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2010年07月06日

日本の実態は自らが調べる事

YAMAMOTO・レター
環境×文化×経済 山本紀久雄
2010年7月5日 日本の実態は自らが調べる事

参院選挙

参院選の候補者が激しく動き回っています。7月2日、東京ドームの巨人対阪神戦に行きましたが、JR水道橋駅出口には、中畑清、江本孟紀、西村修というスポーツ関係の候補者が街頭演説を競い合っていました。

また、山手線の中では、隣りに座った80歳の女性から小泉進次郎の顔写真が写った団扇をもらいました。ご本人は巣鴨のとげぬき地蔵にお参りに行き、そこでたくさんもらってきたからと、こちらに渡してくれたのです。さらに、自宅にも各所から電話がかかってきます。もう10年以上も年賀状も含め何も連絡のなかった元部下の女性、昔住んでいた所の真向かいの人、故郷の親戚から、それぞれ最初に無駄話をして最後に選挙の話になり、誰だれを頼むというストーリーは変わりません。

議席数

日経新聞の参院選情勢6月26日では、民主党は「改選54」を上回る勢い、自民党は「40台うかがう」というものでした。
政治学者の福岡政行氏から6月23日にお聞きしたものは「民主党は50議席に届かない」というもので、その理由として次の五つを挙げていました。①一人区は過疎地域が多く民主党不利、②統一地方選挙の年は保守層が自民党へ、③地方の景気が低迷、地方票が入らない、④消費税アップ発言が問題、⑤前回衆院選のマニフェストがでたらめ。
みんなの党幹事長の江田憲司氏からも、6月23日にお聞きしましたが「民主党の過半数はなく、参院選後は大混乱となり、政界再編成となる際に、小沢一郎は必ず自民党から同調者を募り民主党を離れる」というものでした。結果はどうなるかですが、それに我々が一票として参加している事をしっかり認識したいと思います。

公務員にボーナス支給

6月30日に国と地方の公務員に夏のボーナスが支給されました。
総務省によると管理職を除く一般行政職の国家公務員平均支給額は57万円との事で、平均年齢は35.5歳、昨夏より約4000円0.7%増という事でした。
この金額を聞いてどう感じるか。それは人それぞれの立場で異なるでしょうが、随分民間実態とかけ離れた支給額と感じる人は多いのではないでしょうか。日本経済はこのところ少し良くなりつつあるものの、一般企業は苦しい経営を余議されています。ですから、ボーナスはそれほど増えていない、減額されたままというのが実態でしょう。

一般企業のボーナス支給額

公務員が高いと感じるのは、一般企業のボーナス支給額の実態を入手したからです。知り合いの会計事務所、ここは545社を顧問会社にしている大手事務所ですが、その社長が顧問会社のボーナス一人当たり支給額を一覧表にして提供してくれました。
それによると、平均額で平成21年夏季ボーナスは23万円、平成21年冬季ボーナスは25万円です。
11業種別に算出された表を見ますと、最も多いのが不動産業で50万円(平成21年冬季)で、少ないのは飲食業の7万円(同期間)です。
公務員ボーナスとは相当の支給差があることが分かります。では、どうして公務員がこれだけ高いのでしょうか。我々の税金から支払っているのに・・・。

ボーナスは業績評価

昔、故郷の母親から公務員は給料が安いから勤めるな、と言われた事を思い出しました。だが、今のボーナス支給額を見る限り、公務員の方が高いというのが実態です。また、民間企業のボーナスは業績による成果配分ですから、経営が順調な時は多く支給され、今のように苦しい時は少なくなります。これが当たり前です。経営が難しい時にも、景気の良い時と同じ支給額を維持すれば、企業そのものが経営危機に陥ります。
こんなことは子供でも分かる事ですから、日本経済の状況と財政赤字の実態を考えれば、民間の二倍にも及ぶボーナス支給は考えられない額です。
しかし、実際に6月30日に公務員全員に大きい額が支給されました。何故か。それはルールに従っており、正当だと認識されているからです。

人事院勧告

どうして多額のボーナスが公務員に支払いされるのか。それは簡単な理由です。人事院の勧告で行われるのです。
では、人事院勧告はどういう金額でなされたのでしょうか。それを人事院が発表しているサイトで見れば一目瞭然です。
人事院勧告の基になっている民間ボーナスは、何と平成21年の夏季で729,596円(事務・技術等従業員)となっています。
つまり、6月30日に公務員全員に支給された57万円より21%も低い額となっているのです。民間企業に勤務する人達より、公務員は低い金額を支給しているという事になっているので、正当なボーナス金額ということなのです。

算定の基礎はどこから持ってきたのか

問題は人事院が調査算定した企業の実態です。どういう企業を調査対象としたのか、そこが関心事です。実は、人事院の調査は「企業規模50人以上で、かつ、事業規模50人以上の民間事業所から層化無作為抽出した事業所を対象」に9747カ所を調べているのです。この企業数の中には従業員1000名以上のところが2731カ所含まれていて、当然に大企業ですから、給料もボーナスも高い水準になっていると推定できます。

しかし、日本全国の中で事業所は588万カ所(平成18年)あるわけで、ほんのわずかの対象しか調査せず、加えて、従業員1000名以上の大企業が28%を占める調査ですから、当然に上方シフト、つまり、支給額は高いところに調査結果が決まります。

実際に街中にたくさん存在する飲食店とか美容院のようなところを、もっと多く入れていくなら、この人事院勧告基礎データにはならないわけで、そうすれば公務員のボーナスはもっと少なくなります。
これは給料も同じ算定方法ですので、今や民間ベースより公務員の方が高いという実態になっているのです。

公務員人件費は35兆円

政治学者の福岡政行氏が出版した「公務員むだ論」に公務員人件費は35兆円とあります。出所は財務省の「日本の財政を考える(2007年5月)」であり、これに独立行政法人や公益法人、地方の第三セクターの人件費を加えると37~38兆円と述べています。
平成22年度末の税収は約36兆円ですから、国民全体で納める税金が全額公務員人件費に支出されているという結果になります。

この実態を調べてみて、日本の高コスト体質の本質は公務員の人件費にあることが分かりました。大変な国家運営をしてきた事になります。政治家の責任でしょう。

問題は国民であり調査方法にある

日本はいつの間にか財政赤字は世界一、公務員だけで国家を食いつぶしている、という実態になっているわけですが、どうしてこうなったのか。

様々な要因があると思いますが、人事院勧告に見られるように、日本国の実態を網羅しない調査結果で判断しているという大問題があります。それが人事院勧告の基礎データと街中の会計事務所によるデータとの格差です。一般の街中の企業給料は人事院調査の半分なのです。ですから、正しく妥当に調べれば公務員人件費は当然に下がる仕組みになっているのです。調べていないのではなく、調べる対象が間違っているのです。

ということは、日々マスコミで報道される経済実態も、集めやすい大企業中心データから構成・編集された内容になっている事を示しています。

つまり、我々は大企業が提供するデータ中心で編集された記事、それを社会の事実として受け止めている、という大きな問題点をもっていることを改めて考える必要があります。

ですから、社会の実態を把握したいならば、マスコミデータに加えて、現場で調べたものを加えて判断する、という習慣を身につけたいものです。参議院選挙が近づいた機会に、もう一度我々の判断基準について振り返ってみることが大事ではないでしょうか。以上。

投稿者 Master : 2010年07月06日 05:23

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