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2009年12月07日

2009年12月5日 デフレ経済から脱却できるか

YAMAMOTO・レター
環境×文化×経済 山本紀久雄
2009年12月5日 デフレ経済から脱却できるか

ミシュラン日本観光ガイド編集者と会う

11月17日からのパリ出張は様々な人と会いました。まず、世界で著名な香水ボトル瓶デザイナーの女性、この人物とは9月にも会いましたが、彼女の業界デビュー出世作品が、友人と接点があったことがわかり、なるほど、世の中はどこかでつながっているなぁと、改めて感じた次第です。

次に、以前から考え続けている日本の観光大国化への道、それは多くの欧米人が日本を訪れるための方策検討ですが、その有効な手段としてミシュラン社・グリーンガイド、アシェット社・ブルーガイドをうまく活用できないかとの視点から、パリで両ガイドの編集に携わったジャーナリスト男性と会いました。
シャンゼリゼ大通りのお菓子屋の奥、そこで新しい展開を始めたアールヌーボースタイルのカフェで、ディスカッションしましたが、結果的に彼は日本ファンですから、当方が提案した内容について「それはグッドアイディアだ」と、かえってこちらに今後の協力を求められる素晴らしい出会いでした。この内容については、12月20日(日)・21日(月)に開催される経営ゼミナール伊豆湯ヶ島温泉「白壁荘」特別例会で、皆さんにご検討いただくことになっています。ご参加ご希望の方は「経営ゼミナール」のサイトからお願いいたします。観光客を増やし内需拡大への一方策と位置付けています。

ボージョレ・ヌーボー

シャンゼリゼ大通りからホテルに戻って、近くのスーパーに行きましたら、入口を入ってすぐのところで、粋なハットの男性が小さいカップを差し出します。
そうか、今日は第三木曜日の11月19日のボージョレ・ヌーボー解禁日かと思い、注がれるままに三種3杯試飲しました。
たまにはヌーヴォー(新酒)仕様で軽い仕上がり赤ワインもよいだろうし、今年のワインは、日照時間が多く、50年に1度の出来と報道されているので、ボジョレー・ヴィラージュ、ブルゴーニュ地方ボージョレー地区とボトルに貼られているものを一本買いました。しかし、実は、価格に釣られて買ったのです。
一本3.9ユーロ、4.9ユーロ、それと5.9ユーロの三種類、5.9ユーロ物を買いましたが、1ユーロ=138円換算で約800円です。安いと感じ、大型バックに重梱包して大事に持ち帰りました。
ところが、日本に戻って新聞を整理していると、スーパーイオンで一本750円、ビックカメラでは930円で発売とあるではありませんか。
パリのスーパー価格が安いと思って持ち帰ったら、輸入運賃を掛けた日本の方が安値とは、この事実に驚きました。ただし、実際にイオンのボージョレ・ヌーボーを飲んでいませんので、味わいは分かりませんが、それでもサントリーやメルシャンは2,000円以上、通販サイトで安い順序から価格を検索してみましたら、最低価格のものが1,785円ですから、イオンは安すぎでしょう。

政府がデフレ宣言

11月20日の政府月例報告で、日本経済は物価が持続的に下落する「緩やかなデフレ状態にある」と正式に表明しました。
そのデフレと判断した理由として
(1)、消費者物価指数(CPI)の下落が続いている
(2)、名目成長率が2四半期連続で実質を下回った
(3)、需要から潜在的な供給力を差し引いた「需給ギャップ」のマイナスが拡大し、年
40兆円規模の大幅な需要不足に陥っている
と述べています。今まで、政府は2001年3月に戦後初めて「デフレ」と認定しましたが、2002年以降に景気回復局面に入り、2006年7月の月例報告から「デフレ」の文言を削除した経緯があります。だが、昨年のリーマン・ショック後、日本経済は深刻な需要不足に陥り、CPI下落が今年8月に最大の2.4%になるなど物価の下落が目立ち、今回の表明となりました。実態から判断すれば当然と尤もな表明でしょう。

ユニクロの好調

ご存じのとおりユニクロは快調で、業界独り勝ちという勢いです。パリにも10月出店しました。オペラ座の隣のデパートが並び立つ繁華街です。
一か月と少し経過してどうなのか、11月18日午後2時頃に店内に入ってみると、明るくリズム感があり、活気に溢れ、大勢の客で、レジ待ちの人もたくさんいます。話題のヒートテックを大きく訴求していますが、いくつか手に取ってみた感じで、価格は高いと感じました。ジーンズは39.90ユーロ(約5,500円)、カシミヤのセーターは69.90ユーロ(約9,600円)ですから、これは円高を見込んで1ユーロ100円感覚で値段設定しているのではないかとも思いました。
ユニクロと他店と比較してみようと、翌日19日は周りに展開しているライバル店にも入ってみました。訪れた12時過ぎ、ユニクロは一階レジが10台で客13人、GAPはレジ4台で客2人、H&Mは1階が8台で3人、地下が7台で12人、ここは活気がありましたが、ZARAは3台で5人という状況でした。
一日だけでは状況が分かりませんので、20日も回ってみました。やはり12時過ぎ、ZARAは客3人、H&Mは1階に12人、地下に1人、ユニクロは1階3人、地下7人、GAPは1人。こうみてくるとH&Mが強く、次にユニクロかなという感です。H&Mはファッション性、ユニクロはしっかりした品質とテクノロジー性、どちらが世界市場で勝利を得るか、それが見ものですが、これから海外に出店数を無限に伸ばせるユニクロの未来は明るいと感じたパリでした。

ユニクロの成功は時代感覚への読み

10月開催された第11回日経フォーラム「世界経営者会議」で、ユニクロの柳井正会長兼社長は次のように発言しました。
「世の中には価格が高くて良い服と、安くて悪い服しかないという常識を破り、安くて良い服を作ろうと思った。そのために企画、生産、物流、販売をすべて自社でコントロールし、お客様に満足してもらえる服をと考えてやってきた。我々ほどまじめに服を作り、販売しているところはないと自負している」
この言葉、ユニクロ独り勝ちの実態からみれば、その通りとうなずかざるを得ませんが、もっと背景的で根本的な成功要因は「時流に適合した」ということでしょう。
つまり、デフレ時代という時流を先取りしたのです。創業は60年前の駅前商店、その後1984年に広島にユニクロ1号店を開業し、今日に至っていますが、その間、柳井会長は時代を分析し、今訪れている激しいデフレ時代が来るだろうと予測し、今日の業態をつくりあげたのでしょう。見事な時代の読みと感服します。

デフレは簡単には解決しない

完全なデフレ状態では、物価が下がり続けますから、企業の売上高は増えず、結果として賃金も増えなく、景気は好転しないことになります。従って名目GDP、これは物価動向に反映し、景気の実感により近いとされますが、その金額は479兆円となってしまい、これは1992年並みの水準になりました。
ということは、日本経済が約20年間に渡って成長していない事実を証明しているわけで、この実態を考えれば今の経済実体を、とても一時的な局面とは考えられません。
デフレは貨幣的現象というのが、多くの経済学者が主張する見解であり、伝統的な経済理論によって、現在のデフレ実態を解決しようとする立場から、日銀に対し超金利政策の維持や、更なる量的金融緩和の実施を求める声と、それに対応する日銀という姿が今の日本経済です。しかし、この日銀の政策を超える、もっと基本的・根本的な時代潮流としての何か大きな「歴史の峠」的な現象が背後にあって、それが轟音となって流れ、その表出現象の象徴がデフレ実態として表現化されていると思われるのです。
その背後に存在するであろう「歴史の峠」的な現象は、経済学者ではない歴史家・哲学者・作家などが主張する「時代は大転換期に位置している」というものではないかと思いますが、この指摘を真剣に考え論じ、時代の動向分析を本格的に行い、長期スパンでの未来洞察を行わないと、日本はデフレ実態からは脱却できないと考えます。以上。

【12月のプログラム】

12月11日(金)16:00 渋谷山本時流塾(会場)東邦地形社ビル会議室
12月14日(水)18:30 山岡鉄舟研究会(会場)上野・東京文化会館
12月20日(日)18:00 経営ゼミナール 伊豆ミシュラン戦略研究会

投稿者 lefthand : 2009年12月07日 09:49

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