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2005年10月20日

現地・現場・現認とタイミング

     YAMAMOTO・レター 環境×文化×経済 山本紀久雄
     現地・現場・現認とタイ ミング 2005年10月20日

出迎え犯罪被害

パリのモンパルナス駅から、TGVでボルドー駅に着きました。乗車三時間ですから大阪に行くのと同じですが、一駅も停車しません。駅近くになると出迎えの人から携帯に、駅のミーティングポイントで待っているという電話です。大きな駅には出迎えや、待ち合わせ場所としてのミーティングポイントがあり、それが四隅から矢印が中心に向かっているデザイン標識で表示されています。到着後のミーティングポイントでは、ネクタイをしたビジネスマンらしき男性が二人握手を求めてきました。
通訳をお願いした女性がフランス語で挨拶し、こちらも握手で対応し、案内されるままに地下の駐車場へ階段を降り、割合新しいルノー車に案内され、後部座席に座ると出発です。車が走り出して改めて出迎えのお礼と、これから行くところまでの所要時間を尋ねると、妙な返事です。お互いの会話がかみ合いません。地下の駐車場から地上に出るころになって、人違いということがわかりました。

お互いに、慌てて再び駅のミーティングポイントに戻り、本来の出迎え者を探しだし「よい旅を」などと手を振りあい別れましたが、ちょっとした出迎え事件でした。
これがフランスでよかったと思います。昔から中国などアジア地域の空港では「出迎えを装った犯罪被害」が発生しています。偽の出迎え者に連れ去られて、金品を奪われるなどの被害が結構あります。企業名・氏名などを事前に調べて、プラカードなどに書いて待ち受け、連れ去るのです。フランスですから人違いですみましたが、国によっては危ない結果となった可能性があります。注意したいと再認識しました。

NYを訪れる

ここ数年、外国への入国セキュリティーチェックは厳しくなっています。特にアメリカは9.11事件以後、安全チェックが格段に厳しくなって、あの早口のまくし立てる聞き取れない米英語で、細かく尋問されるのかと思うと、ついアメリカを敬遠し、そのアメリカでもNYだけは行かないと決めていましたが、5年ぶりにフランスに行く前に三日間だけ滞在してきました。ケネディ空港に到着し、果たしてどの程度の厳しさか。緊張して入国審査官の前に立ったところ「目的は」という思わぬ日本語で気楽になり、その後の質問も短くやわらかで、両手の人差し指指紋と顔写真は撮られましたが、予想外の簡単さでした。ホッとしました。また、ケネディ空港からマンハッタンに入り、道を歩き、交差点で周りを見回して感じるのは、以前のような緊迫感がなく、危険を前提にした防衛行動で動き回らないですむことです。街の中に安全感が漂っているのです。その安全感は地下鉄に証明されています。地元の人に聞きますと、今やNYの地下鉄は「早い・安い・安全」という代名詞だといいます。24時間走っていて、夜中の一人乗車も怖くない、と言い切ります。すごいことです。昔と全く逆の姿を実現しているのです。今のNYは殺人も少なく安全な街となって、人口70万人以上のアメリカ大都市安全度ランキングで第四位になりました。参考までに地下鉄料金は「5回プラス1回サービス計6回で10ドル。一回乗車に換算すると1.7ドルですから、1ドル112円換算で約190円。定期券は一日乗車券7ドルで、7日間の場合は24ドルですから一日換算すると3.4ドル、同換算率で一日中何回乗っても380円のバカ安」です。安全な上安く、NYの変化を象徴しています。

素直で勉強好き・プラス発想

クールジャパン、かっこよい日本。国民総生産GDPでは世界第二位ですが、GNC
(Gross National Cool)ではダントツの第一位日本。それを証明するのが日本アニメの人気です。マンハッタンの中心に所在する紀伊国屋の店頭、そこの一階の真ん中あたりにアニメ売り場が大きく占めています。紀伊国屋の店長に確認してもよく売れているとニコニコ顔でうなずきます。日本食の人気は世界的ですが、最近は日本式ラーメン店にアメリカ人が並んでいるという状況です。ラーメンはパリでも同様で、いわゆる西洋人が店の前に立ち並んで待っているほどですから、ラーメン人気も世界的な傾向と思います。
日本食ブームに加えて、今回訪問した日本企業、いずれも元気でした。お会いした現地日本企業トップの方々、皆さんゆったり落ち着いて自信に満ちています。バブル崩壊後の傷が癒えて、日本企業はアメリカ経済順調の中で、業績を伸ばしていることを確認できたこと、これが最もうれしいことでした。
その企業トップにお会いして気づいたことがあります。皆さんに共通していることです。
それは経営コンサルタントの船井幸雄先生が常日頃述べている「成功するトップは、素直で勉強好き、そしてプラス発想の三条件だ」、これを備えていると感じました。「勉強好き」とは「知らないことを知ることが好き」ということ、「素直」とは「知らないこと、確証のないことは、どんなことも否定しないこと」と、船井先生が定義しています。プラス発想は今更説明する必要がないと思います。
NYでお会いした経営トップの方々、その語られる言葉の背景に「素直で勉強好き・プラス発想」があり、それが業績順調の理由であると再認識いたしました。

ぬりえ・剪画展

来年9月から10月にかけて「ぬりえと剪画(せんが)展」をNYで開催するための下準備、それが今回の目的でした。加えて、日本企業の元気さを確認でき、好業績の確保は現地企業のご努力もありますが、共通した背景には日本文化への再評価・再認識があり、その代表的な証明としてのアニメのすごい広がりがあること、それについて各企業理解しておりました。そこで、このアニメの原点に実はぬりえが存在していることを説明いたしますと、皆さん大きく頷いてくれます。
このようなぬりえが持つアニメへの関わり、それは今年9月に出版した「ぬりえ文化」を書くに当たって研究したからいえることで、本が役立ち、助かりました。
なお、一緒に展開する剪画展、この剪画という文字、一般の人は難しくて読めず書けずですが、植木を刈り込む「剪定」とパソコンに打ち込みますと出てきます。なかなか知られていないのですが、簡単にいえば「きり絵」の芸術性を高めたものなのです。剪画展が昨年NYで開催され、反響よく来年も開催するというので、ぬりえ展も一緒に展開させてもらおうと企画し、NYの現地・現場・現認をするために今回行ってきたたわけです。

現地・現場・現認 

知らないことや確証ないことは、現地に行き現場の状況を現認すること。これが大事で欠かしてはならないポイントです。しかしもっと大事なことがあると思います。それは全ての人は明日以降の未来に向かって行動しているのですから、現地・現場・現認したことを未来に活かしていかねばならないということです。折角に現地・現場・現認したことでも未来に活かさないと行動した意味がなくなります。ところが、現地・現場・現認したとしても、そのタイミングがずれ、遅れてしまい、折角の行動が活かせないということになることが多々あります。タイミングを計った現地・現場・現認が隠れた重要ポイントなのです。ここを疎かにしてはいけません。現地でコーディネートしてくれた人が、一年後の展開のためにNYを訪れる、という行動に驚いたと発言していましたが、こちらは当たり前で当然のことで、それより今行っていることがタイミング的にみて妥当なのか。というところにポイントをおいて考え行動してきました。
人は考える動物であり、考えることとは、未来へ向かう自分の行動を作るための前提作業です。また、過去には戻れず、過去は未来に使うしかないのですから、過去を思い出だけにしてはいけないと思います。過去に経験した様々な成功・失敗、その分かれ目ポイントは何か。その多くは未来に対する予測誤差から発生しています。未来は不確定ですから誤差が発生するのが当たり前ですが、しかし、未来に結果を出し、物事を成し遂げたかったら、未来予測誤差をなるべく少なくするための、未来への投資を心がけた方がよく、その投資とは未来計画つくりにつきます。その未来計画の精度で決まります。
ですから計画つくりために現場・現地・現認をするタイミングが最も大事です。現場・現地・現認するタイミングの決め方で、未来予測の内容妥当性が決まるからです。

NYに行きませんか

2001年9月11日以後のNY、安全度の確認ができました。来年の9月27日から「ぬりえと剪画展」と山岡鉄舟講演を行います。NYマンハッタンを楽しみながら、来年秋の「オータムインNY」へ一緒に参りませんか。詳細は来年ご案内いたします。以上。

投稿者 Master : 2005年10月20日 11:28

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