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2013年11月21日

2013年11月20日 世界で最も幸せな国、暮らしやすい都市(下)

YAMAMOTOレター
環境×文化×経済 山本紀久雄
2013年11月20日 世界で最も幸せな国、暮らしやすい都市(下)

コペンハーゲンという街

前号に続いて世界一暮らしやすいコペンハーゲンを検討する。人口は52万人。名前はデンマーク語の"Kjøbmandehavn"(商人たちの港)に由来し、日本語では「コペンハーゲン」というが、これはドイツ語名をカタカナ表記したものであり、デンマーク語では「ケブンハウン」に近い。
コペンハーゲンには、城、公共建物、美術館など歴史的な建造物がたくさんあるし、市役所前広場からストロイエ通り、この通りは市庁舎前広場とコンゲンス・ニュートーゥ広場を結ぶ通りであるが、フレデリクスバーウギャーゼ、ニューギャーゼ、ヴィメルスカフテ、エスターギャーゼの4つの通りで構成されている。

ストロイエとはデンマーク語で歩くこと。市民や観光客の目を楽しませてくれるこの通りは、その名にふさわしい歩行者天国。道の両側にはさまざまなショップやレストラン、カフェが並び、路地裏には、中世の香り漂う重厚な教会や色鮮やかな家屋が並んでおり、そぞろ歩きが楽しい。

通りの中ほどにギネス・ワールド・オブ・レコーズ博物館 がある。入口に世界一の背高のっぽの人の像が目印だからすぐわかる。中に入らなかったが、ギネスブックに載っているさまざまな記録がひとめでわかる博物館である。ストロイエ通りの終点はコンゲンス・ニュートーゥで、ここに入ると自然にニューハンに足が向く。

ここはいつも大勢の男女が屯っていて、天気の良い日は足元にビール瓶を置いて会話に興じている。その傍らを、そのビール瓶目当ての男女が袋を持って歩いている。結構の人数が徘徊していて、気をつけないとまだ飲み残しがあるビール瓶が浚われる恐れがある。空きビール瓶を売ってお金に替える仕事であるが、何となく侘しく見え、これだけはコペンハーゲンの街並みのよさを傷つけていると感じる。

人魚姫
人魚像.JPG

次の日の日曜日は朝から雨。昨日より12度低い14度。コートがいる。その雨の中、ホテルから歩いて地下鉄駅へ。乗車券はセブンイレブンで買う。一人24デンマーク・クローネDkk、1 Dkk =18円換算で1430円。結構高い。人魚姫の像の駅、エスターボートにすぐに着く。

駅から歩いて20分くらいかと、地図を広げていると親切にデンマーク人が教えてくれる。言われたように歩いて行き、公園内の道になったあたりから人が徐々に多くなっていき、その人々の回りをマラソンランナーが走っていく。今日はコペンハーゲンマラソンの日なのだ。モロッコの選手が2時間17分台で優勝したらしいが、一日中街中はマラソンで大賑わいであった。

さて、期待の人魚姫は公園を過ぎて、少し下る坂道の突端埠頭近くの岩の上に楚々として腰かけている。今までに何回も首が切断されたりする事件が話題なっているが、「世界三大がっかり」と言われながらも、コペンハーゲンの人気観光スポットである。

この人魚姫、足の先だけが魚らしくなっているだけで、ほとんど裸婦像と言ってもよいだろう。象をつくる際のモデルの足があまりにも綺麗だったので、作者が足をつくりたくなったのだというエピソードがうなずける。

人魚姫の撮影は結構難しい。理由の一つは、あまりにも観光客が多いことで、自分と人魚姫だけの写真を撮るには、タイミングが必要である。人がカメラを構えていても、お構いなしに人魚姫の前に立ってしまう男女もいるし、特に激しいのは団体客である。バスで来て、時間が限られるためか、一斉にやってきて、争うように撮影しまくるので、その間は茫然と見ているだけ。

もうひとつの理由は、後ろは海、手前は岩場で足元が悪いうえに狭いので、うっかりすると足を踏み外す危険性もあるからだ。ここで怪我すると厄介だ。救急車を呼ぶにも、コペンハーゲンでの手続きが分からないだろうから、とにかく、人魚姫では慎重な行動が望ましい。

ここで日本人女性一人旅に出会って、シヤッターを押してくれといわれた。ヨーロッパを歩いていると、時折、このような若き女性の一人旅に会うことがある。現在の境遇に飽き足らず、人生の転機を求めて結構長期の旅をしている女性が多い。場所を変えればある意味で転機になるだろうと思っているらしいが、結局、日本が一番住みやすいと気づき、戻っていく例が多いと思う。

nomaというレストランの存在

ロンドンのライフスタイル誌「モノクル」が毎年、世界の都市のどこがもっとも暮らししやすいかをランキングした内容は前号で紹介した。編集長のタイラー・ブリュレが選定基準を次のように語る。

「『本当に良い街』とは、一日の間にできる限り多くのことを気持ちよく体験させてくれる街のことだと、私は考えています。朝、子どもを学校に送り届け、買い物をし、仕事に出かける。そうしたことをスムーズにストレスなくできる街です」

これに異論はないが、私はもう一つ加えたい。それは食である。素晴らしいレストランがあることが「よい街」の重要要件であると思う。

その素晴らしいレストランがコペンハーゲンに存在している。それがクリスチャンハウン地区の「ノーマnoma」レストランである。途中マラソンのため渋滞で、世界中で都市マラソンの人気が高いと再認識しつつようやく「ノーマ」店の前にたどり着いたそこは、予想通り静かな寂れた海岸倉庫街にあった。
ここが、ここが世界でもっとも予約が取れないレストランといわれているところだ。

だが、今年の4月29日にロンドンで発表された「サンペレグリノ世界のベストレストラン50」、これは料理人や評論家ら900人の投票で選ぶものであるが、2013年はスペイン・カタルーニャのミシュラン3つ星「エル・セジェール・デ・カン・ロカ」が、3年連続で首位だった「ノーマ」を抑えて世界最高の栄冠を獲得したが、「ノーマ」の価値は下がっていない。
noma.JPG

nomaとはnordic(北欧)と、食材を意味するmadを組み合わせているように、北欧の食材をテーマにしており、地元出身のシェフ、レネ・レゼッピは、まだ36歳という若さ。

予約が取れないのであるから、店に入れない、したがって、折角コペンハーゲンに行っても「ノーマ」を語れない。そこでデンマーク大使であった岡田眞樹氏の体験内容で補いたい。(魅惑のデンマーク 新評論2012年)

「これまでに行ったレストランのなかでダントツに素晴らしかった店がここ。周りは察風景なところだ。
夜のメニューは7皿のコース料理が標準だが、昼はその中から魚と肉とデザートの3品が選択できる。2品だと220クローナ、3品だと290クローナとちょっと高めだがワインをグラス程度にしておけば3品注文しても400クローナ(約一万円)ぐらいでどうにかなる。

座った途端に出てきた奇怪な料理に、まず驚かされた。ウェイターに聞いてみると、手前のものは干したタラの皮、右は揚げ物だが、飴色っぽい何かの魚を干したものでピリッと辛いスパイスがまぶしてある。ポテトチップ以外はすべて海産物、それも店の売り言葉のように『北欧の産品だ』と言う。この揚げ物、結構こくがあっておいしい。

次に出てきたのは、コース料理には含まれてはいない付き出し。これがまた奇妙というか、食べたことのないものだった。ライ麦パンと真ん中がクリーミーなチーズ、そしてライ麦の粉でつくった『スノー』だ。これが単なる粉ではなく、それこそサラサラした新鮮な雪を食べるような感触で、口の中でさくっと崩れて融ける感じともに冷たさがあった。クリーミーなチーズと一緒に食べると、口の中で融ける味わいは絶妙であった。

さて、ここからがようやくコースメニューとなる。・・・以下省略・・・『美味しい、美味しい』の連続で料理レポートとしては芸がないが、デンマークでこれまで食べた食事のなかではダントツに美味しかった。あくまでも軽く、淡泊で繊細なところに強い自己主張があり、日本人好み味と言える。店は『ノルディック・グルメ料理』を目指しているそうだが、その結果は、伝統的なデンマーク料理とは似ても似つかないものとなっている。何かの料理に似ているというよりは、まったく新しい方向を進んでいると思えるような品々であった」

この岡田大使の記述を読んで感じるのは、レネ・レゼッピが目指しているのは「美食」というよりは、もっとほかの方向を目指しているように思う。単純な「美味しい」を超えて、哲学的要素を含んだ最先端料理を作り上げようとしているのだと判断するのがよいと思う。

「サンペレグリノ世界のベストレストラン50」で日本勢は、東京南青山のフランス料理店「レ・クレアシヨン・ド・ナリサワ」が12位、東京・六本木の「日本料理龍吟」が20位に選出された。いずれも去年の順位より上昇し躍進しているが「ノーマ」との違いは何か。

その差を掴むためには日本の二店に行き食べ、それから再びコペンハーゲンを訪れ、何とか「ノーマ」を予約し食べることで、暮らしやすさ世界一の要因を理解したいと思う。以上。

投稿者 Master : 13:17 | コメント (0)

2013年11月05日

渋谷時流塾の開催

渋谷時流塾は11月8日16時から18痔に開催します。
会場は以下です。
 ㈱東邦地形社 8階会議室
 渋谷区神宮前6-19-3 tel 03-3400-1486
(JR渋谷駅東口 宮益坂下交差点から明治通りを原宿方向へ徒歩8分
                   渋谷教育学園渋谷中学・高等学校前)

テーマは以下です

テーマ「予測不可能な時代」

1. 予測不可能な時代

2. 安倍首相トルコ訪問と2050年予測

3. 第10回 日経・CSIS(米戦略国際問題研究所)シンポに参加して

4. アメリカ
① オバマ大統領の支持率

② 政治混迷の黒幕は誰か?

③ NY株の暴落はあるのか?

5. 中国
① 経済成長は止まったか?

② 対策は農村戸籍から都市戸籍へ

③ 中国メディア記者からの質問
清華大学・野村総研中国研究センター 松野 豊

6. 猛暑の夏 電力はなぜ足りた?

7. 外務省動画の背景

投稿者 Master : 07:09 | コメント (0)

2013年11月5日 世界で最も幸せな国、暮らしやすい都市(上

YAMAMOTOレター
環境×文化×経済 山本紀久雄
2013年11月5日 世界で最も幸せな国、暮らしやすい都市(上)

第10回 日経・CSIS(米戦略国際問題研究所)シンポに参加して
 
10月29日(火)帝国ホテルで日経・CSIS(米戦略国際問題研究所)シンポジウムが開催され、1800名の参加者の一人として出席した。

テーマは「新時代の日米同盟・未来への助走」で、さまざまな見解が討議された中で、日米の同盟関係の強化策に関する討論では、参加者から事前にアンケートされた内容(下図)と、会場でも意見に賛成・反対への投票を含めた討論が大変参考になった。

ジョセフ・ナイ・ハーバード大学特別功労教授が「基地の共同利用をもっと増やすべきだ」と提言し、領土対立問題では、ナイ氏とアーミテージ元国務副長官が昨年9月の沖縄県・尖閣諸島の国有化について、東京都が購入するよりも賢明な判断だったとの意見で一致した。

また、ナイ氏は「日本が尖閣諸島を環境保護区と決めて、居住や軍事利用をしないと宣言する」アイデアを披露し「主権と倫理の両面で中国より優位な立場に立つべきだ」と語ると、多くの参加者から拍手が起きたのが印象的だった。

 北方領土問題では、事前の参加者へのアンケートで約8割が「四島一括返還でなくても支持する」と答えに対し、アーミテージ氏は「米国は日本の立場を一貫して支持してきた。ロシアとの返還交渉で、日本が満足する結果になれば、米国も満足するだろう」と語った。

なお、ナイ氏が「日本は中韓以外の世界から最も人気の高い国だ」と「ソフトパワーに優れた国であるから国際関係で自信を持って行動すべき」との主張に改めて共感した。
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(左 ナイ氏 右 アーミテージ氏)
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世界で「最も幸せな国」はどこか

現在の世界で「最も幸せな国」はどこだろうか。それはデンマークであり、米コロンビア大学地球研究所が調査し発表した世界各国「幸せな国」ランキングでトップを占めている(2013年9月CNN)
 
上位10カ国は以下の通り。
1.デンマーク 2.ノルウェー 3.スイス 4.オランダ 5.スウェーデン
6.カナダ 7.フィンランド 8.オーストリア 9.アイスランド 10.オーストラリア

この他の主要国では、米国17位、英国22位、ドイツ26位、日本43位と好感度ではトップクラスでも、幸せ度では中間となっている。

幸福度が最も低い5カ国はルワンダ、ブルンジ、中央アフリカ、ベナン、トーゴと、アフリカのサハラ砂漠以南に集中している。

デンマークという国

 そこでデンマークという国の全体概要を見てみる。

① 面積は約4.3万平方キロメートル(九州とほぼ同じ・除フェロー諸島及びグリーンランド)
② 人口は約560万人(2013年デンマーク統計局)
③ 首都はコペンハーゲン(人口は約70万人、首都圏の人口は約120万人)(2012年末)
④ 言語はデンマーク語
⑤ 宗教は福音ルーテル派(国教)

 このデンマーク、今でこそ世界有数の豊かな国家となったが、これは一朝一夕でできたわけではない。19世紀初頭のデンマークは、経済的に破綻し、領土も喪失して、実際に「貧しく、小さな国」であった。

 そこからデンマークの人々は立ち上がり、土地改良ほか、さまざまな改革と努力によって、今日の恵まれた国を築き上げてきたのである。

 現在の政治は、2011年9月の総選挙によって、10年に亘り政権を担当してきた自由党及び保守党による右派連立政権が敗北し、社会民主党を中心とする左派が勝利を収め、トーニング=シュミット社会民主党党首を首班(デンマーク初の女性首相)とする中道左派三党連立内閣が発足している。この政権は、移民には厳しく、仮に夫か妻がデンマーク人であっても、手続きが大変な上に、政権交代のたびに移民制度の内容が変わり、EU以外の国からの移民は特に難しい。消費税は25%。同性婚は昨年認められている。

有名な文学者はアンデルセン、哲学者はキルケゴール、スポーツでは自転車競技、ヨット、カヌー、ハンドボールが強いという。

世界で最も「暮らしやすい都市」はどこか

次に、世界で最も「暮らしやすい国」はどこだろうか。それはデンマークの首都コペンハーゲンである。ロンドンのライフスタイル誌「モノクル」が毎年、世界の都市のどこがもっとも暮らししやすいかをランキングしているのでみてみよう。

編集長のタイラー・ブリュレが選定基準を次のように語る。
「『本当に良い街』とは、一日の間にできる限り多くのことを気持ちよく体験させてくれる街のことだと、私は考えています。朝、子どもを学校に送り届け、買い物をし、仕事に出かける。そうしたことをスムーズにストレスなくできる街です。

犯罪の多いエリアを迂回すべきだろうかとか、自宅に泥棒が入っていないだろうかとか、そんな心配は誰もしたくないはずです。また、交通渋滞にはまって一日を無駄に過ごしたくもないですよね。そうした考えに基づきランキングするには、まず治安や交通の便、それに基本的なインフラや自然環境の豊かさといったポイントを重視しています」
   

コペンハーゲンを歩いてみて

コペンハーゲンには、2013年5月18日(土)にベルギー・ブリュッセル空港からスカンジナビア航空で入った。

ブリュッセルでは雨が降り、寒くて震えたので、ここより緯度が高いコペンハーゲンだから、もっと寒いだろうと予測し国際空港のカストロップ空港に着き、窓から外を見ると日光が燦々として26度もあるという。 

 ホテルでコペンハーゲンの地図をもらい、早速、街中を歩いてみた。日差しが熱い。ホテルで聞くと、今日は特別だといい、明日は雨だよとつけ加える。

コペンハーゲンには23年前の1990年11月に訪れている。当時の思い出を辿って、市庁舎の前に立つと何か騒々しくなっているような感じがする。

この市庁舎は1905年に完成した6代目にあたるもので、中世デンマーク様式と北イタリアのルネッサンス様式を取り入れた堂々たるたたずまいの建物。コペンハーゲンで最も高い105.6mの塔をもっており、コペンハーゲン市街を見渡すことのできる絶景スポットしても知られている。

だが、この街を一日半、歩いてみて感じたのは「やはり変わっていない」ということ。最初に騒々しいと感じた理由は分かった。市庁舎前の広場がイベントを開催するらしく、多くの関係者が慌ただしく動いており、そのための資材がおかれていたことから、そのように感じたのである。

23年前、この街は、歩いて観光するにちょうどよい大きさだと思ったが、今回も同じ感覚を持つ。
パリやニューヨークを歩いて動き回るのは厳しい。地下鉄やタクシーを使うことになるが、コペンハーゲンは地図を見ながらブラブラ歩くには絶好の街だと思う。

しかし、これだけでは世界一という評価は得られない。

もっとコペンハーゲンには何かがあるはず。それを次号でも検討を続けてみたい。以上。

投稿者 Master : 06:56 | コメント (0)