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2009年09月06日

2009年9月5日 トレンドで考える・・・その一

YAMAMOTO・レター
環境×文化×経済 山本紀久雄
2009年9月5日 トレンドで考える・・・その一

今回は8月30日の衆院選について考えてみたいと思います。

衆院選事前予測

今回の衆院選事前情報調査、主要新聞は以下でした。

◇読売(8/21付)「民主300議席超す勢い」「自民激減 公明は苦戦」
◇日経(8/21付)「民主 圧勝の勢い」「300議席超が当選圏」「自民、半減以下も」
◇毎日(8/22付)「民主320議席超す勢い」「自民100議席割れも」
◇産経(8/25付)「政権交代は確実」「民主、300議席確保へ」

加えて、週刊現代は7月21日発売号で「民主332議席、自民78議席」、夕刊フジも8月28日「自民党91議席、民主党325議席」と圧倒的な民主党の勝利予測でした。
そこで、日刊ゲンダイは直前の8月28日、いわゆる「バランス感覚」とも「ゆり戻し」ともいえるものを狙った、与党を利する目的とも思える「民主圧勝の選挙予想は謀略なのか」を掲載しましたが、結果は見事に予測通りでした。

花岡信昭氏の事前見解

圧倒的な民主勝利予測の妥当性を専門家に確認したく、産経新聞出身の政治ジャーナリスト花岡信昭氏に、8月20日にお会いし、見解をお聞きした内容は以下の通りでした。
「メディアの事前予測と選挙結果の関係を示すものとして、アナウンスメント効果があり、これはバンドワゴン効果とアンダードッグ効果の二種類ある。
バンドワゴンとは楽隊の先頭に位置する車のことで、メディア予測をそのまま受け入れ、勝ち馬に乗る心理が働いて、予測をさらに加速させる現象をいう。
一方、アンダードッグは『負け犬』だ。これは判官びいきが働き、あるいは、そういう予測なら自分が選挙に行かなくてもいいなと思わせる現象が生じる。その場合はメディア予測と逆の結果となる。
政治記者として選挙報道にたずさわってきた経験からいえば、かつては後者が圧倒的に多かったように思う。いまだから言えるが、選挙区の情勢分析を書く場合など、知己の政治家や秘書らから『当選確実のようには書かないでほしい。あと一歩、横一線、程度だとありがたい』などと『陳情』されたものだ。
このごろの投票行動は、バンドワゴン効果が生ずることのほうが多いように感じ、一定の予測が出ると、その流れに飛び込んで一緒に楽しもうといった心理が有権者に作用する方が強いと感じる。今回のケースだと、民主300という劇的な予測を受けて、その流れを確実にさせようという投票者が増えることになろう」花岡氏発言通りとなりました。

衆院選結果

選挙結果は民主党308議席、自民党119議席で、民主党の大勝で終わり、オバマ大統領から祝意の電話が鳩山党首に入りました。
ここで不思議なのは、大敗した自民党なのに、大臣は誰一人として落選しなかったことです。古い人が生き残ったということ、これからの自民党の先を暗示しているように感じますが、9月1日閣議後の各大臣の反省発言は以下でした。

◇舛添・・・お友達であるという観点が優先された内閣は緊張感が欠けた。
◇石破・・・民主党の勝利というより自民党の敗北だ。
◇森・・・・相手候補でなくて空気のようなものと格闘していた。
◇与謝野・・小泉内閣が終わって以降、人気先行型で自民党総裁を選んできた。
      いろんな面で国民の失望感を買った。
◇野田・・・誰が総裁になっても首相になれない。
      目先のことより歴史的惨敗を受け止めて、前向きな議論をしなければならない。

識者の見解

識者の見解を少し見てみたいと思います。

(田中愛治 早稲田大学教授)
・国民の期待は日本経済を良くすることだが、自民党は内閣支持率をいかに高くすることに腐心し、それを有権者に見透かされた
・選挙で勝てそうな選挙日程をうかがってきた首相の姿勢を国民は敏感に批判した
・小泉首相の大勝を小泉個人の人気と判断し、表面的な個人人気で選挙を勝とうとしたことが根本的な誤り

(御厨貴 東京大学教授)
・ここ数年自民党トップの一年ごとの交代や、いつまでも解散しないという便宜主義に対する嫌悪感が国民にまん延した
・自民党は具体的に政策優先順位をつけるマニフェストに適合的でない政党だ
・自民党の再生は難しい。首相経験者4人が現役議員として残ったことと、今の大臣が全員当選したこと、これが党改革を難しくする

(青木昌彦 米スタンフォード大名誉教授)
・古い仕組みで活躍したプロの退場は時の流れだ
・今後は少子化、高齢化、家族構成の変化で若い人と女性の責任と負担が重くなる、そこにマニフェストで政策主張したのが民主党だ
・民主党には霞ヶ関を脱藩した極めて優秀な若手が少なからずいる
・古い仕組みの世襲政治では起こりえなかったことだ

日本の政治トレンド

日本の近代化は明治維新からです。その明治維新は1853年のペリー来航から15年経過した1868年に成立しました。この15年という期間、これが妙に気になって、鉄舟関係の講演会ではいつもお話しています。
というのも、満州事変が1931年、それから14年で終戦の1945年、ほぼ15年で日本は民主義国家に変身しました。この終戦から15年後の1960年には、池田内閣が発足し、日本は高度成長経済に入りました。
さらに、細川政権が誕生したのが1993年、それから16年後の今年、民主党鳩山政権となります。約15年です。これが日本の歴史から見られる長中期政治トレンドです。

自民党はトレンドを意識していたか

今回の民主党勝利もこの15年周期で生まれました。だが、自民党大臣の発言からは、「流れ・トレンド」についてあまり意識がないように感じます。目先の動きで判断していたように思います。これは経済評論家の陥りやすいポイントでもあります。
経済を論じる場合、必要不可欠条件はデータです。経済が相手ですから当然で、そのデータは四半期ごと、三カ月期間で発表されるGDPが基本になっていますので、この内容を分析し、一喜一憂し、様々な論点を展開します。また、毎日の株価にも大変敏感で、どちらかといえば点で物事を見ることが多いのですが、これは長中期トレンドを軽視することに通じやすいのです。

短期トレンドからは自民大敗は必然だった

今回の自民党大敗、直近の短期トレンドを検討するだけで、素人にも判断つきます。
まず、2007年7月の参院選はどうだったでしょうか。今から2年前、自民党の獲得議席数は37議席と、第15回参院選の1989年以来の歴史的大敗を喫し、1955年結党から初めて他党に参議院第一党の座を譲りました。また、公明党も神奈川県・埼玉県・愛知県の各選挙区で現職議員が落選、比例でも票が伸びず議席を減らしました。
今年に入って名古屋市長選、さいたま市長選、千葉市長選と連続して圧倒的大敗を喫し、最後は東京都議選での大敗、自民党は改選前48議席で第一党でしたが、38議席に留まり、民主党は改選前34議席から54議席へと大きく躍進し、都議会第一党となりました。
つまり、参院選からの「流れ・トレンド」は、自民党敗退という必然化を示していました。流れのまま、トレンドのままに議席が表面化したのです。何事も、その時のトレンドを見抜くことが大事です。つまり、時流をどう読み取るかで決まります。

では、トレンドから見る日本経済と、米国経済はどう推移するか。8月21日バーナンキFRB議長は「大恐慌以来の深刻な危機による景気後退はいま終局を迎えている」との見解を示しましたが、経済トレンドから見るとどうなるか。次号でお伝えします。以上。

【9月のプログラム】

9月 7日(月)18時経営ゼミナール例会(会場)皇居和田蔵門前銀行会館
9月10日(木)16時   渋谷山本時流塾(会場)東邦地形社ビル会議室
9月16日(水)18時30分 山岡鉄舟研究会(会場)上野・東京文化会館

投稿者 lefthand : 2009年09月06日 10:22

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