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2009年01月06日

2009年1月5日 基本を踏み条件変化に対応する

YAMAMOTO・レター
環境×文化×経済 山本紀久雄

2009年1月5日 基本を踏み条件変化に対応する

明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。

オールドマンパー

球聖と言われたボビー・ジョーンズ(Bobby Jones 1902-71)が語っています。
「ゴルフは、誰かに対してプレーするものではなく、何かに対してするものであるということに気づかなかったら、わたしはメジャー選手権に勝つことなどなかったろう。そう言っても決して間違いではないと思う。何かというのはパーのことだが・・・」
さらに続けて「そのことを学ぶまでには長い時間がかかって、ずいぶん悩んだものだ」と語り、目の前の対戦相手に惑わされずに冷静にプレーするために、OLD MAN PARオールドマンパーおじさんという架空の人物を考え、ゴルフは誰かに勝つためのスポーツではなく「各ホールのパー」言い換えれば自分自身との闘いであると定義しました。

トヨタが赤字決算見込みに

トヨタ自動車は昨年12月22日に連結決算見込みを発表し、売上21兆5,000億円の企業グループであるにもかかわらず、営業利益では1,500億円の赤字見込みとしました。最終的な純利益は500億円の黒字ですが、世界を代表する超優良企業のトヨタ自動車が、営業利益段階で赤字に没落したショックが世界中を走りました。
赤字要因の7割が売上減による影響で、残りが為替変動の要因であると明快ですが、今回の金融危機問題の重大さを再認識させ、世界経済への危惧をさらに深めさせました。

年末から正月の経済報道

これを追いかけるように、暮れから正月の経済関係報道は、懸念一色です。
「日本経済は08年、ほぼ6年ぶりの景気後退に陥り、経済規模が縮小した。年前半は原油高の重圧にあえぎ、後半は米国発の金融危機に伴う実体経済の悪化が深刻さを増した」(日経新聞08.12.30)
「金融危機の影響で、外資による国内企業買収や日本法人の設立といった対日直接投資に急ブレーキがかかっている。2008年4月〜10月の直接投資額は前年同期に比べ約4割減少し、08年度は03年度以来5年ぶりに前年実績を下回る見通しとなった。資金面での余力が急減し、リスク低減を迫られる海外勢が、自国を中心に内向きの投資に傾いているのが背景。今後は事業撤退や出資引き揚げも増えそうで、資本流入の縮小は雇用など実体経済の悪化に拍車をかける恐れがある」(日経新聞08.12.30)
テレビニュースでは、派遣契約の打ち切りなどで仕事や住居を失い、東京・日比谷公園の「年越し派遣村」に支援を求めて集まった人たちに対し、公園に近い厚生労働省庁舎内の講堂を宿泊用に開放し、そこに入った人々が「数日間何も食べていない」「昨日は野宿した。寒くて寝られなかった」などと語り、配給された温かいうどんを食べている風景が映され、国内経済に一層の憂慮感をもたらしました。

アメリカは対応策に困っている

どうしてこのような経済状況に変化したのか。それはアメリカ発の金融危機問題によって起こったことで、これはすべての人が理解しています。
ですから、アメリカから世界に向かって何か「お詫び」と言えるような、メッセージがあってもよいだろうと思いますが、これまで明確な言動がなされた気配はありません。
昨年12月18日に「米新政権と日米同盟の課題」シンポジウムが開催され出席しました。ハーバード大教授ジョセフ・ナイ氏、元米大統領補佐官マイケル・グリーン氏など5名のアメリカ政府要人に対し、谷内前外務事務次官と西原前防衛大学校長が質問するスタイルの展開でした。活発な議論がなされ「日米間でハイレベルな戦略対話が必要」「日本が国際社会に強力な影響力をもつことが重要だ」というような提案がなされましたが、ここで不思議に感じたことは経済問題について誰も敷衍(ふえん)しなかったことです。
政治問題が討論のメイン課題とはいえ、現在世界中で大問題となり、経済停滞を起こしている要因はアメリカで、そのアメリカ政治に関与している著名要人たちですから、何らかの「背景説明やお詫び」的な発言があると思っていましたが、全くありません。
何故なかったのか。推測すれば、多分、問題要因について責任を感じていないか、または、問題が大きすぎて簡単に解決つかないので触れようがなかった。この二つだと思います。

ユーロは基軸通貨になれるか

元旦にスロバキアがユーロを導入し、これでユーロ圏は16カ国になりました。欧州単一通貨であるユーロは、1999年1月に11カ国からスタートし、その2年後にギリシャが、続いてスロベニア、キプロス、マルタが導入し、今回スロバキアです。
このユーロ、今回の金融危機によって、世界基軸通貨であるドルの信認が問われ、それに代わる通貨として論じられていますが、ユーロ圏の実態はどうなのでしょうか。
結論的には、ユーロは基軸通貨にはなり得ない実態と思います。そのひとつの証明がギリシャの暴動です。ギリシャでは昨年12月6日、15歳の少年が警官に射殺されたことから、全国で暴動が発生し被害が広がっています。この暴動の発生要因について、ギリシャ・アテネ在住の知人に連絡をとり、日本在住ギリシャ人の方に状況をお聞きし、加えて昨年ギリシャを訪問した経験から、次の見解を持つに至りました。
「最初の発端は、若者グループに投石された警官が、少年を撃ち殺したことから始まったのは事実で、これがメールや、口で伝えられ、学生が暴動を起こし、この騒ぎに乗じ、外国人やテロリストや政党関係者などが、商店や車に放火し破壊に加わった。
この背景には経済問題がある。若者は毎年、大学新卒の半数が就職できない厳しさで、アルバイトなどをして生活して『700ユーロ世代』と呼ばれ、月収が700ユーロ(8万5千円)ほどで不満がたまっている。さらに、ユーロ導入とオリンピック開催により、外国人観光客が急増して物価が一気に上がり、期待したオリンピック景気でもギリシャ国内産業が育たず、加えて、ギリシャ特有の官僚主義や汚職によって、外資に対して融通が利かず、手続きが複雑で時間がかかるので、外国企業が入って来にくい」
ユーロ導入以後7年経つギリシャが、このように社会的安定を欠く実態では、米ドルに代わってユーロが世界の基軸通貨になることは難しいのです。ですから、アメリカ自身による金融危機対策を見つめ、その情勢変化に対応することしか方法はありません。

トヨタは生産方式を変えたわけでない

トヨタが営業利益段階で赤字見込みになったことは、社会に大きな影響を与え、これを持っていろいろトヨタを詮索する声も聞かれます。だが、この赤字見込みはトヨタが生産規模を減らしたから発生したのです。では、どうして生産台数を減少させたのか。それは世界中の自動車売上が金融危機で落ちたからであって、当然の決定です。
つまり、市場の実態に合わせたのです。市場に合わせなかったらどうなるでしょうか。在庫の山になるでしょうし、経営は滅茶苦茶になります。ということは、トヨタは市場の条件変化に対応した適切な経営手段を採ったことになり、赤字という結果は市場対応したという証明であって、トヨタ経営の基本である「カンバン方式」などの生産スタイルを変えたわけではありません。ここが大事なポイントです。
 
ゴルフのパー

我々の生き方も同じだと思います。時代の変化に対応しなければ、適切な生き方はできません。しかし、自らが持っている生き方指針までを変えてはならないと思います。
ゴルフのパーは、雨でも雪でも嵐でも晴天の日でもいつも同じです。ただし、気象条件によって攻め方を変えてプレーをします。
これと同じです。金融危機から発した世界規模の経済低迷事態に、迅速・的確に対応していくことが、企業にも一般の人々にも求められていますが、適切である経営方針や、妥当な生き方指針は変えるべきでない。そのところの区別と整理が大事です。金融危機に翻弄されるのではなく、基本を踏み条件変化に対応することが必要と思います。 以上。

(1月のプログラム)

1月 9日(金)16時   渋谷山本時流塾(会場)東邦地形社ビル会議室
1月14日(水)18時30分 山岡鉄舟研究会(会場)上野・東京文化会館
1月16日(金)14時 温泉フォーラム研究会(会場)上野・東京文化会館
1月19日(月)18時経営ゼミナール例会(会場)皇居和田蔵門前銀行会館

投稿者 lefthand : 2009年01月06日 14:39

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