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2008年02月27日

2008年3月の例会のご案内

3月の例会は、3月8日(土)に千葉商科大学にて開催いたします。

今、江東区豊洲のららぽーと豊洲 内にあるこどもが主役のこどもの街「キッザニア東京」が子どもたちに大変人気を博していることをご存知でしょうか。
「キッザニア東京」は、実物そっくりの仕事の体験ができ、働けばお金が手に入り、お買い物ができ、遊びながら社会を体験することができるというものです。

しかし残念ながら、「キッザニア東京」には、大人が入ることができません。
そこで、「キッザニア東京」と同様のコンセプトをもち、子どもたちに体験を通して学ぶ「キッズビジネスタウンいちかわ」を千葉商科大学が開催しております。
「キッズビジネスタウンいちかわ」を通して、人気の背景と、「キッズビジネスタウンいちかわ」のもたらすものを視察していただき、今起きている時代の変化の現場で体験していただきたいと思います。

「キッズビジネスタウンいちかわ」とは:
主催者:千葉商科大学
後援:市川市教育委員会、江戸川区教育委員会
趣旨:「子どもたちがつくる、子どもたちの街」
小学校6年生以下(12歳)の児童、幼児が市民となり、皆で働き、学び、遊ぶことで、共に協力しながら街を運営し、社会のしくみを学ぶ」教育的行事です。
(子どもたちの集客数実績:2007年1700人 初回2003年800人))


1. 日時 平成20年3月8日(土)10:30~14:30
  *通常例会の開催日時ではありませんので、ご注意願います。
   
10:30       JR総武線市川駅改札口集合
            (駅ビルに入る改札ではありません)
京成バスにて移動
11:00~11:30 ガイダンス(大学の教室内)・・・中沢教授
11:30~12:30 「キッズビジネスタウンいちかわ」見学
12:30~13:00 JR総武線市川駅に戻る
13:00~14:30 昼食
「おいどん市川店」
           〒272-0826 市川市真間1-16-9
           047-329-1505
           http://r.gnavi.co.jp/b269901/

2.会場  千葉商科大学キャンパス
        千葉県市川市国府台1-3-1  TEL:047-372-4111
http://www.cuc.ac.jp/

3.テーマと講師
「キッズビジネスタウンいちかわ」見学
      千葉商科大学 商経学部 鈴木孝男教授、中沢教授

3月8日(土)開催の例会に、多くの皆様のご参加をお待ち申し上げます。


* 会費  オブザーバー参加の方は、当日会費として1万円をご用意下さい。

投稿者 staff : 14:31 | コメント (0)

2008年4月例会の予定

4月の経営ゼミナールは、4月21日(月)に開催いたします。
※日程が変更されましたので、ご注意ください。

4月の経営ゼミナールは、4月19日(土)に開催いたします。

4月の例会は、「世界から日本を見る」という視点で、カストロ議長が引退声明をして話題になっているキューバから日本を見たいと思います。キューバは未来の日本の社会モデルの参考になるかもしれません。

キューバは、米国の経済封鎖と旧ソ連の崩壊により生活物資が困窮し、未曾有の経済崩壊の状態に追い込まれました。その危機的状況下で、キューバでは、有機農業で1000万人以上の規模で自給・自足可能の国を実現しています。
又キューバの医療について、アメリカの映画監督のマイケル・ムーアが、「シッコ」という映画で紹介(日本上映2007年)しましたので、すでにご存知の方がいらっしゃるかもしれませんが、キューバでは、がん治療から心臓移植まで医療費はすべて無料であり、発展途上国には医療援助をしているという国でもあります。
講師には、長野県農業大学校勤務で、キューバに関する著書も多数書かれている吉田太郎氏をお招きして、現在のキューバの実態について発表していただきます。
キューバ大使館の方からも、キューバの国の現状を紹介していただきます。
 
4月の経営ゼミナールのご予定をよろしくお願いいたします。

投稿者 staff : 14:29 | コメント (0)

2008年02月23日

保田漁港と海洋観光立国のすすめ

経営ゼミナール・ワンポイントレッスン
「保田漁港と海洋観光立国のすすめ」 2008年2月18日保田漁港にて
講師 保田漁業組合 出口専務、山崎事務局長
    NPO地域交流センター 明戸眞弓美氏


1.保田漁業組合
 まず、驚いたのは経営実態である。食堂部門の「ばんや」の売り上げが、1995年オープン以来、昨年8月末までの11年間で27倍の実績となっている。経済低迷下の国内市場で圧倒的な勝者である。


 成功の要因としては、東京から近いという客観的な地理条件があるにしても、何かが存在しないとこのような大成功は生まれない。発想の「漁港に水揚げされる魚をその場で食べさせる」このようなものは珍しいものではない。簡単に浮かぶアイディアの範囲だろう。
 だが、これを実行し大成功している漁業組合は稀だ。アイディアを実行するという熱意と工夫と継続的な改善活動、それが欠けている場合が多いが、この保田漁協は違った。組合長の実行力と熱意が今日の姿を実現した。
今や、事業利益の62%を「ばんや」で稼いでいる。とにかく活気が全く異なる。一般的なサービス、つまり、丁寧・上品・的確というようなサービスを度外視される実態が、売り上げを創造しているのだ。一度は経験しないといけない世界が、保田に存在している。

2.明戸眞弓美氏
 若い学徒、明戸さんの夢は大きい。日本の3000ヶ所に及ぶ漁港をヨットで結ぼうとするビジョンである。
 彼女の発想原点は、フランス大西洋岸の漁港ラ・ロシェルである。フランスの海辺に立った時、海岸の最も条件のよいところにヨットが、整然と係留されている。それを見た瞬間、日本の海岸との比較から浮かんだのが「海とスロー・ツーリズム・ジャパン」の内容である。フランスで実現されている漁港のヨットハーバー化の現実、それを日本で実現できないか。その情熱から今回の著書になり、今回の経営ゼミナールの発表につながった。
 新鮮な主張を真剣に語る明戸さんの活躍を、今後さらに期待したい。

3.日本を救う方法
 人口減の日本、その対策の重要なひとつは滞留人口の増加である。つまり、外国からの観光客を増やすことである。そのための資源は国内に数多くあるが、その中で最も活用していないのは海である。日本国土面積は世界で60番という狭さだが、領海面積と排他的経済水域を加えると世界で6番目という広大さ、海洋国としては世界の大国なのだ。
 我々は視点を変えないといけない。陸から海を見るのでなく、海から陸を見る。そのような発想転換を一人ひとりが行うこと、それが新しい日本の魅力を創り出すだろう。以上。     

投稿者 staff : 10:31 | コメント (0)

2008年02月21日

2月例会の感想記事のご紹介

 2月の例会は、千葉県・保田漁港にて現地見学研究をおこなってまいりました。
 本研究会の模様を、当日参加されたエコライフコンサルタントの中瀬勝義様が発行されておられる『お江戸船遊び瓦版』60号にてご紹介くださいましたので、ご紹介いたします。

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「海洋観光先進地:保田 ばんや が賑わっています!!」
                     
 日本晴れの中、海洋観光先進地の保田を訪れました。
 保田は、海洋観光立国の先進事例として賑わっている漁港の中で、全国一番の成功例とも見なされています。
 今回は経営ゼミナールが開催した「保田研究ゼミナール(バスツアー)」に参加させていただきました。
 東京駅に集合し、大型観光バスに乗り、アクアラインの海ほたるに立ち寄りました。素晴らしい快晴の中に、日本人のこころの富士山が美しく聳えていました。
 保田に向かうバスの中では、保田に因んだ「金糸雀(かなりや)」を音楽事務所主催者高橋育郎先生の指導で合唱しました。作詞者の西条八十は学生時代から保田
の海を愛し、毎年のように避暑に訪れて、モデルとなった少女に出会って作詞したものです。奇しくもそのモデルの子孫の方が漁業協同組合の専務さんのようです。
 バスは高速道路の開通で1時間半の短時間で到着し、保田漁協「ばんや」やヨットが富士山を背に迎えてくれました。
http://www.awa.or.jp/home/hota-gk/menu.htm
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(左)素晴らしい富士の山 (右)「ばんや」

「海から広がる日本の未来~最後に残された開発:日本の海」

日 時: 平成20年2月18日 11時~13時  
 所 : 鋸南町保田漁業協同組合
主 催: 経営ゼミナール
開 会: 事務局長 金子マサ
挨 拶: 代表 山本紀久雄
漁協報告:「保田漁協における取組み概要」
  出口實専務理事、事務局長
・柴田三喜男組合長、正組合員109、準組合員111人
・漁獲高 3.7億円、2000年をピークに減少ぎみ?
・平成7年 福利厚生施設「ばんや」をオープン 売上高 2300万円
・平成12年 「第2ばんや」を自己資金でオープン 売上高 2.2億円
・平成15年 高濃度炭酸泉「ばんやの湯」をオープン 売上高が6億円と3倍に達する。
・ばんやの波及効果:水産物の高付加価値化、雇用拡大、流通コスト省略、漁業経営の安定化
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(左)「海洋観光立国のすすめ」を手に明戸真弓美講師 (右)保田漁協会議場

講演:「海から広がる日本の未来~最後に残された開発:日本の海」明戸真弓美(地域交流センター) 
・世界的な観光ブームの時代、日本はぐるっと囲まれた海という一番の特徴を全面に押し出すべき。
・海ほど人々を癒す場所はない。海洋開発先進のフランスと保田漁港をモデルに、いかにして日本人が確実に「日本人の心」と「持続可能社会」を取り戻すかが鍵である。
 http://www.jrec.or.jp/
・日本のぐるっと一周の海岸線には3000を越す漁港があり、その活用がキーポイントである。
・それぞれの地域の自然と歴史に応じた、人間的な温もりのある、小さな観光開発が望ましい。
・漁家民泊や地産地消をベースに、そしてなんといっても一番なのは良い思い出、人々の親切です。
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「ばんや」で会食

所感:経営ゼミナールの「現地見学研究会」に参加させて頂いた。素晴らしい快晴に恵まれた。
先進地の保田には毎年全国からたくさんの見学者があるが、日本各地には広がっていないようだ。最も大切なことはリーダーの実行力と言われた。
持続可能社会・明るい平和な・こころ美しい「海洋観光立国」への大きな希望を感じた。
関係各位に感謝したい。
(文責 中瀬)

●『お江戸船遊び瓦版』60号(PDFファイル)
 →こちらからダウンロードしてください


投稿者 lefthand : 14:44 | コメント (0)

2008年2月20日 エジプト・一言で語れない

環境×文化×経済 山本紀久雄

2008年2月20日 エジプト・一言で語れない


カイロの街

ルクソールから乗ったエジプトエアーから見る地上は、一面茶色の砂漠です。

国土の96%が砂漠で、残りの4%の土地に7130万人(2006年)が住んでいて、特に、首都カイロを核とする大カイロ圏には、約2000万人(構成比28%)が集中しています。

人口集中の結果は、道路の渋滞ということになります。カイロ空港からホテルに向かった道路、渋滞と信号無視の世界が続きます。誰も信号、つまり、交通ルールを守らないのです。というより信号がないのです。あっても真ん中の黄色が点滅しているだけで、そこでは一応警官が手信号で交通整理をしていますが、人はかまわずに車と車の間を巧に泳ぎ、交差点・道路を横断します。実際に、これを真似してみたところ、結構できるもので自分ながら感心しましたが、排気ガスがすごく、当然ですが健康にはよくありません。知人から、エジプトの平均寿命は短い(70.1歳・2002年度)のは何故か。それは水が悪いからではないか、ということを確認してくれと依頼されましたが、こういう排気ガスが充満している環境では、いろいろ要因が重なって、平均寿命に影響していると思います。それを示すようにエジプト大使館ホームページでは、乳幼児死亡率が高い理由として呼吸器感染症と下痢症を挙げています。

さらに、人口集中の結果は、失業率の高さを生み、貧困層がギザのピラミットの近くの「死者の町」、つまり、墓地にまで住み着く結果となっているのです。


アスワン・ハイダムによる環境問題

ナイル川上流のアスワン・ハイダム建設について、エジプト博士の早稲田大学・吉村作治教授が、以下のように述べています。

 「このアスワン・ハイダムのお陰でアスワンより下流に氾濫が起きなくなって、エチオピアやケニアから流れてくる肥沃な土砂が運ばれなくなった。そのために土地が痩せて、化学肥料を入れなければならなくなった。なおかつ約六十メートルも水位が上がり、そのため地下水の水位も上がって、遺跡やその他が塩害に苦しむようになった。また、地中海の河口の所にプランクトンが湧かなくなったり、ダムによって広大なナセル湖ができたために蒸発した水分が雲となり、雨が降りやすくなるなど、いろいろな弊害が出てきている。ナセル大統領は、アスワン・ハイダムを造ることが国を裕福にする唯一の方法だと考えたのだろうが、歴史というのは大変冷酷であり、こういった結果をもたらしてしまったわけである」(ピラミット文明・ナイルの旅)

このことの証明が日経新聞(2007年12月31日)の報道です。

「三大ピラミッドやスフィンクスで知られるエジプトの首都カイロ郊外ギザの古代遺跡群周辺で地下水位が年々上昇し、一部で地上に水があふれて遺跡が浸水、ピラミッド建設に当たった労働者や貴族らが暮らした街の遺跡『ピラミッドタウン』の発掘作業に深刻な影響が出ていることが分かった」

アスワン・ハイダムは、古代エジプト人の「ナイルの賜」文明に反したのでしょうか。

ホテルで

渋滞の中、13時過ぎにホテルに着きました。ホテルは高さ142m、716室と巨大建物です。部屋に入って、インターネットLAN回線でつなげてみると問題なく、ホッとしてボーイにチップ渡し、さて、メールしようと受発信するとエラーとなり、インターネットもつながらなくなりました。そこで電話してネット係りに来てもらい、いろいろ操作してもダメです。一緒にビジネスセンターに行ってくれというので行くと、そこの担当者が6時過ぎに開通するので待っていてくれといいます。

仕方ないので、ホテル内をウオッチングし、外にミネラルウォーターを買いに出ましたが、どこにも店らしき姿なく、排気ガスがすごいので、すぐに部屋に戻り、まだ6時前でしたが、念のためインターネットを試してみたらつながります。

しかし、一週間宿泊した後半の2日間は、地中海に配置している回線の故障で、完全にインターネットが使えなくなりました。カイロ全体が不通なのだと、地元の人が語りますが、このようなトラブルはよくあるのか、ちょっと不思議な社会であると感じます。

着いた日の夕食は、一階レストランに行きました。エジプトはイスラム教なので酒類は禁止のはずですが、エジプト産のワインがあるというのでグラスワインを飲みました。結構いけます。食事が終わり、支払伝票を確認しましたら、グラスワインの金額が倍に印字されています。それをウェイトレス指摘しますと、走ってどこかに行き、戻ったときはチーフらしき蝶ネクタイがついてきて「この価格にはサービス料が加わっている」といいます。そこで、伝票の合計欄下に別項目で書かれているサービス料12%を「これは何だ」と手で示しますと、黙って引き下がり、しばらくすると減額した伝票を持ってきて「訂正しました」といいます。イスラム社会はちょっと難しいと感じます。

ムバラク大統領

何人かのエジプト人に聞いてみますと、ムバラク大統領の評判はいたって悪いようです。その理由は、政権が長期間になりすぎていることです。サダト大統領が1981年10月に暗殺され、そのときに就任してから27年間、年齢は80歳になろうとしています。本来、憲法で任期6年、二期までという規定がありましたが、その終了時に任期規定を条項修正した上に、2005年に行われた5選目の選挙では、国民や海外から不正疑惑を問われましたが、結局、当選し事実上の終身大統領となっているのです。

このまま行けば、後任大統領には息子がなるだろうと、地元の人が語り、今の政治は貧しい人を豊かにさせない政策を採っていると指摘します。

国民が豊かになって余裕が出ると、政治に関心を持つことで、現政権への批判が強くなるので、貧乏社会にしているのだ、という声が多くあります。

この声には、まさかと思いますが、そういうことが国民の間で語られているという事実、そこにエジプト社会の深い闇があるように感じます。


日本人に対する意識

書店で買った、ぬりえブックの出版社を訪ねました。アポイント取らず直接訪問するという荒業です。渋滞で全然車が動かず、ここで事故が発生し、怪我や急病になっても、これでは救急車も入れず、命の保証がないだろうと考えていると、ようやく出版社に着きました。立派なビルです。カイロの中心地で、エジプト考古学博物館の近く、エジプトテレビの隣です。玄関ホールから、エレベーターの前に立つと、ガードマンがどこに行くのかと聞いてきます。通訳が「日本からぬりえの研究者が来て、社長に会いたい」といいますと簡単に通してくました。

エレベーターで上がり、薄暗い廊下を歩き、窓にぶつかる右側のドアが開いているので顔を出しますと、女性が入れという手招きをします。中では大きなデスクに年配の女性が座り、その前の女性と何か打ち合わせしていたようです。

大きなデスクの女性が、大声で電話しながら「何の用事ですか」聞きますので、ぬりえの調査をしていて、本屋で貴社のぬりえを買い、その住所をみて訪ねて来ました。いろいろ教えてもらいたいと、名刺を差し出しますと、まぁ座れという仕草をしてくれます。遠慮なく座りますと、「何か飲みますか」と聞いてくれます。折角ですから紅茶をお願いしながら、デスクの女性が渡してくれた名刺をみますと、何と社長です。

また、この企業は大きそうなので、創業以来何年ですか、と聞きますと118年だといい、当社はアラブ世界で一番大きい出版社だと補足します。大企業なのです。しかし、こういう大企業にアポイントなしで来て、社長と直接会えることに驚くと同時に、そういうことができる社会であると言う事実に、エジプトの新しい一面を感じます。

この企業が扱っているジャンルはすべての分野。政治、経済、文学、科学、法律、歴史、アート、子ども・・・。印刷はこのビルの中と、もうひとつ向こう側のビルの中で行って、アラブ世界各国の36の書店系列に卸していると説明受けます。手土産代わりに、「ぬりえの心理」英文版を贈呈すると、漢字でサインしろといい、ページをめくりながら、こういう本を出したかったとお世辞かどうか分かりませんが、至って好意的で、 日本人だからだと思います。エジプトでは日本が高く評価されています。


他国理解は難しいのですが、特にアラブ社会は難しいと感じたエジプトでした。以上。

投稿者 staff : 11:36 | コメント (0)

2008年02月08日

2008年2月5日 エジプト・ナイルの賜

環境×文化×経済 山本紀久雄
2008年2月5日 エジプト・ナイルの賜

日経新聞で紹介される
昨年末に出版しました「ぬりえを旅する」(小学館スクウェア)が、1月17日(日)日本経済新聞図書欄で紹介されました。小さな掲載記事ですが、経済紙のメジャーが取り上げてくれたという意味、それはこの本が、時代の動きと、どこか重なっていること、それが評価されたのではないかと、素直に喜んでいます。
引き続き、「ぬりえを旅する」二冊目出版のため、エジプトを訪れました。


ナイル川クルーズ「エジプトはナイルの賜」という有名な言葉があります。前五世紀のギリシャの歴史家ヘロドトスが述べたものです。この言葉どおり、ナイル川のお陰で、エジプトは世界四大文明を遺したのです。
したがって、エジプトを理解するには、ナイル川を体験しなければ話になりません。
しかし、どうやって体験するか。ナイル川の辺に立ってみるか、ナイル川に入ってみるか、ナイル川の中から岸辺をみてみるか、様々な体験方法がありますが、何といってもナイル川はアフリカ中央部、ルワンダ共和国のカゲラ川を水源とし、全長6600メートルを超える世界最長の川であって、エジプト国内に入ってからも1500キロメートルもある巨大な自然です。加えて、地域によってナイル川の持つ自然条件が異なり、一地域を切り取るようなスタイルでナイル川を体験しても、ナイルの賜という意味合いは理解できません。
そこで、今回はナイル川クルーズ三泊四日の旅、行程はアスワンからルクソールまでの200キロメートルに乗船してみました。エジプト国内1500キロメートルのうちのたった200キロメートル、ごく僅かなナイル川の体験のため、当然、不十分さは承知していますが、少しでもエジプトを理解しようと、クルーズに乗船したのです。

アスワン・ハイダム
クルージングのスタートはアスワンです。エジプト最南端の町で、スーダンとの国境まで350キロメートル、アスワンまでカイロから飛行機で行きました。
アスワンを世界中に知らしめたのは、1960年から70年にかけて、旧ソ連の協力で建設されたアスワン・ハイダムです。エジプト社会を発展成長させるためには、農地を増やし、増える人口を養い、工業化もしなければならない。そのためには、アスワンにダムを造って電力を起こし、灌漑を行い、農地を広げようと、幅3600メートル、高さ111メートルのダムを建設しました。また、その結果生まれたのが全長500キロメートルにおよぶ人造ナセル湖です。大きさは琵琶湖の7.5倍もあります。
 折角来たのだから写真を撮ろうと、堤防上に設置された展望所から、ナセル湖と下流に流れていくナイル川、それとソ連との建設記念塔などに向かってシヤッターを押していると、突然、どこからともなく一人の兵士がこちらに向かって走ってきました。手には当然ながら小銃を持っています。
しかし、当方は何も悪いことはしていないので、自分とは関係ないだろうと無視して、写真を撮っていると、こちらの目の前に立ち、怒り顔で、
「今、ズームを使用しただろう」と叫びました。
 予想がつかない詰問に、何と答えてよいか分からないので、黙っていると「ズームは禁止だ」と厳しい顔つきで、一歩前へ迫ってきます。
 そこで「ズームは使わない」と答えると、「いや、今、使ったように見えた」「使っていない」「使った」「使わない」。二三回言い合いしているうちに、最後は兵士があきらめ向こうに去っていきました。実はズームを使って撮影したのですが、危険を感じたので使用しないと言い張ったのです。だが、どうして遠くにいた兵士が、こちらのズーム使用を分かったのか、それが今でも不思議であるほど、警戒が厳重なのです。
 
何故にズームが禁止なのか
最近はデジタルカメラにも高倍率のズームが付いています。3倍ズームが多いのですが、6倍や10倍といった機種もリリースされています。このズームレンズは1カ所から広い画角や狭い画角がズーム操作ひとつで簡単に切り替えられます。高倍率ズームなら、離れた場所からでも遠くの被写体を大きく写すことができること、これが一番のズームレンズの効果です。
ということは、ナセル湖には何か撮影されては困る存在物、それは軍事的に重要なものが遠くに存在していて、それをズームでクリアに撮影されてしまうと、エジプト軍隊が困る事態になる恐れがあるもの、それがあるからこそ禁止しているのです。
そこで、地元の人にズーム撮影禁止の理由聞いてみますと、もし仮に、アスワン・ハイダムが破壊されるようなことになったら、水が一気に流れ出し、ナイル沿岸は8時間以内に全部埋まってしまうといいます。つまり、カイロ市内は大洪水になってしまうのです。だから、その危険防止で軍隊が守っているのです。実際に、第四次中東戦争時、ダム防衛のため高射砲でイスラエル空軍の攻撃を防ごうとしましたが、簡単にペイント弾を落とされ、この恐怖でエジプトはイスラエルと講和したといわれているほどです。

フルーカの若者
ナイル川にはフルーカという、帆で動く船がたくさん浮かんでいます。観光客を乗せるもので、ヨットをイメージしていただくとよろしいと思います。このフルーカは、風だけで動かす、つまり、帆で動く船ですので、結構、操作テクニックがいるようです。
そのひとつに乗ってみました。帆を操るのは色黒の現地ヌビア人男性で、20歳代の後半に見えます。裸足で船内を動き回り、風の向きを巧みに扱って、ナイル川の上をすべるように走り始めました。ナイル川のゆったりとした流れの上の風が、涼しく頬に当たり、船の動力は自然ですから、一切音はなく、鳥の声と岸の向こうから聞こえてくるコーランの祈り声ばかりです。
フルーカはナイル川の観光名物ですが、ふと、このフルーカはどのくらいするものか。それを若者に聞いてみました。答えは、フルーカの面積一平方メートルあたり1500ポンド(3万円)だといい、乗船したフルーカは7平方メートルだから約一万ポンド
(20万円)。若者が買うにはちょっと高いと思ったので、あなたの所有物かと確認してみると、違うといい、オーナーがいて、週3日間この仕事に雇われているといいます。後の4日はどうしているのか、これには「何もしていない」との答えにショックです。
いい若者が週3日しか仕事がないのです。生活が大変だろう思い「結婚しているのか」と聞くと、「まだだ。だけど恋人はいる。写真見たいか」、頷くとポケットから一枚の写真を渡してくれ、見ると少女と本人が並んでいます。若者の肩くらいしか身長がありません。「学生か」「そうだ、16歳だ」「エッ、すると君は何歳か」「20歳だ」。まじまじ顔を見てしまいました。老けている!!「ところで何年この仕事をしているのか」「10年している」この答えに返す言葉がありません。
つまり、10歳ごろから船の操作をしていることになり、そうすると学校に余り行っていなかったことになります。さらに「僕の収入はチップだけ。オーナーからは貰っていない」に、うーん、またもや考え込みました。
フルーカ体験は楽しかったのですが、エジプトの若者の実態を垣間見た気分で、心が少し重くなって、その分、下船時にチップを弾みましたが、この程度で若者の生活が向上するわけがありません。社会全体のシステムが問題です。
エジプト政府の発表で失業率は9.1%(2006年)ですが、若者の失業率は実際には20%を超えるようで、特に、大学卒業者は5人に2人は就職できないのが実態だと、地元の人が語ります。

クルーズ船のゴミ処理
 フルーカから上陸し、堤防の上を歩いてクルーズ船に戻ったとき、ギョッとする光景にぶつかりました。それは、クルーズの最後部甲板から、どっとゴミがナイル川に落とされたのです。乗客が出したゴミ、船のゴミ、それらがナイル川にそのまま捨てられる。当然、分別処理などはしておりません。環境問題が世界の課題で、洞爺湖サミットの議題となっていますが、世界四大文明発祥の地エジプトでは、ゴミ処理やアスワン・ハイダム建設による影響、そり他の環境問題があります。次号もエジプト報告です。以上。

投稿者 staff : 10:08 | コメント (0)

2008年02月02日

「ぬりえを旅する」が日経新聞に紹介されました

経営ゼミナール代表の山本紀久雄氏と共著で12月21日(金) 発行しました「ぬりえを旅する」が、 1月27日(日)の日本経済新聞の読書面に 紹介されましたので、ご案内させていただきます。

ぬりえに関する記事が2006年以降目につくようになりましたが、 それは大人がぬりえをするという「大人のぬりえ」の人気の状況を伝える 記事であり、書物というよりは名画であるとか浮世絵であるなど、
ぬりえ本の絵の内容をを紹介する記事でした。
しかし、それらは、書評欄で紹介されるものではなく、情報としての記事として 取り上げられたものでした。
しかし、この度は、海外のぬりえの事情を表した本として、 書評欄に取り上げられました。

「ぬりえを旅する」は3冊目になります。
2005年にぬりえの専門書である「ぬりえ文化」を、2006年には、ぬりえに関わる人々のそれぞれの立場から考察したエッセー集「ぬりえの心理」を出版いたしましたが、いずれも日経新聞のようには取り上げられませんでした。

今回、取り上げられた背景は何か。それを考えてみたいと思います。

時代は変わって行きます。特に昨年はサブプライムローンから発し、アメリカの住宅ローンが、まさか世界中の経済問題なるとは、予想もしてない事態で、いまでも問題は続いております。加えて、原油の高騰が一般生活に影響するように、海外要因で日本社会が大きく変動する時代になっている、つまり、グローバル化が必然の顕著となったのが昨年です。

そのタイミングに、「ぬりえを旅する」が出版されました。

ぬりえという存在を、日本人は日本独自のものであると、誤解している人が多い中、世界には様々なぬりえがあり、その活用方法も多様であるという実態報告内容に、日経新聞が時代の動きと重なり合うと感じ評価し、多くの新刊書の中から選んでいただいたと思います。

時代は、日本から世界を見るのでなく、世界から日本を見る目を養うことが重要視されつつあると思います。

世界の動きで日本人の生活が変化させられます。そのところをぬりえを通じてお伝えし、ぬりえを文化にし、社会に貢献していきたいと念願している者として、今回の日経新聞読書面への掲載に感謝しつつ、これからも続けて多くの国の実態を提供していく所存です。

その意味で、「ぬりえを旅する」を一度手にお取りいただければ幸甚でございます。

(日本経済新聞の紹介文)
「ぬりえを旅する 金子マサ・山本紀久雄
東京にある「ぬりえ美術館」の館長らが、米国・チリ・ロシア・イタリア・
ベトナムの塗り絵の実態を調査してまとめた。幼稚園や出版社、教育関連施設へ
の訪問取材と、子供を持つ親へのインタビューやアンケート調査を実施。この五
カ国では、塗り絵には子供の色彩感覚や集中力を養う効果があるとされ、幼稚園
や学校プログラムに取り入れられているという。遊びの要素が強い日本との違い
がわかって興味深い。(小学館スクウェア・1143円)」

投稿者 Master : 00:27 | コメント (0)