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2008年08月06日

2008年8月5日 予測に必要なセンチメント感覚

環境×文化×経済 山本紀久雄
2008年8月5日 予測に必要なセンチメント感覚

山岡鉄舟講演

経営者が集う勉強会の名門である「清話会」で、「山岡鉄舟の生き方」について講演しました。大勢の方が参加されまして、鉄舟の生き方にご関心を持つ経営者が多いことが分かりました。

鉄舟は一身にして二生を過ごしました。幕末の封建時代は徳川幕府に仕え、江戸無血開城という明治維新への糸口を成し遂げ、維新後は少年明治天皇を侍従として補佐し、偉大な天皇になられることに貢献しましたが、生き方思想は常に一貫していました。

つまり、鉄舟の生き方思想は、徳川幕府と明治維新後の両時代を包含する体系となっていたからこそ、時代が変わっても「ブレない生き方」ができたのです。

この生き方思想を、現代的に編集し、今の時代に活かせるセオリーにしようと、山岡鉄舟研究会を毎月開催しているところですが、鉄舟の生きた時代と現代では、グローバル化を含め大きく変化していますので、併せて今の時代・時流研究も行っているところです。
 
センチメント(漠然感傷感覚)認識になりやすい
 
その時流ですが、今はデジタル時代で、ヨコ軸で動いているような気がします。世界中から届くマスコミ情報、それはその日の出来事の集計で、翌日になれば、また、新しい出来事情報が届いてきます。あっという間に、今の新しいことは忘れ去られ、次の問題に右往左往させられているように感じます。

加えて教育が、幼稚園から小中学校も高校大学も、同年代の友達中心行われているという、ヨコ並びの学びと遊びのシステムとなっています。

 ところが、国の歴史も、社会構造も、企業構造も、すべて過去からの積み重ねで出来上がっているという、タテ軸結果となっているのです。

ですから、過去から延々と流れ続くタテ軸の来歴を知らずして、今の問題解決は成り立たないのですが、ヨコ軸で慣れきっている現代人は、タテ軸で見直すという思考力を苦手にする傾向があり、結果としてセンチメントに認識する傾向が強いと思います。

つまり、「ブレない生き方」を持つことが難しい時代になっています。

長州砲の行方

 フランスが戦利品として持ち帰った多くの大砲が、パリのアンバリットに展示されています。この間、それを一つひとつ確認してみました。パリも暑く、汗が滴り落ちます。どこの大砲を探したのか。それは下関戦争で奪われた長州藩の大砲です。

 1863年(文久三年)5月、攘夷実行という大義のもと長州藩が馬関海峡(現 関門海峡)を封鎖、航行中の英仏蘭米船に対して砲撃を加えたことから、1864年(元治元年)7月、英仏蘭米の四カ国は、艦船17隻で連合艦隊を編成し、8月5日から7日にかけて馬関(現 下関市)と彦島の砲台を徹底的に砲撃し、陸戦隊が上陸占拠し砲台を破壊し、大砲を奪ったのが下関戦争といわれるものです。

 この奪われた大砲について、全部海中に捨てられたという説と、四カ国に戦利品として持ち去られたという見解の両方があることを、鉄舟研究の過程で見つけ、フランスが持ち帰った大砲がパリ・アンバリットにあるという資料を見つけ行ってみたのです。

 しかし、2日間にわたる調査でもアンバリットにはありませんでした。おかしいと思い、再度詳しく調べていくと、既に下関長府博物館に戻って保管されていることがわかり、先日、早速、その確認のため下関に行ってきました。

下関長府博物館では、若い男女2人の学芸員の方から、ご親切な説明を受け、資料をいただき、ようやく日本に戻ってきた背景理由を納得しました。さすがに博物館は歴史の事実をタテ軸で捉えており、センチメント感覚ではありませんでした。

世界の動向 

このように歴史事実はセンチメントでなく、過去からつながるタテ軸で認識していくことが必要ですが、未来洞察をタテ軸の事実だけからはできません。

例えば、これからの世界の動向、これをどう読み取ればよいのでしょうか。

世界は大きく動いています。昨年のアメリカで発生したサブプライムローン問題は、世界の超大国として君臨してきたアメリカの覇権的地位を、次第に弱体化させています。

そこに加えて、原油高騰などによるエネルギー価格の高止まりは、先進国から資源国へ富の移転を加速させ、オイルマネーは世界のあらゆる金融市場へなだれ込み、政府系ファンドは資金力を武器に新たな展開を始めました。

一方、成長が続くBRICsの中でも、アメリカと輸出入関係が強い中国やインドは、経済成長にかげりが見られ、世界経済の先行きは一段と不透明になってきました。このような動向から、今やアメリカによる覇権時代は終わり、新興国にパワーシフトが急速に進み、新たなる国家群の幕開けになる、というような見解が一部でなされ始めています。

そこで、これら見解の妥当性を判断するためには、過去の事実認識の積み重ねに加えて、未来洞察という作業が必要ですが、未来は不確定要素ですから、どうしてもセンチメント感覚で行うことになります。

ですから未来予測は難しいのです。

中国人女性実態・・・その二

経済成長にかげりを見せ始めたオリンピック開催の中国。その動向変化は日本に大きく影響しますので、中国の未来をどう見通すかは大きな課題です。この場合の洞察もタテ軸としての歴史事実に、センチメント感覚を加えていくことになりますが、それを検討するひとつの材料として、中国人女性を一人、前号に続いてご紹介したいと思います。

 それは上海の30歳独身女性です。上海は住所表示が大雑把で分かりにくく、何回も人に尋ね、ようやく訪ねる住居のアパート群の中に入っていきますと、ジャンバー姿の姿勢のよい女性が犬を連れて散歩風に立っていました。この人かな、と思って近づくと頷き、犬を連れて自宅前まで案内してくれましたが、とにかく姿勢がよく、身長があまり高くないのにすらっと見えます。

三階の部屋に入ると、すぐに気がつくのは正面の大きな等身大の鏡であり、鏡は洗面所にも寝室にも洋服ダンスにも、ベッド枕上の窓近くにグリーンデザインの丸鏡、それと机の上にも平面の卓上鏡があります。

これだけ鏡を持っている中国人は少ないので、鏡という存在について少し説明しました。「自分を見つめようとする意識が強い人が鏡に興味があり、たくさん持っていて、その人は鏡を見つめることで自分探ししているのではないか」と。

そうすると本人が語り始めました。大学は映画を専門に勉強し、大学院でも同様で、映画プロデューサーになろうとしたが、上海の現実は問題があり、夢どおりにはならず、今は銀行に勤めている。学校時代は成績優秀だった。趣味は幼い頃からバレーを踊っていたことと、中国古典楽器の演奏。旅行は自然のあるところに行くのが好き。外国にはまだ行っていない。行きたいところは北欧。山と湖が好きだ。上海は人多く空気が悪いから。

将来の目標として特に大きな希望はなく、家族と楽しく話し合って仲良く暮らすことで、自分に素直に生きたいという。

そこで、上海の人はお金持ちになりたいという希望が強いだろうと聞くと、そういう人が多いが、自分は違う。お金にはあまり関心がない。お金を求めていくと人生にひずみが出るだろう。お金を持ちたい人はそれでよい。そういう人にお金は譲る。自分は自分の気持ちに素直に生きたいのだ。仮にそれによって問題が起きても、それでよいのだ。自分の人生は自分が生きるのだから、と言い切ります。

何か宗教を持っているのですかに、無宗教との答え。それぞれ価値観が異なる人が、それぞれ生きていくのが現代だろうともつけ加えます。正にグローバル時代の生き方です。

この女性に会って、上海人の中にも、お金至上主義者だけでない人がいることがわかったが、今まで会った多くの中国人は、とにかく金々という人たちで、中国人は儲けのためには何をしてもよい、という人ばかりのイメージが続いていた。

今は経済至上主義下の中国で、その最先端が上海。モノの豊かさが行き渡ると、多分、今度は自分とはどういう存在なのか、という段階に至ってくる。今の日本人がその段階だが、その時点になって、改めて、自分とは何ものか。自分とはどのような意味合いで生まれてきたのか、ということを問い直し始めるが、その時点にいたっているのがこの女性だろうと思い、その旅を今後も続けて欲しいと、エールを送って失礼しました。

中国のタテ軸事実、既に把握されている中国実態、紹介した中国人女性の生き方二事例、そこにご自身のセンチメント感覚を加味し、中国未来予測するのも夏日の一興です。以上。

投稿者 Master : 2008年08月06日 05:43

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