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2009年04月27日

2009年4月例会報告

経営ゼミナール例会
2009年4月20日
『山梨県「増富の湯」で温泉を利用した健康増進プログラム実践の事例から経営の実態と時代の動きをつかむ日帰り見学会』

去る4月20日(月)、第350回例会として、「増富の湯」に出かけましたので、報告いたします。
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今回は、山梨県北杜市「増富の湯」にて源泉かけ流しのラジウム温泉を実際に体験し、健康に配慮した昼食をいただきながらディスカッションを行いました。

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午前10時。JR中央本線・韮崎駅に集合した参加者は、一路お迎えの車で増富ラジウム温泉郷へ。
韮崎駅へは新宿から特急あずさで約1時間30分。ここから約40分ほど山の中に入ると、増富ラジウム温泉郷があります。

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JR韮崎駅(左)/駅前のサッカー像(右・韮崎は中田英寿選手の出身地)

当日は新緑の季節。山々が若い力にみなぎり、そのパワーを受けているような感じがし、その風を受けているだけで何か力を授かるような心持ちがしました。

「増富の湯」は、増富ラジウム温泉郷の中にある日帰り温浴施設です。
周りには9軒の温泉旅館がひっそりと点在し、鳥のさえずりがBGMという自然に囲まれた山間の温泉地です。

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増富ラジウム温泉郷

増富の湯に到着し、セミナー室でひと休みした後、総支配人の小山芳久氏より、増富の湯の説明と、同館が実施されている「健康増進プログラム」についてのお話を伺いました。

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増富の湯

増富の湯とは

ここ増富の湯は、ラジウムを含む源泉を湧出しています。温泉内に掲げられている表記をみますと「含二酸化炭素─ナトリウム─塩化物・炭酸水素塩泉」とあります。
ちなみに、効能は次のように示されています。
神経痛、筋肉痛、五十肩、運動麻痺、筋肉のこわばり、くじき、慢性消化器病、痔疾、冷え性、うちみ、病後回復期、疲労回復、健康増進、きりきず、やけど、慢性皮膚病、虚弱児童、慢性婦人病、高血圧症、動脈硬化症。
効果効能等の詳細については、専門の書籍をご一読されることをお勧めします。

 →ご参考:『温泉と健康』阿岸祐幸、岩波新書

増富の湯には、3種類の温度の浴槽があります。
まずは源泉そのままを浴槽に流している25度の温泉、次にそれを熱交換機で30度に加熱したもの。さらに35度に加熱したもの。
温泉に限らず、一般的なお風呂の温度は40度〜42度ですので、かなり低い温度です。しかし、これが増富の湯のこだわりでもあります。

さっそく入浴

まずは入浴し、体験してみようということでさっそく温泉に向かうことに。
その前に、増富の湯の入浴作法について教えていただきました。

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増富の湯総支配人・小山芳久氏

「自分の気持ちに逆らわないで入ること」
小山支配人からの入浴指南は、これだけでした。
前述のように、増富の湯は3種類の温度の浴槽があります。
まずはそれぞれに手をつけてみて、心地良いと感じる温度の温泉に入ることが大事なのです。また、入っていて、寒いと感じたならば、すぐに出て温かいお湯(沸かし湯もあります)に入ること。決して我慢や無理をしないことが、小山氏からの入浴の心得でした。
一番いけないのは、我慢をすることなのです。我慢して温泉につかっていると、それがストレスになり、よい効果効能は得られないのです。ぬるくても熱くても、○○分入っていなければ…と、じっと耐えている方、いらっしゃいませんか。温泉にはリラックスして入ること、このことが一番大事なことなのです。
そして、体の力を抜き、他の人が湯船を移動するときの波に身体を任せるくらいにすること。そのようなことを教えていただきました。

25〜35度の温泉への入浴は、とても新鮮なものでした。特に、35度のお湯はいわゆる「不感温度」に近く、いつまででも入っていられます。30度のお湯に入っていると、最初はぬるいというより少々冷たい感覚でしたが、入っているとしだいに体がポカポカしてくるから不思議です。30分以上も入っており、湯船の中でうとうとするほどに気持ちがよかったです。
たっぷり1時間ちょっとの入浴を経て、一同セミナー室に戻り、地元の幸をふんだんに使った、その日の朝スタッフが摘んでこられたという山菜たっぷりの「摘み草定食」をいただきながら、あれこれディスカッションいたしました。この山菜はとても美味しかったです。

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摘み草定食(この他におそばがつきます)

増富の湯の経営

増富の湯は、山梨県北杜市が運営されています。
実際の運営は、小山氏が総支配人を務められる「財団法人みずがき山ふるさと振興財団」です。
小山氏が着任して10年以上が経つそうですが、その間、それまで赤字経営だった増富の湯は見事に黒字経営に転じました。途中から赴任してきたよそ者であることを払拭すること、コスト管理や経営というものにあまり関心がなかった従業員の意識を少しずつ変えていくことなど、様々な努力が実を結んだのです。
さらに小山氏は、地元の旅館との連携を模索し、増富温泉郷全体でよくなることをあれこれ考えることにチャレンジしておられます。
そのひとつが、現在取り組まれている「健康増進プログラム」です。
日帰り〜1泊、2泊と、様々な入浴+レクリエーションコースを設け、訪問客の都合に合わせた楽しみ方や健康増進などができるよう考慮されています。
これは、日本の温泉文化の源流である「湯治」を、現代流にアレンジしたものではないでしょうか。「現代版湯治」ともいうべきひとつの形を構築しようとされているように感じました。

 日本の温泉文化の源流である「湯治」について
 →「温泉の心理:第4話『江戸時代から今を見ると』」
  (NPO法人健康と温泉フォーラム・温泉保養文化研究会ブログより)

増富の湯の訪問客の車は、県外ナンバーが多いそうです。
マーケティング的には、片道2時間程度が日帰り旅行の行き先としての限界距離なのだそうですが、増富の湯にはそれを越える場所からの訪問客も多いのです。
このことは、現代版湯治が訪問客に認知されているということなのではないでしょうか。
もちろん、増富の湯が私たちになんらかの効果効能をもたらすであろう素晴らしい泉質であるということも忘れてはなりません。温泉郷のある旅館の女将の話では、1週間程度逗留する宿泊客も多いそうです。健康増進のためここを訪れる方々がたくさんいらっしゃるという事実に、小山氏の経営努力と、増富の湯の源泉の力を感じずにはいられませんでした。

増富の湯のこれから

このようにリピーターも多い増富の湯ですが、驚いたことに一般に知られていないのです。今回ご参加の皆様も、全員が今回の企画を見るまでは知らなかったということでした。知られていないという事実が問題であり、知らせるということが、増富の湯の大きな課題であろうと思います。
もちろん、PRを何もされておられないわけではありません。
ポイントは、誰に、どのように伝えるか、ではないでしょうか。
NPO法人健康と温泉フォーラムにて行われました、東京医科大学・国際医学情報センター教授のJ.P バロン氏の講演に、そのヒントがあるように思います。

 J.P バロン氏の講演
 →「第5回研究会の報告」
  (NPO法人健康と温泉フォーラム・温泉保養文化研究会ブログより)

命の径

食事の後、増富の湯山中でのヒーリング体験をすることができました。
増富の湯の裏山「命の径」は、じゅうたんのように厚く積もった落ち葉の道です。ここを散策し、少し山の中に入ったところで、事前に渡されたシートを敷き、その上に寝っ転がりました。
小山氏がゆったりとしたペースのリードにしたがって、深呼吸をし、風の音、鳥の声に耳を澄ませ、自然の息吹を感じるよう集中していると、頭の中が真っ白になり、とてもリラックスできるのです。これはとても心地良い体験でした。いつの間にやら寝入ってしまいました。

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命の径でヒーリング体験中

一番の保養は心身のリラックスであり、増富の湯の素晴らしい泉質と健康増進プログラムが相まってこの上ない快適な時間を提供されていることを体験した、今回の見学会でした。
小山様、お忙しい中ずっと我々に付き添ってくださり、ありがとうございました。
また、ご参加の皆様も遠方に足をお運びくださり、ありがとうございました。

(事務局 田中達也・記)

投稿者 lefthand : 2009年04月27日 23:42

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