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2005年04月06日

仕事は思考回路の構築のこと

        YAMAMOTO・レター
    環境×文化×経済 山本紀久雄
■2005年4月5日 仕事とは思考回路の構築のこと

■大地震はくる
4月から新年度に入りましたが、相変わらずマスコミを賑わしているのは、ライブドアであり、地震報道です。日経新聞(2005.2.23)で出久根達郎氏が「大地震の
69年周期説」を紹介しています。地震博士といわれた河角宏氏が唱えた説で、関東大震災は1923年、それより68年前の1855年に安政の江戸大地震、その73年前天明2年の1782年に江戸・三河・越中・加賀など広い範囲の大地震があったことから、河角博士が統計上計算して唱えたものです。内容は「69年プラス・マイナス13年で大地震が発生する」ですから、「関東大震災の1923年にプラス69と13で2005年」となり、ちょうど今年が該当します。

そのタイミングを見計らったように、政府の地震調査委員会は3月23日「30年以内に震度6弱以上の揺れが起こる確率図」として、日本列島を色分け分布図とした予測を発表しました。政府としての最高機能は「国民の安全確保」ですが、その政府から地震予告ともいえる発表がなされたという意味、それは近々M6以上の大地震がくる覚悟をしておくように、という警戒情報連絡と受け止めたほうがよいと思います。

■地震への準備対応
3月20日に「福岡西方沖地震」が発生しました。震度6弱、M7、震源の深さ約9キロでしたが、九州北部でM7の地震が起きたのは、1700年以来300年ぶりです。
このところ連続している大地震、95年の阪神・淡路大地震、2000年の鳥取県西部地震、2004年の新潟中越地震、スマトラ沖地震、そして今回の福岡西方沖地震など、共通しているのは、大地震の発生が想定外で、無警戒であった空白域でおき始めているのです。このような想定外の地震が大規模で発生しているのは、日本列島が新たな地殻変動の活動期に突入した証拠である、と主張するのは(株)アクトンの鈴木三郎社長です。
鈴木氏によると、地球は新たな地殻変動期に入っている。過去100年の地球は稀に安定していた期間だったのであり、加えて、昨年2月から3月にかけて地球の公転軌道がずれて、磁場に狂いが生じたことが異変の原因であるとも解説しています。
いずれにしても、地震は地域一帯に公平に襲ってくるものですが、それへの救援対応は不公平になることを覚悟しておくべきです。道路寸断、架橋崩壊、道路歩道橋の倒壊等が重なって、地域への救援は不公平にならざるを得ません。
地震が発生してから、政府に文句をいってもダメなのです。救援に来るのが遅れるという覚悟の基に自己責任で準備対応しておくことが必要なのです。
言い古されている地震対策の数々、それを真面目に思い出して準備しておくこと、それが政府の地震調査委員会から予告された、地震に対する一人一人の対応と思います。

■家のリフォーム
社宅に住んでいる息子に「マンションでも買ったらどうか」と問いかけましたら、「地震が来るので買わない」という答えが戻ってきましたが、問いかけたこちらは現在リフォームの真っ最中です。
一昨年に屋根葺きと外壁塗装を専門家にお願いし、昨年は襖の張替えを自分で行い、今年に入ってからは内部の壁を張替えしています。全部完了するのはまだまだ先です。
もう建ててから26年も過ぎまして、向こう三軒両隣はすべて建替え新築していますが、こちらはお金をかけずに自分でリフォームする方針で、時間をかけてジックリ進めています。ついでに家具類の置き場も検討し、地震対策ツールを設置したりしています。
家のリフォームを行って分かったことがあります。分かってみれば当たり前のことなのですが、やはり実際に体験してみないと実感として納得できないことがありました。
それは「リフォーム作業のためには事前準備が重要」なことです。日曜大工DIY店からリフォーム用品を購入してきても、すぐに作業できるわけではないのです。実際に作業するまでには、当然のことながら、事前に襖等の構造を勉強しないと進みません。襖を張り替えるには、襖を一度解体する必要があり、その解体には襖の組み立て構造を知らないと、無駄な力を入れたり、時には壊してしまうこともあるのです。襖の構造を始めて知って、改めて「なるほどこれが先人の知恵か」と思うところが多々あります。
リフォームするには、リフォームする対象の構造、それをまず把握すること、それが全てに優先するのです。

■トラバンドとバレーボール
先般のドイツで、ホテルロビーにあった雑誌をめくったら、懐かしい写真をみました。共産圏時代に東ドイツで走っていたトラバンドという自動車、それを修理工場で直しているいるおじさんの姿です。共産圏時代にこのトラバンドに乗れる人は模範市民でした。しかし、共産主義の時代が終わって、まだこのトラバンドに乗っている人は落伍者の部類に入ると思います。雑誌のトラバンド写真の後ろには、メルセデスとかBMWが並んでいるのです。ということは、昔の模範市民が乗るべき車も、時代が変われば底辺のところにいる人しか乗らない車になったということです。時代は昔の常識を変えていくのです。
しかし、昔の常識を変えてはいけないこともあります。
2008年の北京オリンピックを目指す、女子バレーボールの日本代表トレーニング担当アドバイザーに、順天堂大学スポーツ健康科学部長の沢木啓祐氏が就任しました。かって「東洋の魔女」と恐れられた女子バレー、昨年のアテネオリンピックで五位にようやく入賞したものの、長く低迷を続けています。
沢木啓祐氏が就任してみて分かったこと、それは「代表チームがデータを継続的に取っていない」という情けない事実でした。30年前にあった素晴らしいトレーニング方法を継続化していなかったのです。継続していたのは、技術と戦術偏重の作戦ばかりでした。
東京オリンピック金メダルの、女子バレーボールチームの大松監督が「為せば成る」と、必死に考えつくりあげた世界で勝つためのトレーニングとデータ、その基本が忘れ去られていたという事実が沢木啓祐氏によって明らかになったのです。バレーボールがなぜ弱いのか、ようやく分かった気がしました。変えてはいけない常識があるのです。

■仕事とは思考回路の構築のこと
3月の日経マガジンで、NYヤンキースの松井選手が次のように語っていました。
「僕から見て『ああ、自分より野球のセンスあるな』という選手はたくさんいます。でも、逆に『もったいないな』とも思うんですよ。大事なのは思考回路です。どういう風に打とうかなとか、イメージを膨らまして、自分で『深く考える』ことです」と。
「足りない素質」を補うのは深い「思考」であるという松井選手に、改めて驚き、頷きます。開幕戦でレッドソックスと対戦し、立派な仕事をした背景には深く考えた「思考回路」構築があって、それがしっかり仕事をやり遂げる基盤となっているのです。
ところが、仕事と作業の区別もつかない人もいます。作業とは「あらかじめ正しい答えがある」場合であり、仕事は「自分で問題解決に乗り出さねばならない」場合の行動であると思います。
「笑う温泉・泣く温泉」が紀伊国屋のBOOKWEVで、温泉専門書分野で売れ筋トップとなりましたが、この中で提案した「温泉地成功6通りの戦略」を日本の観光業は参考にしてもらいたいと思い、銀行会館で開催した3月の「丸の内時流塾」では、南仏アベンヌ温泉を取り上げました。結果は、温泉関係者に好評でしたので、4月も同じくアベンヌ温泉を再び取り上げますが、今回も温泉関係者から申し込みが結構あります。
(丸の内時流塾の内容は、経営ゼミナール http://www.keiei-semi.jp/ に掲載)
アベンヌ温泉の成功は、山奥の寒村に「行ってみたい」と思わせたこと、逆にいえば「誰も訪ねないという問題を解決したこと」であり、そのための「思考回路」を深く構築した結果なのです。松井選手もアベンヌも成功の理由は同じなのです。

■地震対策は体験のもとに思考すること
大地震がくるという政府からの予告、これに対する我々の最大弱点は、経験したことなく突発発生する一瞬のM7大地震に「思考力」で対応しようとしている現実です。これが最大の弱点です。思考に体験を加えなければならなく、その為には実際のM7恐怖体験をすることが最も必要なことです。至急に本所消防署内にある「防災館」(03−3621−0119)に行って、大地震の恐怖体験をすることが思考回路の前提条件です。 以上。

投稿者 Master : 2005年04月06日 10:06

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