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2014年02月22日

2014年2月20日 タイへの関心事・・・その三

YAMAMOTOレター
環境×文化×経済 山本紀久雄
2014年2月20日 タイへの関心事・・・その三

東南アジアは足で売るのが成功の基

日経新聞記事(2013/12/3)を紹介したい。タイトルは「東南アジア、足で売る 味の素、自社社員5000人」で、この記事で分かるのは東南アジア地区における小売市場の全体網であって、この実態を日本人はあまり理解していないように思う。
近代的な大型店が急増する東南アジアだが、食品などでは零細店の比重は依然高く“足で売る”味の素の販売戦略は徹底していて、これが実に参考になる。

味の素は、東南アジアに約5000人の自社営業マンを抱え、庶民的な市場や零細店で1個十数円の調味料をコツコツと販売し、売り上げは年1500億円に伸びたという。

●野菜や味の素.jpg
肉がずらりと並ぶ熱気あふれる売り場の一角、木材で手作りした店で味の素の現地法人社員、ナノ・スハルノさん(37)の営業が始まった。
●マサコの方がおいしいし、きれいだろ。ほら売ってみせるから。英蘭ユニリーバなどの競合商品をひょいとつまんで、目立たぬ場所に押しやった。
●店先に並べ始めたのはスハルノさんの営業の三種の神器。「マサコ(粉末)」「サオリ(液体)」「マユミ(マヨネーズ風)の調味料3姉妹だ。マサコは現地語で「料理する」の語感に、好感度の高い日本人女性のイメージを重ねたヒット商品。
●「さっさと売るのがコツだよ」と言う通り、スハルノさんは10分ほどの間に4人のお客をさばく。商店主も満足げで、次の発注を決めた。1日の注文件数で評価が上下するが、スハルノさんの給与は同年代の一般的な大卒ホワイトカラーを上回る。

インドネシアだけで、スハルノさんのような味の素社員の営業マンは1800人もいて、人が集まる市場で8万店を取り込み、郊外に散らばる零細店もローラー方式で取り込む。「ちりも積もれば」の作戦といえる。

食品などの業界では、こうしたルートセールスは卸業者や販売代理店に任せるのが一般的だが、味の素は違う。フィリピンで800人、タイで1200人といった規模の営業員が動く。同社は東南アジア地域で「新興国に最適の営業スタイルを武器に」2020年に4500億円の達成を狙うという。 

タイ・バンコクの香水販売実態を見る

前号で紹介した「J.J Market」、犬売場の次に向かったのは香水店である。

ところでタイ人は首都をバンコクとは言わず「クルンテープ」と呼ぶ。正式な首都名は以下の通り超長く、タイ人でも全部言える人は少ないから、日本人がスラスラいうと尊敬されること間違いない。「クルンテープマハナコーン・アモーンラッタナコーシン・マヒンタラアユッタヤー・マハーディロッカポップ・ノッパラッタナラーチャニーブリーロム・ウドンラーチャニウエットマハーサターン・アモーンラピーンサティット・サッカタットタィヤウィサヌカムプラシット」

さて、「J.J Market」内の「Butterfly Thai Perfume香水店」は、屋台が密集している細道小路の奥にあり、間口一間程度の香水ショップで、ここが店だと紹介受ける。ビックリする。今まで世界各地の香水店を訪問したが一番小さい。

ここで社長と会う。まだ若い。六年前に創業。以前は洋服を取り扱っていたという。いろいろ聞いてみるとなかなかである。
タイ2.JPG

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●店舗は13店。全てオリジナル香水、自分で処方している。現在16品。来年新製品を出す。現行品の価格は859バーツ2750円。新製品は959バーツ3070円。ボトルを見せてくれる。ボトルの購入先は明らかにしないが中国製とのこと。なかなかデザインがよく、格調あるとほめる。
●匂いのティスティングしてみるが上品な香りで果物系が多い。そうしていると中年女性が来て、香水を5個買う。
●驚いて「ずいぶんたくさん買いますね」と日本語で聞くと、上手な日本語で回答が返ってくる。全然訛りなく日本人と同じ発音。これにも驚く。香水をどうするのかと聞くと「Xmasプレゼント用に買う」との答え。どこでこの香水を知ったのかと聞くと「友人からもらったので買いに来た」という。

この2750円や3070円という価格帯は高い。それなのにわざわざ「J.J Market」内に指名買いに来る実態を見て、ここの香水のレベルが分かったが、パンフレットはなく口コミとインターネット展開という零細店が、タイの香水販売では主流だと理解しないといけない。

日本企業は出張を取りやめている

日本で報道されているタイの政治デモ内容を見聞きしていると、治安が心配で危険と判断し、日本企業はタイへの出張を取りやめるケースが続出している。

ところで、タイの政治デモ報道は、バンコク中心街で行われているので、中心街に位置する大型商業施設の客が減ったことを伝えるが、一方、今回訪れた「J.J Market」にはデモが関係なしとは報道しない。また、政治混乱の影響を受けにくいリゾート地では、バンコクに代わって観光客が殺到し、ホテルの稼働率が大幅に上昇しているのが実態である。

トランジット・ポイント

人は変化することで成長するものである、といつも思っている。だから、何かの機会に「変化」に気づいたとき「楽しい」と感じることが多いが、この「トランジット・ポイント」を体験することが大事だと思っているし、その体験を記録化し、体におぼえさせ、必要なタイミングで発揮させるようにすることが、さらに重要ではないかとも思っている。

では「トランジット・ポイント」とは何か。それは「閾値(いきち)・スレッシュホールド」ともいうが、ある一定の感覚・知覚から反応が変わってしまうポイントのこと。

例えば、痒いとところがあるからといって、そこを掻きすぎると気持ちが悪くなり、刺激されすぎて「やめてくれ」という気持ちに逆転してしまうような変化点をいう。

又は、軽い冗談でも何度も聞かされると、逆に腹がたったりするのと同じだが、この「閾値・スレッシュホールド」をタイミングにうまく合わせ、コントロールしていけるようにすれば生活や仕事で結構役立つ。というより成功・不成功を分けるポイントになると思う。

情報とは何か 

次に、マスコミ報道とは何かについて時折考えてみる必要があるだろう。マスコミ報道とは、本来、目立つもの、珍しいものを中心に報道するのを仕事としている。

今回のソチオリンピックで羽生結弦選手のフィギュアスケート金メダル、スキージャンプ男子個人ラージヒルの葛西紀明選手が銀メダルを獲得したが、これは一面で大きく取り上げられた。だが、他にも多くの選手がいるわけだが、成績が振るわないと片隅に小さく報道されるだけ。これがマスコミ報道の本質。つまり、金銀メダルを獲得したごく少数の人について大きく目立つように報道し、その他大多数の選手は無視される。

また、一般人が「朝起きて、朝食して、会社に向かった」という日頃の行動は報道しなく、それが今回の二週にわたる大雪で「できない・不可能」という状況下に陥った時、大きく・詳しく報道する。

火事の場合、例えば恵比寿駅前が火事で、消防車が出て消火活動をする時は、その事実を報道するが、これは当たり前のこと。しかし、報道されない一方の事実は「恵比寿駅前以外は火事ではない」ということで、恵比寿駅前以外は安全という主流の実態は何も伝えない。

これをタイの政治デモに当てはめれば、バンコク中心地帯、官庁があるところとか、伊勢丹があるような地区には行かない方がよいが、今回行ってみた「J.J Market」はデモと全く関係ない、とういう考え方ができるかどうか。それがビジネスでは必要で重要だと思う。

政治デモが発生しているバンコクへ社員を出張させようと思うならば、その前提として「考え方をチェンジ」しないといけない。さらに「考え方をチェンジ」するには、何かの「トランジット・ポイント」体験が必要で、加えて、この「トランジット・ポイント」体験・記録・体得化がなされていないと、マスコミ報道という一般的ではあるが限定された情報によって、自らの行動を抑制してしまうことになる。

なかなか難しいことではあるが、「トランジット・ポイント」体験を重ねて、それをセオリー化していくしかないのではないか。味の素が、東南アジアの実態をつかんで、足で売る商売をしているのは、どこかの国で味の素が失敗体験をして、それを記録化し、実際の営業に役立つよう変化させたからだと思う。行動する背景に考え方基準を持ちたいものだ。以上。

投稿者 Master : 11:57 | コメント (0)

2014年02月07日

渋谷時流塾2月開催のご案内

2月の渋谷時流塾は「トランジットポイント」をテーマとして取り上げます。

「トランジットポイント」とは「閾値(いきち)・スレッシュホールド」ともいいますが、ある一定の感覚・知覚から反応が変わってしまうポイントのこと。

例えば、痒いとところがあるからといって、そこを掻きすぎると気持ちが悪くなったり、刺激されすぎて「やめてくれ」という気持ちに逆転してしまうような変化点のことです。

●日銀が目指す物価上昇率2%のトランジットポイントは何時か?

●また、自分のトランジットポイントはどういう時に見つけ出せるのか?

日時  2014年2月14日(金)

講師  山本紀久雄

会場  ㈱東邦地形社 8階会議室

住所  渋谷区神宮前6-19-3 電話03-3400-1486
    JR渋谷駅東口 宮益坂下交差点から明治通りを原宿方向へ徒歩3分
      渋谷教育学園・渋谷中学高校学校前

時間  16:00から18:00

会費  1000円

ご参加ご希望の方は、直接、会場にお願いいたします。


投稿者 Master : 13:05 | コメント (0)

タイへの関心事・・・その二

大学教授にパリ情報を話す

 先日、突然、ある大学の英文学教授から電話がありました。
「初めてお電話します。何々さんから紹介受けた者です。この度、パリの大学で一年間教鞭をとることになり、パリについていろいろ教えてほしいのですが」
「そうですか。雑談程度の内容でしたら、お話しできると思います」

ということで、さいたま新都心のレストランで昼食をとりながらお話ししましたが、ちょうど日仏合弁企業時代に秘書兼通訳をしてくれた女性が定年になり、一度、会いたいとと思っていたので一緒にどうかと声かけると、都合をつけて参加してくれました。

この女性はリオン大学卒で、パリで結構長く生活されたので、大学教授に実務的なアドバイスをしてくれました。

その中で参考になったのは「仕来りの違い」を受け入れるということでした。
① ドアを開け入る際、必ず女性を先にする
② フランス料理を一緒にしたら、最後にデザートをいかがですかと必ず声かける
③ 食事相手が女性ならば、水・ワインは必ず男性が注ぐこと
④ 洗濯物は必ず家の中に干す。外で干してはいけない
⑤ アパルトマンのエレベーター内で同乗者がいたら必ず挨拶する。しないと危ない人物だと警戒される
⑥ 商店に入ったらボンジュール Bonjourと挨拶した方がよい。しないとお金を払った後で嫌味たっぷりの発音で「ボンジュール」と返され、サービスに影響する

 この他で強調したのは「家の内部の修理・修繕」は日本みたいにすぐに業者は来ないことと、各地というより全国的なストライキが年に何回か勃発すると伝えました。私は何度もストライキを経験していますが、フランス人に言わせると「リーダーが朝起きて『今日はストライキだ』叫ぶと、組織が一斉にストライキに突入する」という冗談が事実に近いという話ですから大変です。

全く、一般人の迷惑を考えない、というより迷惑をかけるためにストライキをするわけで、基本的な考え方が違っていることも「仕来りの違い」に入ります。

 ストライキの体験話では、パリからニースに飛行機で移動したとき、ニース空港で乗車したタクシードライバーが、先ほどまで農民が道路封鎖していて、飛行機は飛ばなかったのだといい、明日も同じことが起きるから飛行機便は避けた方がよいとアドバイス受けたことがありました。

 そこでその日のうちにニースでレンタカーを予約し、翌日の移動先のトゥルーズまで約500kmを走りましたが、このようにフランスではストとデモは常識といってもよいのです。

タイのデモ

 前号でお伝えしたタイの政治デモに戻ります。
その後も続いていて、2月2日の総選挙は(下院選・定数500)は反政府派の妨害で投票が中止になる選挙区が相次ぎ、結果が確定できませんでした。インラック政権は選挙管理内閣として再投票などの手続きを進める構えですが、反政府派は続いてデモを行っており、政治空白が避けられそうもない状況で、タイ政局がどう展開するのか難しい局面となっています。

 バンコクには昨年デモが発生し始めた頃の、11月14日(木)~17日(日)に行きまして、ホテルが市内中心地であったことから遠目でデモは見ましたが、特別の危険も感じませんでした。というより、デモはタイ人同士の争いで、外国人には関係ないわけですから、それを承知していれば、デモ隊の近くに行かない限り問題は発生しません。

 だが、毎日マスコミ報道されるタイ政局の動きとデモ状況を読み見ていると、ちょっとタイには行く気がしなくなって、結果としてGDPの1割弱を担う主要産業の観光への影響は大きいでしょう。

その通りであって、タイ財務省は12月26日に2013年のGDP成長率予想は3.7%から2.8%へ引き下げ、2014年のGDP成長率も5.1%から4.0%に下方修正しました。また、総選挙が実施されない場合、来年の経済成長率は3.0%にとどまる見込みだとも発表しました。

JJマーケット

11月のバンコクで訪問したのは市内中心地区から、BTSまたは地下鉄で30分弱、北へ行ったところに位置しているJJマーケットです。

ここは地元タイ人のみならず世界中から観光客やバイヤーたちが押し寄せるウィークエンドマーケットで、タイ語で「チャトゥチャックJatujak」といいますが、これを省略して「J.J Market」とも呼ばれているところ。
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ここでは全くデモの影響がなく1万以上もの店が軒を連ねるバンコク最大級ゾーン。ここでの買い物の魅力は、ほかでは売られていないオリジナルアイテムが多いので、そのセンスがバイヤーたちの目に留まり、お店が繁盛してくるとバンコクの中心部に品物へ卸をしたり、支店を構えるようになるという。
もちろんオリジナル以外にも、定番のお土産(象の置物やエスニック小物やバッグなど)を扱うお店もたくさんあり、バンコク市内のお土産屋やデパートよりも2~3割は安く買うことができる。つまり、タイ最大級マーケットであり、一大アミューズメントパーク並みに楽しい地区で、ここの銀行は土日営業です。

しかし、このマーケットは陽射しが熱い。日本の寒さが懐かしいが、そんな事を言っていられないなぁと思っていると、一人の若い男性が迎えに来てくれた。

迎えがないと込み入ったJ.J Market内は歩けないのです。彼は少し日本語ができる。彼の案内で屋台が密集している細道の奥に入っていくと、突然、可愛い犬の売り場があるではありませんか。

犬からわかる階級社会

 その犬売場に行くと、昨年春に死んだ我が家の愛犬ビーグルが可愛い女性に抱かれているので、思わず写真に撮ってしまいましたが、実は、この犬売場がタイの階級社会を示唆しています。
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 タイの犬は三種類に分類されます。①家の犬、②お寺の犬、③道ばたの犬。いずれも放し飼いです。ということは勝手に交尾しどんどん子供を産むことになって、飼い主は面倒が見きれなくなると、日本のように市役所には連絡しません。どこへ持ち込むのか。それはお寺であって、お寺に犬を置いてくる。

 その寺の犬は、お坊さんが托鉢で貰ってきたおこぼれを頂戴することになる以外は、暑いので一日中ごろごろ寝転んでいる。

 ところが、お寺でも犬が増えすぎると厄介なので、時々、どこに捨てることもあるらしい。それらの相互作用で、③の道ばたの犬が多くなるが、大の愛犬家としても知られるプミポン国王の指示により、道ばたの犬も手厚く保護され、ワクチン接種や避妊手術などが行われているので、タイの犬は他国に比べると幸せ度が高いといえます。

 ところで、J.J Marketの犬売場はこの三種類とは別世界に所属します。写真で分かるように日本のペットショップと同じく、世界の名犬純血種が並んでいます。本物かどうかは不明ですが・・・。これらの犬を買うのは大金持ちや特権階級の人たちであって、外へ散歩に行く場合はちゃんとリードで繋がれていくが、それは飼い主ではなくお手伝いさんの仕事になるという生活です。

これはタイの社会を示しているのです。タイは典型的な階級社会であって、頂点に大金持ちや特権階級がいて、次に経済発展に伴う中産階級がいて、それと長年政治から無視されてきた農民たちがいるわけで、犬もその階級社会通りの種類分けとなっているのです。

さて、政治デモはまだ続き、何らかの解決策をタイ人は自ら見出すまでには時間がかかります。ということは日本のタイとのビジネスも停滞するということになります。知人の企業もタイへの出張を取りやめました。社員安全を考えたのだと思います。

しかし、そのような対応でよいのでしょうか。次号でそのあたりを分析します。以上。

投稿者 Master : 12:36 | コメント (0)