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2009年03月05日

2009年3月5日 お得感ネットワーク

YAMAMOTO・レター
環境×文化×経済 山本紀久雄
2009年3月5日 お得感ネットワーク

韓国・釜山

韓国の釜山に行きました。成田から金海国際空港に降り、タクシーでホテルに行こうと乗り場に行くと、黒塗りと青プレートの二種類の車があります。黒塗りは模範タクシー、青プレートは一般タクシー、しつこく呼びかける一般を避けて模範に乗り、市内まで約15km、中心地のホテルについて支払った金額は22,500ウォン。

空港で一万円両替したら152,000ウォンでしたから、1ウォン=0.0658円になります。従ってタクシーの22,500ウォンは1,480円です。
約15km走ってこのタクシー料金、ずいぶん安いと思いますし、得したと感じます。これは食事でも同じです。釜山を中心にした南部でしか味わえない珍味の「テジクッパプ」、豚骨スープに大ぶりの豚肉がいっぱい入って、スープは塩味がなく、塩や唐辛子ベースの薬味であるタデキなどを使い自分で調味するものです。さらに、いくつかの小皿に青い大きい唐辛子と生のニンニクが10個、それと白菜キムチや野菜もついてくるのにはびっくりしますが、市内繁華街西面ソミョンのテジクッパプ通り名物だけのことはあります。
食べ終わるとお腹がいっぱいで、支払はいくらかと聞くと4,500ウォンですから約300円です。小皿がたくさん出て、コース料理という感じでずいぶんお得感が残ります。

デパートで

テジクッパプ通りを出て、近くのロッテデパートに入り、8階の免税売店までエスカレーターで上がっていくと、妙な感覚になってきました。乗っている人が皆右左関係なく、バラバラに立っているのです。東京では左側に乗り、大阪では右側に寄って、反対側を急ぐ人用に空けていますが、釜山は関係ないようです。
どうしてなのか。地元の人に聞いてみますと、以前に一度、片側乗りを奨励したことがあったが、一方に重量が偏りすぎ、エスカレーターが壊れることが頻発したので、今は自由にしているというのですが、ちょっと信じられない理由です。だが、実際に釜山では、スーパーでもどこでも、エスカレーターで前の人を追い抜くことは難しい状態です。
エスカレーター終点8階の免税売店では、7階までの商品を安く売っています。ここで買うと、商品を韓国から出国する際の空港または港で受け取るシステムとなっていて、円安で日本旅行が盛んであった少し前は、韓国人で8階はあふれていましたが、今は客が日本人しかいません。
日本人観光客によって、韓国旅行業界は休日返上という空前の活況、毎日、日本人観光客のみ対応しているのです。結果は、ソウルのシティホテル予約がうまっており、ソウルからあふれた日本人が釜山に来るので、釜山のホテルも満杯です。

BB化粧品

8階の免税売店の中は、世界の著名ブランドショップが華やかに並んでいますが、そこには誰も客がいません。その中、客が異常に群がっているところがありました。それはメイドイン・コリアのコーナーです。それもBB化粧品が置いてある一角だけが、異様な熱気にあふれています。勿論、若い女性が多いのですが、男性も結構います。
一人の男性に聞いてみました「このBB化粧品はどうしてこんなに人気なのですか」「Ikko(いっこー)さんが推奨しているからですよ」「へえー。Ikkoさんて誰ですか」「知らないのですか。あのテレビによく出るヘアーメイクアップアーチストですよ」「お土産に奥さんに買って帰れば喜ばれますよ」そういえば、Ikkoがお勧めしますと書いて、一人のあまり美人とは思えない女性らしき人物のパネルがあります。
IKKOとは本名豊田一幸、名前の音読みに由来するらしく、美容師を経て、女性誌の表紙・ファッションページや、テレビ・CM・舞台と、最近では数多くのバラエティに出演し、トークショー等でも活躍していますが、このIkkoが勧めるBB化粧品とは何か。韓国の新聞・統一日報(2008年9月17日)で以下のように紹介されています。
「BBクリームとは、『Blemish Balm』クリームの略で、Blemishはキズ、Balmは香油といった意味を持つ。1980年にドイツで開発され、韓国では90年代から高級エステ店を中心に使われはじめた。韓日両国でBBクリームのトップシェアを誇る「ハンスキン」は06年、韓国の漢方で使われる14種類の薬草を混ぜたBBクリームを一般向けに韓国で販売しはじめた。 
日本のテレビ番組でBBクリームが紹介され、ソウル市内の販売店に日本からの観光客が殺到。売り切れが相次いだ。美容液からファンデーションまでがBBクリーム1本ですむという便利さが好評を得たからだ」

内需拡大しかない

日本では、ここずっとモノが売れないという時代が続き、流通業はどこでも苦戦しています。その理由として、経済状態が良くないからだという見解は正しいのですが、中には絶好調の業態もあります。
先月もお伝えしましたが東京ディズニーリゾートには過去最高の入場者が訪れているのです。また、マクドナルドの好調、ユニクロの店頭が好調、まだまだたくさん事例はあります。これらをどのように考えたらよいのでしょうか。
金融危機で外需が激減したわけですから「内需拡大」が日本経済にとって大事なことは誰もが承知しています。今はデフレ経済下ですから、人はモノを慌てて買いません。インフレ経済下では、明日の価格が上がると予想しますから商品を早く買います。
しかし、今はその反対で家計は「予算制約」された財布となっているので、拡大消費に結びつかないのです。ですから、消費を伸ばすためには、人々の財布の中に、具体的にお金を振り込んでやらなければ増えません。
実は、この財布の役割を果たしているのが、米国では、「クレジット・カード」であり、「自動車や自宅担保のノンリコース・ローン」であり、日本では女性の大好きな「ポイントカード」や「クーポン券」JALの「マイレージ」などです。自分の感覚でも「マイレージ」がたまれば、これを利用しようという気になります。
この意図から計画された国の政策が、ようやく国会を通ることになった定額給付金でして、予算制約された家計財布の中に、国から2~3万円のお金を振り込んであげて、ちょっといい気持ちにさせ、これを機会に使ってもらって、その後の消費にも結び付けようというのが目的です。
これについては、いろいろ議論はありましたが、決まったものですから、この定額給付金をどのように活用するか、という視点で流通業界は検討したほうが良いと思います。
例えば、市町村と連携して、この定額給付金に該当する温泉一泊券などをつくり、それを利用してくれたらこのようなサービスをするなどの、前向き対策を考えたほうがよろしいと思います。
流通業界が、定額給付金は僅かで、大きな効果がないと考え、手を打たないままで過ごすのか。それとも、考え方を変え、これをきっかけに新しいワクワクするコトに結び付けようとするか。その思考差は今後に大きく影響していくと思います。

時代は変わった

どうしてモノが売れなくなったのか。これを論じだすと大論文になります。しかし、感覚的にいえば、時代の流れが「モノ」から「情報」に変わって、次のところ、それは「感覚のネットワーク」に向かって動いているような気がしています。
例えば、釜山のホテルロビーに溢れている日本人観光客、円高ウォン安という事実情報をきっかけに、韓国に旅行しようと思ったのでしょうが、それは来てみてお金を使ってみて、「お得感」を実感できた人の体験が、人々へ口コミネットワークとなって、共通感覚となり、それなら自分も、という気になって、韓国行きになったのだと思います。
また、ユニクロのアイテム、買った人が「この価格で、この品質」というお得感であることはよく知られています。BB化粧品もIkkoが推奨したこともありますが、買って使った人の間に「なかなか良い。なるほど、これはお買い得だ」という「お得感」情報がネットワーク化され、それによって次から次へと買いに訪れているのではないでしょうか。
時代は動き、常に変わり、事象として眼前を流れて行きます。今はデフレ経済下、人々の気持ちの中へ「お得感」ネットワーク化を作りだせるか。それが課題と思います。以上。

今月の時流解説 3月13日(金)16時~18時
 (株)東邦地形社 8階会議室 
 渋谷教育学園・渋谷中学高等学校正門前 TEL:03-3400-1486
 参加費1,000円

投稿者 lefthand : 2009年03月05日 20:28

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