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2005年04月21日

万博に行く意味

       YAMAMOTO・レター
    環境×文化×経済 山本紀久雄
   2005年4月20日 万博に行く意味

愛知万博に行こう

愛知万博の入場者数は4月20日現在179万人です。期間中の動員目標は1500万人、これを開催日数で単純に割れば、一日8.1万人。これが平均一日あたりの目標入場者数です。20日までの人数を開催済み日数26日間で割れば、一日あたり6.6万人ですから、目標8.1万人に対して81%の達成率です。
一般的にイベントは、立ち上がり当初の動員状況が、その後の推移に大きく影響します。

万博事務局は、当初開催日と翌日の入場者数を15万人と予測していました。だが、雨という条件があったとはいえ、実績は4万人台と大きく予測を下回り、これで目標への道のりが黄色信号となりました。
実際に万博会場を経験してきた人に聞きますと、会場で目玉となるものが少ないという意見が聞かれます。その目玉が欲しいという意見、そこに万博の開催目的と入場者とのズレがあります。テーマは「環境博」で、今の世界の最先端環境情報を伝えるべく編集してあり、1970年大阪万博のように、面白く・楽しく・驚きがあって楽しいというイベントとは異なるのです。ところが、訪れる人たちは、環境博という言葉を知って、その意義の理解をしていても、会場を訪れて「もう一つ何かが欲しいなぁ」という感想をもらします。どうもこれは従来の大阪万博イメージを引きずっているのではないか、という感がします。
この感覚のズレをどうやって解消し、入場者増加につなげることができるのか、そのところに対する万博事務局手腕が問われますが、現状のままでは、多分、達成目標に届かず、結果として赤字を発生させ、補填として税金が投入され国民負担になります。ですから、ここは愛国心で「愛知万博」に多くの人が訪れることが必要ではないでしょうか。中国反日デモの「愛国無罪」でなく、日本人は「愛国参加」で愛知万博に行こうではありませんか。

大学の現状

少子化が最初に経営に対して影響を与えてきたのが大学です。大学希望者は全員大学に入れるという「全入時代」が訪れました。しかし、実際には人気大学に受験生が殺到しますから、定員割れの大学が続出することになります。
その結果、生徒が集まらない大学は経営危機を迎えますし、もうすでに何校かは倒産し、大学閉鎖していて、この動きは加速化されていきます。
卒業生にとって「母校が消える」という結果が常識だ、という時代になってきたのです。
これに対する対応策、それを、今、最も大学実態に詳しい、クイック教育システム社の
矢澤昌敏氏を経営ゼミナールにお呼びし、レクチャーを受けました。
といいますのも、少子化が招く経営危機は、すぐに一般企業に押し寄せ、大学と同じ現象が発生しますから、各大学が知恵を絞っている内容を検討しておくことは、近未来の企業経営にとって重要情報収集になるからです。
しかし、今回の矢澤氏のお話で改めて明らかになったことは、少子化問題も然ることながら、大学生の質の劣化も大問題として存在することでした。従来のイメージとは異なった学生に変化しているのです。学生は勉強するものだ。これはもう古い実態なのです。ということは学力がないまま卒業し、新入社員として各企業に「お勤め」することになるのです。

企業はどう対応するか

かっての大学生とは異なった質の若者、その人たちを新入社員として受け入れる企業側は、自社が持つ既存の「企業体質」に早く馴染ませ、慣らせないと大変です。
学校時代のままで会社内で行動されたら、社会生活・企業活動とは馴染まない「勝手で自由な行動」をすることになりますから、企業目的である「売上・利益」獲得への最適行動には結びつかず、結果は「新入社員は問題要因」ということになりかねないのです。
対策はいろいろあります。大学側に学生の教育をしっかりしてもらうということ、それは当然の要求ですが、これは不可能に近いと思います。大学の先生も、生徒の親も放任主義できましたから、それを一気に改善することはできず、改革には10年スパンのロング対策が必要です。その間も毎年大学卒業生はドンドン社会に編入されていきます。
ですから、大学と家庭に改善を期待できず、結局は受け入れる企業側で努力し、新入社員の再教育をする必要があるのです。そのためにはどうするのか。それは企業という性格から考えた上での手段を講じることだと思います。

企業力とは集団力

企業とは所属している人たちの協力関係で仕事を進めていくところです。規模の大小があっても基本的なシステムは同じです。バラバラ勝手な行動では企業目的は達せられません。
当たり前のことですが、この基本的な理解が最も重要です。ここを間違えると大変です。
毎日出社するが、企業目的とは異なった「勝手連行動」となる企業の先行きは明らかです。
新入社員が来たら「直ちに企業目的に馴染ませる習慣づくり」をすること、これしかありません。入社した瞬間から始めることです。時間をおくと、時間の経過と共にやり難くなります。「鉄は熱いうちに打て」です。
具体的にどうするか。それは上司の言うことを、そのまま行動させる体制にすることです。上司に対する忠誠心をつけさせるしかありません。上司が指示することを実行する人間に作り変えることです。
なぜなら、上司が企業集団のリーダーなのですから、リーダーの指示に従わない行動は、企業目的に合致しないからです。リーダーの指示が的確でない場合はどうするのか、という反論がありそうですが、それはそのようなリーダーを上司として配置しておく企業が問題なのであって、新入社員の教育の問題ではありません。現状の上司を指導したのはその企業の上部幹部であるのですから、問題の最終責任は社長にあるのです。
ですから、上司の指示は社長の方針であるので、直属上司の指示に素直に従って行動してもらわないと困るのです。
このところの仕組みをしっかり理解してもらうこと、つまり、上司の指示は企業の方針であり、それは社長の方針であるということ、この当たり前の考え方を徹底するしかないのです。これを徹底するということは、新入社員に「企業への忠誠心」という「愛社精神」を植えつけるという作業になり、その愛社心の強弱が企業の強弱になる、という当たり前の真理を新入社員が来たら徹底的に教育すべきです。これが集団力の強さの源泉なのです。

ドラッカーも認めた日本人の家族的集団力

今年の二月の日経新聞「私の履歴書」はP.Fドラッカーで、そのエッセンス主張は「強みの上にすべてを築け」でしたが、その視点から今回の連載で日本人の強みに関して指摘してくれたことがありました。それは日本人は職業を問われると「○○会社に勤めています」ということが多いが、それは所属する組織に対する構成員として、一種の「家族意識」を持っていることの証拠であって、それは集団で仕事をする場合の強みであると強調したのです。
つまり、日本人は企業に家族意識というような、集団力的な強みを発揮させていると、世界一の経営学者が認定したのです。その通りと思います。

集団力はどこで養われるのか

幼稚園に入った子どもは、最初一人一人バラバラ好き勝手な行動をしていますが、すぐに先生の指導で、お互いの仲間という存在を認識していくことになって、集団行動できるようになって行き、子供にとって幼稚園は楽しい自分の居場所になります。
これと同じです。新入社員にとって最初の職場は幼稚園です。放っておくとバラバラな勝手連行動となります。幼稚園の先生と同じように、新入社員を指導しなければ、新入社員は団体行動をとれずに楽しい職場になれないのです。このコツを教えるのは上司しかいません。
上司の指示に従わせるということが、新入社員に「企業への忠誠心」という「愛社精神」を植えつけるコツなのです。そうするとドラッカーが認めた、日本人の強みとしての「家族意識」が発揮され、自社の強みとなるのです。

愛知万博にはやはり行こう
  
時代は環境破壊経済成長から持続的成長になっています。愛知万博は面白く・楽しく・驚きがあって楽しいというイベントではなく、時代の最先端環境万博であるという認識が必要であり、日本人の意識感覚構造改革の場が愛知万博です。一人一人が時代感覚を変化させれば、日本人は集団的に変化する強みがあります。だから愛知万博にはやはり行こう!!以上。
    
   (経営ゼミナールの万博ツアーは7月25日です。詳細http://www.keiei-semi.jp)

投稿者 Master : 2005年04月21日 09:48

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