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2010年04月27日

2010年4月例会報告

経営ゼミナール4月例会報告
『日本の温泉、世界ブランド化への道筋』
企画コンサルタントフローランタン代表 柳楽桜子氏

4月の経営ゼミナールは、フランス人ジャーナリスト、リオネル・クローゾン氏をお迎えしての講演を予定しておりましたが、アイスランド火山噴火の影響で来日が不可能となり、急遽、通訳兼コーディネーターの柳楽桜子(なぎら さくらこ)氏に、クローゾン氏が講演する予定であった内容をご講演いただきました。
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柳楽桜子氏は、通訳も含めた日仏間のコーディネートからコンサルティングまでを幅広く手がけられている人物です。伊豆とのご関係も深く、河津町との国際プロジェクト「河津バガテル公園」設立の全コーディネートを行っておられます。
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柳楽 桜子氏

柳楽氏は、事前にパリでクローゾン氏と今回の講演内容の打ち合わせを行っておられました。大変幸運なことでした。柳楽氏を通じてクローゾン氏の温泉に対する思いを伺うことができ、同時に柳楽氏の日仏間コンサルティングのご経験から、温泉地に欧米人が訪れるにはどうすべきかをご教示いただきました。
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クローゾン氏の温泉との出会いは1982年だそうです。仕事を終え大分県・湯布院を訪れたクローゾン氏は、すぐに温泉の持つ魅力に惹かれたそうです。それは、温泉地の風景、日本の美しい風景と日本旅館の調和、周辺の情緒ある田舎道の心地よさなどでした。さらにクローゾン氏に強烈な印象を与えたのは、温泉に入るということ、そのものでした。40℃前後のお湯に浸かるというのは、欧米の習慣にはないのです。初めてでありながらとても心地よい経験に魅せられ、以来クローゾン氏は来日のたびに各地の温泉を巡り歩いておられるそうです。
日本は全国どこに行っても温泉がある。これは素晴らしいことだ。クローゾン氏はこう語っておられるそうです。そして、温泉(=源泉)を中心に町(=温泉地)が形成されていることも、外国にはないとても特殊な成り立ちであるのだそうです。
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これほど絶賛されている日本の魅力とは、ひと言でいうとどういうことなのでしょうか。
それは「異文化」である、ということなのです。
日本の温泉は、欧米にない文化であり、習慣なのです。それが日本を訪れる外国人にとっての「魅力」なのです。温泉は、その異文化を同時にいくつも体験できる、欧米人にとってとても素晴らしいところなのです。美しい景色、自然に溶け込む宿の佇まい。続いて食事、美しくて美味しい和食に感激。そして、人。女将のおもてなしと、何といっても着物姿。これほどの日本の伝統美を同時に感じられるところは温泉しかないのです。
このような素晴らしい温泉が日本の各地にあることを、欧米人は知らないのです。温泉は日本を代表する文化であることをもっともっと欧米人に知らせてほしい、このことをクローゾン氏は強調されている、と柳楽氏は語りました。
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現在、フランスは日本ブームです。パリ在住の柳楽氏はそのことを肌で感じておられます。その火付け役となっているのは日本のアニメーションであり、それを牽引しているのは10〜20代の若者です。彼ら熱狂的な日本ファンの若者が成人し社会人となったら、きっとバカンスで日本を訪れるようになるでしょう。彼らは将来の貴重な来日予定者であり、将来の温泉ファン候補であるのです。

欧米人が日本を訪れるとき、必要なことは何か。
欧米人に合わせて設備を整えることではありません。そのことはむしろ温泉の価値、文化を自らの手で壊すことを意味します。そのままでいいのです。そのままの姿が「異文化」であり、欧米人はそこに大いなる魅力を見出すのです。
では、何が必要か。
それは、温泉の魅力を知らせること、すなわち、温泉ガイドブックを作ることです。
温泉とは何か、温泉の入り方、予算に応じて楽しめる温泉あれこれなど、それらがひと目で分かるガイドブックが存在すること、このことが最も重要なことであるのです。

日本には、数々の素晴らしい伝統文化があり、日本を訪れた欧米人は日本の魅力に惚れ込みます。しかし、それらは残念ながらほとんど知られていません。それをいかに知らせていくかが、今後の日本の観光大国化への大きな鍵になることは間違いありません。経営ゼミナールでは、日本の観光大国化による経済活性化のために、今後も研究、講演を続けていきたいと思います。

なお、クローゾン氏は今年の9月に来日いただくことを予定しています。是非ともご期待ください。

(事務局 田中達也・記)

投稿者 lefthand : 2010年04月27日 18:02

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