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2009年04月28日

2009年5月例会のご案内

経営ゼミナール2009年5月定例会(351回)ご案内

5月例会は5月18日(月)に開催いたします。

会場を大手町・銀行倶楽部に戻し、通常の例会を開催いたします。

テーマは環境問題です。時代はグリーン・ニューデイール政策の世界的競争となり、クリーンなエネルギーの開発が急ピッチで進められています。
一方、世界人口の増加と都市集中化はさらに進んで、居住環境としての世界、特に大都市は多くの問題を抱えているのが実態ですが、その状況下、着実に実績を積み上げ変貌を遂げている都市があります。
それは我々の東京であり、その中でも中心地である東京駅周辺地区であり、経営ゼミナールが開催されている銀行会館が位置する「大手町・丸の内・有楽町地区」でありますが、その変貌する実態をトータルに理解しないまま、毎日のように通り過ぎている。
それが多くの人の実態と思います。

そこで、5月は
「丸の内再開発から見る大都市街づくりの方向性」というテーマで、

●三菱地所 都市計画事業室 副室長 遊佐謙太郎氏
●大國道夫・都市・建築総合研究所 代表取締役 大國道夫氏
 
のお二人をお迎えします。
丸の内再開発の動向と環境対策については遊佐謙太郎氏から、丸の内と比較したマドリッド、ビルバオ、ロンドン、パリ、ベルリンの実態については、実際に現地を視察研究された大國道夫氏からご発表いただきます。

今回のゼミナールを通じて、日頃何気なく通り過ぎている東京駅周辺地区を過去・現在・未来にわたって認識・理解し、併せて、東京と他の世界的都市と比較することで、幅広い視点からディスカッションしてまいります。
時代感覚を磨く良い機会と思います。皆様のご参加をお待ちしております。

【日時】2009年5月18日(月)
    午後 6:00 集合(食事を用意しています)
       6:15 山本代表の時流報告 
       6:30 遊佐謙太郎氏・大國道夫氏発表
       8:30 終了

【場所】東京銀行協会ビル内 銀行倶楽部 4階3号会議室
    千代田区丸の内1-3-1 Tel:03-5252-3791
    東京駅丸の内北口より徒歩5分(皇居和田倉門前)
    アクセス:http://www.kaikan.co.jp/bankersclub/access/access.htm

【テーマと発表者】
  テーマ 丸の内再開発から見る大都市街づくりの方向性
  発表者 三菱地所 都市計画事業室 副室長 遊佐謙太郎氏
      大國道夫・都市・建築総合研究所 代表取締役 大國道夫氏


* 会費 オブザーバー参加の方は、当日会費として1万円をご用意下さい。
* 問い合わせ 
  出欠:編集工房 代表 田中達也 
  電 話:03−6806−6510
  FAX:03−5811−7357

お申し込みはこちら

投稿者 lefthand : 10:46 | コメント (0)

2009年6月例会の予定

6月は15日(月)に開催いたします。

テーマは経済分析です。

金融危機後の世界経済は日々変化激しく動いており、その把握は難しい状況ですが、このところアメリカ発の経済情報で好転の動きが報じられつつあります。

(1)まず、オバマ大統領の発言、4月10日にバーナンキFRB議長と協議後の会見で「米経済はなお厳しい緊張下にある」としつつも「米経済にはかすかな光も見え始めている」と語りました。
(2)次に、米金融大手ゴールドマン・サックスは4月13日に、2009年度第一4半期(1-3)決算は最終利益が18億1400万ドルと発表。これは市場予想の二倍に該当し、金融問題の損失処理が改善に向かっていることを伝えました。
(3)さらに、バーナンキFRB議長は4月14日、ワシントンで演説し、米経済に「前進の兆しが生まれつつある」と述べました。
(4)以上の状況から、アメリカではGreen Shoot(緑の芽吹き)という言葉まで飛び交うようになったといわれています。

しかしながら、白川方明日銀総裁はニューヨークで4月23日講演し、日本がバブル崩壊後に何度か一時的な景気回復局面を経験したことを踏まえ、「偽りの夜明け」を本当の回復と見誤らないよう注意する必要性を強調しました。
それはニューヨークで「経済・金融危機からの脱却:教訓と政策対応」とのテーマで行った講演で述べたもので、白川総裁は「日本経済は1990年代の低成長においても、何度か一時的な回復局面を経験したが、このことは経済がついにけん引力を取り戻したと人々に早合点させる働きをしたように思う」と指摘。その上で「これは『偽りの夜明け』とも言うべきものだったが、人間の常として、物事がいくぶん改善すると楽観的な見方になりがちだ」と述べ、一時的な回復を本当の回復と見誤ることに警鐘を鳴らしたように、経済の先行き判断は難しいものがあります。

そこで、2009年も半年経過した時点の6月15日は、経営ゼミナールでお馴染みの経済アナリスト・北川宏廸氏に世界と日本経済について解説をお願いいたします。

混迷と先行き不安の経済実体について北川氏の鋭く的確な分析から学びたいと思います。

投稿者 lefthand : 10:34 | コメント (0)

2009年04月27日

2009年4月例会報告

経営ゼミナール例会
2009年4月20日
『山梨県「増富の湯」で温泉を利用した健康増進プログラム実践の事例から経営の実態と時代の動きをつかむ日帰り見学会』

去る4月20日(月)、第350回例会として、「増富の湯」に出かけましたので、報告いたします。
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今回は、山梨県北杜市「増富の湯」にて源泉かけ流しのラジウム温泉を実際に体験し、健康に配慮した昼食をいただきながらディスカッションを行いました。

**********

午前10時。JR中央本線・韮崎駅に集合した参加者は、一路お迎えの車で増富ラジウム温泉郷へ。
韮崎駅へは新宿から特急あずさで約1時間30分。ここから約40分ほど山の中に入ると、増富ラジウム温泉郷があります。

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JR韮崎駅(左)/駅前のサッカー像(右・韮崎は中田英寿選手の出身地)

当日は新緑の季節。山々が若い力にみなぎり、そのパワーを受けているような感じがし、その風を受けているだけで何か力を授かるような心持ちがしました。

「増富の湯」は、増富ラジウム温泉郷の中にある日帰り温浴施設です。
周りには9軒の温泉旅館がひっそりと点在し、鳥のさえずりがBGMという自然に囲まれた山間の温泉地です。

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増富ラジウム温泉郷

増富の湯に到着し、セミナー室でひと休みした後、総支配人の小山芳久氏より、増富の湯の説明と、同館が実施されている「健康増進プログラム」についてのお話を伺いました。

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増富の湯

増富の湯とは

ここ増富の湯は、ラジウムを含む源泉を湧出しています。温泉内に掲げられている表記をみますと「含二酸化炭素─ナトリウム─塩化物・炭酸水素塩泉」とあります。
ちなみに、効能は次のように示されています。
神経痛、筋肉痛、五十肩、運動麻痺、筋肉のこわばり、くじき、慢性消化器病、痔疾、冷え性、うちみ、病後回復期、疲労回復、健康増進、きりきず、やけど、慢性皮膚病、虚弱児童、慢性婦人病、高血圧症、動脈硬化症。
効果効能等の詳細については、専門の書籍をご一読されることをお勧めします。

 →ご参考:『温泉と健康』阿岸祐幸、岩波新書

増富の湯には、3種類の温度の浴槽があります。
まずは源泉そのままを浴槽に流している25度の温泉、次にそれを熱交換機で30度に加熱したもの。さらに35度に加熱したもの。
温泉に限らず、一般的なお風呂の温度は40度〜42度ですので、かなり低い温度です。しかし、これが増富の湯のこだわりでもあります。

さっそく入浴

まずは入浴し、体験してみようということでさっそく温泉に向かうことに。
その前に、増富の湯の入浴作法について教えていただきました。

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増富の湯総支配人・小山芳久氏

「自分の気持ちに逆らわないで入ること」
小山支配人からの入浴指南は、これだけでした。
前述のように、増富の湯は3種類の温度の浴槽があります。
まずはそれぞれに手をつけてみて、心地良いと感じる温度の温泉に入ることが大事なのです。また、入っていて、寒いと感じたならば、すぐに出て温かいお湯(沸かし湯もあります)に入ること。決して我慢や無理をしないことが、小山氏からの入浴の心得でした。
一番いけないのは、我慢をすることなのです。我慢して温泉につかっていると、それがストレスになり、よい効果効能は得られないのです。ぬるくても熱くても、○○分入っていなければ…と、じっと耐えている方、いらっしゃいませんか。温泉にはリラックスして入ること、このことが一番大事なことなのです。
そして、体の力を抜き、他の人が湯船を移動するときの波に身体を任せるくらいにすること。そのようなことを教えていただきました。

25〜35度の温泉への入浴は、とても新鮮なものでした。特に、35度のお湯はいわゆる「不感温度」に近く、いつまででも入っていられます。30度のお湯に入っていると、最初はぬるいというより少々冷たい感覚でしたが、入っているとしだいに体がポカポカしてくるから不思議です。30分以上も入っており、湯船の中でうとうとするほどに気持ちがよかったです。
たっぷり1時間ちょっとの入浴を経て、一同セミナー室に戻り、地元の幸をふんだんに使った、その日の朝スタッフが摘んでこられたという山菜たっぷりの「摘み草定食」をいただきながら、あれこれディスカッションいたしました。この山菜はとても美味しかったです。

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摘み草定食(この他におそばがつきます)

増富の湯の経営

増富の湯は、山梨県北杜市が運営されています。
実際の運営は、小山氏が総支配人を務められる「財団法人みずがき山ふるさと振興財団」です。
小山氏が着任して10年以上が経つそうですが、その間、それまで赤字経営だった増富の湯は見事に黒字経営に転じました。途中から赴任してきたよそ者であることを払拭すること、コスト管理や経営というものにあまり関心がなかった従業員の意識を少しずつ変えていくことなど、様々な努力が実を結んだのです。
さらに小山氏は、地元の旅館との連携を模索し、増富温泉郷全体でよくなることをあれこれ考えることにチャレンジしておられます。
そのひとつが、現在取り組まれている「健康増進プログラム」です。
日帰り〜1泊、2泊と、様々な入浴+レクリエーションコースを設け、訪問客の都合に合わせた楽しみ方や健康増進などができるよう考慮されています。
これは、日本の温泉文化の源流である「湯治」を、現代流にアレンジしたものではないでしょうか。「現代版湯治」ともいうべきひとつの形を構築しようとされているように感じました。

 日本の温泉文化の源流である「湯治」について
 →「温泉の心理:第4話『江戸時代から今を見ると』」
  (NPO法人健康と温泉フォーラム・温泉保養文化研究会ブログより)

増富の湯の訪問客の車は、県外ナンバーが多いそうです。
マーケティング的には、片道2時間程度が日帰り旅行の行き先としての限界距離なのだそうですが、増富の湯にはそれを越える場所からの訪問客も多いのです。
このことは、現代版湯治が訪問客に認知されているということなのではないでしょうか。
もちろん、増富の湯が私たちになんらかの効果効能をもたらすであろう素晴らしい泉質であるということも忘れてはなりません。温泉郷のある旅館の女将の話では、1週間程度逗留する宿泊客も多いそうです。健康増進のためここを訪れる方々がたくさんいらっしゃるという事実に、小山氏の経営努力と、増富の湯の源泉の力を感じずにはいられませんでした。

増富の湯のこれから

このようにリピーターも多い増富の湯ですが、驚いたことに一般に知られていないのです。今回ご参加の皆様も、全員が今回の企画を見るまでは知らなかったということでした。知られていないという事実が問題であり、知らせるということが、増富の湯の大きな課題であろうと思います。
もちろん、PRを何もされておられないわけではありません。
ポイントは、誰に、どのように伝えるか、ではないでしょうか。
NPO法人健康と温泉フォーラムにて行われました、東京医科大学・国際医学情報センター教授のJ.P バロン氏の講演に、そのヒントがあるように思います。

 J.P バロン氏の講演
 →「第5回研究会の報告」
  (NPO法人健康と温泉フォーラム・温泉保養文化研究会ブログより)

命の径

食事の後、増富の湯山中でのヒーリング体験をすることができました。
増富の湯の裏山「命の径」は、じゅうたんのように厚く積もった落ち葉の道です。ここを散策し、少し山の中に入ったところで、事前に渡されたシートを敷き、その上に寝っ転がりました。
小山氏がゆったりとしたペースのリードにしたがって、深呼吸をし、風の音、鳥の声に耳を澄ませ、自然の息吹を感じるよう集中していると、頭の中が真っ白になり、とてもリラックスできるのです。これはとても心地良い体験でした。いつの間にやら寝入ってしまいました。

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命の径でヒーリング体験中

一番の保養は心身のリラックスであり、増富の湯の素晴らしい泉質と健康増進プログラムが相まってこの上ない快適な時間を提供されていることを体験した、今回の見学会でした。
小山様、お忙しい中ずっと我々に付き添ってくださり、ありがとうございました。
また、ご参加の皆様も遠方に足をお運びくださり、ありがとうございました。

(事務局 田中達也・記)

投稿者 lefthand : 23:42 | コメント (0)

2009年04月21日

2009年4月20日 米経済には頼れない

YAMAMOTO・レター
環境×文化×経済 山本紀久雄
2009年4月20日 米経済には頼れない

日本経済

2008年度の日本経済成長率は、2009年1月から3月までの実績が5月に発表され、その結果で最終決定します。だが、事前の予測では相当悪いというのがもっぱらの観測です。
民間経済研究機関9か所が、3月に発表した2008年度と2009年度の見通しに基づく日本経済成長率は下図のとおりです。


(クリックで拡大します)

野口悠紀雄氏説の見解

上図の数字は、3月中旬時点の各経済研究機関の予測ですので、実は、もっと悪化している可能性が高いのです。
実績が確定したところでもう一度上図を訂正しご案内したいと思いますが、日本経済は急下降で、この要因は勿論アメリカ発の金融危機による世界大不況からの輸出急減です。
これに関して2月20日のレターで、野口悠紀雄氏(早稲田大教授)が文芸春秋三月号で述べた次の内容をご紹介しました。
「分かりやすく言えば、経済の水準が6年前、バブル崩壊後日本の景気がどん底を示した2002年~2003年の状態に戻る、ということだ。2002年に底を打ってから、日本の実質GDPは6年間で10%増加した。ちょうどその上昇分が消失するのである」
そこで、今回の大幅落ち込み以前である、2008年1月時点のGDPは568兆円と、2002年10月時点のGDP、509兆円を比較してみますと、59兆円の減少となります。この額は正に日本のGDP総額の約10%分にあたり、野口教授の指摘が信憑性を帯びてきました。

アメリカ経済

日本経済が数年前の様に成長するためには、世界経済の賦活が前提条件です。また、その世界経済はアメリカの経済にかかっていますので、アメリカの実態がどうなのか。それが最大の関心事となります。そこで、いくつか最近の報道から拾ってみたいと思います。
(1)まず、オバマ大統領の発言。4月10日にバーナンキFRB議長と協議後の会見で「米経済はなお厳しい緊張下にある」としつつも「米経済にはかすかな光も見え始めている」と語りました。
(2)次に、米金融大手ゴールドマン・サックスは4月13日に、2009年度第一4半期(1〜3月)決算は最終利益が18億1,400万ドルと発表。これは市場予想の二倍に該当し、金融問題の損失処理が改善に向かっていることを伝えました。
(3)さらに、バーナンキFRB議長は4月14日、ワシントンで演説し、米経済に「前進の兆しが生まれつつある」と述べました。
(4)このところ株価が上昇傾向になってきました。4月17日の米株式相場は続伸しダウ工業株30種平均は8,131ドルとなり、3月9日に付けた6,547ドルからの上昇幅は1,500ドルを超えました。
(5)外国為替市場でもドルが優勢となって、昨年12月18日は1ドル=87円でしたが、4月18日は99円と円安傾向になっています。
(6)以上の状況から、アメリカではGreen Shoot(緑の芽吹き)という言葉まで飛び交うようになったといわれています。

本当はどうなのか

米国経済の動向をいち早く把握するためには、米労働省が毎月発表する「雇用統計」が群を抜いて優れているといわれています。
その中でも特に、非農業部門雇用者の前月比増減数が注目されます。それは、米国企業は経済が減速し始めると、迅速に雇用を削る傾向があり、雇用減少は個人消費の鈍化につながるため、やがてはGDPの悪化にもつながるからです。
各月分を翌月の第一金曜日に発表しますので、4月3日発表の3月雇用統計を見ますと、軍人を除く失業率は8.5%となり、1983年11月水準以来の悪化で、景気動向を示す非農業部門雇用者の前月比は前月から66万人減少しました。
これは昨年1月からの合計で510万人に達するもので、ここずっと60万人から70万人もの人々が雇用を失っている状況です。
 FRBの判断基準は、増加幅が15万人以上であれば雇用・景気はともに堅調であり、10万人以下であればともに懸念する必要があるとされていますが、この判断目安が全く参考にならない惨状となっています。

株価と雇用との関係

下図は雇用統計と日米株価の関係を示したものです。

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アメリカの雇用統計を見ていますと、米国経済だけでなく株価の予測もできる可能性があります。上図を見ますと、日経平均株価とNYダウはほぼ連動して動いていることが分かり、この株価と下段の非農業部門雇用者前月比増減数とほぼ連動していることも分かります。アメリカの雇用がGDPに影響し、結果として日米株価に影響しているのです。

デカップリングは誤りだった

米国経済が減速しても、新興国や資源国の高成長で世界経済は順調に推移する。というデカップリング論が著名経済アナリストによって、喧伝されていたのはついこの間のことでしたが、金融危機の結果はこの主張は全く当たらないということを証明しました。
今になって考えてみれば、全く市場規模が異なっていたのです。例えば、米国の消費は約10兆ドル(1,000兆円)、これに対し成長著しい中国とインドの消費を合わせても約2兆ドル(200兆円)ですから、米国経済が急激に悪化すれば、新興国の成長ではとても穴埋めできないわけで、この事実データを見誤っていました。
 
アメリカ経済は改善していないのだから

アメリカ人は、住宅バブルで借金を膨らませた家計のバランスを考え、借金減らしを優先し始め、雇用情勢が改善されていない状況下では、内需の柱である個人消費復活は期待薄です。オバマ政権の経済政策司令塔であるサマーズ米国家経済会議の委員長も「米経済は世界景気回復の原動力になれない」と言明しました。この発言背景は、世界経済の規模拡大は難しいという意味になります。世界経済全体が苦しいのですから、日本は内需を増やす方策しかなく、そのために何を戦略目標にするか。その答えは前回レターです。
以上。

【5月のプログラム】

5月 8日(金)16時   渋谷山本時流塾(会場)東邦地形社ビル会議室
5月15日(金)14時 温泉フォーラム研究会(会場)上野・東京文化会館
5月18日(月)18時経営ゼミナール例会(会場)皇居和田蔵門前銀行会館
5月20日(水)18時30分 山岡鉄舟研究会(会場)上野・東京文化会館

投稿者 lefthand : 17:53 | コメント (0)

2009年04月05日

2009年4月5日 時代は外から変わっていく

YAMAMOTO・レター
環境×文化×経済 山本紀久雄
2009年4月5日 時代は外から変わっていく

訪日旅行者数の急減少

日本政府観光局が発表した2009年2月の訪日外国人旅行者は、前年同月比で41.3%の減少となりました。統計がある61年以降では、過去最悪だった大阪万博開催翌年の71年8月(41.8%)に次ぐ大きさでした。

要因として「世界的な景気後退や円高など」を挙げていますが、各国政府や自治体の「旅行自粛」も響き、国・地域別では香港の60.4%、シンガポールの56.4%、韓国の54.5%が目立つ減少でした。
この中でも中国は2月25.6%減でしたが、1月は31.4%増と、旧正月が昨年は2月、今年は1月であったことが影響して月別変化があるものの、全体的には中国人の訪日が増えている傾向です。
その理由の一つに「中国での北海道ブーム」があります。きっかけは正月映画として大ヒットした「非誠勿擾(フェイチェンウーラオ)」、日本語題では「誠実なおつき合いができる方のみ」という中国版ラブコメディで、知床や阿寒湖など北海道東部も舞台として登場し、美しい自然が評判となって、今年になって北海道ツアーが急増したからです。

ミシュランガイドブック

訪れる観光地を星印で格付けするフランスのガイドブック、ミシュランの観光版「緑のガイド(ギード・ベール)」が3月16日発売されました。
ホテル・レストランのガイドは2007年から東京版が登場しており、観光地に関しては簡易版「ボワイヤジェ・ブラティック」が刊行されていましたが、本格的なガイドとしてのギード・ベールの発行は初めてです。
すでにアジアではタイとシンガポールが発行されていて、日本は三か国目で「ギード・ベール」は、その国の文化に重点を置き、格式も高いとされていますが、今回の内容で「わざわざ訪れる価値のある場所」としての三つ星基準に選定されたのは56か所、二つ星は189か所、一つ星は301か所となっています。
この選定は、日本で暮らすフランス人10人と、本国スタッフ1人、日本人1人の合計12人で、国内各地を訪れ「印象深さ」「歴史的遺産価値」「自然の美しさ」「もてなしの質」など9項目を分析し、都市だけでなく史跡や公園、博物館などもランク分けし評価したものです。

ガイドを見てみると

ギード・ベールはフランス語によりフランスで発売され、9月に英語版が刊行されますが、日本語版の発行は未定とのことです。
したがって、日本ではちょっと入手が難しいので、3月末のパリ出張時に現地書店で購入し、早速にホテルの部屋で三つ星はどこか、二つ星はどこかとチェックしてみました。
三つ星は、京都、富士山、日光、伊勢神宮、姫路城、善光寺、松本城、屋久島、新宿御苑、東京都庁、明治神宮、東京国立博物館、高山、白川郷、五箇山、川平湾など、二つ星は浅草、谷中、六義園、築地市場、石垣島、黒川温泉、野沢温泉などです。
しかし、意外だったのは、先日一泊してきた日本で最も成功しており、集客力日本一という温泉地が無印となっていたことです。日本に戻ってから、早速、この温泉地の観光課に電話し、ミシュランガイドのことを知っているかどうかお聞きしたら、答えは「知らない」という返事です。なるほど 無印ですから無関心なのか思いましたが、何か違和感の残る観光課の返事でした。
さらに、「中国での北海道ブーム」で北海道に中国人が増加しているのですが、ギード・ベールでは北海道に三つ星はなく、二つ星として知床、層雲峡、旭岳、姿見、カムイワッカ湯の滝だけで、日本人に人気の高い小樽は無印という意外な結果ですから、仮に、中国人によるブームが一過性で終われば、北海道へ観光客増は苦しいのではないでしょうか。

経済状態はすべて苦しい

アメリカ発の金融問題から、世界中で輸出が急減し、外需が消え、ここ5年ほど輸出急増でGDPを伸ばしてきた日本経済は急変低迷化、国内需要にも影響しはじめ、企業経営環境を悪化させているのですから、経営が苦しいのは当たり前の実態です。
ところが、この金融危機以前から経営が困難化している企業も多くあります。そのような企業をいくつか拝見していますと共通していることがあります。
それはずっと同じことを続けていることです。「継続は力なり」ですから大変立派なのですが、実はその継続している経営方法に問題がある場合が多いようです。
かつて大成功し、素晴らしい業績をあげられていた企業でありながら、金融危機とは関係なく苦しい実態に陥っている共通要因は、時代変化に対応していないということです。
時代は30年前とは大きく変わり、そこに今回の金融危機が発生し、問題を複雑化させ、経済再生の処方箋なきままに世界中で経済対策を打ち続けている、というのが最近の状況ですが、このような大変化があっても、それは関係ないといわんばかりに、昔の経営スタイルを続けているのです。
結果はどうなるでしょうか。今の社会と馴染まないのですから、その企業の実績は次第に低迷化していき、如実に業績悪化という事実となって出てきています。

評価基準が変わった

業績悪化企業の経営者とお会いし、その際にアドバイスしていますことは「時代の変化を取り入れる」ということです。
時代は常に変わって、社会の姿も変化していきますから、この中で生活している人間も、自動的に変化に対応していきます。
ですから、経営者の一番大事な仕事は、時代の基底軸に流れている変化を把握することで、そのために大事な必要条件は、自らの感覚要素を磨くしかありません。
また、この感覚を磨くためには、連続していく毎日の動きをウォッチングし続け、そこから時代の変化を読み取り、採りいれ、結果として妥当で適切な経営手法を取り続けることしかありません。
つまり、経営者自身の判断基準を磨くことしかないのですが、ここで注意しなければならないのは、その判断基準は自分の中に存在するのではなく、社会変化から生ずる人々の感覚変化という他者基準にあるわけで、これに留意すべきなのです。
その典型的な事例が、今回のギード・ベールとお考えになってよろしいと思います。

ミシュランガイドをどう認識するか

ミシュランガイドは世界的に認識され評価されています。
それは、2007年に東京の飲食店ミシュランガイドが発行された時、発売日から4日間で初版12万部が完売し、人気の高さが証明されましたが、これは日本語ですから日本人用でした。
だが、今回の観光ガイドはフランス語と9月の英語版での発行で、日本語版は未定です。これは、考えてみれば当たり前で、外国人のためのガイドですから英語で十分なのです。
また、このガイドの効果は、簡易版ガイドで証明されています。簡易版に掲載された観光地に、急に外国人が増えだし、調べてみたらミシュランに乗っていたという事実がありますので、これから日本に来る多くの観光客は、今回の詳しいギード・ベールを手に持ってくることでしょう。そうなると掲載されたところに外国人が増えることは容易に予測つきます。
その証明が、簡易版でありながら、フランス人が昨年日本を訪れた人数は14万を超え、一昨年に比較し7%増となっていることでわかります。
ということは、ミシュランが勝手に価値づけした評価で、日本各地の観光地に訪れる外国人の人数増が決まっていくという意味になります。
つまり、観光地自身による自己評価基準でなく、他者評価基準によって観光客数が決まっていくという変化が訪れたのです。

時代は外から変わっていく

金融危機はアメリカからでした。人口減少下、観光客を増やしたいとしたら、頼りは外国人となり、それはフランス人による評価で決まる確率が高い時代に変わりました。以上。

【4月のプログラム】

4月10日(金)16時   渋谷山本時流塾(会場)東邦地形社ビル会議室
4月17日(金)14時 温泉フォーラム研究会(会場)上野・東京文化会館
4月20日(月)    経営ゼミナール例会 「増富の湯」日帰り現場見学

【ジョン万次郎のご子孫を招いての特別講演会】
★ジョン万次郎講演会★ 4月15日(水)18:30 上野・東京文化会館

投稿者 lefthand : 08:50 | コメント (0)