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2009年04月05日

2009年4月5日 時代は外から変わっていく

YAMAMOTO・レター
環境×文化×経済 山本紀久雄
2009年4月5日 時代は外から変わっていく

訪日旅行者数の急減少

日本政府観光局が発表した2009年2月の訪日外国人旅行者は、前年同月比で41.3%の減少となりました。統計がある61年以降では、過去最悪だった大阪万博開催翌年の71年8月(41.8%)に次ぐ大きさでした。

要因として「世界的な景気後退や円高など」を挙げていますが、各国政府や自治体の「旅行自粛」も響き、国・地域別では香港の60.4%、シンガポールの56.4%、韓国の54.5%が目立つ減少でした。
この中でも中国は2月25.6%減でしたが、1月は31.4%増と、旧正月が昨年は2月、今年は1月であったことが影響して月別変化があるものの、全体的には中国人の訪日が増えている傾向です。
その理由の一つに「中国での北海道ブーム」があります。きっかけは正月映画として大ヒットした「非誠勿擾(フェイチェンウーラオ)」、日本語題では「誠実なおつき合いができる方のみ」という中国版ラブコメディで、知床や阿寒湖など北海道東部も舞台として登場し、美しい自然が評判となって、今年になって北海道ツアーが急増したからです。

ミシュランガイドブック

訪れる観光地を星印で格付けするフランスのガイドブック、ミシュランの観光版「緑のガイド(ギード・ベール)」が3月16日発売されました。
ホテル・レストランのガイドは2007年から東京版が登場しており、観光地に関しては簡易版「ボワイヤジェ・ブラティック」が刊行されていましたが、本格的なガイドとしてのギード・ベールの発行は初めてです。
すでにアジアではタイとシンガポールが発行されていて、日本は三か国目で「ギード・ベール」は、その国の文化に重点を置き、格式も高いとされていますが、今回の内容で「わざわざ訪れる価値のある場所」としての三つ星基準に選定されたのは56か所、二つ星は189か所、一つ星は301か所となっています。
この選定は、日本で暮らすフランス人10人と、本国スタッフ1人、日本人1人の合計12人で、国内各地を訪れ「印象深さ」「歴史的遺産価値」「自然の美しさ」「もてなしの質」など9項目を分析し、都市だけでなく史跡や公園、博物館などもランク分けし評価したものです。

ガイドを見てみると

ギード・ベールはフランス語によりフランスで発売され、9月に英語版が刊行されますが、日本語版の発行は未定とのことです。
したがって、日本ではちょっと入手が難しいので、3月末のパリ出張時に現地書店で購入し、早速にホテルの部屋で三つ星はどこか、二つ星はどこかとチェックしてみました。
三つ星は、京都、富士山、日光、伊勢神宮、姫路城、善光寺、松本城、屋久島、新宿御苑、東京都庁、明治神宮、東京国立博物館、高山、白川郷、五箇山、川平湾など、二つ星は浅草、谷中、六義園、築地市場、石垣島、黒川温泉、野沢温泉などです。
しかし、意外だったのは、先日一泊してきた日本で最も成功しており、集客力日本一という温泉地が無印となっていたことです。日本に戻ってから、早速、この温泉地の観光課に電話し、ミシュランガイドのことを知っているかどうかお聞きしたら、答えは「知らない」という返事です。なるほど 無印ですから無関心なのか思いましたが、何か違和感の残る観光課の返事でした。
さらに、「中国での北海道ブーム」で北海道に中国人が増加しているのですが、ギード・ベールでは北海道に三つ星はなく、二つ星として知床、層雲峡、旭岳、姿見、カムイワッカ湯の滝だけで、日本人に人気の高い小樽は無印という意外な結果ですから、仮に、中国人によるブームが一過性で終われば、北海道へ観光客増は苦しいのではないでしょうか。

経済状態はすべて苦しい

アメリカ発の金融問題から、世界中で輸出が急減し、外需が消え、ここ5年ほど輸出急増でGDPを伸ばしてきた日本経済は急変低迷化、国内需要にも影響しはじめ、企業経営環境を悪化させているのですから、経営が苦しいのは当たり前の実態です。
ところが、この金融危機以前から経営が困難化している企業も多くあります。そのような企業をいくつか拝見していますと共通していることがあります。
それはずっと同じことを続けていることです。「継続は力なり」ですから大変立派なのですが、実はその継続している経営方法に問題がある場合が多いようです。
かつて大成功し、素晴らしい業績をあげられていた企業でありながら、金融危機とは関係なく苦しい実態に陥っている共通要因は、時代変化に対応していないということです。
時代は30年前とは大きく変わり、そこに今回の金融危機が発生し、問題を複雑化させ、経済再生の処方箋なきままに世界中で経済対策を打ち続けている、というのが最近の状況ですが、このような大変化があっても、それは関係ないといわんばかりに、昔の経営スタイルを続けているのです。
結果はどうなるでしょうか。今の社会と馴染まないのですから、その企業の実績は次第に低迷化していき、如実に業績悪化という事実となって出てきています。

評価基準が変わった

業績悪化企業の経営者とお会いし、その際にアドバイスしていますことは「時代の変化を取り入れる」ということです。
時代は常に変わって、社会の姿も変化していきますから、この中で生活している人間も、自動的に変化に対応していきます。
ですから、経営者の一番大事な仕事は、時代の基底軸に流れている変化を把握することで、そのために大事な必要条件は、自らの感覚要素を磨くしかありません。
また、この感覚を磨くためには、連続していく毎日の動きをウォッチングし続け、そこから時代の変化を読み取り、採りいれ、結果として妥当で適切な経営手法を取り続けることしかありません。
つまり、経営者自身の判断基準を磨くことしかないのですが、ここで注意しなければならないのは、その判断基準は自分の中に存在するのではなく、社会変化から生ずる人々の感覚変化という他者基準にあるわけで、これに留意すべきなのです。
その典型的な事例が、今回のギード・ベールとお考えになってよろしいと思います。

ミシュランガイドをどう認識するか

ミシュランガイドは世界的に認識され評価されています。
それは、2007年に東京の飲食店ミシュランガイドが発行された時、発売日から4日間で初版12万部が完売し、人気の高さが証明されましたが、これは日本語ですから日本人用でした。
だが、今回の観光ガイドはフランス語と9月の英語版での発行で、日本語版は未定です。これは、考えてみれば当たり前で、外国人のためのガイドですから英語で十分なのです。
また、このガイドの効果は、簡易版ガイドで証明されています。簡易版に掲載された観光地に、急に外国人が増えだし、調べてみたらミシュランに乗っていたという事実がありますので、これから日本に来る多くの観光客は、今回の詳しいギード・ベールを手に持ってくることでしょう。そうなると掲載されたところに外国人が増えることは容易に予測つきます。
その証明が、簡易版でありながら、フランス人が昨年日本を訪れた人数は14万を超え、一昨年に比較し7%増となっていることでわかります。
ということは、ミシュランが勝手に価値づけした評価で、日本各地の観光地に訪れる外国人の人数増が決まっていくという意味になります。
つまり、観光地自身による自己評価基準でなく、他者評価基準によって観光客数が決まっていくという変化が訪れたのです。

時代は外から変わっていく

金融危機はアメリカからでした。人口減少下、観光客を増やしたいとしたら、頼りは外国人となり、それはフランス人による評価で決まる確率が高い時代に変わりました。以上。

【4月のプログラム】

4月10日(金)16時   渋谷山本時流塾(会場)東邦地形社ビル会議室
4月17日(金)14時 温泉フォーラム研究会(会場)上野・東京文化会館
4月20日(月)    経営ゼミナール例会 「増富の湯」日帰り現場見学

【ジョン万次郎のご子孫を招いての特別講演会】
★ジョン万次郎講演会★ 4月15日(水)18:30 上野・東京文化会館

投稿者 lefthand : 2009年04月05日 08:50

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