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2010年03月23日

2010年3月20日 世界から日本の姿を見る

YAMAMOTO・レター
環境×文化×経済 山本紀久雄
2010年3月20日 世界から日本の姿を見る

真似できない

パリのカフェ Laduree ラデュレはマカロンが有名で、パリ市内に三店ありますが、その中のシャンゼリゼ大通り店に、フランス人ジャーナリストのリオネル・クローゾン氏と打ち合わせのために入りました。

入ったところの売り場に大勢の客が並んでいる奥、そこは特別室的なフロアとなっていて、そこの椅子に座った瞬間、これは素晴らしいと、思わず声が出て、すぐにフロア内全体写真を撮りました。だが、仮にこの写真を基に同じようなインテリアを造ろうとしても、日本人には無理だろうと思います。持っているセンスが違うのです。
戻ってすぐに、丸の内仲通りに行き、昨年9月オープンした三菱一号館と、丸の内パークビル中の中庭に座った瞬間、これは素晴らしいと、思わず声に出しました。明治時代の雰囲気と現代的な感覚が混じりあって、さすがに三菱地所だと唸り、このような雰囲気は外国人では設計できないだろうと思いました。このようなオリジナルのある日本センスは、外国人が真似をできません。

円高と人件費の高さ

このところ円高が進んでいます。対ドルレートは2008年4月101円で、2009年11月には84円、2010年3月16日現在で90円です。対ユーロレートは2010年1月133円、2月からは120円台で、3月16日現在123円です。知人の輸出企業社長は、1円の変化が業績に鋭く影響しますので、毎朝真っ先に見るのは為替相場欄です。
ところで、日経新聞(2010.2.26)に、日系企業の現地事務系課長職の年収が発表されていました。それによると韓国は4.4万ドル、台湾は3.0万ドル、中国は1.5万ドル、ベトナムは0.9万ドルとなっています。
これを1ドル90円で換算しますと、韓国の年収は396万円、台湾は270万円、 中国は139万円、ベトナムは僅か81万円の年収となります。
この年収を日本人と比較するため、国税庁データ(2008年)を見てみました。一応、アジアの日系企業事務系課長職ですから、それなりの年齢であろうと、いくつかの年齢層の日本人男性年収を抽出し、韓国進出日系企業年収と比較してみました。
日本人の30~34歳年収は453万円で、これは対韓国比114%、35~39歳は530万円で138%、40~44歳617万円156%、45~49歳663万円167%、50~54歳670万円169%というように、日本人平均年収の方が韓国より各世代とも上回っています。

韓国のUAE原発落札

日本人の年収で、最も高い業種は電気・ガス・熱供給・水道業の675 万円、次いで金融業,保険業の649 万円です。低い業種は宿泊業・飲食サービス業で年収250万円です。
この金額は全年齢の平均ですから、アジアに進出している同レベルの課長職と比較すれば、前項で比べて見た年収格差はさらに開くと考えるのが妥当です。
この年収差が明確にあらわれた大事件が昨年末に発生しました。それは韓国の「UAE(アラブ首長国連邦)原発落札」です。受注額が韓国400億ドル、対するフランスは700億ドル、日米連合は900億ドルですから、勝負にならず韓国が国際入札の勝者となりました。UAEは価格のみ優先したのでなく、その後のメンテナンス力も考慮したという事らしいのですが、そうならば増して価格の安さが目立ちます。安い上にサービスが優れているとUAEは理解したのでしょう。
これが台湾や中国・ベトナムだったらもっと価格差は広がっているはずです。韓国の現代製自動車が海外でシェアを伸ばしているのは、この価格差です。
アジアには5001ドル~3.5万ドルの中間ミドル層人口が8億8000万人いると推測され、これらの需要を取り込むには、価格戦略が最優先となりますが、これが果たして日本企業にとって可能か、という素朴な疑問がアジア各国との年収比較で浮かんできます。

日本は高付加価値商品となる

円高による食糧と原材料価格のダウン、加えて居酒屋メニューに代表される人件費の低額化が進み、これらによってコモディティー品の価格ダウンが続き、それらが日本人に歓迎されている現実では、まだまだデフレは長引くであろうし、これが通常の経済実態だと理解した方が適切です。
また、韓国原発落札価格との極端な差は、アジア諸国と人件費の差が、まだまだあり過ぎるということを示している、このように理解すれば、この面からも日本のデフレは一層強制されていくでしょう。
仮に、このアジアとの競争を技術力で補うとしたら、さらなる技術力を付加した高付加価値商品にならざるを得ないのですが、そうなるとこの分野の需要層人口は限られてくることになります。勿論、アジアの中間層を狙った商品を、新たな技術と発想の転換で、低価格で提供していくことは不可欠条件ですが、追いついてきた韓国、台湾、香港の技術力との差を、さらにつけるには相当の努力が必要で、かなり苦しいと思います。
だが、考え方のポイントを変えれば、韓国、台湾、香港にはなく、彼らに真似できない優位条件が日本には多く存在し、それは地方に多くあります事を再認識したいと思います。

価格競争ではない日本の優位性を活かす

パリからロンドンにBAで向かいました。ふと機内誌を手に取りますと、日本観光PRのページに眼が行き、そこに「Historic Artisan Town of TAKAYAMA」とあり、岐阜県高山市が東京・京都・沖縄と並んで日本を代表する扱いを受けています。
この事を、日本に戻って多くの方に伝えますと「高山がそのように高く評価されているのがわからない。他にも素晴らしいところがある。例えば、北海道だ」と発言されます。
日本人の感覚からはその通りなのですが、ミシュランのグリーンガイドでも、アシェット社のブルーガイドでも北海道の評価は割合低く、高山市はいずれも高い評価を受けているのです。日本人とは評価の基準が異なっているのです。
では、この評価基準を理論的に説明できるか、これは難しく、結局、欧米人の主観的判断で高山を認めているので、彼らと日本人は基準が異なる、ということしか言えません。

白壁荘での研究会開催

そこで、パリのカフェ Laduree ラデュレで、ミシュラン社「グリーンガイド」とアシェット社「ブルーガイド」両ガイド編集に携わる、フランス人ジャーナリスト、リオネル・クローゾン氏と会い、前述の疑問を問うとリオネル氏の回答は明快です。
「日本人は間違っている。フランスの魅力は田舎にあり、日本の魅力も田舎にある。日本人が認識していない部分を欧米人は評価している。そのことを日本人は知らない。そのところをフランスは上手にブランド化したからこそ、世界で断トツの観光客を受け入れているのだ」と。
日本の田舎が素晴らしいという事は、他の多くの欧米人からも直接聞いています。しかし、日本の田舎の人達は全くそう思っていませんから、観光ブランド化しようなぞという発想が微塵もありません。これは新たな技術で商品を作るという課題とは異なり、人件費が高い安いという問題とも異なるわけで、発想の次元の問題であり、考え方の問題です。
日本人の弱さは、考え方の基準をひとつしか持たず、そのひとつで世界全体を判断しようとする傾向が強いわけですが、欧米人の立場に立つことで、別の基準を持つようにすることが重要で、それをしないと日本の魅力を見つけられません。つまり、欧米人の立場から考えるということ、これが人口減問題対策であり、日本経済活性化に結びつく鍵です。
そこで、2010年4月23日(金)に伊豆天城湯ヶ島温泉・白壁荘にリオネル氏を迎え、経営ゼミナール主催で研究会を開催することにいたしました。
『日本の温泉、世界ブランド化への道筋』
湯ヶ島温泉は「グリーンガイド」「ブルーガイド」に全く掲載されていなく、当然ながら白壁荘も紹介されていません。しかし、リオネル氏は高い関心を示しました。何故に湯ヶ島温泉と白壁荘を評価したのか。
それは研究会でリオネル氏が語りますが「日本には世界にない素晴らしい温泉地が多く、世界の人たちが真似できない。これを世界中に、特に、欧米人に紹介することだ」と熱く語る日本の魅力再発見ロマン企画に、皆さま、ご参加されますことをお勧めします。以上。

【2010年4月のプログラム】

4月09日(金)16:00 渋谷山本時流塾(会場)東邦地形社ビル会議室
4月21日(水)18:30 山岡鉄舟研究会(会場)上野・東京文化会館

4月23日(金)15:00〜 経営ゼミナール 特別例会
『日本の温泉、世界ブランド化への道筋』
 於:伊豆天城湯ヶ島温泉・白壁荘

投稿者 lefthand : 2010年03月23日 08:40

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