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2009年05月20日

2009年5月20日 情報力が国を拓く

YAMAMOTO・レター
環境×文化×経済 山本紀久雄
2009年5月20日 情報力が国を拓く

ミシュラン観光ガイドブック

今年の3月16日にフランスで、ミシュラン日本観光ガイドブックが初出版されたことは既にお伝えしました。また、この中で日本の温泉星付きは、たったの9か所しかなく、そのうち三つ星は1か所のみで、それは別府の共同風呂「ひょうたん温泉」であることもお伝えしました。

この結果について、各地で多くの方にお伝えしていますが、先日、世界と日本の温泉について最も詳しいと自負されている、日本の専門家とディスカッションになり、以下の反論を受けました。
「ミシュランの格付けはおかしい。フランスの世界遺産モンサンミッシェルに行って、素晴らしいステンドグラスがあると思ったらなかった。それと同じでひょうたん温泉なぞは大したことない。自分が温泉の格付けをつくり、上位から並べてみる」と。
モンサンミッシェルのステンドグラスという意味がよく分かりませんが、とにかく激しくミシュランの星付けを非難しました。しかし、このような反論は無意味です。
その理由は、ミシュランが持つブランド力です。世界中の人々がミシュランという格付け力を評価しているのですから、「ひょうたん温泉」の三つ星認定を、多くの人々は疑問を持たず受け入れるでしょう。
日本の温泉第一人者がいくら息巻いても、世界の人々はミシュラン格付けを認識します。

観光立国、世界遺産は脇役

脚本家の橋田寿賀子さんが次のように述べています。(日経新聞2009.5.11)
「海外から観光客を誘致するとなると、すぐ世界遺産に登録された有名観光地などの名を挙げます。でも、日本の世界遺産が外国人の人々にどれだけ魅力的に映るのかというと、少し疑問もあります。
日本の観光面での魅力はもう少し違うところにもあるのではないでしょうか。例えば、日本の原風景ともいえる里山などごく普通の景色、四季折々の表情豊かな自然、そして何よりも日本人のきめ細やかなもてなしなどです。
NHKスペシャル『映像詩 里山』を見ても、外国にない日本独特の繊細な風景です。また、飛騨高山の町並み、北海道や瀬戸内海の自然の景観を楽しんだり、東京の下町の旅館に喜んで泊まったりする人が増えていますよ。ごく普通の自然や市民の営みが、外国の方々の人気を集めているのです」

欧米人の多い街

岐阜県高山市はミシュランの三つ星で、外国人それも欧米人が多く訪れます。
今年の7月19日、この日は山岡鉄舟の命日ですので、鉄舟が少年時代を過ごした高山の宗猷寺、ここは両親の菩提寺で、ここで「山岡鉄舟法要兼記念講演」を行うことから、このところ何回か高山を訪問しています。
先日も、宗猷寺の本堂でご住職と打ち合わせしていますと、お賽銭箱の間から本堂内を覗く欧米人男女がたくさんいますし、境内を歩いているのは欧米人ばかりです。「今日は」と挨拶すると「コンニチワ」と愛想良く答えます。ご住職は「日本人は古い街並みのさんまち辺りで止まってしまい、ここ東山界隈には来ませんよ」と語ります。
夜は高山陣屋近く、高山祭の屋台置き場真ん前、百余年の歴史を持つ後援者のご自宅でご馳走になりました。このお宅の玄関は格子戸で身体を折り曲げないと入れない低さですが、中に入って行きますと、天井が次第に高くなって、階段を上がると、そこは飛騨建築の見事な奥座敷、鴨居・欄間・屏風に見とれていますと、座卓上に飛騨料理が並びだし、これがすべて手料理、それが結構な味わいで、加えて、食器が美術品のごとき飛騨陶器なのです。
この座敷で、こちらの奥様、それと高山郷土館の学芸員、市会議員、飛騨の里のガイドの方と、飛騨高山文化の薫り高き話題でひと時を過ごしたことで、ミシュラン三つ星格付けと自分の実感が一致し、高山に対するミシュラン評価については納得しました。

小浜市

翌日はオバマ大統領で話題となった、福井県小浜市に行きました。JR小浜駅前の観光案内所に入りますと、係の女性がとても親切に地図を広げて説明してくれます。この対応を見て、この街は、多分、感じがよいだろうと先入観をもちました。
ちょうど昼時でしたから、まず、魚センターに行き、入口の食道に入り、さば焼き定食を食べましたが、これが最高の味です。こんなに美味い理由を聞いてみようと、おしゃれな若いウェイトレスに尋ねますと、ちょっと待ってくださいと言いながら、調理場から魚センター理事長の名刺をもった人物を連れてきました。この店のご主人ですが、これまた親切に小浜の魚について解説してくれます。なるほどと思い、ついでにすぐ近くの漁業組合に行きますと、課長の名刺を持った人物が、小浜の魚について巧みに教えてくれます。
この町は親切だなぁと、次に市役所に行きました。フロアの表示板で観光課を探しますと「観光局準備室」とか書かれています。観光部門を昇格させようとしているのかと考えつつ、二階に上がり窓口の女性に尋ねますと、すぐに主査の名刺を持った若い男性が飛んできました。
この主査がまたもや親切、加えて、詳しいのです。観光担当ですから詳しいのは当然だと思いますが、その言動が当を得て勘所をつかんでいるのです。そこで、夕食はどこがよいだろうかと相談すると、こちらが宿泊するホテルを確認し、直ちに近くの飲食店の名前と大体の予算額を述べます。感心しました。
従いまして、主査が紹介してくれたところに行きましたが、推薦通りの料理と女将の接客に「なるほど」と納得し、こういう日本人の持つきめ細やかな感覚、つまり、昔ながらの親切で対応してくれる町が、ミシュランの星付けになればよいなぁと思った小浜でした。

丸の内再開発

5月の経営ゼミナール例会は、東京駅周辺120haにわたる丸の内再開発について、実際に実務を担当している推進責任者と設計を担当された方から、詳しく経緯と現状、今後の計画を伺いました。
多くの地権者が存在している中で、全体の合意形成までに持っていくのは大変なのですが、日毎に変化していく丸の内界隈を見ると、再開発はうまく進んでいると納得しました。
特に感心したのはネットワークという考え方を取り入れていることです。地上と地下を歩行者の歩きやすさという視点から通路を整備し直し、ビルごとの地下駐車場を4街区にまとめ直し利便性を上げ、高層ビルが道路と隣接する部分を低層化し街並みと一体化を図って圧迫感を排除し、皇居の豊かな緑と東京湾からの風を取り込んだ風の道づくりなど、今までの都市形成では弱点とされた「つなぎ」感覚を新しく取り入れていることです。
併せて、世界主要都市の再開発動向についても勉強し、丸の内の実態は世界でも優れていると再認識いたしました。その証明は、世界の主要都市から大勢見学者が訪れていることです。毎日のように歩いている丸の内界隈の変貌、完成までには相当の時間がかかるでしょうが、全体が見えたある時点で、ミシュランガイド星付きを期待したい開発です。

情報は双方向

孫子兵法第三篇謀攻に「知彼知己、百戦不殆」(敵情を知って味方の事情も知っていれば、百回戦っても負けない)があります。さすがに2,500年の風雪に耐え生き残っている世界の生き方指針と思いますし、この孫子に従って考えれば、冒頭の温泉専門家のようにミシュラン格付けに反論するのでなく、逆に高く関心を持ち、どのようなところを認めて「ひょうたん温泉」を三つ星にしたのか、という情報収集が大事になります。
日本は第二次世界大戦で情報戦争に負けました。アメリカに日本軍の暗号が解読されていて、それがミッドウェイ海戦の敗北、山本五十六司令長官の戦死につながって、最後までアメリカの暗号を解読できませんでした。「ヒトラーのスパイたち」(クリステル・ヨルゲンセン著)には、ドイツの敗戦は情報戦に要因があり、ドイツ情報部の特徴を一言で表現すれば「多くの活動、少ない情報」とあります。全く日本軍と同じです。
 いくら小浜が、丸の内が素晴らしくても、ミシュラン星付きにならないと世界へのデビューは不可です。知らざる「ひょうたん温泉」だけが、何故に3,000余か所の中から三つ星になったのか。その背景を冷静に探ることこそが、実は、日本を観光大国にする最適・最短の方策であり、ミシュランは「情報力が国を拓く」と教えてくれているのです。以上。

【6月のプログラム】

6月12日(金)16時   渋谷山本時流塾(会場)東邦地形社ビル会議室
6月15日(月)18時経営ゼミナール例会(会場)皇居和田蔵門前銀行会館

6月14日(日)13時 山岡鉄舟研究会(特別例会)靖国神社参拝と散策会

投稿者 lefthand : 2009年05月20日 07:25

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