« 2009年2月5日 日本経済新聞を読みたくない | メイン | 2009年2月例会報告 »

2009年02月20日

2009年2月20日 身の廻りから見立てれば

YAMAMOTO・レター
環境×文化×経済 山本紀久雄
2009年2月20日 身の廻りから見立てれば

新幹線

このところ東京駅から新幹線での出張が多く、改めて、新幹線ホームに立って時刻表を眺め、発車本数を数えてみて驚嘆しました。

一時間に13本の新幹線が東京駅を出発しているのです。ということは、4分36秒ごとの発車であり、その列車が時速300キロに迫るスピードなのですから凄いと思います。
しかし、もっと評価されていることがあります。日本人にとっては当たり前の、普通のことと認識されているものですが、外国人からみたら驚異なことです。
そのことを、ワシントンのアース・ポリシー研究所長のレスター・ブラウン氏が次のように語っています。(日経新聞 2009年2月18日)
「何十億人もの乗客を運んでいるのに、死亡事故はゼロ。平均の遅れは六秒」、さらに「現代の世界の七不思議を選ぶなら、日本の高速鉄道網は確実に入る」と断言しています。

ネットワーク鉄道網

日本には、外国人が知ったらまだまだ驚嘆する交通システムが存在します。それは日本のネットワーク鉄道網です。
例えば、新宿駅ですが、JR山手線、埼京線、中央線と、京王電鉄の京王本線、小田急本線、さらに、地下鉄の丸ノ内線、都営地下鉄の新宿線と大江戸線、お互い別会社経営ですが、これらが、たった一枚のスイカですいすいと改札を通過できます。このような構内集中効率は東京駅でも、渋谷駅でも、池袋駅でも同様です。
さらに、東京駅では東海道新幹線から、すぐに東北新幹線に乗り換えられるように、東京駅は総合通過駅機能となっていますから大変便利です。
では、世界先進諸国の大都市はどうでしょうか。一言で表現すればターミナル駅です。ターミナルTerminalとは末端という意味で、鉄道やバスの終点のことです。
ニューヨークを事例にとれば、ここには大きい鉄道駅が二つあります。一つはグランドセントラル駅、もうひとつはペンシルバニア駅で、両方とも巨大な建築物で外観も内部も素晴らしい装飾ですが、この二大駅は終点で、お互いつながりが非常に悪いのです。
地上を歩けば10分もかからない距離ですが、地下鉄を利用するとグランドセントラル駅からタイムズスクウエアに行き、そこで乗り換えてペンシルバニア駅に向かうことになります。これだとよほどうまい乗り換えができない限り10分以上かかります。
これは、パリでもロンドンでもミラノでも同様で、ターミナル駅ごとに各方面の鉄道が分断されていますから、異なる方面に向かう駅に行くには一苦労です。
欧米人は、日本の便利な鉄道実態を知らないので、不便さが鉄道の当たり前の状態と思っており、逆に、日本人は、世界で最も機能的で便利な状態を当然と思っていますが、日本は世界で最も効率面で優れているのです。

戦後最大の経済危機

内閣府が16日発表した2008年10月~12月期のGDP速報値は、実質で前期比3.3%減、年率換算で12.7%となりました。
与謝野財務・金融・経済財政相は「戦後最大の経済危機だ」と述べ、政府・与党は追加経済対策を急ぐことを表明しました。
このような落ち込みの要因は、輸出に依存する割合が大きく、輸出産業を中心に生産や設備投資が異例の高速調整に入ったことが、マイナス成長につながったと解説されています。そのとおりで輸出は前期比13.9%減、設備投資は5.3%減となっています。
これについて野口悠紀雄氏(早稲田大教授)が文芸春秋三月号で次のように述べました。
「GDPがマイナス10%に達する、とはどういうことなのか。分かりやすく言えば、経済の水準が6年前、バブル崩壊後日本の景気がどん底を示した2002年~2003年の状態に戻る、ということだ。2002年に底を打ってから、日本の実質GDPは6年間で10%増加した。ちょうどその上昇分が消失するのである」と。成程と思います。
 
個人消費を見てみると

次に、10月から12月期のGDP速報値の個人消費を見てみますと、前期比で0.4%の減となっています。この前期比という分析基準は2008年7月~9月期との対比ですので、これを前年同期(2007年10月~12月期)比に置き換えて計算してみます。
結果は同様で、やはり輸出が12.8%減、設備投資は11.1%減と大きい実態ですが、個人消費は0.1%減という数字でマイナス幅はぐっと少なくなっています。
また、この個人消費がGDP全体に占める割合を見ますと、2007年は54.5%、2008年は57.0%となっていて、2.5%ウエイトを高めています。
何を言いたいのか。それは個人消費が善戦しているということです。世界は金融危機で世界中の消費が激減し、それによって日本の輸出産業は二ケタ減という大打撃の反面、内需は輸出減にそれほど影響を受けず、ほぼ前年通りの実績を示しているということです。
さらに、民間住宅投資は前期比5.7%増、前年比では何と12.7%という二桁増加に転じています。
確かに野口教授の解説通り、日本の実質GDPは過去6年間、外国で稼ぎ増やした輸出によって10%増加させ、これから、その外国で増やした分を減らしていくのでしょうが、GDPの中で一番大きく占める国内個人消費はあまり減っていないのですから、外需大幅減、内需健闘というのが日本経済の実態と思います。

身の廻りに目を注いでみると

輸出減で企業の出張が少なくなり、その分交通機関の利用が減っていると思われますが、よく行く東京駅や渋谷駅、日本の鉄道駅は景観的には雑然として、見栄えは悪いのですが、人が動き回る機能としては大変効率がよくできていて、そこを動く人波や人の量は大きく変わっていないように見えます。
今年の正月5日は東京ディズニーリゾートに行きました。ここを経営するオリエンタルランドの今期利益は前年比41%増と発表しました。金融危機で「戦後最大の経済危機」だと大臣発言がありましたが、ディズニーリゾートには過去最高の入場者が訪れているのです。これをどのように考えたらよいのでしょうか。
昨日は駅近くの理髪店に行きました。老夫婦と従業員一人の規模です。ここが改装して一週間休んでいたので、どのような店になったのか興味持って入りました。ずいぶんすっきりして上品な雰囲気になっていました。よかったねと言いながら「景気はどうですか」と尋ねますと「ほぼ同じです。戦後最大の経済危機とは思えない」とつぶやきます。お互い戦後の苦しい生活体験を持っていますから、当時を思い出せば今は天国です。
もうひとつ、身近な事例が続き恐縮ですが、毎月一回料理教室に通っています。もうずいぶん長く、教室の中で古手株となっています。最初の頃、いつ行っても教室は参加者10人を超えることはありませんでした。一時は5~6人で寂しい思いをしていました。
ところが、昨年春ごろからじわじわと参加者が増えだして、2月の教室はとうとう定員25名に達してしまい、お断りする人もいたらしいのです。
理由はよく分かりません。ずっと同じ先生で、同じような料理で、同じシステムで続けているだけで、教えてくれている先生もびっくりし、運営する中堅スーパーの担当者も首を傾げていますが、とにかく満員となり、教室内は明るい活発な会話で溢れていて、帰りには「また、来月」と言って別れます。
 
内需は底固い

日本経済は、野口教授の解説通り、過去6年間成長したGDP10%を、これから減少させていく、つまり、それは、外需で増やしたものが消えていくのだと推断します。
一方、これだけ世界中で金融危機による経済停滞が声高に叫ばれているのに、内閣府GDP速報値の個人消費を分析してみれば、個人消費は僅かな減少で終わっている、つまり、それは、国内内需がいかに底固いのか、ということを証明しているように思います。
さらに、トヨタ自動車も、在庫調整が今期末でほぼ終わり、5月から増産に入ると発表しましたので、いずれ周辺産業にも好影響が表れていくでしょう。
様々なマスコミ報道が、日々多様になされていきます。マクロ情報に関心を持ちつつも、自分の身の回りの実態から見立てることが、精神健康上、今は最も大事と思います。以上。

【3月のプログラム】

3月13日(金)16時   渋谷山本時流塾(会場)東邦地形社ビル会議室
3月13日(金)14時 温泉フォーラム研究会(会場)上野・東京文化会館
3月16日(月)18時経営ゼミナール例会(会場)皇居和田蔵門前銀行会館
3月18日(水)18時30分 山岡鉄舟研究会(会場)上野・東京文化会館

【ジョン万次郎のご子孫を招いての特別講演会】
★ジョン万次郎講演会★ 4月15日(水)18:30 上野・東京文化会館

投稿者 lefthand : 2009年02月20日 07:25

コメント