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2008年11月21日

2008年11月20日 お互い知らないことが多い

YAMAMOTO・レター
環境×文化×経済 山本紀久雄

2008年11月20日 お互い知らないことが多い

法案8

今回のアメリカ大統領選挙時に、カリフォルニア州では同性結婚を禁ずる「法案8」の投票も併せて行われました。結果は僅差で可決されましたので、同性結婚は法律で禁じられることになりました。

その経緯は、今年5月、カリフォルニア州最高裁判所が「結婚を異性間に限らせている州婚姻法は、州憲法違反である」と判決を下し、同性結婚を合法化しましたが、この判決を受けて「それなら州憲法に、同性結婚を禁止する改正条項を付加させてしまえばよい」と、同性結婚に反対するキリスト教保守派やモルモン教グループが提案したのが「法案8」です。
特にモルモン教は、「法案8」に対する州有権者の支持を得るために、莫大な金額を費やしてキャンペーンを行い、逆に、シリコン・バレーのネット・ハイテク企業のグーグル、ヤフー、アドベ、シスコなどは反対声明を発表し、アップルは反対陣営に100万ドル(1億円)の寄付を行ったように、激しい投票合戦が展開されました。
11月4日の選挙当日、サンフランシスコの街中では、それぞれの陣営がプラカードを持ち、投票に行く人々に訴えかけていましたが、日本人には違和感が残る風景でした。

サンフランシスコの街で新たに気づいたこと

サンフランシスコに行っていつも感じるのは、明るい陽光と、坂道が多く、そこから見下ろす海が綺麗で、住んでみたい都市で常に上位に存在する美しい街だという感覚です。
これは今回の訪問でも変わらなかったのですが、新たに加わった感覚は「この街は乾いているのでは」ということでした。というのも皮膚の中で弱いところ、腕の裏側とか、ベルトあたりのところが少し赤くなって痒みが出てきたのです。水の影響かとも思いましたが、サンフランシスコの水道水はよい水として有名ですから、空気の乾燥によるものと思います。
もうひとつ感じたのは、欧米の諸都市で必ず匂う香水の香りが街中になく、お会いした何人かの女性全員が、香水を付けていないことでした。これは不思議で妙で珍しいと思います。 
「法案8」が審議される街、皮膚が乾く街、香水の匂いがしない街、この三つに関連性があるかどうかわかりませんが、これがサンフランシスコで新しく発見した感覚でした。

カリフォルニアワイン

しかし、カリフォルニアワインには満足しました。訪問した家がソノマバレーでワイナリーを経営していて、お土産にいただいたジンファンデル葡萄の「イレーン・マリア」という赤ワインは絶品でした。
一般的にはワインはフランスだ、という概念がありますが、ワインコンテストを目隠しですると、世界各地で生産されている様々なワインが入賞し、かつてのようにフランス産が上位を独占することはなくなって、その中でもカリフォルニアワインの評価は高いようです。
ですから、日本人の多くは、サンフランシスコに行きますと、街中を一巡観光した後、一時間半ほど車を走らせてナパバレーかソノマバレーに向かいます。
ここは全米一のワイン生産量を誇り、別名「ワインカントリー」と呼ばれるように400か所以上のワイナリーがあり、そこでワインを楽しむ日本人が多いのです。

牡蠣養殖場

しかし、今回は「ワインカントリー」には向かわず、ゴールデンゲート・ブリッジを渡って101号線を北に向かいました。
目的地はタマレス・ベイ・オイスター Tomales Bay Oyster です。
こちらに向かった理由は二つ。一つは2010年に「世界牡蠣事情」(仮題)を出版するための取材と、二つは殆どの日本人はこちら方面に行かないと聞いていたからです。
101号線から1号線方向に入ると大変な道になってきました。左側に海、右側に丘、交互に景観が猫の目のように変わって楽しいのですが、丘陵地帯の中を曲がりくねる七曲り道、素人には運転が難しいので、プロの日本人ドライバーにお願いしたのですが、その運転ぶりを後部座席からびくびく見つめ続けるほどでした。
ようやく到着したタマレス・ベイ・オイスターの浜辺、この辺りはもともとネィテブのインディアンが牡蠣をとつていたところ、そこに1906年から養殖を始め、カリフォルニアで最も古い牡蠣養殖場という風格を漂わせています。
早速、海岸に隣接し設置されている、浄水槽から取り出した牡蠣を剥いてもらって味見しました。この瞬間が牡蠣取材で最高の至福の時です。牡蠣が育った海の味と匂いが口の中に広がっていき、其の昔、欧米では王侯貴族しか食べられなかったという風韻の味わい、一般店頭で食べる牡蠣とは比較になりません。
「うーん・・・。素晴らしい」と言い、ふと隣のドライバーを見ると「私は生れて初めて生で牡蠣を食べました」と少し情けないような声を発しました。
これにはタマレス・ベイ・オイスターの社長がビックリ仰天で、眼を剥いて「日本人は刺身を食べるのに」と怒ったような声で指摘しましたが、これが一般的な日本人の実態と思います。日本では調理して食べるのが常識ですが、欧米では牡蠣は生で食べるのが常識です。

牡蠣養殖場に来る観光客

社長が剥いてくれる牡蠣を遠慮なく食べ続けていると、ロシア人観光客が入ってきました。このタマレス・ベイ・オイスターの牡蠣は、毎日サンフランシスコのオイスターバーに出荷されていますが、海辺で食べたいという人々がこの地に訪ねてきます。
そこで、社長にどこの国の人が多いかと聞き来ますと、まず挙げたのがメキシコ人、ロシア人、その次に韓国人も来るなぁと言います。日本人はどうかと聞きますと、はっきり「来ない」との答え。アメリカ人を含めて、ここに来て食べる客の売り上げシェアは40%だといいますから、この浜辺に来る観光客は多いのですが、日本人は「ワインカントリー」に多く行き、これほど美味い新鮮な海の牡蠣には無関心なのです。

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月岡温泉

サンフランシスコから戻って一日おいて新潟県新発田市の月岡温泉に行きました。大正4年、石油掘削のための井戸から噴出したお湯によって開かれた湯治場でしたが、今では素晴らしい設備の旅館・ホテルが林立しています。
宿泊するホテルに着いて、すぐに大浴場と露天風呂に三回入ってみました。体がずいぶん温まる感じがして、やはり温泉はいいなぁと思いつつ、翌日の朝になって驚きました。
サンフランシスコで発疹した皮膚の痒みがなく、かえって肌がすべすべとして気持ちがよいのです。なるほど、これが日本の温泉力かと納得した次第ですが、この日本各地に湧出する自然の力を世界の多くの人々は全く知らないと思います。
また、温泉関係者による温泉トータル情報の発信力が弱いため、日本の財産である温泉が、世界中に正しく妥当に理解されていないのです。

そこで、この度「温泉を文化として研究する月例会」を開催することにいたしました。
主催は「NPO法人 健康と温泉フューラム」です。
http://www.onsen-forum.jp/

お互い知らないことが多い

日本人は生牡蠣の実態をよく知らない。外国人は日本の温泉についてよく知らない。
世界にはお互い知らないことがまだまだ多く、世界との情報交換が大事で必要です。
以上。


【11月・12月のプログラム】
・11月29日(土)13時 山岡鉄舟全国フォーラム (会場)明治神宮至誠館会議室
・12月12日(金)16時 渋谷山本時流塾     (会場)東邦地形社ビル会議室
・12月15日(月)18時 経営ゼミナール例会   (会場)皇居和田蔵門前銀行会館
・12月17日(水)18時30分 山岡鉄舟月例研究会(会場)上野・東京文化会館
・12月19日(金)14時 温泉フォーラム月例研究会(会場)上野・東京文化会館

投稿者 lefthand : 2008年11月21日 09:00

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