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2008年12月05日

2008年12月5日 ブレない生き方

YAMAMOTO・レター
環境×文化×経済 山本紀久雄
2008年12月5日 ブレない生き方

麻生首相対小沢代表

11月28日(金)15時、NHKテレビの前に座りました。麻生首相と民主・小沢代表との党首討論です。攻めたのは小沢氏で「二次補正を今の国会に出さないのは国民への背信行為だ」「出さないなら直ちに解散・総選挙で審判を仰げばよい」。対する首相は「政党間協議をお願いしたい」と防戦一方でした。

結果は内閣支持率の急落。日経新聞世論調査によりますと、とうとう31%しか支持がなく、不支持は62%となり、首相にふさわしい人でも、麻生首相は前回調査の36%から17%に急落し、発足二カ月で早くも失速状態に陥ったのです。
その始まりは10月30日に、麻生首相が27兆円規模の追加経済対策を公表した際に「政策を実現して国民の生活不安にこたえることが優先順位の一番だ」と強調し、衆院解散の先送りを表明しましたが、この時は世界金融危機であり、日本経済も深刻な後退局面に入っているので、首相の判断はやむを得ないと受け入れられましたが、その後がいけません。定額給付金あたりから発言がブレ出し、迷走状態となってきて、与党内に「二次補正を今国会に出したら、民主党の攻勢に立ち往生する」という警戒心が生じ、今回の党首討論防戦発言につながったのです。しかし、解散権が封じられた国会運営は難しい、このことは福田政権で証明済みで、麻生首相はブレによって黄色信号となりました。

里見香奈

将棋の女流タイトル「倉敷藤花」を、島根県出雲市に住む高校二年生16歳の里見香奈さんが獲得しました。史上三番目の若さです。
「倉敷藤花」とは倉敷市出身の大山康晴十五世名人の功績をたたえ、平成5年に創設された女流プロ棋士全員参加の、日本将棋連盟女流公式タイトル戦で、「藤花」という名称は、倉敷市の市の花が藤の花であることにちなんで名付けられました。
里見香奈さんの将棋は、鋭い終盤力に定評があり「出雲のイナズマ」との異名を持っていますが、このニューヒロインの誕生について、女流棋士の高橋和さんが里見さんとの出会いを含めて、以下のように論評しています。
「初めて出会ったのは、私が出雲で行われたイベントに参加した時のことだった。大人たちに交じり、可愛らしいおかっぱ頭の女の子がお兄ちゃんに手を引かれ指導対局にやってきた。確か六枚落ちのハンディで対戦したように記憶している。
指導対局の後に行われた立食パーティーの席で『どうやったら強くなれますか?』と聞いてきたので『一日一題でいいから毎日詰め将棋を解いてごらん。そしたらきっと強くなるよ。できるかな?』こう言うと彼女はコクリとうなずいた。
それから数カ月たったある日、将棋連盟宛に一通の手紙が届いた。鉛筆で書かれた差出人の名は里見香奈、彼女だった。『ちゃんとやくそくまもって毎日詰め将棋をといています。大会でゆうしょうもしました』早速彼女に返事を出した。『優勝おめでとう。約束を守ってくれてとってもうれしかったよ』と。その後、彼女は12歳という若さでプロの道へと進んだ。勝負への執念と日々の努力、これは彼女の才能であり、誰でもできるわけでないが、彼女は今でも毎日詰め将棋を解いているという」。誠にブレない実例です。

ユニクロ

このところユニクロだけが業績よく、不景気の11月なのに国内既存店売上高が前年同月比32.2%増には驚きです。衣料品業界は「昨年の冬は大寒波の厳寒で、冬物衣料全般の売上が好調だったが、今年の冬は暖冬で、そのため冬物衣料の売上が不振だ」というのが一般的な業界見解で、百貨店、スーパー、専門店を問わず衣料品の販売不振は深刻になっている中、ひとりユニクロだけが快調なのです。
ユニクロは海外でも好調ですが、ニューヨークで体験したことを報告いたします。
昨年の6月、新規出店したソーホーのユニクロの入り口に立って驚きました。店舗があまりに素晴らしいことと、店内に客が殆どいないことに・・・。
同じ時間帯で比較してみようと、ユニクロから三店離れた50メートル先のH&Mに入ってみますと、客が結構います。H&Mは日本で先般東京・銀座に一号店を出し、長い行列が連日続いて話題となりましたが、世界中の国々に出店して成功しています。
ユニクロはNY初出店に賭け、膨大なお金を投入し宣伝をしました。それも日系媒体関係にはPRせず、アメリカ人向けの媒体に力を入れていたのに、現地人の客が少ない実態を目の前にし、これはユニクロの海外展開は難しいのではと思ったのが昨年でした。
再び、今年の10月末、今回はどうだろうとユニクロの入口に立って大変驚きました。客がいっぱいなのです。若い人もいますが中高年が目立ちますし、男性がコートを選んでいまして価格を見ると99ドル、同品の日本での価格は3990円ですから倍以上に設定しています。また、試着室前にも、レジ前にも列ができています。昨年とは雲泥の差です。
NY在住者に聞きますと、ユニクロ大好きという人が結構多いとのことで、受け入れられたらしいことが分かりました。この時も50メートル先のH&Mにも行ってみましたが、ここは昨年と同じ程度の客数で、黒人が多いことが目立ちました。
ユニクロのビジョンは「世界中にビジネス展開するグローバル企業になって、2010年に1兆円の売上と、1500億円の経常利益をあげ、最終的に世界一のアパレル小売企業になる」というもので、柳井正会長兼社長によって世間に明言されています。
日本企業が世界に通用していない代表業界はアパレルです。しかし、参入障壁の高いNYでの成功実態をつぶさに見て、これはひょっとしたらユニクロが初めて世界的アパレル企業となり、世界一というビジョンを達成するのではないかと思い、一時の低迷状態からユニクロが脱皮できたのは、柳井正会長のブレがないビジョン明言力と思いました。

日本航空

ニューヨークのシンクタンク、外交問題評議会(CFR)が開催した日米関係をテーマにしたセミナーが大盛況で、竹中平蔵・元金融担当相などが出席し「近年、日本がらみの講演会でこんなに集まった例はない」(日本総領事館)とのことですが、日本の「失われた10年」は思わぬところで人気となりました。
人気といえば日本航空(JAL)の西松遙社長兼CEOも米国で評判です。CNNが11月に「米国の高級CEOと日本の質素なCEO」という視点でJALを取り上げ、その内容は、米議会で財政支援を求めている企業のCEOが「年収2億ドル(約2億円)」なのに、西松社長は年収が960万円で、パイロットの平均年収1954万円の半分であることと、都バスで出勤し、社員食道の列に並んで会計し昼食をとり、社長室、役員室を無くし「大部屋」で仕事していることなどですが、これがユーチューブ(米ネットベンチャーYouTube社が運営する動画コンテンツ共有サイト)にも転載され、12月3日現在約7万回再生され、コメントも120以上寄せられているのです。
この西松社長、2006年に社内クーデターで新町敏行前社長が退陣する抗争劇の中、消去法で選ばれた非主流派財務畑の人ですが、就任後はトラブルが急減少しています。
このことは長いことJALを利用し、今年も既に21回搭乗していますからよく分かります。また、機内で客室乗務員に尋ねますと「西松社長になってから仕事がやりやすくなった」と何人も発言します。西松社長の方針は「シェアを取りに行く経営でなく、いいサービスを必死で作り、それを評価してくれるお客様を大事にするビジネスを展開する」というもので、この方針で経営を進めているブレない事例と思います。

ブレない人物の代表は鉄舟

11月29日に明治神宮で開催された山岡鉄舟全国フォーラムでお話ししましたが、ブレない生き方の代表例は鉄舟です。
鉄舟は15歳で「修身20則」を定めた以降、その後の剣・禅・書三位一体の修行過程で気づいたことをいくつも書きとめ、それを自己の生き方指針としました。
その代表的なひとつに23歳の時に書いた「心胆練磨之事」があり、その中で「私は小さい時から心胆練磨の事をいろいろ工夫してきたが、今になっても真理をつかむことができない。自分の熱意が足りないからであるから、今まで書きとめた指針を何回も読みなおし、自分を励まし、さらに勤勉に心胆練磨の源に到達したい」と述べ、そのとおり厳しく人間真理探究修行を続けた結果、45歳の明治13年(1880)3月30日払暁大悟し、境地に達し、明治時代を代表する何事にもブレない偉大な人物となり得たのです。
時代に適合した妥当なブレない指針を持つこと、これが生き方の要諦と思います。以上。

(12月のプログラム)
12月12日(金)16:00「渋谷山本時流塾」於:東邦地形社ビル会議室
12月15日(月)18:00「経営ゼミナール例会」於:皇居和田蔵門前銀行会館
12月17日(水)18:30「山岡鉄舟月例研究会」於:上野・東京文化会館
12月19日(金)14:00「健康と温泉フォーラム」於:上野・東京文化会館

投稿者 lefthand : 2008年12月05日 08:10

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