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2009年01月26日

2009年1月例会報告

経営ゼミナール新年最初の例会である、第347回定例会が行われましたので、その様子をご報告いたします。
今回は、当ゼミナール代表の山本紀久雄よりお話をさせていただきました。

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今回のテーマは『2009年経営への視座』です。
2009年の景気はどうなるのか。日本は大丈夫か? この答えなき問いに山本代表は、さまざまな視座から果敢に探求を試みました。

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前提認識

まず最初に明確にしておかなければならないことは、今回の金融危機と、日本のバブルを一緒に考えてはならないということです。
今回の金融危機は、金融資産によるものであり、日本のバブルは不動産であったということです。
その違いは何か。
そのひとつは、スピードです。
日本のバブルの場合、その源資となったのは不動産という実物資産でした。
実物資産の回転率は、年度会計の際の減価償却等が回転の基本となりますから、年に1回ということになります。一方、金融資産は、多くの会社が商取引の決済を当月締め翌月払いに設定しているため、60日で回転してしまうのです。ですから、回転率は2カ月になり、年6回の回転周期になる、というわけです。単純に考えれば、金融資産は実物資産の6倍のスピードで回転すると考えられるわけです。このスピードこそが、今回の金融危機が世界に波及した大きな原因のひとつであったのです。

金融グローバル化

アメリカはこれまで、さまざまな政策を行い「アメリカ金融帝国」を築き上げました。
アメリカの実物資産は、1995年=29兆5,000億ドルであったものが、2008年=60兆1,000億ドルに増加しました。それに対し、金融資産は、1995年=63兆9,000億ドルから、2008年=165兆8,000億ドルにまで膨れあがったのです。実物資産=30兆6,000億ドルの増加に対し、金融資産=101兆9,000億ドルの増加です。
この数字を見るだけでも、アメリカがいかに金融資産を中心に、世界からお金がアメリカに集まるシステムを作りあげてきたかがわかります。

アメリカと日本の金融資産の違い

日本の個人金融資産の総額は、1,500兆円あるといわれています。これは、我々が戦後60年かけてコツコツ貯めた貯金です。
これに対し、アメリカは100兆ドル(1京円)。これをわずか13年間で築き上げました。しかもこれは、他人のお金を回転させて儲けたものなのです。
金額で約6倍、期間で約5倍、掛け合わせると約30倍という急激なスピードでの金融資産の形成です。これが突如として吹き飛んだのです。そして、この中身というのが、サブプライムローンだったわけです。

アメリカのこれからの動向

アメリカの経済はいつ復調するのでしょうか。
金融危機の震源となったサブプライムローンの大もとである住宅価格、これの動向をアメリカの消費動向の目安にしてみましょう。すなわち、アメリカの住宅価格がいつ下げ止まるかが、アメリカ経済の復調の目安といえるのです。
このことを予測する資料があります。


『米国の実質住宅価格』表
(クリックすると拡大します)

この表を見ると、アメリカの実質住宅価格は従来、傾向線と呼ばれる基準値を境に緩やかに上下して推移してきています。それが、この度の住宅バブルでは急激に上昇し、最高点(2006年第4四半期)では、傾向線に対し40.2%も上昇したのです。これは明らかに異常です。
住宅価格の推移が、過去の経緯に従って正常に推移するとすれば、今回の価格下落はこの傾向線を下回るまでは止まらないだろうということが予測されます。山本代表は、傾向線比−16%程度まで下がらなければ正常値に戻らないだろうと算出されています。
あと何年かかるか。
このことが、アメリカの消費動向を見る目安になるであろう、ということなのです。

もうひとつ、アメリカの個人消費をみてみましょう。
当然のことながら現在、アメリカの個人消費は冷え込んでいます。それは、カード会社の貸出が厳しくなっているからです。日本人が自ら買い控えをするのとは様子が異なります。
近年のアメリカの個人消費は、もともと過剰消費であったことが、数字からわかります。
アメリカのGDPに対する個人消費率は、2005年の76.5%がピークでした。2007年は75.6%ですので、近年は概ね76%前後で推移しています。ちなみに日本は59%程度だそうです。
一方、1974〜1990年ごろのアメリカの個人消費率の平均は70〜73%でした。とすると、近年は3〜6%程度過剰に消費していたことになります。この上乗せ分が、ちょうど個人消費の過剰債務額に重なるのです。アメリカ人はここ数年、過度に借金してお金を使っていたということなのです。
この過剰消費分が減少し、70〜73%程度に落ち着くことが、アメリカの個人消費安定の目安になるのではないでしょうか。

オバマ政策を注視

アメリカの経済立て直しは、オバマ新大統領の政策如何に関わっていることは説明の余地がないでしょう。これからのオバマ政権の動向に要注目です。

日本の動向

では、日本の経済はこれからどうなるのでしょう。
日経平均株価(ドル建て)の2007年からの推移を見てみますと、ニューヨークの株価の推移とピッタリ一致することがわかります。


『日経平均株価(ドル建て)とNYダウ』表
(クリックすると拡大します)

日本の株価はまさにアメリカと連動しているのです。
日本は、アメリカの株価との連動から抜け出さねばならないと、山本代表はいいます。このことが実現されなければ、今後も日本の景気はアメリカの景気に左右されてしまうのです。
が、これは何も日本だけの問題ではないようです。
世界の主要な市場で、同じように株価は下がっているのです。
この状態から日本がいつ脱皮できるか。
これが、日本の景気回復のカギを握るひとつの指標ではないでしょうか。

これからの日本

日本はこれからどのようにすればよいのでしょうか。
このことについて山本代表は、次のことを提言されました。

(1)狙う地域は新興国、分野は環境対策
(2)資金の配分を適切に…育成すべき産業に重点投資
(3)新興国との関係づくり…親米・入新興国
(4)中小企業は大企業系列からなるべく独立する
(5)日本の文化性を強みにできる企業体質に変化…ドラゴンボールの世界

日本人の強みとは何でしょうか。
日本人は約束を守る、無茶をしない、嘘をつかない、真面目、誠実、善意…。
これらのことが、外国人が評価する日本人であり、日本人の財産であると山本代表は語ります。他のことを受け容れて分析し、応用ができる民族であり、外のものを吸収してコツコツと改善していく能力が、日本の文化なのです。そして、その日本文化の典型が、世界60カ国で親しまれている日本のマンガ『ドラゴンボール』なのです。ドラゴンボールの主人公のように、苦労はするが基本を外さないでコツコツ努力することが、成功を導くのだという道徳を持った私たちの文化性が、世界中で賞賛を受けているのです。このことを私たちの強みとし、企業活動に活かすことが、成功への秘訣ではないでしょうか。
山本代表からそのような示唆をいただいた、今回の例会でした。

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(事務局・田中達也・記)

投稿者 lefthand : 2009年01月26日 19:16

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