« 2010年5月例会のご案内 | メイン |  ギリシャ問題が意味する背景 »

2010年05月06日

YAMAMOTO・レター2010年5月5日

YAMAMOTO・レター
環境×文化×経済 山本紀久雄
2010年5月5日 説明責任

21世紀はサービス・知識の時代
今までの日本経済成長を一言で述べるならば、今の韓国と中国と一緒です。先進国へのキャッチアップ過程がうまくいき、経済大国化へ走ったのです。GDPを増やして国民の暮らしをよくするという途上国型でした。

日本が高度成長を遂げていた当時は、世界中の空港で見るテレビは、ソニーであり、シャープでありナショナル製品で、これは世界で日本製造業が勝利したということでした。
しかし、今は、同じ手法をもって、低コストの韓国と中国・台湾勢に負けて、世界中の空港テレビはサムスン製に切り替わっています。薄型テレビの世界トップシェアはサムスンで23.3%(2009年)となり、ソニーは12.4%、パナソニックは8.5%、シャープは6.3%という実態です。これは、今までと同じことをしていたら、コストの安い国に負けて行くという事実を証明するもので、今の韓国と中国・台湾勢もコストアップが進めば同様のことが生じると思います。
ということは、日本が成長しようとするならば、低コスト製造技術の競争とは違う、他国ができないことを創り出し、他国と差をつけること、これは脱近代化ということですが、ここへ国民意識を集中させることが必要で、これを一言で述べれば「サービス・知識」分野の強化ということになります。

サービス・知識は視点を変えることから
 もう一度整理をしますと、同じ技術で製品をつくるならば、コストの安い国の方が、製品価格を廉価にでき、普及価格帯商品市場でシェアをとれ、コストの高い国はとれない。
これは当たり前の事です。従って、日本はコストが高いわけですから、低コスト国と違うことを行って、脱近代化を進めなければいけない。これも当たり前の事です。
 では、その脱近代化をどのようにして実現させるか。そのポイントはいたって簡単ですが、とても難しいことです。何故なら、日本人ひとり一人が、今までの自分と違う視点を持たねば、今まで気づかなかった他との違いを見つけられないからです。これは自分を変えるという作業追及となり、非常に困難なことは誰でも承知している事実です。
だが、自分の性格を変えるのは困難ですが、「サービス・知識」分野のレベルアップは可能だと思います。その事例をマスコミ情報の捉え方と温泉で考えてみたいと思います。

ホリエモンの講演
先日、ホリエモンの堀江貴文氏の講演を聞く機会がありました。
いろいろお話がありましたが、自ら逮捕を受けた経験から、今回の小沢幹事長の検察審査会の「起訴相当の議決」についてふれました。
鳩山首相は「不起訴相当」で、小沢氏と議決が分かれたのは、無作為に選出された国民11人によって構成される検察審査会であるから、マスコミ報道の影響を受けやすく、悪人面やマスコミ嫌いとされる点で小沢氏が随分損をしている。鳩山首相はその政治手腕を国民の70%以上が評価していないにもかかわらず、善人面の金持ちのぼんぼんの世間知らずの天然宇宙人と思われているから、起訴相当の議決は受けない。
小沢氏は起訴されただけで役職を辞する必要はない。小沢氏はそれなりに説明責任を果たしていると感じているし、起訴相当の議決が出たからといって即クロだとする報道姿勢をしているところには疑問を感じる。疑わしきは無罪。これが司法の大原則だ。まあ、そうやって政治生命を失わせようという事だろうが、この原則を国民に理解してもらうためにも徹底抗戦を小沢氏にはおススメする。
また、佐藤優氏の見解は正しいとも言っていましたので、佐藤氏の見解を「佐藤優の眼光紙背:第72回」(2010年4月28日脱稿)からご紹介します。

佐藤優氏の見解
現在、起きていることは、国民の選挙によって選ばれた政治家、あるいは資格試験(国家公務員試験、司法試験など)に合格したエリート官僚のどちらが日本国家を支配するかをめぐって展開されている権力闘争である。検察は、エリート官僚の利益を最前衛で代表している。過去1年、検察は総力をあげて小沢幹事長を叩き潰し、エリート官僚による支配体制を維持しようとした。
エリート官僚から見ると、国民は無知蒙昧な無象無象だ。有象無象から選ばれた国会議員は、「無知蒙昧のエキス」のようなもので、こんな連中に国家を委ねると日本が崩壊してしまうという危機意識をもっている。しかし、民主主義の壁は厚い。検察が総力をあげてもこの壁を崩すことはできず、小沢幹事長が生き残っている。そこで、ポピュリズムに訴えて、小沢幹事長を叩き潰し、民主党政権を倒すか、官僚の統制に服する「よい子の民主党」に変容させることを考え、検察は勝負に出ているのだ。
 一部に今回の起訴相当の議決を受けて、2回目の検察審査会を待たずに、検察が小沢幹事長を起訴するという見方があるが、筆者はその見方はとらない。検察の目的は、国民によって小沢幹事長を断罪し、その政治生命を絶つことだ。そのためには、検察審議会の場を最大限に活用し、ポピュリズムに訴える。国民を利用して、官僚支配体制を盤石にすることを考えているのだと思う。実に興味深いゲームが展開されている。

二人に共通する普遍性
 堀江貴文氏と佐藤優氏に共通している事は、マスコミに対する姿勢です。マスコミ報道をそのまま鵜呑みにせず、自らの立場で検証しようとする姿です。
 一般的に世の中で発生する事実を知るにはマスコミしかないわけで、その意味ではマスコミ報道から離れることはできません。
 しかし、マスコミ報道だけの情報で世の中を判断しようとすると、マスコミ報道が意図する何かによって、判断基準が定まり、結果としてマスコミに追随する見解となりやすく、一般的な「あるべき論」的な見解になりますから、他との違いは見出すことは困難です。
 今の日本がおかれた立場は、既に見たように脱近代化を図らねばならないわけで、これを実現しようとしたら、まず、他との違いを見つけ、それを明確に説明できるという、日本人ひとり一人の説明責任が問われているのでしないでしょうか。

伊豆の白壁荘ゼミナール結果
4月の経営ゼミナールは、伊豆天城湯ヶ島温泉白壁荘で、フランス人ジャーナリスト、リオネル・クローゾン氏をお迎えし「日本の温泉、世界ブランド化への道筋」で開催を予定しておりましたが、アイスランド火山噴火の影響で来日が不可能となり、急遽、通訳兼コーディネーターの企画コンサルタントフローランタン代表の柳楽桜子氏に、クローゾン氏の講演内容を代講していただき、48名のご参加で盛況に終了しました。
講演の中で触れられたクローゾン氏と温泉との出会いは1982年で、仕事を終え大分県湯布院を訪れた際、温泉地風景と日本旅館との調和や田舎道情緒に加えて、最も魅力的だった事は40℃前後の温泉に入るということでした。この習慣は欧米にはないわけで、この体験以後、来日のたびに各地の温泉を巡り歩いて、今は専門家になったのです。
つまり、欧米から見ると「異文化」が日本にあるという「違い」が日本の最大魅力だという事を、日本の観光関係者は正しく妥当に理解し、外国に説明すべきと主張したのです。

説明責任
 この講演を受け、私がまとめを行いました。
クローゾン氏の主張はその通りであり、日本を観光大国化するためには、欧米との違いを説明する必要がある。韓国・中国がリードしている普及価格帯商品は、日本製品と価格の違いを説明しシェアを伸ばしている。
だが、観光は地政学的な特長であって、製造物ではない。コストは決定要因でない。その土地の性格がもつ魅力によって人が訪れるものだ。
とするならば、その土地が持つ意味と、他国との違いを、妥当に説明する商品をつくる事が必要で、それは「日本の温泉ガイドブック」作成となる。既に同様の本は日本に多くあるが、それらは欧米の書店棚に並ぶ内容になっていない。欧米の書店にある「ブルーガイド」「グリーンガイド」と一緒に「温泉ガイド」が書棚に並ぶ事が実現した時、温泉業界は説明責任を果たしたことになり、その結果として、日本の温泉は世界ブランドと位置づけられ、日本が観光大国化に向かう大きな道筋になるだろう。21世紀は「サービス・知識」分野の強化の時代だ。欧米書店へガイド本を並ばせる行動を起こす時が来た。以上。

投稿者 Master : 2010年05月06日 09:16

コメント