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2007年07月20日

2007年7月20日 将来の納得

YAMAMOTO・レター
環境×文化×経済 山本紀久雄

2007年7月20日 将来の納得

参議院選挙
 今回の参院選は結果が分かりません。今のところ与党不利の情勢ですが、選挙は終わって見なければ分からない、というのが過去の実績から証明されています。
 今回の参院選争点は年金問題、経済政策、そのたいろいろあり、マスコミで与野党双方が激しい応酬を繰り広げています。
 この中で年金問題の本質を考えてみますと、政治家が国会で決定したことを実行する役目の官僚、その官僚が全く単純な記録計算である年金データ管理を行っていなかった、というところにあります。一般企業では考えられないことです。その上に、莫大な年金運用資金を、大規模保養施設「グリーンピア」をはじめとする無駄なところに投資し使ってきたのです。
 ここから考えると、日本の官僚は優秀だという評価は下せません。責任能力を持ち得ない人材が、大事な国家運営に携わっているという事実と、この官僚を使う政治家を選んだ我々に問題があると認識したいと思います。政治家の選び方が不味かったのです。
 福沢諭吉は衆論、つまり、多数の議論が大事といい、衆論を決める基は智徳の分量にあり、智には私智と公智があり、私智とは物の理を究めてこれに応じる働きをいい、公智はこれを時と所を選んでさらに大きな目的に用いることで、公智が最も大事だと主張しました。
 言い換えますと、私智とは囲碁将棋が上手というような場合、公智とは「社会に大きく貢献する知恵」ということになります。政治家の選び方が不味かったということは、一人一人の公智に問題があったと認識したいと思います。

一人一人がプロになる
1.ミネラルウォーター
 アメリカのソルトレークシティ市は、アメリカ国内で最も良質な水道水を提供しているので、ボトル入りのミネラルウォーターを目の敵にし、ペットボトルは地球温暖化の問題にもつながると、市長がボトル入り飲料水の不買を市職員指示しました。また、カリフォルア州はペットボトルの製造に8セント掛かり、そのリサイクルには18セント掛かるので、ペットボトルの使用規制に入るということから、先日、ニューヨークで知人とミネラルウォーターについて話し合ってみました。
 アメリカのミネラルウォーターは硬水だ、ということを知人は知っています。日本は軟水だということも知っているようです。では、硬水、軟水の区別はどのようにするのか、それはカルシウムの含有量である、では、その含有量はどのくらいかという辺りから、知人の理解は曖昧になってきました。
 硬水・軟水の区別は、水中のカルシウムやマグネシウムの量で表され、WHO(世界保健機関)の定義で、120mg/ℓ以上の水を硬水とします。また、マグネシウムは下剤の成分ともなる硫酸マグネシウムと同様ですから、硬度の高いミネラルウォーターを飲み続けると、旅行者は下痢症を起しやすいということ、続いて、どうしてアメリカは硬水が多く、日本は軟水なのか、というあたりになってきて、とうとう知人はお手上げです。これは国土の形状が影響しているのです。
 人間の体は60~70%が水。水を知らないということは、自分の体を知らないということに通じます。特に、旅行が多い方は最低の水に関する理解を持つことが大事と思います。

2.勤務時間
 長いこと一つの企業に勤務して、先日退社した人と会いました。今まで毎日決められた時間に出社し、定まった時刻に退社していた環境から、その制約がなくなった人です。
 今まで、この人には口癖がありました。平日の昼間、何かの用事でデパート、スポーツ施設などに行くと「暇人がいるものだ」と発言するのです。自分は忙しい身だ。それに反して、このような場所に昼間大勢いる。羨ましい、というよりは、自分の忙しさを誇示する意味の発言でした。ところが、退社してみたら「暇人がいるものだ」と、批判的発言をした人たちと同じ立場になり、ちょっと困惑気味の感情になったところに出会ったのです。
 そこで、少し解説をしました。
 「今までは、自分が決めた時間ではない勤務時間、それに疑問を持たず、そこに合わせる生活をしていた。だが、今は、それがなくなった。つまり、自分で自分の生活勤務時間をつくるときが訪れたのだ。自由という意味は、自分で自分のルールをつくることだ。自分に適切な時間帯を構築することだ」
 「それは分かっているが、どうしたらそれを上手く出来るのか」
 「それへの答えは、自分を知ることしかない」
 「自分を知る?知っているつもりだが」
 「なら、自分の最も相応しい生活する内容構築が出来ているのですね?」
 「それが出来ていないから、戸惑っているのだ」
 「ということは、自分を知らないことですよ」
 つまり、この人は漠然と自分を知っているだけなのです。本当の自分とはどのような存在なのか。それを突き詰めて考えずに来たこと、その結果が今の戸惑いになっているのです。
 もう一歩自分の中味を研究し、自分を冷静につかむこと。それが自分にとっての適切な生活時間設定のキーであるとアドバイスしました。自分に対してプロになることが大事です。

3.オシム監督
 サッカー日本代表監督イビチャ・オシムが「日本人よ!」を出版しました。この中で日本代表が負けた際に評論家がよく口にする「経験不足」、これに対し「人生において、経験は20年間あれば十分だと思う。サッカーではもっと短くなければならない。サッカーにおける経験は一年半あれば十分だというのが私の考えだ」と述べています。考えさせられる内容です。
 また、文芸春秋八月号で「日本人はみなさん、戦術やフォーメーションにものすごく詳しく、4-4-2とか3-5-2といった言葉をよく好んで使います。しかし、どうやったらこのフォーメーションができ、なぜこのフォーメーションにすべきなのか。そのフレーズは知っていても、その裏付けや必然についてしっかり理解していないように思います」と述べています。これにも考えさせられます。
 さらに、「日本人は、あまり責任や原因を明確にしないまま次に進もうとする傾向があるように思います。私は日本人の選手やコーチたちがよく使う言葉で嫌いなものが二つあります。『しょうがない』と『切り換え、切り換え』です。それで全部を誤魔化すことができてしまう」これにもなるほどと思います。
 世界の一流サッカーに伍するためには、「自らを客観的に見通すための視点」を再構築すべきであると、オシム監督は語っているのです。言葉を換えて言えば「一人一人がプロになる」ことが必要で大事なことだと言っているのです。

プリウス「ゼロ排ガス車」として認定
 前号レターで、NYのタクシーがハイブリット車に切り換わることをお伝えしました。
今年のアメリカでトヨタのプリウス販売台数は、25万台から30万台が予測され、日本の昨年実績は7万2千台ですから、アメリカで大きく伸び、その結果、搭載電池生産能力を5割増させると、トヨタが発表するほどです。(日経2007.7.15)
 このようになった要因はいくつもありますが、一つに絞るとすれば、カリフォルニア州の大気資源委員会、ここは電気自動車しか認めていなかったのですが、ここに電気モーターとガソリンエンジンを組み合わせたプリウスを、10年前に認めさせたこと、つまり、プリウスが電気自動車に代わる「ゼロ排ガス車」であると認定を受けたのです。
 認定を受けるために様々な戦術を駆使したと思いますが、基本に「地球環境問題に対応する」という時代方向性から「将来の納得戦略」を持ちえたから、鋭くて、うるさい論客が揃っている大気資源委員会を説得できたと思います。
 今ではトヨタの売上高24兆円、ロシアの国家予算に匹敵する規模になりました。

今の納得をとるか、将来の納得をとるか
 目前に現れる出来事に対し、今の納得をとるか、将来の納得をとるか。参院選にどのような公智で臨むのか。体の基礎部分としての水に関心を向けるのか。自分に最適の生活時間帯設定をどう組み立てるか。オシム監督の指摘内容をどう考え対応するのか。トヨタの将来戦略性から何を学び取り入れるのか。いずれも将来の納得視点から決めたいと思います。

以上。

投稿者 Master : 2007年07月20日 11:26

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