« 2013年03月 | メイン | 2013年05月 »

2013年04月22日

2013年4月20日 分かったこと(下)

YAMAMOTO・レター
環境×文化×経済 山本紀久雄
2013年4月20日 分かったこと(下)

安倍首相

安倍晋三首相が2013年4月18日朝放送の「スッキリ!!」に出演し、いわゆる「アベノミクス」をめぐり、「間違いなく、多くの方々の収入も増えていく。夏を越えていけば、だんだんそういうことになっていく」と具体的な見通しを示した。
現職の首相が情報番組に出演するのは異例で、40分にわたる出演では、「この番組に出るとね、この後色々いいことがあるのかなぁと…」と、終始上機嫌だった、と報道された。

就任から4か月が経つ安倍首相のメディア対応は、記者会見以外の個別取材を多く受けていることが特徴で、すでに在京キー局や主要新聞・通信各社のインタビューは一巡している上、民主党政権時代と比べて、週刊誌やバラエティー番組など、出演するメディアの幅が大幅に広がっている。

この背景には、上の記事(日経新聞「大機・小機」2013.4.2)のように安倍首相の「分かりやすさ」がある。人々はモノゴトを無意識のうちに簡便に理解しようとする傾向がある。だから「分かりやすさ」が「説得力」を生みだすことになる。

安倍首相は五年半前と変化した

第一次安倍内閣は2006年9月から2007年9月まで、ちょうど一年間で幕を閉じた。最後の辞任会見は安倍首相にとって「誇りや自信が粉々に砕け散った」もので、みじめな状態というべきものだった。
それが今回は「デフレ脱却」や「決められる政治」への期待を背景に、内閣支持率は高い水準を維持している。
どのように変わったのか。それを示しているのが左である。「優先する政策テーマ」「人事」「メディア対策」すべてを変えている。

識者も驚く安倍首相の変身

安倍首相の大変化については識者も驚いている。先日、評論家の大宅映子氏と東京大学名誉教授の御厨貴氏から話を聞く機会があったが、両氏とも安倍首相の一大変身について、その要因は分からないが、確かに変身したという発言が印象的であった。

特に、御厨氏は政治学者として歴代の首相を見続けて来ていて、一度退陣した首相が再登板するのは戦後二人目で、吉田茂以来64年ぶりだとのことであったが、吉田茂の一回目は旧憲法下であり、新憲法になってからの再登板は安倍首相しかいないというところが重要だと強調された。

さらに、安倍首相は本来、経済・金融は詳しくないはずで、元々は保守本流で情の人物であるから、今の変化には驚くばかりで、今では五年半前退陣の負の遺産を消去しつつ、官邸主導政治を実現し、メディアをもコントロールしている状況であるという。

また、外からの緊張、それは竹島であり、尖閣諸島であり、北方領土であるが、それと内からの緩和、これは日銀の脱デフレ作戦であるが、この両面作戦を上手に使い分け、夏の参院選まで乗り切る作戦であるとの解説に、正にその通りだと納得した次第。

安倍首相の変身背景

すべての人が認める安倍首相の変身、ではそこにはどのような背景・要因があるのか。
安倍首相に直接聞くのが一番でしょうが、それは難しい。したがって、発表される資料を分析するしかない。仮説として、多分、失敗から生え出づるためには、人生の生き方セオリーを踏んでいると想定し、それを新聞記事からひろってみたい。
左の記事から分かるのは「ノート」である。失敗の背景・要因と考えられる内容を記録化していることである。これは大事な作業であって、失敗から学ぶためには必須条件であろう。
奥さんの安倍昭恵さんも、次のように分析し語っている。

  

人生に失敗はない。諦めた時、失敗という

このような人生訓、そば屋や居酒屋で見ることがある。一瞬、成程と思って頷きやすい。だが、少し深く考えてみると違うのではないかと気づく。

人は失敗が常である。そこで失敗しないように再挑戦する気持ちを持つこと、これが大事で必要なことはすべての人が熟知している。だから「人生に失敗はない。諦めた時、失敗という」という格言が成り立つので、その通りと思うのが普通だが、ここで見落としてならないことがある。

それは、失敗の要因を分析し、十分に解明しているかである。失敗したことを反省するだけで、失敗の要因を追及し究明しておかないと、再度のトライも前回と同様の手段・方法で行うことになっていくから、成功よりは失敗の確率の方が高いということになる。

失敗が続く多くの事例を見ていると、この失敗からの解き明かしが不十分の場合が多い。折角、失敗したという情報を体験したのであるから、その経験を活かして、次の行動につなげていけばよいのに、もう一度、さらにもう一度と、同じパターンで続けていき、やはりダメかと落ちこみ、結果として、その行動をとることを諦めてしまうのである。

失敗したら、その要因・背景をしっかりと分析しておくことが重要であるが、その際に不可欠前提条件は「文書化・メモ化しておくこと」である。つまり、記録が必要条件なのに、これが案外なされていない。したがって、失敗要因の分析をしようにも情緒的に流れて不十分になりやすく、失敗の継続化という実態になっていく。

人生の勝ち負けを決めるのは、失敗した後の「作法」である
この格言は米ジャーナリストで外科医のアトゥール・ガワンデの言葉である。


安倍首相から学ぶこと
 安倍首相が第一次内閣の失敗から学んだことが「アベノミクス」につながったのであるが、ここで我々が「分かったこと」は「失敗した際の分析力」で、徹底して失敗の要因・背景を分析し、その結果として次の行動への計画をつくりあげていく、という誠にオーソドックスな手法と、そのために必要不可欠なノートづくりだということであろう。以上。

投稿者 Master : 06:45 | コメント (0)

2013年04月06日

2013年4月5日 分かったこと(上)

YAMAMOTO・レター
環境×文化×経済 山本紀久雄
2013年4月5日 分かったこと(上)

浦和学院・春の甲子園優勝

 選
抜高校野球、決勝戦で埼玉県代表の浦和学院が、愛媛県代表の済美高校を破り優勝しました。得点差は17-1という大差でした。

旧浦和市民は大喜びですが、しかし、この得点差には驚きました。実力以上の点数でしょう。済美高校の上甲監督は、浦和学院打線の「安楽投手対策」、それは「速球に詰まるのを承知の上で、内角球を投げづらくするように仕向けた」作戦だと褒めましたが、これにちょっと疑問を持ちます。

投手の投げ過ぎ

浦和学院の猛打もあったでしょうが、それより安楽投手の投げ過ぎが影響していたと誰もが感じるのではないでしょうか。
初戦か
ら4試合で663球を投げきってたどりついた決勝。5回に打者一巡の猛攻で7点を失って、6回も続投したがさらに2失点。ここで109球を投げ終え、初戦から数えると772球のところでマウンドを降りました。
アメリカからも疑問の声が届いており、上甲監督の「十分にケアさせる」という発言からも「投げさせ過ぎた」と思っていることが分かります。何事も「やりすぎ」はよくないと「分かった」春の甲子園でした。

3月レターに対する反応

3月は二回に分けて「隣の国・韓国」をご案内いたしましたところ、多くの方から反応をいただきました。その主なものは「今まで知らなかった」というもので、隣の国であり、且つ一度は韓国を訪問旅行している人が多いのに、意外に韓国人の内面についてご存じないということが「分かった」レターへの反響でした。

当方も韓国には何回も行き、牡蠣養殖の取材で企業を訪れ、その他多くの業務で韓国人の自宅まで何度か訪問しているのに、呉 善花(オ・ソンファ)拓殖大学国際学部教授から直接お話をお伺いするまで、韓国人の内面について認識しておらず、隣の国民について「分かっていなかった」ことが「分かった」のです。

東日本大震災追悼式の欠席と朴槿恵大統領の発言

 東日本大震災追悼式に中国と韓国が欠席しました。中国の欠席理由は台湾が出席したという明快なものですが、韓国は左の新聞記事にある駐日大使の発言が示すように、欠席理由が明快ではありません。


欠席理由を大使が明快に述べられない、というところこそが、呉 善花氏の指摘する韓国人の日本に対する内面  意識であると「分かった」ように感じます。

また、朴槿恵大統領が2012年12月の選挙戦で訴え、当選後の第一声で国民に約束したのは「幸せに国にします!!」でしたが、これに驚いた方が多いのではないかと思います。サムスンが日本企業を撃破し、日本経済界から「成長モデル」に高い関心を持たれているように、このところの韓国経済は成長軌道であると思っていたのに、新大統領の第一声は韓国民の多くは「生活が荒廃している」というのが実態なのです。

何故なのでしょうか。よく「分からない」ので「分かった」と思えるよう少し補足してみます。

企業の株主

 このところ話題なっている西武ホールディングス(HD)に対する米投資会社サーベラスによる敵対的な株式公開買い付けTOB、現在保有する約32%と合わせて4割を超える株式の取得を目指すとのことです。その理由は、株式上場を巡り対立する西武HD経営陣へ圧力を高めるためで、そのためにサーベラス幹部のダン・クエール元米副大統領らを取締役として推薦する見通しだと報道されています。

だが、外資系投資企業の目的は何かを最終的に考えれば、配当収益の向上獲得ですから、TOBによる株式支配シェアを高めた後は、より一層の効率経営を目指し、そのためには不採算路線のカットなどを提案し経営を改善させ、結果として高配当を要求してくるでしょう。

韓国の所得収支


 左のグラフは韓国の所得収支です。所得収支というのは、国の経常収支の柱の1つで、外国へ投資した利子・配当収入と、外国へ支払ったそれらなどの差額を指します。

韓国はグラフで分かるように、毎年4月前後だけ、極端な赤字になっています。ということはこの時期に韓国からお金が外国に出ていくのです。どうしてこのようにある時期だけ極端なマイナスになるのか。

 それは韓国を支える大手輸出企業の大半の株主が外国人であることから、高配当額が外国へ流出していることを意味しています。

日本の所得収支

一方、日本
の所得収支は上のグラフの橙色で黒字基調を続けています。月別に見ても極端に海外流出はありません。海外株主も多いのですが、海外投資残高が多いからです。

韓国人の生活へ大手輸出企業の業績が結びつかない

日本経済界から高い関心を持たれている韓国大手輸出企業、実は、これらの株主は外国人が半数近くかそれ以上を占めており、いくら法人税を安くして巨額の利益を上げさせても、外国人株主から高配当を要求され、韓国内にはあまりお金が残らないのです。これが新大統領の「幸せに国にします!!」発言背景実態だと「分かった」のです。以上。

投稿者 Master : 08:50 | コメント (0)