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2008年01月11日

2008年1月5日 現在地(You are Here)の確認

環境×文化×経済 山本紀久雄
2008年1月5日 現在地(You are Here)の確認

新年明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。

ロンドンで道に迷う
昨年の2月末、ロンドンのジャーミンストリートのレストラン・グリーンス、ここのマネージャーと打ち合わせし、夕食を終え、食後の散歩を兼ねてハロッズデパートに向って歩き出しました。地図上で確認すると、ピカデリー通りを行けば、それほど遠くないと判断したのです。
ロンドンの2月は寒くて暗いのですが、ハロッズは何回も行っていますので、道に迷うことはないだろうと、速足で歩いているうちに、いつの間にか暗い道から、さらに暗い人気がなくなって、これは道に迷ったな、と慌てて地図を広げましたが、周りに標識がなく、今の自分はどこにいるのか、その現在地が確認できない状態になりました。


ロンドンの治安
ご承知の通り、ロンドンの景気は絶好調です。一人当たり2006年の名目国内生産(GDP)では、日本が世界18位、英国は11位です。
英国病に罹り、長らく低迷していましたが、サッチャー革命でロンドンシティ金融力が盛り返し、お金と共に世界各地から人々も集まって、結果はヒースロー空港での入国審査がしつこい、ということになりました。
ニューヨークの入国審査が9.11で厳しくなったといいますが、ヒースロー空港の方がより厳しい上に、係員は最初から何かを疑ってくるので、全員目付きがよくありません。ようこそロンドンへ、というウェルカム態度は皆無です。
という意味は、ロンドン市内は危険だということを表しています。外国人が大勢入ってくると治安は悪化します。ですから、ロンドン市内の暗い道を一人で歩くのは危険です。そのロンドンの暗闇で道に迷い、現在地を見失い、一瞬不安に陥りました。

正月不安のスタート
この正月は不安が歩いています。昨年の正月とは大違いです。サブプライムローン問題は根深く、アメリカ経済も減速気味、株式市場も日米欧ともに下落、原油は1バレル100ドルを一時超え、いよいよインフレ気配が強くなり、日本の財政悪化の改善も期待薄で、福田内閣の支持率は低迷したままです。
ロンドンでの道迷い不安は、コート姿の英国紳士を、暗闇の中でようやく見つけ尋ね、地図で現在地を確認でき、ピカデリー通りに戻り、向こうにハロッズの明かりを見出すことで解消できました。地図という道標があったからです。
しかし、日本の不安は簡単に解消できないでしょう。時間がかかると思います。その最大の理由はグローバルな世界になって、日本が世界の中でどの現在地にいるのか、それを判断する道標を、的確につかむことが難しいからです。今までのように、日本人だから日本のことだけ考えていればよい、という視点では解決が難しいのです。
例えば、日本の株式市場への投資は60%が外国人ですから、株式投資に当たっては、世界が日本をどう見るか、つまり、日本の位置づけを世界的視野で判断しないと、的確な株式投資のリターンは難しいということになります。日本の眼前に展開される実態を、いくら日本の立場で分析し、整理したとしても、それは万全とはいえないということです。世界の動きと、日本の動きがつながっている時代なのです。

変化に対応していない
堺屋太一氏が以下のように指摘しています。(1月4日.日経新聞経済教室)
「日本は急速に衰えている。知価革命のうねりの中、中国やロシアですら改革を進めたが日本はできない。このままでは日本は『最後に滅ぶ社会主義国』になりかねない。『内弁慶』主義を脱し、荒廃した官僚の倫理を高め、夢と楽しみに満ちた社会を築く未来志向の改革が必要だ」と述べ、そうなった要因は、世界の変化・人類の変質に対応していないと主張します。
つまり、物財の豊富なことが幸せだ、という信念に基づき規格大量生産化したことによって、過去日本は成功した。だが、80年代から文明が変わりだし、人間の本当の幸せは、物財の豊かさでなく、満足の大きさになった。
ところが、この変化に日本の社会運営システムが合致していないというのです。

世界から日本を見る
そうだろうと思います。政府も企業も改革という掛け声は元気よく発します。しかし、実際に改革が進んだかどうか分からないのです。事実、一人当たり2006年の名目GDPが、ピークの95年より7700ドル・18%も減っているのですから、この間は改革が進まなかったのでしょう。改革を先送りし続け、それが世界における日本の存在価値を減少させているのです。
では、どうして改革が進まないのか。それは日本の経済規模がそこそこあるので、国内市場にしがみついていれば、中途半端なサイズの事業でも生きていけるという「共同幻想」が日本人にあり、そこから脱皮できない癖がついているので、結局、改革を先送りさせるのです。 
このような人の中から、時折、外国は嫌いだと発言する人にお会いすることありますが、嫌いということと、世界と日本はリンクしているという事実認識を区分けしないといけないと思います。
ペリーが来航した以前の、江戸時代ではないのですから、眼を世界に向け、世界から日本を見るという視点が不可欠と思います。

来年こそ改めたいこと
日経新聞「何でもランキング」(12月29日)の「来年こそ改めたいこと」は、頑張って直そうと思っているのに、なかなか直せない、そんな「ぜひ改めたい性格や行動」を、20代から60代の男女103人ずつ、合計1030人からの回答です。
1位は「整理整頓や片づけができない」、2位が「飽きっぽくて長続きしない」、3位が「やるべきことを先送りする」がベストスリーで、これを見てなるほどと思いました。「整理整頓や片づけ」は、物事の分析問題に通じます。情報を分析し未来を予測するためには、実態データの整理整頓が最低必要条件で、これが出来ない人は、問題点の抽出と分析が出来難いと思います。
「飽きっぽい」は、目的に到達しない根本原因です。途中挫折の癖がついていては、目的達成は出来ないでしよう。
しかし、3位の「先送りする」、これが日本全体の問題点と思います。掛け声ばかりで改革が進まないのはこれです。「特に仕事面で、面倒なことほど先延ばしにしてしまい、余計に状況を悪化させてしまう」(34歳男性)と補足説明があるように、改革という簡単ではないことを先延ばしする癖が、日本人に多いことを証明しています。
先送り体質が、世界の中で日本の存在感を低下させている、最大要因と思います。

道標で現在地(You are Here)の確認
 この正月の、日本を覆う不安の解消には、改革を断行するしかありません。また、その改革の方向性は、世界の「80年代からの文明変化」に対応することしかありません。さらに、その改革を先送りする日本人の体質を、改革することしかありません。
そのためには何が必要か。その方策にはいろいろあるでしょうが、まず不可欠な前提は、今、どこの時点に位置しているのか。どういう環境・条件下にいるのか。という現在地(You are Here)の確認が必要です。加えて、それはⅠ am Hereではなく、他者から見た客観性ある現在地でなければなりません。
暗いロンドンで、自分がいる位置を、地図という道標上にペンで「お前はここにいる」と示されたとき、不安が消えることを学びました。
不安を解消するには道標が必要であり、道標を持つから現在地を知ることができ、現在地を知るから改革の必要性を強く感じ、しっかりした強い改革認識を持つことで、先送りせずに改革を遂げる。これが不安解消の工程プロセスです。しかし、道標を決め、現在地を確認する作業は、かなり困難です。だが、それが今年の課題と思います。以上。

投稿者 staff : 2008年01月11日 10:49

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