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2009年06月21日

2009年6月20日 生活が変わっていく

YAMAMOTO・レター
環境×文化×経済 山本紀久雄
2009年6月20日 生活が変わっていく

100年に一度

米国発で世界中に経済危機が広がった今回の金融危機、「100年に一度」とよく表現され、米国では「金融パールハーバー」という人も多くいるようですが、この言い方に米国金融界人の心象風景が出ています。

米国発金融危機なのですから、米国に問題の責任があるのに、他国から発して米国が迷惑しているという、責任転嫁の気持ちが表れています。今日まで、正式な場面で、米国人が金融危機で世界に迷惑をかけて申し訳ないという「お詫び」発言がなされたことがあるでしょうか。
昨年12月「米新政権と日米同盟の課題」シンポジウムに、米国政府関係者や著名大学教授が来日し講演とディスカッションを行いましたが、その席上で誰一人として「お詫び」発言はありませんでした。経済問題に触れても責任問題には論及しないのです。
また、今年の5月「米オバマ政権下の日米経済関係」と題して、在日米国商工会議所名誉会頭の講演を聞きましたが、経済危機の実態を分析し、巧みに解説しますが、その発生要因である米国の責任については何も触れませんでした。
大体、100年に一度という大げさな言い方は、世界共通の大問題なのだから、単に米国の問題ではなく、今さら責任云々なぞは関係ないという開き直りでしょう。

フードスタンプ

米国発の金融危機によって世界全体が大変な状況ですが、責任所在国である米国では、一段とひどい実態となっています。今や米国は世界最大の「経済大国」であり、一方、「貧困大国」になってしまいました。
その事例の一つが「フードスタンプ・プログラム」です。これは低所得者と無所得者が栄養のある食品を購入できるよう、食品購入時に割引できる電子カード、金券ともクーポン券とも言うべきものが支給されるシステムで、この利用者が3,400万人になっているのです。米国人の10人に一人は食べるものに事欠く貧困層になりました。
「フードスタンプ・プログラム」の説明書には「野菜・果物・脂肪分の低い肉をとり、運動を習慣化しなさい」と書かれていますが、実際にこのシステムを利用してこれらが実行されるのか疑問です。さらに、フードスタンプ支給家庭に高校生以下の子供がいると「無料一割引給食」の制度適用があります。これを利用して食べられるメニューはコスト削減から、栄養化が低く、高カロリーで安い、いわゆるジャンクフードといわれるものになります。その結果、肥満児童が多くなり、貧困が肥満をつくっているのです。

米国でバカ売れしている三品

オバマ大統領が住むホワイトハウス、その庭の芝生が最近は家庭菜園となり始めました。ミッシェル・オバマ夫人が、自身の娘やゲストに新鮮で健康的な野菜を提供しようと、ホワイトハウスに有機栽培の「家庭菜園」をつくることになり、南庭の一部の芝生を耕し、ほうれん草や豆類、ハーブなどを栽培しています。ホワイトハウスでの野菜作りは、第二次世界大戦中にエレノア・ルーズベルト夫人が「勝利菜園」を手掛けて以来のことです。この影響で米国では家庭菜園用の種子セット袋が爆発的に売れだしました。一袋30ドル程度ですが、このブームの背景には、普段食べている食品に対する安全性について、素朴な疑問があるからです。
次に売れだしたものは拳銃です。これはオバマ大統領が選挙期間中の公約の中で、銃規制を取り上げていたことから、銃愛好家の中で「駆け込み需要」が発生したことによるものですが、もうひとつ重要な背景に、経済が悪化し、失業者やホームレスが急増したことにより、犯罪の拡大が現実の問題となって、自らの安全を確保するためには、武装するのが一番だという心理が存在しているのです。
三品目は缶詰です。温暖化と気候変化で農産物の収穫が不安定となっていることから、米国政府機関が備蓄を始めたということで、一般人も備蓄を始めだし、それには缶詰が長期保存として最適なので、急に売れ出したのです。
 
備蓄二週間分リスト

世界保健機関(WHO)は6月11日、新型インフルエンザの警戒水準(フェーズ)を、広域流行を意味する現行の「5」から最高の「6」に引き上げ、世界的大流行(パンデミック)を宣言しました。インフルエンザの世界的大流行は、約100万人が死亡した1968年の「香港風邪」以来、41年ぶりです。
現在、日本は幸いにして小康状態を保っていますが、フェーズ「5」の時は日本国内が大騒ぎの真っ最中で、その5月1日、産経新聞が「備蓄食料品リスト」として家族四人で二週間分の内容を掲載しました。
かつて1918年(大正7年)、日本でもスペイン風邪で45万人もの人が亡くなりましたので、政府は慎重に対応しているのです。その対策の一つが備蓄です。
インフルエンザが蔓延すると、食料を運ぶドライバーが倒れ、結果的に輸送機関がストップしてしまうことから、補給が利かなくなる。また、その情報によって、スーパーの食料品売り場に人が殺到し、一気に売れてしまい、買えなかった人の間でパニックが発生する。その恐れから政府は家庭内の備蓄を勧めているのです。
さらに、インフルエンザ対策は海外旅行自粛、国内移動の制限、人混みを避ける、マスク着用、手洗いとうがいの徹底など、政府主導で行われていますが、これらの手段選択はWHOの判断結果を受けて講じているのです。
ということは、インフルエンザに関しては、事実上、世界中の国を統一して指示する機関、WHOの判断結果で我々の行動が決まっていくという社会になりました。

温暖化ガス中期目標

日本政府は2020年時点の温暖化ガス中期目標を、海外から購入する排出枠などを除いて「2005年対比15%削減」と発表しました。
米国の目標は05年対比15%減、EUは90年対比20%減と発表していますが、これら先進国が示した中期目標を積算しても、地球の温暖化を食い止めるとされる水準には不十分なことが明らかになっています。
ですから、12月コペンハーゲンで開催される国連気候変動枠組み条約締結国会議(COP15)の決定までには、困難な交渉が予測されますが、決定されるといずれも我々の生活に大きく影響してきます。
その理由は、今までは企業中心の温暖化ガス対策が中心でしたが、今回の目標が決定すると、省エネ余地が大きい「家庭部門」が主ターゲットなってきます。実は、07年時点で家庭の温暖化ガス排出量は、90年対比で40%も増えていて、その分「削りしろ」が大きく、家庭部門の負担が避けられないのです。結果的に各家庭のコスト増となるでしょう。いろいろ対策はありますが、主ターゲットは排出量が多い車です。新車の2台に1台をエコカーにする必要があるので、政府は経済的インセンティブを提供し始めたのです。ポスト京都議定書が我々の生活に関わっているのです。
 
次世代自動車

エコカーといえば、現時点で「低燃費」と「低コスト」を両立した供給可能な車はハイブリッド車しかありませんが、これにも次世代型がすでに登場しています。中国の新興自動車メーカーBYD、ここは携帯電話用電池メーカーですが、いち早く昨年12月にプラグインハイブリッド車の開発に成功したと発表し、本社のある深圳市政府に10台納入したと発表しました。ここがポイントで、次世代カーは新規参入が容易なのです。
また、三菱自動車は電気自動車i-MiEV(アイミーブ)を発売しました。電気自動車が一般に普及するためには、インフラ整備が前提条件で、まだまだ時間がかかりますが、普及したならば自動車業界の姿は一変します。
電気自動車は極端にいえば、モーターとバッテリーさえあれば走れるので、部品点数が大幅に減少し、開発コストも削減されます。このため新規参入が容易であり、かつ、部品数は少ないのですから、現在の部品メーカーの多くを必要としない社会、それは既存部品メーカーの廃業、失業者増という実態につながる可能性が高いのです。
 
100年に一度の金融問題、WHOのフェーズ宣言、ポスト京都議定書のCO2削減、外部環境の変化によって我々の生活が強制的に変えられていく時代になりました。
以上。

【7月のプログラム】

7月10日(金)16時   渋谷山本時流塾(会場)東邦地形社ビル会議室
7月17日(金)14時 温泉フォーラム研究会(会場)上野・東京文化会館
7月27日(月)18時経営ゼミナール例会(会場)皇居和田蔵門前銀行会館

7月19日(日)9時 山岡鉄舟研究会(特例)飛騨高山にて鉄舟法要研究会

投稿者 lefthand : 2009年06月21日 11:49

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