるという事実、そのことを静かに考えてみれば「人間行動の中味によって結果が大きく異なる」ということ、それが重みを持って迫ってくることを感じざるを得ないのである。
そのトヨタ式経営から学ぶことは何か。外部からみれば、生産方式の改善活動から始まったものが、トヨタの経営理念、それはTOYOTA・WAYであるが、それは社会のため、お客のためという志であるが、その志を歴代経営者が踏襲し、それを社員が吸収し、その結果社員が「考える力」をつけ、その「考える社員」が退社後は他社にスカウトされている事例が多く、それも生産企業だけでなく、サ-ビス産業から学校、病院、郵便局というあらゆる分野に広がっていること、この事実を深く考えなければならない。
考えるポイントはトヨタの社員は、一般企業の社員と異なっているということである。何が異なっているのか。それは「トヨタ式経営に身体が癖づけされている」という事実である。癖づけ、習慣化されているのであるから、トヨタ式経営の実践は当たり前の事で、当然の行動実践であるので自然に実行されるからこそ、経営が改善されていくのである。つまり、企業改善をしようと思うならば、社員の行動習慣の改善変化が必要であるということである。改善行動するための癖づけが身体についたときに、その企業の経営改善は成功し、結果として利益が獲得できるのである。経営改善は社員の癖づけ変化から始まり、そのために経営者の変化が前提として必要であることを理解したい。以上。

投稿者 Master : 22:53 | コメント (0)

2003年12月23日

03/12/15「恋とビジネスの共通性」直木賞作家 唯川恵氏

唯川さんは経営ゼミナ-ルのような勉強会でお話しするのは初めてのことでした。そのために対談というスタイルで開催しましが、素晴らしいエキサイティングな内容になりました。盛り上がった最大の要因は、唯川さんの人柄が素敵だったということです。偉ぶらず、率直で、姿勢正しく、はっきりと、その上明るい現代感覚の美人でした。身長が高いのにはビックリしましたが、その大柄の身体からゆっくりと穏やかに分かりやすく語ってくれました。唯川さんが多くのファンによって支えられている作家であるということ、それを本当に実感した経営ゼミナ-ルでした。

唯川さんの思考方法を脳力開発的に分析したいと思います。人の中身は表に出る部分で分かります。中身は脳という思考を担当するところにあるわけですから、外から見るわけには行きません。そこで、外見に表れる部分から、その人の中身を判断していく、という作業が必要になってきます。観察力が必要です。
唯川さんは直木賞を受賞しています。直木賞の受賞、それは小説家として社会に認められたこと、つまり、小説家としてのブランドが確立したということになります。そこで、直木賞受賞作「肩ごしの恋人」を材料にして分析してみます。
「肩ごしの恋人」の冒頭場面は、友人の結婚式で始めてあった男女が、結婚式が終わったあと、ホテルに行くというラブシ-ンから始まります。これを読んだ多くの年配の読者はビックリするわけです。直木賞という内容が変化したのか、時代がそのような現実なのか、という疑問とともに、最大の疑問点は「小説家という存在は、自分が体験したことを中心に書くのか、そうならばこのラブシ-ンは唯川さんの体験か」というところにあります。そこで、このところを最初に質問しました。
答えは「小説家は、想像することがたくましい人間でなければできない」ということでした。我々はビジネスで「創造力」を発揮したいと思っています。しかし、小説家は「想像力」が必要なのです。ひとつの、何かのヒントから発生させて、そこに多くの材料場面を想像させて加えていく。それが小説家としてまず必要な脳力なのです。

では、その想像力をどのように磨くのか。「OL10年やりました」という作品の中に「不幸が来たときに、幸福の扉が開く」という表現があります。これが唯川さんの思考方法を端的に表す代表的な言葉と思い、その確認を唯川さんにいたしましたら、「私は物事を対比的に考える習慣をもっている」という発言が返ってきました。一方的角度からのみでなく、併せて反対方向角度からも考えてみる、という思考法です。これを聞いて成るほどと思いました。実は、この思考方法は脳力開発で指針としている「常に両面とも考え、どちらが主流かも考える習慣つくり」のことです。やはり、唯川さんは物事の成功セオリ-を体得しているから、小説家として成功していると判断しました。以上

投稿者 Master : 22:52 | コメント (0)