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2009年04月21日

2009年4月20日 米経済には頼れない

YAMAMOTO・レター
環境×文化×経済 山本紀久雄
2009年4月20日 米経済には頼れない

日本経済

2008年度の日本経済成長率は、2009年1月から3月までの実績が5月に発表され、その結果で最終決定します。だが、事前の予測では相当悪いというのがもっぱらの観測です。
民間経済研究機関9か所が、3月に発表した2008年度と2009年度の見通しに基づく日本経済成長率は下図のとおりです。


(クリックで拡大します)

野口悠紀雄氏説の見解

上図の数字は、3月中旬時点の各経済研究機関の予測ですので、実は、もっと悪化している可能性が高いのです。
実績が確定したところでもう一度上図を訂正しご案内したいと思いますが、日本経済は急下降で、この要因は勿論アメリカ発の金融危機による世界大不況からの輸出急減です。
これに関して2月20日のレターで、野口悠紀雄氏(早稲田大教授)が文芸春秋三月号で述べた次の内容をご紹介しました。
「分かりやすく言えば、経済の水準が6年前、バブル崩壊後日本の景気がどん底を示した2002年~2003年の状態に戻る、ということだ。2002年に底を打ってから、日本の実質GDPは6年間で10%増加した。ちょうどその上昇分が消失するのである」
そこで、今回の大幅落ち込み以前である、2008年1月時点のGDPは568兆円と、2002年10月時点のGDP、509兆円を比較してみますと、59兆円の減少となります。この額は正に日本のGDP総額の約10%分にあたり、野口教授の指摘が信憑性を帯びてきました。

アメリカ経済

日本経済が数年前の様に成長するためには、世界経済の賦活が前提条件です。また、その世界経済はアメリカの経済にかかっていますので、アメリカの実態がどうなのか。それが最大の関心事となります。そこで、いくつか最近の報道から拾ってみたいと思います。
(1)まず、オバマ大統領の発言。4月10日にバーナンキFRB議長と協議後の会見で「米経済はなお厳しい緊張下にある」としつつも「米経済にはかすかな光も見え始めている」と語りました。
(2)次に、米金融大手ゴールドマン・サックスは4月13日に、2009年度第一4半期(1〜3月)決算は最終利益が18億1,400万ドルと発表。これは市場予想の二倍に該当し、金融問題の損失処理が改善に向かっていることを伝えました。
(3)さらに、バーナンキFRB議長は4月14日、ワシントンで演説し、米経済に「前進の兆しが生まれつつある」と述べました。
(4)このところ株価が上昇傾向になってきました。4月17日の米株式相場は続伸しダウ工業株30種平均は8,131ドルとなり、3月9日に付けた6,547ドルからの上昇幅は1,500ドルを超えました。
(5)外国為替市場でもドルが優勢となって、昨年12月18日は1ドル=87円でしたが、4月18日は99円と円安傾向になっています。
(6)以上の状況から、アメリカではGreen Shoot(緑の芽吹き)という言葉まで飛び交うようになったといわれています。

本当はどうなのか

米国経済の動向をいち早く把握するためには、米労働省が毎月発表する「雇用統計」が群を抜いて優れているといわれています。
その中でも特に、非農業部門雇用者の前月比増減数が注目されます。それは、米国企業は経済が減速し始めると、迅速に雇用を削る傾向があり、雇用減少は個人消費の鈍化につながるため、やがてはGDPの悪化にもつながるからです。
各月分を翌月の第一金曜日に発表しますので、4月3日発表の3月雇用統計を見ますと、軍人を除く失業率は8.5%となり、1983年11月水準以来の悪化で、景気動向を示す非農業部門雇用者の前月比は前月から66万人減少しました。
これは昨年1月からの合計で510万人に達するもので、ここずっと60万人から70万人もの人々が雇用を失っている状況です。
 FRBの判断基準は、増加幅が15万人以上であれば雇用・景気はともに堅調であり、10万人以下であればともに懸念する必要があるとされていますが、この判断目安が全く参考にならない惨状となっています。

株価と雇用との関係

下図は雇用統計と日米株価の関係を示したものです。

graph_090420_02.jpg

アメリカの雇用統計を見ていますと、米国経済だけでなく株価の予測もできる可能性があります。上図を見ますと、日経平均株価とNYダウはほぼ連動して動いていることが分かり、この株価と下段の非農業部門雇用者前月比増減数とほぼ連動していることも分かります。アメリカの雇用がGDPに影響し、結果として日米株価に影響しているのです。

デカップリングは誤りだった

米国経済が減速しても、新興国や資源国の高成長で世界経済は順調に推移する。というデカップリング論が著名経済アナリストによって、喧伝されていたのはついこの間のことでしたが、金融危機の結果はこの主張は全く当たらないということを証明しました。
今になって考えてみれば、全く市場規模が異なっていたのです。例えば、米国の消費は約10兆ドル(1,000兆円)、これに対し成長著しい中国とインドの消費を合わせても約2兆ドル(200兆円)ですから、米国経済が急激に悪化すれば、新興国の成長ではとても穴埋めできないわけで、この事実データを見誤っていました。
 
アメリカ経済は改善していないのだから

アメリカ人は、住宅バブルで借金を膨らませた家計のバランスを考え、借金減らしを優先し始め、雇用情勢が改善されていない状況下では、内需の柱である個人消費復活は期待薄です。オバマ政権の経済政策司令塔であるサマーズ米国家経済会議の委員長も「米経済は世界景気回復の原動力になれない」と言明しました。この発言背景は、世界経済の規模拡大は難しいという意味になります。世界経済全体が苦しいのですから、日本は内需を増やす方策しかなく、そのために何を戦略目標にするか。その答えは前回レターです。
以上。

【5月のプログラム】

5月 8日(金)16時   渋谷山本時流塾(会場)東邦地形社ビル会議室
5月15日(金)14時 温泉フォーラム研究会(会場)上野・東京文化会館
5月18日(月)18時経営ゼミナール例会(会場)皇居和田蔵門前銀行会館
5月20日(水)18時30分 山岡鉄舟研究会(会場)上野・東京文化会館

投稿者 lefthand : 2009年04月21日 17:53

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