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2010年10月18日

2010年10月20日 日本の政治劣化背景要因(後)

環境×文化×経済 山本紀久雄
2010年10月20日 日本の政治劣化背景要因(後)

記者クラブとは

前号に引き続く日本外交が下手だという問題です。問題の要因は「記者クラブ」制にあると前号で指摘しました。
記者クラブとは、政府・公的機関や業界団体などの各組織を継続取材している、主に大手メディアが構成している組織で、英語でもkisha clubないしはkisha kurabuと表記され世界に通用するもので、日本記者クラブなどの「プレスクラブ」とは全く性格を異にするシステムです。

日本しかない記者クラブ

フリーの記者などに対し排他的であるとして、これまでOECDやEU議会などから記者クラブの改善勧告を何度も受けていますが、一貫して大手メディアは記者クラブに関する指摘次項を報道しないため、国民の殆どは記者クラブの持つ閉鎖性を知らないのです。記者クラブが存在しているのは世界中で日本とアフリカのガホンだけらしく、他の国では、事前に登録しておくと、危険人物としてリストに載っていなければ、大統領・首相の記者会見に自由に参加し質問ができるのです。これが世界の常識ですが日本は異なるのです。

小沢氏・岡田氏はオープン化した

記者クラブの運営は、 加盟報道機関が複数当番制で「幹事」社となってあたる事が多く、情報は情報源の広報担当から幹事社に伝えられ調整され、幹事が件名や発表日時などその報道に関する約束事を記者室の「ボード(黒板)」に書き、黒板に書かれた約束事は「黒板協定」「クラブ協定」「しばり」などと呼ばれ、加盟社が順守するべき約束事とみなされます。

記者会見は、ほとんどがクラブ主催となっており、参加者も加盟社に限られ、仮に加盟社でない記者が参加できても質問は出来ません。また、記者懇談会やぶら下がり取材、国会記者証の交付などもほぼ独占的に享受しています。

但し例外もあり、小沢一郎氏が民主党の代表時代と、岡田克也前外相の記者会見はオープンとしたので、これがニューヨーク・タイムズに大きく報道されましたが、この事実も記者クラブ性のため国民に報道されていません。

外国人が質問できない

記者クラブ制の最大問題は、外国人記者が質問できないことであって、外国人のマスコミ記者を排除して、鎖国化していることです。

これは何を意味するか。政治家は、日本人だけの、顔見知りの大手マスコミ記者からの質問に答えるという日常の継続で、いわば日本人同士の身内会見であるので、異質で利害が異なる外国の立場からの、厳しい質問を体験できないということになります。

日本人だけの質疑の意味

この結果の意味するところはお分かりになると思いますが、外国(人)と接しないままに、日本人同士の論理で諸問題が記者会見で討議されるので「世界から日本を見る」という視点の訓練がなされないままに、政府の要人になっていくことになります。

日本の国際競争力は経済だけでなく、政治も国際競争力が問われているのですが、さすがに今を遡ること140年前の明治新政府は分かっていました。

明治4年11月12日(1871年12月23日)から明治6年(1873年)9月13日まで、アメリカとヨーロッパ諸国に派遣されたのが岩倉使節団です。岩倉具視を正使とし、政府のトップや留学生を含む総勢107名で構成されて、鎖国体制から脱皮しよう、日本を世界から見よう、と意図された使節団であり、この成果は大きいものでした。使節団に参加していた大久保利通が征韓論を退けた後書き上げたのが「立憲政体に関する意見書」で、政体取調掛に任命された伊藤博文に手渡しました。

この中で大久保は「今までは国力というものを軍事力とそれを支えている軍事技術にあると思っていたが、それだけでなく様々な要因が国力を支えている」と書き述べています。

正に、ドイツのビスマルクを始めとする世界の政治家たちとの出会うことによって、国力の基盤が軍事・政治力を含めた多くの要因が複層的に重なるところの充実にあるということを理解し、その後の日本国を創り上げていったのです。

指摘されている記者クラブの問題点

 ここで記者クラブについて一般的に指摘されているネット内容を紹介します。

1.メディアが政府の政策を代弁し、政府の広報となっている。

2.警察及び検察が自らの捜査に有利な方向に情報操作を行い、メディアも 調査報道に消極的なため、冤罪を生み易い(例:松本サリン事件、足利事件)。

3.NHKの報道部に在籍していたこともある池田信夫氏によると、警察記者クラブに多数の記者を常駐させることが日本の報道を犯罪報道中心にしているのではないかという。

4.フリージャーナリストの魚住昭氏は「官庁の集めた二次、三次情報をいかに早く取るかが仕事の7、8割を占めてしまうと、実際に世の中で起きていることを察知する感覚が鈍る。役人の論理が知らず知らず自分の中に入り込み『統治される側からの発想』がしにくくなる。自分はそうではないと思っていたが、フリーとなって5年、徐々に実感するようになった」と述べている。

5.衆議院議員の河野太郎氏は(日本では)記者が政治家から食事をご馳走になるのは当たり前、政治家が外遊する際には同じホテルに泊まり「政治家と記者はよいお友達」になることがメディアでは「良い記者」とされている現状を指摘している。

6.ニューヨーク・タイムズ東京支局長のファクラー氏は、「記者クラブは官僚機構と一体となり、その意向を無批判に伝え、国民をコントロールする役割を担ってきた。記者クラブと権力との馴れ合いが生まれており、その最大の被害者は日本の民主主義と日本国民である。」と述べている。

7.主要メディアが報じる捜査情報について、「検察が記者クラブを通じておこなう『リーク』に依存している」と指摘されることがある。
また、検察側は自己に不都合と考えられる報道をおこなった加盟報道機関に対しては検察関連施設への「出入り禁止」措置を取ることがある。

8.西松建設事件に際しては、一部の加盟報道機関が西松建設から献金を受け取った政治家の1人である二階俊博氏の件についての記事を掲載したことに対し、取材拒否および東京地方検察庁への3週間の出入り禁止措置を取った。この一件以後、加盟報道機関は検察および自民党に有利な報道をおこなうようになったといわれる。また、検察は記者クラブに加盟していない報道機関による取材を拒否している。

事実なのか確認

これが事実かどうか。知人の主要新聞社の解説委員に、以下の二つを質問し確認をしてみました。

1.主要メディアが報じる捜査情報は「検察が記者クラブを通じておこなう『リーク』に依存している」のか

2.検察幹部から「書き方のアドバイス」を指示されるような場合があるのか

回答は「よく知っていますねぇ」でした。

世界から日本を見るというセオリーが重要

政治家の国際外交力の欠如が、今回の尖閣海域問題の日本政府対応に現れたと認識し、その背景に世界から問題指摘されている「記者クラブ」制が要因として存在すると理解します。

政治家もマスコミも「世界から日本を見る」というセオリーを貫かないと尖閣海域問題の第二、第三が違う局面で発生すると推測致します。以上。

投稿者 Master : 2010年10月18日 10:49

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