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2013年08月05日

2013年8月5日 ウォール・ストリート・ジャーナルの関心事(上)

YAMAMOTOレター
環境・文化・経済 山本紀久雄
2013年8月5日 ウォール・ストリート・ジャーナルの関心事(上)

ウォール・ストリート・ジャーナルから取材

7月21日(日)、米国NYウォール・ストリート・ジャーナル、ワシントン支局のエネルギー・司法担当のエディターが自宅に取材に来た。彼の日本語は日本人並みである。

 ウォール・ストリート・ジャーナルとは、NYで発行される国際的な影響力を持つ日刊新聞で1889年創刊。その間にピューリッツァー賞を26回受賞し、創業者による編集不干渉の方針が1世紀貫かれてきたが、ルパート・マードックによる2007年の買収により、それまでの分析記事基調の誌面から大衆誌へと変化してきて、2009年から発行部数が米国首位に返り咲いている。保守系・共和党系寄り。

取材までの経緯

エディターとは、事前にメールで日程調整はしたが、どうして日本の個人家庭へ取材をするのかについては、詳しく連絡がなかったので、実際に会い、その背景を聞き、更にビックリした。

それは自宅北道路側に設置した下写真のエネフアーム、この高さ1.8m、幅1.1m、奥行き0.5mの物体が世界にはなく、日本だけに存在しているという事実を、ワシントンから来たエディターから聞くまで知らず、それほどの価値があるものとも認識していなかったから。

では何故に、ウォール・ストリート・ジャーナル紙ワシントン支局のエディターが自宅に取材に来たのか。他にもっと著名な家もあるし、立派な高級住宅もあるだろうから、当家に来るのは何か理由があるのだと、これを読まれている方は疑問を持たれずはず。

その通りで、お話すれば簡単なこと。実は知人のウォール・ストリート・ジャーナル紙東京支局長夫妻が、先般、娘さんを連れて、建て替え後の当家を見たいと来た際、家の中を案内し、当然に屋根上の太陽光+エネフアーム=ダブル発電、このシステムを説明済みであったので、東京支局長がワシントン支局に当家を推薦したのである。

だが、その時の東京支局長は「ああ、そういうシステムですか」という程度の反応しかなかったので、ワシントン支局から取材依頼のメールがあった時は大変驚いたわけ。

しかし、こちらはエネフアームの仕組みには詳しくない。というのも当家を工事した住宅メーカー、日本で一流といわれている会社であるが、詳しい実践的解説が少なく、概念的な説明を受け設置したので、取材で質問されても答えられない。

そこで、東京ガスの「エネフアーム使用説明担当」に来宅を依頼し、改めて懇切丁寧で分かりやすい説明を受け、ようやく「なるほど」と理解したのである。

次に必要なものは、多分、省エネの実態だろうと考え、昨年と今年の電気とガス料金を比較し、東京電力から入金になっている太陽光発電額も調べウォール・ストリート・ジャーナルを迎えたわけである。

日本でのエネファーム導入経緯

エネファームの日本での導入経緯を調べてみた。

現在、「究極のエコカー」と呼ばれる燃料電池車の量産時代に向かって、日米独自動車メーカーが鎬を削る競争をしているが、この燃料電池原理は1801年に英国で発見されたもの。

エネファームはこの燃料電池原理に基づき、自動車に先駆け、日本が世界で最初に一般商品化したもの。2002年小泉首相(当時)が「燃料電池は水素利用の時代を開く鍵」と施政方針演説を行い、2005年に首相新公邸にエネフアーム一号機が設置され、2009年から「民生用燃料電池導入支援事業」がスタートし、市場導入が開始。

既に43,000台(昨年12月現在)が稼働しており順調に拡大していて、東京ガスは2013年6月11日発表で、累計販売台数2万台を達成したという。エネファームの累計販売台数が2万台に達したのは東京ガスが初めて。

取材の意図

都内のホテルに宿泊しているというので、昼食を招待するから12時に最寄りの駅まで来るよう伝え、車で出迎え、家内がつくったサラダとから揚げ、天ざるそばを食べながら取材を受けた。

① 取材目的の第一
アメリカでの太陽光発電は、2011年の新規導入量は前年比76%増、2012年の新規導入量は世界全体の11%を占め、ここ数年で初めて10%を超えているように盛んである。

ところが、世界全体では2012年は前年比でわずか2%増にとどまっている。その最大の理由は欧州が23%減となったこと。アメリカや中国、日本が伸びる以上に欧州が沈み、このまま推移すれば、2013年の世界全体では11%減ると見込まれているという。

この背景には、欧州が高い買い取り価格を、電気料金に含まれる賦課金などの形で利用者に負担させるので、産業界からは「国際競争力を脅かす」と批判が相次ぎ、一般家庭からも料金値上げに不満の声が出ている。

アメリカではまだ欧州のようにはなっていないが、潜在的な問題としていずれ発生するのではないか。その点、日本ではどういう状況なのかを調べたい。これが第一の取材目的である。

② 取材目的の第二
これは2013年6月7日の日経新聞記事にエディターが関心を持ったこと。

記事は次のように、積水ハウスがゼロエネルギー住宅「グリーンファーストゼロ」の売上が好調で利益増というもの。

この記事の中の「ゼロエネルギー住宅」とは何か、ということに関心を持ち、積水ハウスの本社がある大阪へ行き、取締役本部長と面談しているうちに、初めてエネフアームの存在を知り、大阪ガス作成のパンフレットを入手、本社から紹介された川崎の積水ハウス住宅に訪問した。

この訪問時には神奈川支社の支店長と部長・担当者が同席していた。その翌日に当家に来て、家族だけの取材対応であったので、少し意外な顔していたが、帰りには「その方がいろいろザックバランな話でよかった」とのこと。

このエディター、ワシントン支局であるから、オバマ大統領を訪ねる各国首脳と接する機会もあり、安倍首相がワシントンに来た際に質問したことがあるように、世界の情報を一応持っていると自負している人物であって、日本の外交官などにも会う機会があり、先日も佐々江日本大使と昼食を一緒にしたが、エネフアームが話題なったことはないという。

燃料電池車と同じ原理を活用したエネフアームが、既に一般化商品として日本で普及している事実をエディターは知らなかったわけで、日本人は何故にこのようなシステムを世界にPRしないのか。そこが分からないと何回も発言する。

この発言に同意したい。世界に先駆けて日本が開発普及させたものを、世界に売り込み普及させていくことが必要だと思う。

安倍首相の外国訪問に多くの住宅メーカー社長が同行しているので、海外で売り込み機会は多々あるはず。住宅メーカー・関係業界の問題だ。次号に続く。以上。

投稿者 Master : 2013年08月05日 08:50

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