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2009年11月26日

2009年12月 特別例会のご案内


10月、ミシュラン観光ガイド日本版で高い評価を得た、大分県・別府「ひょうたん温泉」(★★★)および「竹瓦温泉」(★★)に、現場体験をおこなってまいりました。
大変素晴らしい温泉で、さすがはミシュランが評価した場所であると感慨ひとしおでした。
しかし、日本にはまだまだよい温泉地がたくさんあります。これらの温泉の、ミシュランに選考されなかった温泉地との違いはどんなことなのでしょうか。
この現場体験を受け、さらに、ミシュランに日本の素晴らしい温泉を情報発信する方策を探求する研究会を開催いたします。
場所は、静岡県・伊豆天城湯ヶ島温泉『白壁荘』です。

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白壁荘は中伊豆、天城山の懐、日本の美しい自然に囲まれた狩野川の渓谷沿いにある温泉旅館です。昭和29年開設で、若山牧水、木下順二、井上靖など多くの文人たちが、ここで思索し著述してきました。
温泉は100%天然温泉。重さ53トンの溶岩で作った石の露天風呂、樹齢1,200年の木をくりぬいて作った木の露天風呂など、趣向を凝らした露天風呂が楽しめます。また、各部屋はそれぞれ異なるテーマを持ってデザインされています。料理は伊豆の新鮮な海の幸、山の幸。周りを散策すれば、昔ながらの山里や美しいわさび田、風情ある竹林、ときおり木立の中に現れる天城のシンボル鹿、浄蓮の滝。天城の美しい景観が溢れています。

しかし、このような素晴らしい日本の温泉がミシュランガイドブックの星付きにならないのは何故なのでしょうか。また、ミシュランの星付きにするための情報編集には、どのような方法があるのでしょうか。
それを現地で皆様と検討したいと思います。
日本を観光大国にするための重要なポイントとなる研究会です。
ご参加お待ちしています。

【日 時】2009年12月20日(日)〜21日(月)

【内 容】(1)伊豆天城湯ヶ島温泉「白壁荘」入浴・宿泊体験
     (2)参加者によるミシュラン戦略検討会

【宿泊・検討会】 伊豆天城湯ヶ島温泉「白壁荘」
         http://www.shirakabeso.jp/
         静岡県伊豆市天城湯ヶ島1594

【行 程】
2009年12月20日(日)
     ※現地集合です。交通は各自ご手配お願いします。
     14:15      伊豆箱根鉄道「修善寺」集合
               →白壁荘へ
     15:00〜16:30 チェックイン〜休憩、入浴など
     16:30〜17:30 ミシュラン戦略研究会
     18:00〜20:00 懇親会
                   ※一泊
2009年12月21日(月)
         8:00 朝食
         9:30 修善寺散策 修禅寺〜竹林の小径
             ※修善寺散策はご希望者にて行います
         12:00 解散
        
【参加費用】■経営ゼミナール正会員   15,000円
       オブザーバー会員     25,000円
       (宿泊費、飲食代、研究会会費。交通費は含みません)

【お申し込み最終期限日】2009年11月30日(月)
【主 催】清話会/経営ゼミナール 共催
【お問い合せ】 経営ゼミナール事務局・田中達也
        TEL:03−6806−6510
        FAX:03−5811−7357

お申し込みはこちら

→チラシを見る

投稿者 lefthand : 08:00 | コメント (0)

2009年11月23日

2009年11月20日 これから5年~8年

YAMAMOTO・レター
環境×文化×経済 山本紀久雄
2009年11月20日 これから5年~8年

5年先を予測できるか?

毎日新しい事件が発生し、我々の生活に影響を与えています。特に、突如発生したサブプライムローン問題による金融問題、これによって世界全体の経済が混乱し、いまでも収まっていません。

このように予測つかないことが発生するこので、先行きの予測がつかないのだから、5年先のことなど分かるはずはない、と殆どの人が答えるでしょう。
また、多くの情報と分析力を併せ持つエコノミストでも、サブプライムローン問題を事前に予測できず、また、予測していたとしても、実際に発生した規模内容を的確に指摘していませんでしたので、確実な未来経済予測はできない、と一般的に思われています。
だが、確かに未来は不確定で、予測は困難ですが、5年先を考えることは必要なのです。
何故なら、未来を考えていないと、これからの計画ができなくなり、さらに、計画がないということは、企業経営も人生設計も、その場当たりにならざるを得ず、結局、目的・目標が達成できたかどうかも分からないことになってしまいます。
計画があるからこそ、結果と計画を比較することができ、その達成・未達成が判断できるのです。従って、何事にあたっても計画を作ることは大事で、不可欠事項であり、その計画をつくるためには、予測は難しいという前提ながら、未来を考えておくことが必要です。

天地人NHK大河ドラマ

NHK大河ドラマ「天地人」は平成21年1月から始まりました。主人公の直江兼続は、米沢藩初代藩主上杉景勝を支えた文武兼備の智将で、関が原敗戦後、上杉家の米沢移封に伴い執政として米沢城下を整備し、現在の城下町米沢の基盤を築きました。また、現在国宝に指定されている「宋版史記」や「漢書」などを集めた文人で、その深い教養と見識は豊臣秀吉や徳川家康からも高く評価され、上杉謙信を師と仰ぎ、「利」を求める戦国時代において民、義、故郷への「愛」を貫き、兜には「愛」の文字を掲げた人物です。
このような説明を大河ドラマ開始時に知りましたが、その時点で、直江兼続という名を理解していた人は少なく、NHKに登場するというので、初めて知ったのが殆どではないでしょうか。私もその一人で、一般的には無名の人物が、どうやって大河ドラマになり得たのか、それをずっと疑問に思っていましたので、先日、米沢の上杉神社境内で開催されている「天地人博」に行ってまいりました。
「天地人博」にはすでに20万人以上が訪れているとのことですが、会場を出て、上杉神社に参拝しようと歩いて行くと、天地人のジャンパーを着た男性が近寄ってきて、ガイドいたしましょうかと声をかけてくれました。
これ幸いと、いろいろ伺うことが出来た中で、次の一言が耳に残りました。
「無名の直江兼続をNHK大河ドラマにしようと、米沢市が中心になって5年~8年前から企画し、まず、火坂雅志氏に小説「天地人」( 2006年9月NHK出版)を書いてもらうことから始めたのです」と。
なるほどと思いました。無名を有名にしたいという考え、つまり、計画が前提にあったのです。さらに、ガイドは「直江兼続が無名であったからこそ、今回の成功があったのです」とも補足してくれました。
その通りと思います。今回の計画がなければ、米沢市は今まで通り、上杉鷹山だけの街で終わっていると思います。

シドニーのM君

先月はタスマニア島とシドニーにまいりました。タスマニアのホバートからシドニーのホテルに夜遅く着き、翌朝、朝食をとっていると、笑顔にあふれた若者がこちらに走ってきました。
2005年12月にシドニーを訪れた際、車運転してくれたドライバーのM君です。当時はシドニーのJTBドライバーでした。握手してM君の服装を見ますと、シドニー市営バス運転手の制服です。JTBを退社し、市役所勤務に代わったことは、以前に受けたメールで知っていましたが、勤務中の合間にわざわざ時間を割いて、会いに来てくれ「いろいろアドバイスありがとうございました」とお礼を言われました。
4年前にM君に何をアドバイスしたか忘れましたが、多分、5年先を考えて未来設計を
したらどうか、ということを述べたような記憶があります。
M君は「お土産です」とひとつの小冊子を渡してくれました。表紙を見ると、何とそこにはM君の写真があるではありませんか。小冊子は市営バスの時刻表です。その表紙をM君が飾っているのです。模範ドライバーなのです。すごいなぁーと褒めると、ポケットから三か月の長男の写真を嬉しそうに見せてくれます。市役所に勤務し、元同僚の日本女性と結婚し、子供が授かったのです。元気で頑張るよう励まし別れましたが、とても幸せな気持ちになりました。なお、JTBは今年9月末に閉鎖、元同僚は全員リストラになりました。

シドニーのNさん

この日の夕食は海辺のレストランに行きました。テーブルに着くとアジア系の若い女性が来て、流暢な英語で注文をとります。
シドニーロックオイスターのレギュラーサイズと、スモールサイズを各6個ずつ注文し、ワインは白のマーガレット・リバー Margaret Riverと伝えると、手許のメモ帳リストをすばやく見て「承知しました」とスピード感ある明確な応対に気持よくなりました。
この仕草を見て、直感的に「この女性は日本人ではないか」と思い、日本語で次のオーダーをしてみましたら、ニコッとうなずき「何にしますか」と日本語、それからスムースで、名前もNさんと自己紹介受け、地元の料理を推薦してくれ、夕食を堪能しました。
ところで、何年シドニーにいるのですか、と聞きますと5年弱との答え。それでは「永住権」は取れたのですね、と聞きますと、急に泣きそうな顔になって「まだです。あと5ヶ月でビザが切れます」というのではありませんか。
「永住権」を取得するには、医療やIT技術関連など人手不足分野業務か、美容師とかケーキ・寿司職人などの熟練技術者として認定されることが必要なのですが、Nさんはそれを持っていないのでしょう。レストランのウエイトレスでは熟練技術者として認められません。今までの5年間、何を考え、何をしていたのか、喉から出かけましたがやめました。

2009年4月~9月決算発表

2009年7月から9月のGDP(国内総生産)の伸び率は、前の3カ月に比べて、年率に換算して4.8%のプラスとなり、4月から6月の伸び率2.7%に続いて、2期連続のプラス成長となりました。世界の景気状況が若干改善し輸出増、それとエコカー減税など、前政権の景気刺激策の効果もあり、個人消費が持ち直したことが寄与したとの発表です。
一方、2009年4月~9月上場企業の決算発表を見ますと、業績の上方修正が多くなって、企業間・業種間で業績の差がはっきりしてきました。業績差の要因は、サブプライムローンダメージが限定的な新興国で、稼げる体制を築いているかにかかっています。例えば、ホンダはアジア地域が健闘しているため、2010年通期の業績予想を減益から増益に変えましたし、コマツも中国やインドネシアで活発活動の結果、業績を下支えしています。
つまり、業績の上方修正は、新興国に対する対策を進めてきたかどうかであり、それには数年前、少なくても5年程度前から新興国に手を打ってきたかどうかで決まっているのです。

ボリュームゾーンに軸足を

経済成長するという意味は、その国の中産階級が増加し、この層がモノを買いだして内需が増えて、結果的にGDPが増えるということです。かつての日本がその良い見本です。
世界経済は米国主導型から、新興国に向い、多極化、多層化に変わっていっています。そのような変化が5年ほど前から明確になってきて、サブプライムローン問題から一段と鮮明になってきました。つまり、今の経済状況変化が示すことは、需要の主軸が移転する端境期に位置しており、この構図はしばらく、それは5年~8年程度は変わらないと予測します。

2020年から2050年

しかし、その後の2020年から2050年、このころになると世界中で大変化と大事件が続発し、世界構図と情勢は今と大きく変わり、今の5年から8年程度の予測ではとても対応できず、未来計画つくりは相当の困難が伴います。しかし、長期行動方向指針を定めるためには、世界全体がどのような姿になるかという、概略の考察がどうしても必要です。以上。

【12月のプログラム】

12月11日(金)16:00 渋谷山本時流塾(会場)東邦地形社ビル会議室
12月14日(水)18:30 山岡鉄舟研究会(会場)上野・東京文化会館
12月20日(日)18:00 経営ゼミナール 伊豆ミシュラン戦略研究会

投稿者 lefthand : 09:41 | コメント (0)

2009年11月10日

私たちはこれからどうしたらいいんですか?

経営ゼミナール号外
「私たちはこれからどうしたらいいんですか?」

温泉の二次会で

ある中堅企業の温泉バス旅行に参加しました。僅かな参加費ですが、至れり尽くせりでした。宴会も華やかで、二次会のカラオケルームでも盛り上がった中、この企業の専務と話していると部長が割り込んできました。ちょうど「時代の変化」について話していたところで、以下は専務と部長の会話です。

「時代変化が急だ。いかにこれに対応するかが最大課題だ」と専務。
「そうです。ですから今こそ地道に地域密着が大事なのです」と部長。
「いや、そうじゃないだろう。社員意識改革が先だ」
「そう言ったって、簡単に切り替えられませんよ」
「古い頭の社員は採りかえるしかないぞ」
「そんな・・・」
この企業の幹部間では、これからの戦略と戦術について、社内でも、社外でも、温泉に来てまでも、侃々諤々なのです。

シドニーで

先月訪れたシドニー、5年前にドライバーしてくれたM君、2年前にJTBを辞め、シドニー市のバス運転手になり、優秀・模範運転手として時刻表の表紙に顔写真が掲示されるほどになりました。
一方、JTBは今年の9月にシドニーから撤退しまして、M君の元同僚たちはリストラになりました。
5年前にいろいろアドバイスしたことの結果の行動が、市営バスへの転職だと、お礼を述べたいとホテルに挨拶に来てくれました。

COEDOビールに出合う

シドニーではJETRO主催の「ファイン・フード・オーストラリア」に行きましたが、そこでの一番人気は、11月25日に経営ゼミナール例会で訪問することになっている「COEDOビール」でした。
地元産の金時サツマイモでビールをつくって、それをじっくり育ててきた結果が、シドニー食品展で注目を浴びたのです。
川越のお土産の一つにすぎなかった地ビールが、今や世界に伸びようとしています。


(クリックで拡大します)

戦略に基づく戦術の成功事例

多分、この「COEDOビール」、株式会社協同商事の戦略・戦術が当たったのだと思います。
市バス運転手に転職したM君も、時代の中で生きるための戦略・戦術展開を成功させたから、収入も安定し、自宅も購入、結婚して先月男の子が生まれ、嬉しそうに写真見せてくれました。

「私たちはこれからどうしたらいいんですか?」
多くの企業、個人がこれからの方向性について悩んでいます。
その打開方向をつかむ重要な一つの方策は、他社・他者の事例から、自社・自分を見つめ直すことでしよう。
そのために、11月25日「COEDOビール」、株式会社協同商事の朝霧重治社長から、戦略・戦術をお聞きしたいと思っています。

皆様のご参加お待ちしています。

『川越・さつまいもビール見学例会』詳細はこちら

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投稿者 lefthand : 22:07 | コメント (0)

2009年11月06日

2009年11月5日 来てみればわかる

YAMAMOTO・レター
環境×文化×経済 山本紀久雄
2009年11月5日 来てみればわかる

タスマニアの特殊性

タスマニア・ホバートの水産局係官から、名刺のデザインの説明について聞いたことの内容は、前回レターでお伝えしました。名刺のスローガンは「Explore the Possibilities」で、直訳すると「可能性を探検する」ですが、一言で述べれば「来てみたらわかる。来なくちゃ分からない」ということでした。

タスマニアは、自然環境を守っていることに絶対の自信を持っている。こういう島全体が環境保全されているところは世界でも少ない、つまり、環境保全面で特殊性があることが、観光としての魅力の源泉になっているという自負心がスローガンに溢れているのです。

日本の特殊性とは

観光として魅力となる特殊性、それを日本に当てはめればどのような要素になるでしょうか。日本では当たり前の普遍性であるが、外国人にとって特殊性となるもの、それは日本の温泉地、それも内湯旅館・ホテルではないかと思います。
そのことを今年の3月に発売された、フランス・ミシュランのガイドブック日本観光版「グリーンガイド」が教えてくれました。グリーンガイドが、日本に数多くある温泉地から三つ星に格付けしたのは、殆ど日本人に知られていない「ひょうたん温泉」と、坊ちゃん風呂で知られている四国松山市の道後温泉本館です。日本全国には、3,000余の温泉があるわけですから、この中から二か所のみが三つ星というのはさびしい限りです。

ひょうたん温泉ツアー

では、どうして無名のひょうたん温泉が選ばれたのか、その要因を探ろうとツアーを企画しまして、温泉研究熱心な仲間と行ってまいりました。
ひょうたん温泉は、別府市内の中心地から離れた鉄輪地区にあり、タクシーで向かいました。タクシー運転手によれば、最近、欧米人の観光客が増え、彼らは路線バスか、徒歩で目的地に向かう人が多く、手にはグリーンガイドやブルーガイド(仏アシェット社発行の旅行ガイド)を持っているとのことです。
さて、到着したひょうたん温泉の駐車場は満車、道路向かい側には葬祭場、その隣はスーパーで、周りは住宅街という市街地に位置し、日本の多くの温泉地が自慢する自然景観とは全く関係なく、全国各地にあるスーパー銭湯と何ら変わりはありません。

グリーンガイド掲載内容

ここでミシュランガイドに掲載された内容を翻訳紹介いたします。
■Hyotan Onsen★★★ ひょうたん温泉
「鉄輪にあり、駅よりバス33番または34番で地獄原下車、営業時間9時〜1時、料金700¥。鉄輪バス主要停留所から東に700メートルにある。
この施設は大変心地よい緑に囲まれている。砂場、露天風呂、館内にはひょうたん形の風呂、サウナ、肩のマッサージ用の滝湯、またレストランもある。家族だけで使用できる露天風呂を予約することも可能」

共同風呂が格付けポイント

グリーンガイドでひょうたん温泉について書かれていることは、これがすべてです。この程度の情報提供で、星を三つ与えているのです。もう少し詳しく書いてもよいと思うのが普通ではないかと考えつつ、料金を払い入りました。
入口から奥に進み、下駄で中庭に出ます。カランコロンと心地良い音色がします。中庭にはテーブルと椅子が配置されており、ここで待ち合わせやちょっとした軽食をとることができます。休憩所を兼ねたレストランも併設されています。男女別に分かれている入口をくぐると脱衣所があります。ここで衣服を脱いで温泉への階段を下ります。館内はとても広々としていて、高い天井に張り巡らされている板は少し隙間が空いていて、柔らかな日差しが差し込みます。中央には大きな木がそびえ立っており、自然の中で入浴しているかのようです。その周りに数種類のお風呂があり様々な入り方を楽しめます。隣には身体をマッサージする滝湯があり、10メートルもあろうかという高さから注がれており、強い刺激を得ることができます。外には大きな空と緑の広がる露天風呂があり、とても開放的な気分で入浴できます。奥には低温、高温二種類のサウナ室があり、体調に合わせて利用できます。別室に砂風呂があり、浴衣を着て熱い砂に入って身体を温めることもできます。
このような各温泉を回り楽しんでいるとき、突如、ひょうたん温泉と道後温泉本館の共通点に気づきました。それは「共同浴場」だということです。そういえば、別府の竹瓦温泉も二つ星ですが、ここも入浴料100円の市営共同浴場です。

日本の温泉地は世界の特殊性

実はここに日本の温泉がもつ、世界から見た特殊性があるのです。
温泉研究者の世界的権威である、ウラディミ-ル・クリチェクが世界の温泉国について次のように述べています。(「世界温泉文化史」1990年)
「統計学を信頼するならば、湯治場は今日、ほとんどヨ-ロッパだけに分布していることになる。1971年の大部の温泉誌では、全体で19か国1,100の温泉のうち、97パ-セントがヨ-ロッパに存在する。以下、中部ヨ-ロッパの枠を越えて、いくつかの特殊な湯治について一瞥してみることにしたい」
とあり、その特殊な湯治として「ロシアの温泉浴と蒸気浴」「フィンランドのサウナ」「イギリスとアメリカで流行の入浴」「トルコとアラビアの入浴」そして「日本、中国、アフリカでの入浴」が書かれています。このように温泉学の権威が「日本の温泉地を特殊性」と断定していることに、意外の感をする方が多いのではないかと思います。
何故なら、日本人は日本を温泉大国と考えているからです。たしかに温泉地の数は多く、温泉を国民の大多数が利用しているですから、その意味では温泉大国といえるのですが、世界の温泉の常識からは外れているのです。その常識の基準は「温泉とは湯治場であり、共同風呂」であるという前提です。
実は、この基準でグリーンガイドが格付けしたことを、ひょうたん温泉の露天風呂の中で気づいたのです。気づいてみれば簡単です。欧米の温泉地は共同風呂しかないのですから、ミシュランの格付け評価担当者は、自らの常識の範囲内の共同風呂を探し、その結果、日本で無名ではありますが、ひょうたん温泉を選んだのです。
背景が分かれば簡単です。だが、しかし、これは日本が観光大国化へ向かうためには大問題です。日本に数多く存在する温泉が、欧米人から見れば、自分たちの常識から外れているということです。ここを何とか欧米人に理解させないと、日本の温泉に多くの外国人が来ません。日本の特殊性を逆に魅力化し、受け入れられるようにすることが必要です。

「来てみればわかる」よう情報編集して特殊性を観光の目玉にする

観光庁の本保芳明長官が、2009年度の訪日外国人旅行客数は前年より二割減り、背景に金融危機は最悪期を抜けたものの、円高傾向が続いていることをあげ、今後の外国人旅行客数増加は中国を最重点課題にしていくと発言しました。(日経新聞09.10.29)
これも大事です。しかし、我々ができる身近な対策も必要と思います。
時折、宿泊する伊豆の温泉旅館、ここには外国人がよく来ています。その人たちに聞くと、日本の温泉は素晴らしいと発言します。勿論、内湯旅館の風呂のことです。
この事実を大事にしたいと思います。経験すれば、知らなかった日本の温泉が好きになるのですから、何らかの方法で欧米人に発信することです。
その発信の大きな要素は、外国の書店に並んでいる外国語の「日本観光ガイドブック」、グリーンガイドやブルーガイドですが、この中で「日本の温泉は、外国には存在しない特殊形態だが、一度経験すれば多くの人がその魅力に包まれる」、つまり、タスマニアの「来てみればわかる」という事例と同じようにすることが必要です。
では、そのためにはどうするか。それは、グリーンガイドやブルーガイドへの情報編集伝達力にかかっているのではないでしょうか。
観光庁が展開する全体的な対策に加え、グリーンガイドやブルーガイド編集部門へのアプローチを個別に具体的に行うこと、それが、実は、日本を観光大国化へ早めるための有効策ではないかと思っています。何故なら、一度掲載されるなら、それは世界中の書店に並ぶからです。その意図で、近々、伊豆の旅館を事例に、グリーンガイドやブルーガイド編集部門に提案しようと思っているところで、その研究会を12月に開催します。以上。

【11月のプログラム】

11月13日(金)16:00 渋谷山本時流塾(会場)東邦地形社ビル会議室
11月14日(土)18:30 山岡鉄舟研究会「生麦事件歴史散策研究会」
11月25日(水)18:00 経営ゼミナール川越・さつまいもビール工場見学

投稿者 lefthand : 06:56 | コメント (0)