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2005年09月25日
今の時代の方向性・・・時流分析について山本紀久雄氏が講演
11月の例会は、11月21日(月)に開催です。
11月は、経営ゼミナール代表で時流研究家の山本紀久雄氏に登場いただきます。
総選挙が行われました。皆様の予想はどうだったでしょうか。日本ではおおむね事前の世論調査通りでした。同じ頃ドイツでも総選挙が行われ、こちらは全く予想とは違う結果となりました。
7月ゼミにて視察した愛知万博が25日に終わりましたが、こちらは当初の見込みに反して大成功、日本で開催の万博入場者数が、1970年の大阪万博、1990年の大阪花博についで第3位で終了いたしました。時流の動き、時流に合致したことが成功に結びついたのです。
野球では阪神が優勝しそうです。対する巨人は低迷しております。選手の知名度、年俸では巨人ですが、結果は阪神の大躍進です。ここにも間違いなく時代にあった野球を展開した阪神と時代遅れの巨人という、時流に対する感覚差が明確に現れています。
時流研究家として毎月二回YAMAMOYOレターを発行、今年も「ぬりえ文化」を共著出版、山岡鉄舟をベルダ誌に連載、更に新たなるテーマで次作の調査・取材に入っている山本紀久雄氏が、国内外各地現場を訪れ、多彩な事例を分析し、時代感覚をとらえ、つかみ、編集し、「今の時代の方向性・・・時流分析」を発表いたします。
11月の経営ゼミナールに、ご参加のご予定をお願いいたします。
縄文天然温泉「志楽の湯」からげん気をもらおう
10月17日(月)の開催の10月の経営ゼミナールをご案内いたします。
JR南武線・矢向駅改札口を出てすぐの踏切を渡って左、歩いて約5分のところ、以前の工場跡地に立ち並ぶマンションと戸別住宅街の一角に、山間の雑木林を分け入っていく雰囲気の駐車場が現れます。その先に品よい低層木造建物が佇んでいます。
ここはグループダイナミックス研究所所長・柳平 彬氏が経営する縄文天然温泉「志楽の湯」です。グループダイナミックス研究所所長・柳平 彬氏は、今年4月にこれまでの半導体の工場から180度異なった、「縄文」をコンセプトに取り入れた温泉事業に進出したのです。
古里を訪ねる雰囲気のあるアプローチと入り口、露天風呂へ向かう廊下はしっくりと足裏になじみます。栗の木を浴槽中心に配置した「御柱風呂」や、古い味噌樽を利用した「味噌樽風呂」、そして圧巻は熊本県にある黒川温泉・新明館代表で、観光カリスマと言われる後藤哲也氏がプロデュースした露天風呂です。
都会日帰り温泉を、どうしてこのようにこだわって創り上げたのか。
その発想の源泉は何か。めざす最終目的は何か。開業後の実績は順調なのか。
今後の展開方向性として何が必要か・・・。
これらについて柳平氏から、率直に現場で披瀝いただきます。
1.日時 平成17年10月17日(月)
17時00分〜18時30分 縄文天然温泉「志楽の湯」入浴
(この時間帯で各自随時入浴)
18時30分〜19時00分 そばレストラン「志楽亭」で縄文ぶっかけそばを味わう
19時00分〜20時30分 柳平氏発表とディスカッション
2.交通、場所と地図
次のとおりです。
ご参加の方は「志楽の湯」フロントにて、経営ゼミナール参加の旨と氏名をお伝え願います。入浴料・貸タオル・夕食代は経営ゼミナールにて支払済みです
縄文天然温泉 志楽の湯
〒212-0024 神奈川県川崎市幸区塚越4−314−1
TEL:044−533−8888 FAX:044−522−0347
フリーダイヤル 0120−650−711
<詳細地図が必要な方は、以下のURLをご参照ください>
http://www.mapfan.com/index.cgi?MAP=E139.41.10.4N35.32.15.6&ZM=9
なお、JR南武線、川崎から乗車され矢向駅下車される場合、改札口に近いホ
ーム(下り線ホーム)に「志楽の湯」ポスターと案内地図がございます。
3.テーマと講師
「縄文天然温泉「志楽の湯」からげん気をもらおう・・・あの有名な黒川露天風呂が川崎に出現・・・
グループダイナミックス研究所所長
柳平 彬氏
<経歴>
・1940年1月20日東京生まれ。1962年、慶應義塾大学経済学部卒業。
・丸紅飯田株式会社(現丸紅株式会社)入社。
・後に渡米し、ハバフォード大学でリベラルアーツ、ダートマックス大学大学院タックビジネススクールにて、企業組織論、マーケティングを専攻。
MBA(Master of Business Administration)を取得。
・1970年、企業内研修プランナーとして独立。意欲啓発、組織開発、セールスの研修に取り組む。
・1975年、グループダイナミックス研究所創立。
その後、AIA(心構えの意識変革)、TOS(営業管理者の理論武装)の研修プログラムを開発、普及。
・さらに、LifePower(人生パワーアップセミナー)、および新時代のセールスパワーアップのための意識変革プログラム「プロへの道」を開発、普及活動に入る。
・1990年6月、長野県蓼科にトップ・エグゼクティブのための健康道場「たてしなエグゼクティブハウス」を建設。ジュース断食やAIAトップセミナーなど、トップのための特別カリキュラムを編成し、指導。
・1995年10月、Telling○R<企業家精神養成プログラム>スタート。
・1997年2月、INTERPLACE<チームワーク&リーダーシップ・スキル向上プログラム>をスタート。
・2005年4月、タカラ工業、工場跡地に縄文天然温泉「志楽の湯」をオープン。温浴事業へ進出する。
【主な著書】
「志・こころざしとは何か−蘇生論−志学のすすめ①(発心社)」
「志・こころざしとは何か−理論編−志学のすすめ②(発心社)」
「志・こころざしとは何か−実践編−志学のすすめ③(発心社)」
【主な訳書】
「感情はコントロールできる−幸福な人柄を創る(創元社)」
ドン・ディンクメイヤー/ゲーリー・D・マッケイ共著
「100人に1人も実行していない「成功地図」の読み方(三笠書房)」
ボブ・コンクリン著
「企業家精神(発心社)」
リチャード・H・ブスカーク著
「人を惹きつける人間力(創元社)」
ボブ・コンクリン著
「『説得力』の神髄(発心社)」
ボブ・コンクリン著
*会費 オブザーバー参加の方は、当日会費として1万円をご用意下さい。
*お問い合わせ
出欠:㈱ボスコ内 経営ゼミナール事務局 平野(03−3498−4200)まで
その他は金子(ぬりえ美術館内(03−3892−5391)まで
2005年09月22日
One To One
YAMAMOTO・レター 環境×文化×経済 山本紀久雄
2005年9月20日 One To One
選挙が終わって
衆議院総選挙が終わりました。小泉首相の大勝利でした。ほとんどの人の予想を超える記録的大勝利です。
前回のレターでご案内した藤原直哉氏の「自民党大敗」という予測、藤原氏は事前に発表された新聞の予測内容が自民党有利と報道したことに対し「大新聞はアメリカにいわれ情報操作している」とまでいいきっていました。そこまで断言するには相当の根拠があったものと推察し、結果がはっきり現れた現在、本人の見解を聞きたいところです。
まだ藤原直哉氏から次のワールドレポートが届かないので、どういう論理構成で自民党大勝利を分析してくるのか、それを待っているところです。
まだ藤原直哉氏から次のワールドレポートが届かないので、どういう論理構成で自民党大勝利を分析してくるのか、それを待っているところです。
しかし、今回の選挙は投票率が高く、久しぶりに多くの国民が、関心高く迎えた9月11日でした。どうして関心が高かったのか。その要因分析も様々なされていますが、高くした一つの事例を紹介したいと思います。
それは熊本から届きました。熊本の田中貴子さんという大学生が「選挙実行委員会」をつくって、若い世代の選挙に対する関心を高める行動を展開したのです。
今まで20歳代の人は選挙投票率が低く、無関心で、その理由を聞きますと「誰に投票しても政治の結果は変わらないから」というような返事が多く聞かれました。
今回、このような若い人たちに関心を持ってもらい、選挙投票に行動を変化させようと、田中さんらの大学生が自主的に「選挙実行委員会」を立ち上げ、候補者を集め、各会場で討論会を始めたのです。選挙終盤戦には東京からフジテレビが熊本に取材に来て、人気番組の「とくダネ!!」で、この熊本の若い力の結集が紹介されました。素晴らしい若い人たちの行動力です。
小泉首相大勝利の裏に、高投票率という実態があり、それを実現させた背景に熊本に代表される若い世代の活躍があったこと、その事実を知り、その動きは若い世代が未来の日本の方向性を考えはじめた変化の一環であると思います。素晴らしいことです。
足立美術館
足立美術館は有名になりました。昔は東京都足立区にある美術館ではないかと誤解するほど知名度はありませんでした。しかし、今は「足立美術館」と聞いただけで「ああ、あの有名な横山大観の絵で」とうなづく人がほとんどです。
その上、ここ三年間、日本庭園ランキングで第一位ということで、さらに有名になりました。ランキング審査はアメリカの日本庭園専門誌が行ったもので、日米豪の専門家が全国693ヵ所の寺社、美術館、旅館などから選考しています。単に庭の内容だけでなく、庭の管理状況、建物との調和、接客サービスなどを総合的に評価したものです。二位は京都の桂離宮で、ここを抑えての第一位というのですから立派です。
前から一度行ってみたかったのですが、ようやく先日訪問することができました。JR西日本の島根県安来駅からシャトルバスが無料で送り迎えしてくれますし、安来駅で足立美術館の入場券を購入すれば手荷物を無料で預かってくれます。安来駅前は何もないのですが、食べ物なら何でもありという食堂とコンビニがあるだけの田舎駅ですが、駅前片隅のシャトルバス停には、発車時間間近となるとどこからか大勢集まってきます。
その安来駅近くのコンビニに入って、ふとレジ前のPOPを見てびっくりしました。どこかで見た顔写真がカウンターを飾っています。渋い外国人の上半身です。それは調理人の姿、パリのギ・サヴォア、三ツ星レストランのオーナーシェフです。何回か取材で会い、ギ・サヴォアレストランはバカ高いので一回しか食事をしたことはありませんが、その一回食事したときに、挨拶に出てきて、スープをサービスしてくれたことを憶えています。そのパリで最も有名なギ・サヴォアの笑顔写真が「ボジォレー ヌーヴォーご予約承り中」と書いてあるPOPの中にあります。ギ・サヴォアがコンビニチェーンと提携したのです。三ツ星レストランのオーナーシェフ、それもギ・サヴォアですから、コンビニとの提携には何かの理由があるのでしょうが、「フランスを救った日本の牡蠣」に登場してもらった人物と、足立美術館に行く前に安来駅前で会えるとは意外でした。今度、ギ・サヴォアに理由を聞いてみたいと思いますが、驚きました。
さて、足立美術館は噂どおりの立派さでした。しかし、その概要をお伝えすることはやめたいと思います。十分なる解説ができないと思いますので・・・。
しかしながら、足立美術館を今日の評価にしたのは、オーナーであった足立全康氏の情熱です。貧しい家から身を起こし、71歳のときに美術館を開館したのです。幼少期は引っ込み思案で、学校の成績も丙と乙だらけ。尋常小学校を卒業した12歳から働き始め、農業の傍ら木炭の販売、鉱山経営で失敗、兵役後大阪に出て仕出屋、たどん屋、再び郷里に帰って米の仲買い、荒物屋、繊維ブローカー、刀剣製造会社、戦後は大阪で綿布問屋、外車販売、金融業、不動産業など、とにかく生涯で30を超える事業を興し、数々の成功と失敗を繰り返しました。
大儲けしたのは不動産会社です。戦後の混乱期に戦災焼け跡バラック建ての心斎橋骨董店、その店先にあった横山大観の絵、それに「胸がすうっとするような荘厳な気持ちにされ」、それ以来、大観に惚れ込み儲けたお金で買い集めだしました。集めてみると蔵に納めておくだけではもったいないと、郷里の自宅があった辺りの場所に昭和43年(1968)に美術館を設立し、それから37年、今や島根県安来市の道路端畑の真ん中に、突如として立地する足立美術館、美術館としては立地がよくない場所に、国内外から集まって、今や国内トップクラスの入館者数を誇るまでになったのです。
足立全康氏の成功は、横山大観という時代が変わっても、多くの人に価値が認められる絵画、それ一筋に情熱を傾けたところに、今日の成功があると思います。
TABOO
今は変化のときです。衆議院選挙も郵政民営化という変化を求めた自民党が勝ちました。対する民主党は、変化は必要であると意識しながらも、変化ということに対して曖昧さを残したスローガンでしたので、大敗したと思います。
知に完成形がないように、時代にも完成形がなく、過去を創り変え再生していかないと、制度も組織も腐っていきます。ですから、その時代に合致したシステムを創り、それが創り終えたら、更に次の時代へのシステム創りをする。そのような弾力的思考を持たないと、今の時代を乗り越えて行くのは苦しいと思います。
変化は英語でCHANGEです。この中からGをとってCにするとCHANCEですから、変化はチャンスであるといえ、このような比喩がよく巷間いわれています。変化に対して常に前向きに取り組んでいけば、必ずチャンスが訪れるともいわれています。
その通りと思いますが、そのようにチャンスにするためには一つ大事な条件があります。それはGとCの違いを知ることです。GとCとでは何が違うか。Gをみれば分かりますように、GとはCに小文字のTを加えたものです。ジャイアンツからタイガースのTをとるとCになって、そのCで書き直すとCHANCEチャンスとなるのです。つまり、Tという意味を変化から取り去るとチャンスになります。
ではTとは何でしょう。それはTABOO・タブーです。意味は禁止された、禁制という意味ですが、人は必ずこのTABOOを持っています。固定観念や既成概念とも思い込みともいいますが、すべての人は自分の考えとしてTABOOを持っています。
だが、時代は自分に関係なくドンドン変化していき、それに背を向けていると時代に取り残されていきます。ということはTABOOという意味も変わっていきます。TABOOとして変えてはならないと思う自分の気持ち、その固定観念、既成観念、思い込み、それらを時代感覚でチェックする必要が出てきたと思います。
One To One
日本の姿を創るのに、大きな役目を果してきた郵便局のお金、その運用を時代と共に変化させていく。その必要性を小泉首相が選挙の争点にしたことは、我々にTABOOを見直すことを教えてくれ、加えて、マーケティングの大事さも教えてくれました。
代議士が反対し流された改正案、それを国民に尋ねなおしてみようという今回の選挙、それはOne To Oneマーケティング手法です。一人ひとりに聞いてみて、それから総論を構築していく。正に店頭で一人ひとりに個対応し、その結果で全体売上を獲得していく。そのマーケティングセオリーを採り入れたのです。政治的にはいろいろな見解はあるでしょうが、一人ひとりに対応したマーケティングの勝利と思います。以上。
2005年09月09日
ぬりえの不思議を解明する「ぬりえ文化」9月1日発刊
身近すぎて誰も知らなかったぬりえの不思議。
そのすべてを解き明かす世界初のぬりえ読本。
え?エ!?絵!常識をぬりえかえるぬりえの世界
このぬりえの不思議を経営ゼミナール代表で、山岡鉄舟研究家の山本紀久雄氏と経営ゼミナールの事務局で、ぬりえ美術館館長の金子マサ氏が解明。
ぬりえは、誰もが遊び、知っているのに、大人になるとすっかり忘れてしまう、不思議な遊びです。
そんなぬりえを研究しようと志し、ぬりえの収集をし、研究をして、ぬりえを楽しむ子供や親たちとの交流を続けているうちに、日本でも世界でも初めての、ぬりえ美術館を開館することになりました。
そして早3年、そのぬりえの研究の成果をまとめた本『ぬりえ文化』が9月1日に発売されました。ぬりえの歴史、ぬりえの現状、そしてぬりえをすることが日本の新しい文化創造に大変に役立つものだという、ぬりえの未来まで書かれた、世界で初めてのぬりえの専門書です。
この本をきっかけに「ぬりえ」に対して、関心を高めていただけたらと、願っております。
ぬりえを子供文化、児童文化、そして日本の文化としていくために、これからも収集ならびに研究を重ねて、その成果を発表していきたいと思っております。
■『ぬりえ文化』は、ぬりえ美術館、または全国の書店でお求めいただけます。
■お近くの書店にない場合は、以下の内容を伝え、ご注文ください。
書名:『ぬりえ文化』
著者名:金子マサ・山本紀久雄
出版社名:小学館スクウェア
定価:1,500円(税込)
■また、書店が遠い場合などは、クロネコヤマトのブックサービス
(電話:0120-29-9625)へご注文ください。
*代金引換でご利用いただけますが、送料210円(税込)がかかります。
2005年09月06日
近代戦のあり方
YAMAMOTO・レター 環境×文化×経済 山本紀久雄
2005年9月5日 近代戦のあり方
国会解散
国会図書館に行くたびに、国会議事堂の前を通ります。今年の夏は小中学生がたくさん並んでいました。国会議事堂の見学に来ているのです。何のために国会見学に来るのか。それは子どもたちの間に、今回の解散・選挙が関心もたれているからです。
その解散について大人たちの間で見解が分かれます。参議院で否決されたのに、何故に衆議院が解散するのか。筋が異なる。小泉首相の暴挙だ。また、森前総理の「衆議院で郵政民営化に努力してくれた人たちを路頭に迷わせてよいのか」発言は、政治家を失業させるのは困るから解散させたくない、という稚拙な小泉首相への口説もありました。
一方、解散によって国民の前に問題を明らかにし、差し出し、真の決定権者に決定させるということは、日本の民主主義を確実に進化させることにつながる、という見解もあります。いずれにしても小泉首相権限で衆議院が解散し、9月11日に総選挙が行われます。
選挙結果予測
選挙の一週間前になってくると、各新聞が選挙結果の予測記事を掲載し始めます。4日の日経新聞は「与党安定多数の勢い」と全国世論調査の結果を一面に発表しました。5日の読売新聞も同じく全国世論調査の結果で「自公過半数超す勢い」と掲載、同日の共同通信も「与党優勢」と報道しております。政治評論家の三宅久之氏に直接伺いましたが「今の情勢ではよほどのことがない限り自民党が圧勝」という見解です。
しかし、経済評論家として著名な藤原直哉氏の発行するワールドレポート(2005年8月31日)では、以下の内容が指摘されています。
1. フランスのルモンド紙は自民党苦戦
2. イギリスのフィナンシャルタイムス紙は自公過半数割れ
3. 高知新聞の独自の世論調査で小泉支持が41%、不支持が48%という結果で、東京の大新聞とは異なり、地方はアンチ小泉
4. 経団連が自民党支持を打ち出しているが、これは大企業が小泉政権と海外勢力とつながって、国内で弱肉強食政治を推進する証左である
5. 結論として与党は過半数取れずに小泉政権退陣、同時に民主党も過半数を取れない
6. その結果、自民党は小泉政権の退陣と同時に党が瓦解するのではないか
つまり、総選挙一週間前の全国世論調査で示した大新聞の予測と、著名な論客である藤原直哉氏の見解は真っ向から対立しています。
どちらが当たるのか、それは11日の夜に分かりますが、今から事前に皆さんも自らの見込みで予測しておくこと、それが今回著名人の出馬や新党結成が出た「劇場型」といわれる衆議院へ関心を高めることになるのではないでしょうか。とにかく、小中学生にも高い関心がある今回の選挙ですから、自らの事前見解と、結果との分析は必要と思います。
近代戦のあり方
白川静氏は字統・字訓・字通の3部作で知られています。その白川静氏が次のように述べました。(「日本の進む道」2005年8月19日日経)
「日本の近代化は明治時代に開花し、大正期になってようやく世界に目が開くようになりました。大正デモクラシーに代表されるように、それは成長しつつあったが、軍部の台頭によって未成熟なままに終わってしまいました。台頭を許した裏には農村の疲弊、国全体の貧困があった。要するに日本は近代社会になりそこねたのです。『戦争』と言わず、『事変』と称して宣戦布告もせずに既成事実を重ねる。政治の前面に出てくるのは『近代戦のあり方』も知らない軍人ばかり。日本人は人材が不足していたのです」
なるほどと思いますが、ここで指摘していることは明治時代に日本の近代化が開花したということです。では、どうして明治時代に開花したのでしょうか。明治時代に開花するには、その前の時代に何かの要因がなければなりません。それは江戸時代です。
江戸末期に日本の近代化を開花させる最大要因はペリーの来航でした。嘉永6年(1853)7月8日、アメリカ・ペリー艦隊は4隻で浦賀の沖合いに停泊。だが、これはオランダを通じて一年前に幕府に伝わっていましたので、幕府はペリー一行が来た場合の予行演習も行って準備していました。その予行演習内容は『日本は人口3000万人で需給のバランスが国内だけで十分とれているので、外国と貿易する必要がない。長い航海生活で不足する生鮮野菜や水・薪などは提供する』。つまり、今まで通りという交渉方針でしたが、これは世界という視点から来航したアメリカには、とうてい理解できない理由でした。
当時、日本近海では、乱獲ともいえるほどの捕鯨活動が行われていました。鯨油は欧米の必需品で、それは灯りとして、石鹸をつくものとして、印刷機の潤滑油として、鉄鋼の高炉釜入れ用として、多くの使用価値がありましたので、鯨を追って日本近海にまではるばる航海してきたのです。それらを理解できない日本人を、かえって欧米人は不思議がって、通訳だったヒュースケンは次のように述べています。「日本近海にたくさんの外国船が国旗を翻し鯨をとりにきている。なぜ、勇気もあり、活動力にも欠けていない日本人が、同じように遠く外国の岸まで船を送り、自国の旗を進めようとしないのか」(ヒュースケン日本日記)つまり、日本も世界貿易体制に入って活躍すればよいのではないか、という世界常識からの見解、これは現在、日本が世界貿易で成り立っている実態で分かりますが、ペリー来航はその事実を暗示し、近代戦のあり方を教えようとしていたのです。
鳥羽伏見の戦い
慶応4年(1868)1月3日、京都の南郊、鳥羽・伏見で幕府軍と薩長中心軍とが戦い、幕府軍が敗れて将軍慶喜は江戸城に逃げ帰りました。これが明治維新・戊辰戦争の始まりです。鳥羽・伏見の戦いでは幕府軍は圧倒的な軍勢で陣地を構築していました。対する薩長軍は人数少なく、当初、必勝の算はなかったのですが、結果的に幕府軍の大敗となって、一気に情勢が変わったのです。この勝敗の帰趨について様々な分析がなされていますが、最も大きな要因は「時代との接点体験」をしていたかどうか、これで決まったのです。というのも、薩長はいずれも当時の欧米先進強国と戦争したという体験を持っていました。薩摩は文久3年(1863)の薩英戦争で、当時世界最強のイギリス艦隊と戦い、長州は元治元年(1864)に下関を英米仏蘭四国艦隊によって攻撃を受け完敗し、いずれも欧米科学力のすごさを熟知して、その体験から軍の近代化を図ってきたのでした。
ところが、幕府側の欧米に対する理解は、外交交渉のみからでしたので、頭では分かっても実態はついていかず、薩長の犠牲を払った実践経験とは格段の差があったのです。
ですから、鳥羽・伏見の戦いに出陣した幕府軍の諸藩軍の中には、戦国時代の感覚で参戦した藩も多く、「近代戦のあり方」を知らずに戦ったのです。いくら軍勢が多数でも、薩長の欧米先進国との戦争によって体験し、軍備強化した軍隊と、そうではない幕府軍とでは勝敗は当初から明らかでした。時代との接点体験の有無が大きな差でした。
アハ!体験
ニュートンが、リンゴが木から落ちるのを見て万有引力の法則を発見したエピソードはあまりにも有名ですが、このような天才達のひらめきが人類の歴史を創ってきました。英語では「ああ、そうか!」と気づいたときのひらめき感覚を「アハ!」という言葉で表し、この「アハ!」と気づくと、神経細胞の間の結合が強められ、一瞬にして脳の学習が完結するのだと、脳科学者の茂木健一郎氏が解説しています。(2005年8月25日日経)
明治維新の成立には、もう一つ薩長側に大きな課題が横たわっていました。それは京都に居住する公卿たちの保守性です。公卿衆は武家政治が始まって以来、700年もの間、政治の実務から遠ざかって、日頃は風流韻事と学問だけであったので、保守の殻に閉じこもったその感覚を、時代の厳しい現実に変化させねばならなかったのです。
この改革を行うに当たって、中心となった薩摩の西郷も大久保も非常に苦労したのですが、何とか結果的に公卿衆に「世界の情勢と、その中にいる日本の境遇情勢」について「アハ!体験」させる攻め方をしたことが、明治維新成功のもう一つの要因でした。
時代には完成形はない
知に完成形がなく、何が正しいかどうかも分からないことが多い。同様に時代にも完成形はなく、時代がどの方向に向かうのが正しく妥当なのか実は分からない。しかし、過去を創り変え再生していかないと、制度も組織もしがらみで腐っていく。白川静氏が指摘する「近代戦のあり方」が、国民の民意として9月11日にどう表れるのでしょうか。以上。