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2008年10月06日

2008年10月5日 スマイルライン

環境×文化×経済 山本紀久雄
2008年10月5日 スマイルライン

欧州でも

サブプライムローン問題は世界中を駆け巡り、リーマン・ブラザーズの経営破綻は、ヨーロッパでもその飛び火はただならぬもののようで、ドイツ復興金融公庫(KFW)銀行グループが、リーマン・ブラザーズ破綻の発表当日、同社に対して3億ユーロ(約450億円)の送金を行っていたと報じられました。

 送金は事前に取り決めていたスワップと呼ばれる金融取引で、原因は「技術的なミス」による送金だったという発表です。同公庫はリーマン・ブラザーズに返金を求める方針ですが、全額が戻ってくることはまずないでしょう。
 イギリスでは、銀行大手「ロイズTSB」が、住宅金融最大手「HBOS」を買収すると発表しました。HBOSはサブプライム問題のあおりで業績が悪化し、これにリーマンの破綻をきっかけに信用不安が拡がり株価が急落。資産規模が下回るロイズによる買収救済という異例の展開となりました。これによってイギリスで総資産4位の巨大金融機関が誕生することになりますが、世界中の金融界が大編制です。

NEW YORK POSTの記事

 今まで世界の景気は、米国の消費によって支えられてきましたが、9月に入って続発した一連の金融問題発生と、その結果の混迷化によって、頼みの米国が危ないという認識、それと米政府が景気対策の柱として打ち出した総額千百ドル(約12兆円)の所得税還付も、その60%が借金の返済や貯蓄に回って、支出拡大には結びつかなかったことから、一気に世界経済は低迷観測方向に走り出しました。

 

 そのような中、いち早くファッショントレンドを打ち出したのが、H&M(ヘネス・アンド・モーリッツ)、GAP、バナナリパブリックの三社です。7月28日のNEW YORK POST新聞は、今年の秋ファッション情報を伝え、この秋のポイントは1929年のNY株式大暴落の結果、一気に1930年代の米国は大不況となった事実を取り上げ、当時の失業者が被った帽子、当時の新聞売り子の服装など、それが2008年秋のトレンドだと訴求しました。(写真参照)

銀座七丁目

 9月13日に銀座七丁目のガスホール跡に「GINZA gCUBE」が完成し、そこにスエーデンのH&Mが日本初出店しました。
 現在、世界の衣料品専門店売上高トップはGAP。このH&Mは第三位で、すでに世界29カ国に約1600店を展開しています。アイテム価格は婦人用カーディガン2400円、ジーンズ3200円から分かるように、国内最大手のユニクロとほぼ同水準です。因みにユニクロは世界第7位の売上高規模です。
 このビルのオープン日は、H&Mを目指して銀座は客で埋まりました。その後も毎日行列が続き、オープン5日目の17日夕方行ってみましたが、ビルの前から博品館劇場前交差点まで、人の列が続いていました。つまり、銀座大通りの終わりまで行列なのです。おかげでいつもはガラガラの松坂屋銀座店も五割増しの客数、ライバルのユニクロも、世界第二位のインディテックス(スペイン)の衣料専門店「ザラ」も、あふれるような盛況ぶりです。H&M出店効果で銀座は大混雑です。

銀座の高級ブティック

 ご存知のように銀座地区には、世界のトップブティックが軒並み進出しています。業界関係者が「ニューヨーク、ロンドンに並んでプレステージの高い銀座に出店することで、そのブランド価値がさらに高まる」と指摘するように、ここ数年世界の一流ショップが競って進出しました。その中で特に目立つのか銀座二丁目交差点です。
 この四つ角はルイ・ヴィトン、シャネル、カルティエ、ブルガリという、世界トップブティックで占拠され、今や四丁目を凌駕する勢いです。
 その他にもエルメス、プラダ、クリスチャン・ディオール、ティファニー、ランバン、ダンヒル、セリーヌ、バレンチィノ、コーチなど、銀座進出のブティックを数え上げたらキリがありません。だが、銀座にはこれら高級価格帯の店がある一方、ユニクロやザラ、今回のH&Mのように中低価格帯のショップも進出し両立しています。
 これはロンドンも同じです。高級デパートのあるハロッズが位置するプロンプトン・ロードに面するナイツブリッジ地区、ここはハロッズとユニクロとH&Mとザラが並んでいます。

中間層の店が不振

 銀座大通りを歩いていると、といっても混雑で歩きにくいのですが、その中に店頭で声を枯らして叫んでいる店がありました。店主と思われる男性が、客の呼び込みをしているのです。多分、老舗でしょう。松坂屋前ですから一等地です。扱っているのは女性用バック類ですが、声の大きさに反比例し客は一人もおりません。目の前は人込み、向かい側の歩道にはH&Mを目指す長い列。少し先のユニクロは客で一杯なのに、この店には入ってこないのです。
 どうしてなのでしょうか。歩きながら思い出したのは、オンワードのジルサンダー買収です。オンワードの今年3月から5月の売上高は前期比△3.9%と減少しました。以前は国内デパート内の常勝将軍でしたが、ここ数年かつての勢いがなくなって、海外高級ブランドに負けていました。そこで投資したのがドイツの高級ファッションブランド・ジルサンダーです。華美な装飾をそぎ落とした作風が特徴のプレステージブランドですが、この買収になるほどと思います。
 オンワードブランドでは海外勢に負けて、売上が獲得できないのです。世界で評価されている日本人ファッションデザイナーは何人も輩出していますが、日本のアパレル企業は、ユニクロ以外は世界で成功していません。不思議です。

ビール売上

 第3のビールが売れています。これは発泡酒とは別の原料と製法で、最大の特徴は、酒税法上「ビール」と「発泡酒」にしないために、原料を麦芽以外にする発泡酒に、別のアルコール飲料を混ぜていることです。
 今年上半期のビール系飲料(ビール・発泡酒・第3のビール)の出荷量で、サントリーがサッポロを抜き、初めてシェアで三位に浮上したことが話題となりました。
 その要因は、サントリーの高価格ビール「ザ・プレミアム・モルツ」が上半期で前年同期比20%増と伸びたことと、第3のビール「金麦」が同37%増と好調に推移したことです。加えて、他社と一線を画した価格戦略も奏功しました。キリン、アサヒとサッポロが順次値上げを実施するなかで、サントリーは業務用を値上げしたものの、家庭用の缶入りの価格据え置きを決めたことも大きいのです。

イギリスの出版社

 イギリスでも「大人のぬりえ」が売れ出したというので、ロンドンから列車で1時間のノーサンプトン駅へ、そこから車で15分、道路が突き当たった町外れのバラック建て出版社へ訪問し業績を聞いてみました。イギリスも世界各国と同じく経済低迷下なのですが、この出版社は不思議と世間と反比例して伸び始めていると語り、その要因は価格の安さにあるといいます。立派な風景画ぬりえブックの価格がたったの50ペンス(100円)、卸は22ペンス(44円)という徹底した低価格路線です。

スマイルライン

 人は笑うと唇の両サイドがつりあがります。これが今の時代のマーケティングを示しています。つまり、高価格帯と低価格帯のアイテムだけが伸びているのです。以上。

投稿者 lefthand : 2008年10月06日 07:02

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