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2010年04月04日

2010年4月5日 PIGSスペインから学ぶこと

YAMAMOTO・レター
環境×文化×経済 山本紀久雄
2010年4月5日 PIGSスペインから学ぶこと

消費税アップに学ぶ

日経新聞社とテレビ東京の共同世論調査(2010年3月29日)で、鳩山内閣の方針の「4年間は消費税の増税をしない」に対し、「反対」と答えた人が46%、「賛成」43%で、反対が賛成を上回りました。

また、参考までに世界各国の消費税率がグラフで示されていて、これを見ると、日本は世界一借金大国という実態とは全く逆で、世界一低いと思われる消費税率となっています。
さて、今や世界の話題の中心であるEUのPIGS(ブタども)といわれるスペインですが、先般訪問してみると、マドリード市内の市場はじめ商店は活況を呈していまして、低迷している状況とは思えませんでした。
そこに7月1日から消費税率アップをスペイン政府が決定しました。アップ内容は、自動車、家電、アルコール、たばこ、ガス、電話料等が現行16%から2%アップの18%へ、ホテル・レストラン、住宅、公共輸送等は現行7%から1%アップの8%です。
 この決定をするところが日本政府と異なるところでしょう。お互い2016年の夏季オリンピック招致に失敗した国同士ですが、経済危機に関するアンテナはスペインの方が鋭いのか、それとも消費税値上げは大きなことでないのか。
いずれにしてもアップしますが、政府社労党は消費税アップで、失業者50万人を救う方針だと説明。一方、対する野党保守党の民衆党らは、消費者の購買力をかえって抑えることになり景気停滞を進め、さらにスペイン経済をマイナスにさせると主張しています。
増税に対しては、各立場から様々な見解があるのが当たり前ですが、スペイン国民は消費税アップにどう対応しているのでしょうか。
それは簡単で「スペイン人は割り切って、消費税がアップする前にと、自動車、不動産を買い捲っている」ということで、今のスペイン人の需要は盛り上がっているのです。
元々スペインはアングラ経済の二重財布で、個人一人一人はお金を持っているのです。日本も高齢者中心に貯蓄がすごいのですから、このところを日本政府もよく考えた方がよいだろうと思い、いつまでも消費税を上げないで済むのか、という素朴な疑問が国民の間にある事実を、冒頭の世論調査が示していると思った次第です。

姓名をつなげる大事さを学ぶ

スペイン訪問時に、一枚の新聞を地元の人から見せられました。それはスペインのクオリティーペーパー、エル・パイス新聞の1996年10月27日付けで、タイトルに「日系スペイン人(?)いや、セビリア人だ!17世紀の支倉常長遣欧使節団一行の子孫」とあります。

(クリックで拡大)

 写真の男の子は、宮城県が贈った支倉常長の銅像写真の下で、日本人の面影があると思われるセビリアの男の子の写真と、もう一人の男性の顔写真はサッカー審判員のホセ・ハポン氏です。 以下が記事の要約版です。
「東洋の日の出る国、日本の大名伊達政宗の親書を持った支倉常長一行30数名が、大西洋のサンルーカルからグアダルキビール川を遡って、当時西欧最大都市の一つだったセビージャ市近郊のコリア・デル・リオ(現在の人口24,000人)内港の町に上陸したのが、今から約400年前の1614年10月24日のことだった。その遣欧使節団の目的は、スペイン国王フェリペ3世やローマ法王と謁見して伊達政宗の親書を渡し、徳川幕府とは別に独自で仙台とメキシコ・スペインなどとの通商条約やキリスト教文化交流などに協力要請することだった。
支倉はフェリペ3世国王と謁見できたが、ローマ法王とは会うことが出来ず、3年後の1617年に帰国することを決めた。ところが使節団一行の中の十数名がコリア・デル・リオに残留することにしたのである。彼らは身分が低く名字がなかったので、通称“ハポン(日本)、ハポネス(日本人)”と呼ばれ、スペイン女性との間に出来た子供に“ハポン”の名字が付けられてきた。それから“ハポン”姓は400年の間、スペインで受け継がれてきた。現在コリア・デル・リオ町に400人、近くにあるコリア町に270人、セビージャ市に30人、合計700人のハポンさんが住んでいる。
ハポン姓を持っている有名人は、1990年にミス・スペインに選ばれたマリア・ホセ嬢、セビージャ万博当時のアンダルシア州文化長官のホセ・マヌエル・スアレス氏そしてスペインサッカープリメールリーグの名審判ホセ・ハポン氏などである。」
このようにスペインと日本の関係は、今から約400年前からであることが、氏名という個人の姓から歴史的に証明・明確化できますが、それはスペインの姓名制度のおかげです。
 スペインでの姓は「父方の祖父の姓、母方の祖父の姓」や「名、父方の祖父の姓、父方の祖母の姓、母方の祖父の姓」、「名、父方の祖父の姓、父方の祖母の姓、母方の祖父の姓、母方の祖母の姓」という名乗り方をします。女性は結婚すると「名、父方の祖父の姓、de+夫の父方の祖父の姓」で名乗るのが一般的です。つまり、一度名についた姓は、結婚しても一生ついて回り、それは子供を通じ以後も同様ということなのです。このような姓名制度ですから、「日本」という名がついた人々は伊達政宗の親書を持った支倉常長一行30数名の後裔であると判断できるのです。
この新聞記事によって、一気にスペインに対する好感度が増してきましたが、現在、日本では夫婦別姓にすべきという主張があり、国会で検討されているところです。
この問題を論じるつもりはありませんが、スペインの姓名制度があるおかげで、日本という名前が400年間も残り、今につながっている事実を考えますと、簡単に夫婦別姓という制度に切り替えてよいのか、という素朴な疑問も浮かんできます。

聖ヤコブ大祭から学ぶ

今年のスペインは7月25日に、ガリシア州のサンティアゴ・デ・コンポステーラで「シャコベオXACOBEO(聖ヤコブ)大祭」を迎えます。
キリスト教12使徒の一人である聖ヤコブ(スペイン語名サンティアゴ)の墓が9世紀初頭、スペイン北西部サンティアゴ・デ・コンポステーラで発見され、それ以来、ローマ、エルサレムと並び、このサンティアゴがヨーロッパ三大巡礼地の一つとして崇められ、キリスト教信者の心の拠り所となっていて、中世には年間50万もの人が徒歩又は馬車でピレネー山脈を越え、聖地サンティアゴ・デ・コンポステーラを目指したと言われています。
この聖人の祝日7月25日が日曜日にあたる年は「聖ヤコブ年」といわれ、この年1年間、最低150kmのサンティアゴ巡礼道を歩くと(自転車では200km)罪が許され、大変なご利益があるといわれ、それに合わして多くのイベントが企画され、ガリシア州は2010年を通して一千万人以上の巡礼観光客を見込んでいます。
そこに先日(3月4日)ビッグなニュースが発表されました。それは「11月6日ローマ法王ベネディクト16世がサンチャゴ大聖堂で巡礼者として訪れ、ボタフメイロの大祭壇で聖なるミサをあげる」という発表です。これにスペイン人は大喜び、サンチャゴ市当局によると、ローマ法王が来ると、観光客が更に数十万人増えると見て、サンチャゴの旅行業界、ホテル・レストラン業界なども、この話題で持ち切りとなっています。
キリスト教を頭で理解する日本人にとっては、ローマ法王のサンチャゴ訪問について、その影響度を正確には測れませんが、スペインには国の垣根を超えた一大イベントが存在しているという事実を正しく認識したいと思い、日本には世界各国の国境を超えるイベントがないという事実を認識すべきでしょう。
オリンピックやワールドサッカーを招致しようとするのは、この国境を超えたイベントを開催したいという意図でしょうが、そうではなく、日本の普遍性存在物を、世界の普遍性へと飛翔させる取り組み、それに一人一人が努力し協力する時代ではないでしょうか。
それらの行動が日本を観光大国化への正道と考え、日本各地の普遍性財産である温泉を、世界ブランド化へと企画いたしましたのでhttp://www.keiei-semi.jp/ご参考願います。以上。

【2010年4月のプログラム】

4月09日(金)16:00 渋谷山本時流塾(会場)東邦地形社ビル会議室
4月21日(水)18:30 山岡鉄舟研究会(会場)上野・東京文化会館

4月23日(金)15:00〜 経営ゼミナール 特別例会
『日本の温泉、世界ブランド化への道筋』
 於:伊豆天城湯ヶ島温泉・白壁荘

投稿者 lefthand : 2010年04月04日 09:54

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