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2006年12月21日

2006年12月20日 仕組みづくり

環境×文化×経済 山本紀久雄
2006年12月20日 仕組みづくり

ノロウイルス

「ノロウイスによる感染性胃腸炎の流行が『食』に影を落としている。過去最悪のペースで患者数が増え、もちつきなど学校や地域での行事が中止やメニュー変更に追い込まれている。『十分加熱すれば心配ない』という呼び掛けにもかかわらず、旬を迎えた冬の味覚カキは価格が急落。風評被害を懸念する生産業者らは、

すっかりノロウイルスは有名になりました。そこで、ブリタニカ国際大百科事典に当然掲載されていると思い引いてみると、掲載されていません。次に家庭医学大百科事典で引いてみると、ウイルスの項目の中の一つの説明としてノロウイルスがようやく出てきます。国立感染症研究所の集計によると、全国約三千の小児科の医療機関から報告
(11/27~12/3の一週間)患者は65,000人にのぼり、1981年調査開始以来、過去最悪の水準だという事態ですから、百科事典や医学事典に掲載されていてもよさそうなものです。
掲載されていない理由は二つあると推測します。一つはノロウイルスは米オハイオ州のノーウォークが語源で、2002年に学会で命名されたこと、つまり、つい最近に分かったウイルスだということです。もう一つの理由は、これは日本だけで有名なウイルスだということです。国際的には知られていないのです。
2003年に出版した「フランスを救った日本の牡蠣」の取材でフランスの牡蠣養殖場を訪問した際、養殖業やレストランの関係者にノロウイルスの対処法について尋ねてみましたが、誰も「何を質問しているのか」という顔で「ノロウイルスなど全く知らない」と一様に答えます。これにはビックリした記憶が鮮明に残っています。質問にならないのです。
「森は海の恋人」運動提唱者の畠山重篤さんが、この度「牡蠣礼讃」を出版されました。この中で「ちなみにウイルスで規制をしている国は日本だけである。欧米では生牡蠣を食べるということは自己責任が伴うという伝統的な考え方が強い」と述べています。
外国でも冬に吐き気や下痢を伴う症状が発生しますが、ノロウイルスを問題にしていなく、日本では大問題化しています。この不思議な実態を考えると、お互いどこかの何か社会の仕組みが違うのではないか、という素朴な疑問が浮かびます。ちなみに、ここ二週間で生を含め牡蠣を100個は食べましたが、何ら問題は生じておりません。

宮城県唐桑湾の牡蠣名人を訪ねる

12月10日(日)の「山岡鉄舟全国フォーラム」が盛況で終わり、翌日に気仙沼に向いました。暖冬とは言え宮城県気仙沼は関東地区よりはずっと寒い気候です。JR気仙沼駅を出ると風が冷たく感じる中、唐桑湾の牡蠣名人を訪ねました。畠山政則さんです。唐桑湾で牡蠣養殖一筋に研究している専門家がいるとお聞きし、今回の訪問になったわけです。
畠山さんにお会いすると、早速に船を出してくれ、牡蠣養殖の筏に案内してくれました。筏に着きますと、海中から「一年半」もの牡蠣を引き揚げ、無造作に殻剥きし、こちらに差し出してくれます。生きている牡蠣が冷たい塩水と共に口の中に広がって、静かな深い海の豊かな味わいがします。
船が次に向ったのは、延べ縄式に吊るされている「二年もの」牡蠣で、これも引き揚げてくれ、殻剥きしてくれます。美味しい。明らかに「一年半」とは熟成度が異なることが分かります。更に船が向ったのは「三年もの」。特別の網に入れて海に吊るした、
畠山さん自慢の特選牡蠣で、引き揚げた牡蠣を見ると殻の形が違います。マガキの特長は細長いのに、これは形状が丸みを帯びているのです。びっくりして畠山さんを振り返りますと「丸みに育てているのですよ」と笑います。
これはフランス感覚に通じます。牡蠣はフランス料理を代表し、フランス料理は文化だと自負していますから、フランス人は牡蠣殻の外観にこだわるのです。確かに形状のよい牡蠣は、美的感覚によって食感に影響し、オシャレ感覚を醸成してくれます。
それと同じセンスの、外観が美しい「三年もの」を口に入れると、芳醇さが舌に広がっていきます。波が静かで深い海という唐桑湾の特長を活かし、フランス感覚を取り入れたオンリーワンの牡蠣養殖、その仕組みをつくり上げた畠山さんに感動いたしました。

気仙沼の街

畠山さんへ訪問した日の夜は気仙沼に泊まりました。ウォッチングと食事を兼ねて街を歩くと、すぐに中心街に着きます。昔は遠洋漁業の船によって街は大賑わいだった、その面影が残している一軒の魚介類専門店で食事しました。
お店の方と話していると昔話が出てきます。かつてこのあたりは人で溢れ、車で来ても駐車場がなく、大変不便だった。そこで郊外にショッピングセンターがつくられて、そちらに人の流れが動き、そこに今の漁業構造不況が重なって、この地区は地盤沈下し、商店の閉鎖が続き、その閉鎖した店の跡地活用工夫がないので、軒並み有料駐車場になっている。しかし、今頃、駐車場が軒並みにできても、利用する人がいない。これが今の気仙沼の中心街の実態だ、という説明に「なるほど」と頷くばかりです。
食事の後は寒いのでホテルまでタクシー手配をお願いしました。一般的に食事場所でタクシーをお願いすると、少しは時間がかかります。
ところが、ここ気仙沼では「タクシーお願いします」と言うと、驚くほどの速さで瞬く間に、入り口に車が到着しました。ビックリしました。慌てて支払をしてタクシーに乗って「随分速いですね」と運転手さんに語りかけると「実はこの街はタクシーが多すぎるのです」と、ここでも昔話が出てきます。
かつては気仙沼港に船が着くと、船員さんが自宅に帰るのにJRやバスを使わず、遠く青森や秋田、福島辺りまで長距離タクシー利用が当たり前、当然一日や半日は走り通しで、気仙沼に残るタクシーが少なく、市民には不便だった。
その状態時のタクシー台数が今でも維持されていて、時代が変わって超過剰、ゴロゴロ余っているから、どこでもすぐに手配可能なのですという説明に、これまた「なるほど」と頷くばかりです。背景事情は巧みな会話説明で教えてもらい、納得し頷きましたが、その解決は社会の仕組みを変えていかないと、解決は出来ません。

夕張市よりもっと悪い市町村

今年、北海道の夕張市が財政破綻し、市民は塗炭の苦しみを、これから味わおうとしています。また、夕張市に残っていると様々な「痛み」が大きくなるので、近郊の岩見沢市や札幌市に転居した人が少なくありません。計画では七校ある小学校と、四校ある中学校をそれぞれ一校に統廃合し、図書館や養護老人ホーム、集会施設や体育施設など、多くの公共施設廃止が行われる予定です。地方自治体が破綻すると「痛み」は、このように直接に住民に降りかかってくるのです。これは夕張市だけの減少でしょうか。
実は夕張市よりも、更に悪い財政状態の市町村があります。北海道の歌志内市、上砂川町、長野県の王滝村、沖縄県の座間味村、福島県の泉崎村、山形県の新庄市、兵庫県の香美町の七つの市町村の実質公債費比率は、夕張市の28.6%よりも悪いのです。歌志内市などは40.6%もあるのですから、いつ夕張市同様になってもおかしくありません。予備軍です。この現象は、一般企業が倒産で消えていくと同じく、地方自治体にも「終わり」という時期があることを意味させます。今まで放っておいたわけではなく、いろいろ方法を講じた結果だと思いますが、結果的に現場のリアルな実態に適合していない行政が行われてきたのです。市町村経営の仕組みが問題なのです。

DIY大賞

今年の最後に嬉しい知らせが届きました。近くの日曜大工(DO IT YOURSELF)の店から大賞をいただきました。四月に事務所を自宅に移転させるための二年間の改修結果、それをこの店のコンテストに応募したところ大賞となったのです。多くの人から「よく日曜大工する暇ありますね」と言われますが、事務所移転目的の改修ですから、暇というレベル感覚ではありません。必要なことですので、日常生活の中に無理なく計画的に入れ、日程に基づいて身体を動かし、汗を掻いただけです。生活環境整備への仕組みづくりの一貫です。来年も多くの問題が発生します。それへの対処は仕組みつくりに尽きると感じています。ご愛読を感謝し本年のレターを終わります。以上。

投稿者 Master : 2006年12月21日 10:17

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