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2005年03月20日

ゲランドはラベル・ルージュ(赤ラベル)・・・ゲランドの塩(5)

■ ゲランドはラベル・ルージュ(赤ラベル)
フランスにおける食品の品質管理制度に、ラベル・ル-ジュ(赤ラベル Label Rouge)がある。ラベル・ルージュとはフランス農林水産省の最優秀食品に与えられる。ラベル・ル-ジュの対象となる製品は、原材料すべてのライフサイクルが把握され、かつ、市場に流通している製品よりも高い品質を常時維持することを要求される。
このため、全ライフサイクルを把握することが不可能な、一般の生鮮魚介類は対象外となり、水産物では養殖生産品、加工水産品と塩がラベル・ルージュを獲得している。

ラベル・ルージュが認証された水産物は養殖牡蠣では「マレンヌ・オレロンの牡蠣」、水産加工品では「スモークサーモン」、それとゲランドの塩である。詳しくは山本紀久雄著「フランスを救った日本の牡蠣」(小学館スクウェア)を参照願いたい。

ラベル・ルージュの認定のために行われる検査は、塩の化学成分検査、バクテリア検査(海水の検査含む)、生理学に基づいた感覚印象受容性の検査の3項目である。加えて、味覚、様相、色についても年に4回、生産設備の一般検査は年に一度、それに抜き打ち検査もある厳しい検査規定をクリアしなければ認定されないのである。

■ ゲランド塩の生産方法
ゲランドでは、塩職人のことをパリュディエと呼ぶことはすでに紹介した。
塩は塩田で生産されるが、その塩田での生産方法はシンプルの一言である。

「太陽の陽光と風によって水分を乾燥させ、塩分濃度を濃縮させていき、飽和状態になったところで、塩は自然に結晶し、それを収穫する」

これが生産方法である。そこには科学的な機械類は一切使用されていない。その生産方法を図示したが、海水が池を回遊して出来上がる、それだけである。

(出典:ゲランドの塩物語 コリン・コバヤシ著 岩波新書より)

まず、海水をエチエという給水路から取り入れてから、五つの異なった塩田(ヴァシエール、コビエ、ファール、アデルヌ、オイエ)を巡回することで、オイエ(採塩池)という最終採塩池である結晶池に到着して塩になるのである。

ということは、自然の海水をこの五つの異なった塩田に入れることだけで、勝手に自然が塩をつくってくれるのか、という解釈を持つかもしれない。
しかし、この解釈は全く誤りである。人間の力が大きく関係づけないとラベル・ルージュとしての、ゲランドの塩は生産されないのである。

その人間の関係とは、それぞれの塩田に入れる水量の調整、塩田の床の整備等で大変な作業が必要とする。例えば、水量調整であるが、一日の中でも風向きは微妙に変化する。そこで、西から吹く海風は湿り気を帯び、結晶は遅く粗いが、東から吹く陸風はカラッとして、乾燥も早く、結晶は早く進行しキメも細かい。そうした状況に応じて、水門の開閉を敏速にし、一日に何回も調整するのである。
ゲランドの塩は自然が全て生産してくれているように思えるが、実際には人間が重要な役割を果たしているのである。塩田作業とは自然と人間の競演である。この関係が上手に運営されないと良質の塩が生産できないのである。

経営ゼミナール代表 山本紀久雄

投稿者 Master : 2005年03月20日 16:24

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